何処へ行くの、あの日 〜光る明日へ…〜 レビュー

発売日 :2005年2月24日
価格 :7140円
対応機種  :PlayStation2
メーカー :プリンセスソフト
メモカ使用容量 :147KB

購入動機
あらすじ
ゲーム内容
システム
グラフィック
サウンド
シナリオ
キャラクター
総合評価

購入動機

水夏』の奇数章を担当したシナリオライターのシリアス作品ということで
タイトルは知りながらも18禁版しか存在しないと思い込んでいたことから、詳しく調べることはありませんでした。
しかし最近になってプリンセスソフトがPS2へ移植していたことを知り
あらすじから窺える主人公の境遇が、恋愛ADVではあまり見られないインモラルな設定だったことに強く興味を覚え、購入しました。

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あらすじ

人生で一番輝いていた“あの夏”、国見恭介は一人の少女を手にかけ、その恐怖から逃れるため、妹の絵麻を抱いてしまう。
禁断の行為は、絵麻が兄を異性として愛していたことから「習慣」になり、恭介に逃れられない罪悪感を与え続ける。

自分を異性として愛する絵麻を嫌悪し、普通の兄妹に戻りたいと願いながらも
弱さから妹を拒絶できず、ただ無為に日々を過ごしていた彼の人生に転機が訪れる。
“あの夏”に去った陽気な幼なじみ・千尋が転校生として姿を見せ
彼女の存在をきっかけに、ばらばらだった幼なじみたちが再び恭介の元へ集まってきたのだ。

まるで昔に戻ったかのような活気ある日常を手に入れた恭介だが
幼なじみたちの変わらない姿を見せられるたび、あの夏と決定的に変わってしまった絵麻と自分の爛れた関係を自覚する。

絵麻と普通の兄妹に戻りたい…その元凶である殺人をなかったことにしたい…
どれだけ望んでも到底叶うはずのなかった願い。
しかし、タイムスリップを可能にする奇妙な薬「マージ」によって、それは半ば実現してしまう。

二週間連続で使用すると昏睡に陥る危険性を知りながらも、夜ごとマージを飲み、過去への旅に出る恭介は
当時は気づかなかった幼なじみたちの秘められた想いを知り、隠されていた真実に近づいていく…。

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ゲーム内容

三学期が始まったばかりの1月8日から17日までの10日間は幼なじみたち5人との交流を描き
18日から25日頃までの1週間はひとりのヒロインに絞ったシナリオが展開されるテキストADV。

ヒロインの攻略順番はある程度決められており
初回から3周目までは桐李、一葉、青井の三人の内の誰か、4周目は千尋、5周目は絵麻と決まっています。
誰かをクリアするたびに「最初から」を選択しなくては次に進めない作りになっていますが
個別イベントは序盤そうそうから発生しますし、フラグが確定するタイミングも結構早い方なので
毎回最初からプレイすることに無理を感じさせない作りになっています。
もっとも、共通ルートそのものが長めなのは揺るがない事実なので
そのことに不満を覚える場合、どうあっても若干のストレスを感じてしまうでしょうが…。
(私の初回プレイのクリアヒロインは青井、プレイタイムは推定9時間。そのうち個別ルート部分に当たる部分は1時間30分ほどでした)

なお、絵麻ルートクリア後の6周目以降は、それ以前には存在しなかった選択肢が二つ出現し
それらを選ぶことによって、再び桐李、一葉、青井の三人をクリアせずとも、直に千尋ルートや絵麻ルートに入れるようになっています。


それから、好感度の類が存在しないので、分岐は完全に選択肢だけに委ねられており、バッドやノーマルエンディングは存在しません。
共通ルートでは必ず誰かのフラグが立つようになっているので
誰のルートにも入らなかった場合の中途エンディングが用意されていないんですよ。

これは最後に通過する絵麻ルートがそれに該当する(どのヒロインとも恋仲にならなかった場合の)内容になっているので
なくて当たり前といえばそうなんですが
個別ルートに入った後のエンディング分岐も存在しない(完全に見ているだけになる)のは物足りない人もいるでしょうね。

私も以前に同様の作りのゲームをプレイしたときは立腹というか呆れたものですが
今作が絵麻ルートのエンディングが真のエンディング=最終的な終わり方はひとつという作品だと知っていたからか
個別ルートに突入したら選択肢は一切出てこない作りに対しての不満は抱きませんでした。

それに、選択肢はなくても、同じシーンも相手役のヒロインが異なることによって細部が変わるため
相手役(ヒロイン)の選択そのものが、ひとつの大きな分岐だと素直に思えた点も大きいですね。
個別ルートの内容がそれぞれ一切被らないようなもの…特に登場人物や世界観がガラリと変わってしまうものだと
別にゲームでやる必要はないだろうと好ましく思えないのですが
今作のような、同じ出来事も立場や視点が変わることによって変化する作りは、ゲーム的な表現だと受け取れるのです。

…と、それなりに理由を書いてはみましたが
単に選択肢がほとんど(あるいは一切)出ないADVを受け入れざるを得なくなり、前より否定的に捉えなくなっただけかもしれません。
選択肢は極力少なめで、個別ルートに入った後は見ているだけ…こういったものを否定してしまうと
やれるものが本当に限られてしまいますからね。

なんにせよ、「オールクリアに価値あり、行き着く結末はひとつだけ」タイプのADVなのは間違いないので
その点を承知した上でプレイすべきなのは確かです。

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システム

セーブ : 常時可能で数は99個。クイックセーブもあり
スキップ : 既読の自動スキップ、未読の手動スキップが可能
読み返し : ボイス再生も可能
オート再生 : 特定ボタンを押すかオプションで設定変更することでONになる。速さは三段階から選べる
ボイス : 主人公以外フルボイス。ヒロイン別ON/OFF切り替えあり(それ以外のキャラはその他で一括)
おまけ : ・ギャラリー(収録数は288枚。差分抜きだと102枚)
: ・サウンド鑑賞(BGM23・挿入歌3曲。EDコンプでヒロイン声優のコメントも聞けるようになる)
: ・シーン回想(ヒロイン毎に6個、その他5個)
: ・おまけイベント(EDコンプすると、その他欄から見ることができるようになる)
その他 : ・前の選択肢へ戻る機能あり
: ・BGM、SE、ボイスの個別ボリューム調整可能
: ・システム音、システムボイスのON/OFF設定可能
: ・いつでもタイトル画面に戻ることが可能
: ・スタッフロールのカット可能

プリンセスソフトのソフトをプレイするのは『何処あの』で三本目になりますが、毎回レスポンスが悪いと感じます。
○ボタンでしかメッセージ送りができないので、余計に実感しちゃうんですよ。
かなり力を入れないと…というほどじゃありませんが、軽く押した程度じゃ反応しません。

ストレスだと感じるほど気になったのはギャラリーでイベント絵を鑑賞しているときで
本編プレイ中にはそこまで強く意識しなかったのは救いですけれどね。

環境設定・機能面は一通り揃っています。
共通ルートが長いゆえ、某社の個別ルートから始められるショートカット機能があれば完璧でしたが…
残念なことに、ショートカット機能はスキップや読み返しのような必須機能ではありませんから、なくても仕方ないでしょう。

問題なのは、機能で最も使用頻度の高いセーブ、スキップ、読み返し(以下バックログ)の使い勝手がよくなかったことです。

セーブは99個もデータが作成することができるわりに、各データの情報量がかなり乏しいです。
ゲーム内の日付とクリア済みキャラ、PS2本体の内蔵時計を反映した現実の日時…この3つだけ。
2003年製の『
ファントム』ですらセーブ時のサムネイルが見られたのに、今回はそれすらもなく、退化しています。
情報量の乏しさはオリジナル18禁版から受け継いだようですが、そんなところでオリジナルを再現しなくても。

次にスキップ。×ボタンが手動の未読スキップに振り当てられているため
自動スキップをキャンセルするときに×ボタンを使おうとして、どんどんテキストを飛ばしてしまうことがたびたびありました。
自動スキップのキャセンルは発動ボタンと同じR2でも行えますけど
×=キャンセルの固定観念が強くこびりついているため、ついつい、無意識に×ボタンを使ってしまう。

ボタン配置でオリジナリティー出すのも結構ですけど
なるべくは一般的に各ボタンがどういう役割を振り当てられているのか、それを考えた上で設定して欲しいです。

そのスキップより更に分からないのがバックログの表示方法です。
スキップの方はちょっと気が回らなかったで済むけど、こちらは何を思ってこんな仕様にしたのか私には解せません。

バックログは過去のテキストを見返すために使用するものなのに
このゲームのバックログで真っ先に表示されるテキストは、現在メッセージウィンドウに表示されているテキスト「だけ」なんです。
それ以前のテキストを見るためには十字キーの上を押せばいいわけですが
なんで毎回△ボタン(バックログ呼び出しボタン)→十字キーの二度押しを要求させられるんでしょう。

私はうっかり飛ばしてしまった直前のテキストを読み返すためにバックログを呼び出すことが多いから
この△ボタン→十字キー上のセット操作を必ず行わなければならない点はストレスでした。
だって通常のADVゲームだったら△ボタンひとつで済むことなんですからね。

この仕様に意味があるとするなら、現在のテキスト「ボイス」を再度聴くことを第一に考えたことぐらいしか思いつきませんが
それならバックログのデフォルト表示を、現在メッセージウィンドウに表示されているものに限定しないで
その直前のテキストも一緒に表示させれば解決する話でしょう。

最初に述べたように、機能面は一通り揃っていますし、おまけの内容も至らない点はなかったと思っていますが
重要な二大機能(特にバックログ)が気が回らない仕様だったせいで、システム面はいまひとつな印象になってしまいました。

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グラフィック

ヒロインの髪型デザイン(特に絵麻と青井)の古臭さと、人物画の単調な塗りから、90年代から2000年度あたりの作品を彷彿させられますが
キャラクターデザインそのものは、目を引く特徴がない分、広く受け入れられるタイプの絵柄だと思います。

立ち絵はサブキャラが固定、ヒロインだけ2パターン用意されてはいるものの
ヒロインたちもほとんどはデフォルトのポーズのまま、表情だけが変化します。
体全体で感情を表現する立ち絵が好きな私としては寂しいところですが
千尋の引きつった笑み、一葉の蔑み、青井のあせっている顔など、各キャラにそれぞれ印象的な表情があったから
実際の種類の少なさに対する物足りなさは覚えませんでした。

イベント絵の配分は、差分抜きでヒロイン毎に15〜18枚
過去編の複数キャラが描かれているものが数枚、サブキャラ単発のものがほんのちょっと。

虎(メスライオン?)をイメージした動物が何の資料もなく記憶だけで描いたかのような適当なものだったのは大いに萎えたし
サンデー(子猫)の体もデフォルメしすぎ、子供時代の体の描き方が稚拙(立ち絵はそうでもないがイベント絵の方は目に余る)
中年女性が描けないせいか10代のキャラたちより幼くすることで逃げた…といった
ギャルゲーにありがち欠点はわりと見られます。

反面、現代のヒロインたちはきちんと描かれているので
上記の欠点が気にならない(ギャルゲーではよくあることと割り切れる)人にとっては十分な出来かもしれません。
唯一青井だけはイベント絵によって顔が変わり、シナリオ上もっとも重要なシーンが一番イマイチですが
これは人によって受け止め方が変わるでしょね。
私個人としては、彼女だけグラフィックレベルが低いのはなぜかという疑問は持ってしまうものの
それ以外の4人に同じような問題は見られなかったから、大きな粗や欠点には当たらないと思いました。

背景は外国風の町並み設定が反映された洒落たデザインで塗りも綺麗です。
しかし、作中何度か雪が降るような季節にも関わらず、5月か11月あたりにしか見えない景観は、背景の役割・仕事をほとんど果たしていません。
通常画面で使用される雪エフェクトに頼りっきりで、真夏が舞台の過去編との対比も無きに等しかった。

こういう地味ながらも侮れない効果をもたらす部分、そこにどれだけ力を注ぐかは世界観構成に大きく影響するから
ある意味、人物画以上に熱意を入れてもらいたいんですが…。

季節感以外の演出面でも、絵麻との情事シーンが常に暗転だったり
“ソレ”のグラフィック(及び世界の終焉に対する表現)にテキスト通りの嫌悪感や恐怖を感じられないなど、肝心の部分が弱い。
前者はコンシューマ版オリジナルのグラフィックを用意するなりして
今作の根幹「兄妹の性行為に対する背徳さ」を強化するべきだったし、後者も移植する際に改善してもらいたかった。

その一方で通常の回想(夢)はセピア色、マージで導かれた過去はカラーで表現する
場面転換の種類を複数用意する、冒頭やゲーム中に挿入される「ここではない世界」で使用されるBGMを統一するなど
画面効果にはなかなか力を入れていると感じられました。


客観的にいえば、いいところも悪いところもあり、それぞれを差し引き普通クラス
主観的には、あまりにも無味無臭過ぎたゆえ、味気なかったのが最終評価です。
レベルは決して低くはないから別のキャラデザや原画がよかったとも思わないけど
無難というかそつがなさ過ぎて、この絵じゃなくてもいいような感じを終始受けてしまいました。
仮にリメイクなどでデザインが一新されても惜しく感じないといいますか。

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サウンド

BGMはキャラ別のテーマあり、悲しみや不安のテーマを1曲に限定していない(同じ曲ばかり耳にする状態を避けてある)
ボイスは主人公以外は全キャラ喋り、ヒロインの配役は5人ともぴったりで演技力も上レベル
そして効果音も忘れずところこどろ使われている…と、サウンドの三大要素はどれも不足部分は見当たらず、十分な出来です。

BGMの詳しい感想(というか好み)を言えば、「Othrness」のイントロ、「Again」のサビにはゆさぶられたし
“ソレ”のテーマ「Mistral」はじわじわと追い詰められるような恐怖が伝わる良BGMだと思いました。
反対に「Othrness」とセットで使われることが多い「Mind reflection」はイントロが大げさで興ざめです。
せっかく「Othrness」で高まった気持ちに水を差されることが何度もあり
「Othrness」の後には「Mind reflection」が続くと分かってからは、「Othrness」が流れてる最中、既に気持ちが萎えてしまった。

一葉のテーマ曲も特徴的すぎて、シーン状況にそぐわない結果を生み、BGMとしては失敗しています。
これが単発イベントで構成されるタイプのSLGの使用曲だったら、むしろ耳に残りやすい分、良いキャラテーマになりえたかもしれないけど
あいにく今作はシナリオ重視のADVなので、曲がひとり立ちしている一葉のテーマは世界観に噛み合っていなかった。

また、BGMもグラフィック同様に、このゲームはこの曲たちだからこそ! 的な力を感じられませんでした。
大抵のゲームにはメインテーマ曲が用意されていて、すぐに分かる作りになっているものだけど
このゲームだと、何がメインテーマ曲だったのか分からなかった。

そんな質は悪くないながらも、独自の魅力には欠けるサウンド面の中で一目置いたのが、OPムービーのイントロ。
主題歌そのものは特に耳に残るようなものじゃなかったけれど、このイントロは格別です。

「ねえ、教えてあげてもいい? 何処にも行かない気持ちが…この世界にはあるってこと」

今作最大のテーマである上記のフレーズと見事に調和しており
ここのくだりだけは何度目でも見入ってしまうほど、絶品の仕上がりになっています。

それからもうひとつ、過去編の花火大会で流れる悲鳴が本当に身の毛がよだつものになっている点も印象深いですね。
効果音扱いだったので、スキップ使用中でも必ず聞かされることになって何度も耳にしたのに
いつまで経っても慣れることはなく、毎回恐怖を感じました。
実際の悲鳴は「キャー」なんて可愛らしいものじゃないことをしっかり表現しています。

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シナリオ

主人公が殺人と近親相姦の罪を犯したということで
今作の企画・ライターを務めた呉氏が担当した『
水夏』の0章のように、徹頭徹尾シリアス内容が展開されるとばかり思っていましたが
実際のところは、鬱屈さからは逃れられない世界観ではありながらも、基本はオーソドックスな学園ものギャルゲからはみ出ていません。
それどころか、朝は皆で登校、昼休みは皆で昼食を取る、ギャルゲでもあまり見られないハーレム環境で学園生活を送ることになります。
女子高が舞台だとか何かしら女だらけの集団に男が投入される設定は数あれど
「幼なじみだから」で、黒一点状況を押し切ったケースは意外と珍しいことかもしれません。

でも、これは私にとっては誤算でしたね。
呉氏の書いたゲームシナリオで最も読みやすかったのが先述した水夏0章であり
一番高く評価している水夏の三章も、0章ほどではないにせよ、コミカル要素の薄い内容だっただけに
『何処あの』が普通の学園ものから逸脱していなかったことは、落胆を禁じえない…とまではいなかったけれど、拍子抜けしました。

プレイを進めるうちに、その従来の学園ものだと思った部分を楽しむようになったのならいいけれど
(何度も例えに出しますが)水夏0章の感想で書いた「このライターはコミカル要素が得意としない」が更に強まる結果になっただけでした。

主人公がときおり呟いたり突っ込むギャグらしきものも、今作の二大コミカル要員の千尋と島の発言、そのどれもが不発気味。
しかも滑ってるなんて段階ならまだいい方(?)で「今のってギャグのつもりだったのか?」と疑問を抱いてしまうことの方が多い。
ギャグを抜きにした日常会話も淡白だから、ゲームの世界に引っ張り込む牽引力がかなり弱かった。

オールクリア後、各ルートに張られた伏線を確かめてみたい気持ちが沸きながらも再プレイする気が起きないのは
日常会話の魅力が乏しかったからに他なりません。

解決編ありタイプのADVとして、最終ルートではひとつの真相によって一連の謎が収束し
オールクリア後はそれまで気づかなかった伏線の数々を堪能できる醐味味をきちんと抑えてあります。
普通は隠し玉に使いそうな材料(妹をレイプのような形で抱いたこと、殺人)を初っ端から使ってしまったことにより
従来とは反対に、真相に近づけば近づくほど衝撃度が弱まっている上、どんでん返し展開もあまりないですが
3周目までは何のために登場させたのか分からず不要としか思えなかった“ソレ”の正体、これは直球ゆえに盲点を突かれて膝を打ちました。

また、キャラをクリアするたびに新しくなる冒頭の不可解なやり取り
少しずつ増えていく時間軸が現在と異なる世界のシーン
同じ出来事も、親しいヒロインによって見えてくるものが変わる…
“ループもの”ではお馴染みの、同じ世界ながら少しずつ変化が生じる構成によって
より真相に近づきたいと、プレイへの意欲が高まりました。

だから、牽引力が弱いといっても、解決編までのプレイが苦痛だったわけではないんですよ。
ヒロインは過剰なまでの特徴づけがされていないから不快感は覚えなかったし
無意味なドタバタしたやり取りを延々と見せられるようなこともなかった。
盛り上がりには欠けたけど、上記の通り、ループ構成などから解決編にたどり着きたい欲求は常に持っていました。

だからこそ、日常パートの淡白さは惜しむべき点だし、今作の最大の弱点だと思うんです。

シナリオの完成度が高ければ高いだけ、再度読み込んだときにその魅力を目の当たりにするわけだけど
この『何処あの』は、シナリオの完成度と共に日常パートの弱さも思い知らされるんですよ。
そして日常パートの弱さゆえ、それ以上の再プレイをする気を失うという…。

今作の根幹である妹・絵麻との関係に対する描写が際立ったものだけに
この日常パートの弱さがどうにかなっていればなぁ…とつくづくそこが惜しまれる。

絵麻は兄である主人公を誰よりも深く一途に愛していますが、その愛情は盲目的で自分本位なものでは決してありません。
恭介が自分を女として愛していないことは分かっており、彼を困らせるようなこと…
例えば人目を気にせず嫉妬をしたり迫ってくるような、他人から訝しがられる言動は決してせず
登校前と登校後のキス、深夜の行為…これを受け入れれば、それ以上何かを望んでくるようなことはしません。

むろん、他の異性との親密さを見せ付けられたからといって暴れたり
また同じようなことをしたら死んでやるとか殺してやるといった浅はかな行動を起こしたりもしたりもしない。
でもだからこそ、表情を崩さず多くを語らない彼女の愛はとても重く、恭介に圧し掛かっている。
誰よりも近くにていて誰よりも多くの時間を過ごし誰よりも愛している…
その自負から来る悠然とした静かな微笑みと率直な愛の言葉は、どんな脅迫よりも恭介にとっては効果がある。

懇願も脅迫もされていないのに絵麻に支配されている緊張感
そして結局のところは自らの意思により続けている関係によって生じる、周囲を欺いてることへの罪悪感。
日常生活が穏やかであればあるだけ、妹とのいびつな関係は明確なものとなり
それは恭介と絵麻の関係を知るプレイヤーにも、歪んだ関係だと認識させる効果をもたらしている。

それもこれも、恭介が絵麻を実妹同然に思い、妹として愛していても女としては愛せない、そこから来てるんでしょうね。
これが「妹を女として愛してしまった、どうしよう」だったら、今ほどの緊張感(怯え)は絶対出ていなかったはず。
妹を陵辱するわけでも、愛したわけでもない、でも夜ごと義務として、逃避として抱くことの罪深さ。
女としては見ていないという逃げと、愛してもいないのに抱いていることで更に募る罪悪感
どちらにも転べない状況に陥っているゆえ、常に追い詰められたかのような、生殺しの状況が表現できた。

そのため私は、一連の謎に回答を出した解決編など高レベルでまとまっている部分よりも
今作の最大の特徴であり他作品では容易に真似できない(代替できない)という点で、この部分を何よりも評価しています。
プレイを続行できた一番の理由は、この特殊な関係から来る、この作品でしか味わえない背徳の空気感があったからこそ。

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キャラクター ※ネタバレあり。攻略順です。

■国見恭介 (CV:なし) ※名前固定
両親を事故で亡くし、義理の妹の絵麻と二人で暮らす高校二年生。
過去に殺人を犯した確かな記憶を持ちながらも
その相手は誰だったのか、そこに至るまでの背景など、肝心の部分は覚えていない。
妹の絵麻と肉体関係があることから、人並みの幸せを手にする資格はないと考えており、物事全般に対して受動的。

固定の名前はヒロイン毎に呼び方が異なり、各ヒロインの性格や関係性が表現されていて良しです。
名前固定を採用するゲームは、このあたりをちょっと見習って欲しい。
固定にしてくれるだけでもありがたいとはいえ、全員が名前呼び捨てじゃ芸がないと感じるのも事実…。


ギャルゲーではありがちな、女性陣に揃って好意を持たれる理由が分からない主人公。
今作のヒロインは主人公のことが好きで当たり前とされる属性の妹と幼なじみで固められており
「ゲーム開始直後は主人公に対して何の思い入れも抱いていない」キャラは存在しないため
異性のキャラがなぜ主人公に惹かれるのか、その部分に関する描写はかなりおろそかにされています。

性格的にも、あれほど想ってくれる絵麻を受け入れられない申し訳なさより
兄を異性として求めることに対する嫌悪感が勝っているためか、頻繁に挿入される自嘲めいた吐露は
現状を変えられない弱さへの自責というより、どこか自分自身を可哀想に思っているような自己憐憫に映りました。
その弱さに共感や若干の同情を抱くとしても、好感が持てるとはいい難い人間像。
そういう点からしても、やはり女性陣からモテモテなのが納得できないキャラですね。

もうひとつこの主人公が好きになれないのが、本当の苦境に立たされないこと。
恭介にとっては現在の状況が針のむしろのようなものだろうけど
それでも最悪の状況である、絵麻との関係が周囲に知られる自体は最後まで避けられたわけで…
(絵麻ルートの展開は暴露の内容・ショックを受ける役回りがヒロイン以外など、生ぬるかった)

知られずに済んだのは、あくまでも絵麻自身が身を引いたからに過ぎず、恭介自身は何の行動も起こしてはいない。
そして最終的には、千尋と絵麻の働きによって、自身が望んだ最高の結末を迎えたわけです。
なんで、何もしてない人間が一番幸せになってる? と、腑に落ちませんでした。

物語の主人公には行動を起こして、それによって幸せを勝ち得て欲しいと考えている私にとっては
魅力に乏しいキャラが、裏には一人の少女の苦しみ(犠牲)があったのに
それを知らないまま幸せを享受した今作の結末はいまひとつ好きになれません。
もしも恭介に思い入れや好感情を持てたのなら、読了感も今とは大分違っていたと思いますが…。

だから、絵麻の好意に甘えただけのルートよりも
自ら妹との関係に終止符を打つため、非道な行いに出た絵麻ルートの方がまだ評価できます。

ビジュアル的にも、彼一人だけ大きく描かれたイベント絵があるにも関わらず
旧来通りの長い前髪によって目が隠されたデザインで統一されており不満でした。

今作は絵麻の「何処にも行かない想い」がテーマなのだから
恭介にもそれだけ強く想われるのに値するだけの魅力を与えて欲しかった。

■青井智加子 (CV:木葉楓)
不慮の事故により他界した主人公の親友トモこと智久の姉。
実年齢は恭介よりひとつ上だが、体が弱かったことから留年した経緯があり、学年は同じ二年生。
ヒロインでは唯一“あの夏”に関わりがなく、“ソレ”のことを知らないためか
EDも世界が滅ぼされない(白で覆いつくされない)まま終わる形となっている。

彼女について真っ先に出てくる感想はデザインミスなビジュアル。
青いストレートロングヘア+サイドは三つ編みに金の瞳というデザインですけど
よりによって、常識的で現実的なキャラである青井を金の瞳にした理由が分かりません。

金の瞳は、それだけで神秘的な印象を与える色ですから、非人間的なキャラには打ってつけですが
非人間から一番程遠い位置にいる彼女にそんなカラー設定を与えたのがすごく妙。
イベント絵でも、瞳の色のせいで、おかしな印象を受けてしまいました。
(青い髪との相性もあまり良くないし)

それから、これは単なる主観というか好みの話だけれど
ただのロングヘアじゃなく、サイドの髪を三つ編みにしているデザインが、私にとっては余計なものでしかなかった。
三つ編みをせずに下ろしているだけの立ち絵も用意されていたので、ますますその思いが強まることに…。

外見面以外では
キャラ的な立ち位置が幼なじみとしての再会するのではなく、高校生になってから「出会う」ただ一人のヒロインとなっていますが
弟から“あの夏”について詳しく聞かされていたこともあって、恭介には最初から親近感を抱いているし
会話の流れも、他ヒロイン→あの夏の出来事を振り返る、青井→あの夏の出来事(弟について)を振り返る
程度の差しかないので、幼なじみじゃないことへのイレギュラーさはそれほど感じません。

深夜に出没する大きな獣を軸に話が展開しながらも
実はこの獣、メインシナリオに関わる謎のひとつと思いきや、実はまったくというほど無関係だったりするので
大抵のユーザーには、最も印象の薄いシナリオになりそう。

でもオールクリア後に再度青井編をプレイしたとき

「一つお願いがあるんです」

「私がもしも目が覚めなかったら…」

「私の事、起こしてくれませんか?」


なんて台詞を目の当たりにしたときは、さすがに堪えました。
こんな痛々しい布石を用意してたんですね…。

■麻生桐李 (CV:九条信乃)
受験勉強に勤しむ、向かい家の幼なじみ。
恭介とは昔から想い合っている仲だが、恭介は絵麻のこと、そして桐李自身にも踏み出せない理由があるゆえ
表面上は単なる幼なじみに留まっている。

ほんわかとした空気を持つおねえさん。二次元では「和み系」として旧来から存在するタイプですね。
この種のキャラは度を越した天然ボケ、あるいはのんびししすぎてイライラを誘うことも多々ありますけど
桐李の場合はどちらでもない中間地点にいる丁度よいバランスで描かれています。
九条信乃さんの、まったりとしたボイスにも癒される。

シナリオ的には…特に言うことはないですね。
恋人になることを桐李が拒否し、恭介側が動かざるを得なくなるため、珍しく恭介に好感を持てたことぐらいか。
EDは唯一のグッドEDとも言われているけど、三流ドラマによくある陳腐な内容で一番退屈だった。何より絵麻が哀れすぎる…。

そういえば、桐李が兄の口癖と同じことを呟くことがあり、このときばかりはクスリと笑いました。
このゲームで笑えたのって、ここと智久「おばばばば…」→雪絵「オババァ!?」ぐらいだな…。

■茂木一葉 (CV:北都南)
パティシエを目指す、さっぱりとした性格の一年生。
恭介とはしばらく疎遠になっていたが、千尋が戻ってきたことにより再び交流を持つようになる。
双子の姉妹である双葉とはなぜか連絡が取れなくなっており、そのことを気に病んでいる。

双子キャラ、しかし片方は登場しないとなれば、つい入れ替わりか一人二役を予想しちゃいますが
彼女の場合はちょっと捻ってあります。二転三転するの方が正しいかな…。
それを評価するかといえば、あまりしていませんが。

こちらとしては、虐待を受けていたのが本当は自分(一葉)だという辛い現実にどう向き合うかと、そこに目が向いてるものだから
いきなり一葉だと思われた人物は双葉だったと知らされてもすぐには頭の切り替えが行えず
頭の整理がつかないうちにバタバタと急激に終わってしまった印象が強いです。

普通なら、虐待を受けていたのは自分ではなく双子の片割れだと記憶の改ざんを行うか
自分自身が片割れの方だと思い込むことで虐待を受けた事実から逃避するか、そのどちらかにするところを
今作では両方とも取り入れて意表を付きました。
でも、その結果、せっかくの伏線や設定がきちんと反映しきれずに殺されてしまった雑さも目に付いた。

一葉(双葉)の自宅へ訪問する出来事は、一大イベントとして大きく扱われると予想したのに裏切られ
子供時代に恭介が一葉に石をプレゼントしたことを双葉が知らなかった設定も
ああもあっさり片付けられるとは思いませんでしたよ…。
どちらの設定も、もっと大事に扱って欲しかった。

過激で痛ましい設定を持つだけに、印象に薄いとか何も感じなかったとは思う人はあまりいないでしょうし
一葉ルートだけは独立したひとつのシナリオとしても十分勝負できる内容にはなってはいるんですけどね。

それにしても、「これでもう、あたしにヘンなことできない!」は辛いシーンですね。
何よりも“ヘン”という表現が痛ましい。
恭介たちが“ソレ”を“アレ”と表現したように、人は嫌悪するものを、きちんとした名前で呼ばないようにする性質があります。
幼少ゆえに明確な理解が及ばないこと、認めたくないことから来るこの二文字の表現で
彼女がどんな目に遭っていたのかが十分すぎるほど分かってしまう。

■神崎千尋 (CV:みる)
サンデーという名の子猫を常に連れている朗らかな転校生。
シナリオ項目で不発気味と表現したように、笑いを誘うキャラとしては乗り切れておらず、キャラが確立しきれていない印象を受けましたが
ともすれば暗くなる今作の雰囲気を、明るいものに転じてくれる貴重なムードメーカーであることは間違いありません。
私は世間一般ほど「明るい=好」だと思っていませんけど
彼女のように、きちんと場の空気を読んだ上で雰囲気を明るくする「朗らかさ」なら、人の長所として持ち上げられるのも納得できます。

千尋が秘密を持っていそうなことは序盤そうそうから窺えるものの
私の予想としては、願いが何でも叶ってしまうような超能力者的存在で
マージの基となった女性と何かしらの関わりがあるぐらいに思っていました。

なので、これほど物語の鍵を握る存在だったことは驚きの事実…になるはずなのですが、驚かされたような記憶がありません。
どちらかといえば、共通ルートで思わせぶりな描写をされたサンデーが一連の謎とはまったく関係ない存在であり
単に「虎に変身することもできるマスコットキャラ」に過ぎなかったことに驚きました。
サンデーは十分愛らしかったから、その登場理由に意味があろうがなかろうが私個人としてはどうでもいいけれど
意味深な描写をされたにも関わらず、その真相は「千尋が不可思議な存在であることを強調するため」だったら肩透かしですよね。

話題を千尋の正体に戻しますが
彼女の正体が予想通りだったわけでもないのに驚きを得られなかった原因は、千尋ルートの話運びの下手さにあるように思います。
初回から3周目までのルートでは語られなかった本筋の殺人や“ソレ”の真相が判明する重要なルートなのに
それまで通過してきたルートより更に退屈に感じるものだった。
解決編の絵麻ルートで頭が混乱しないよう、事前に世界設定の知識を与えておくための準備ルートとしての役割は果たしていたけど
ルート単体としての面白さは感じられなかった。

千尋が恭介にあれこれ質問を投げかけて、確証が得られたら一人納得し、こちらは置いてきぼり。
で、実は“ソレ”と同一の存在で人間じゃなかったから、恭介の秘密も知ってましたというだけ。
千尋の正体が正体な以上、行き着く結果は同じだとしても
正体を知るまで、そして知ってからの見せ方は、もっと工夫できたんじゃないかなぁ…。
単に説明責任を果たしただけという印象しか受けませんでした。

でも、変に彼女は辛い仕事を行わなければならない哀れな少女なんだとか、同情を誘うことに重点を置かなかったことは買っています。
非人間だけど人間と変わりない、いや人間よりもずっと人間らしいだのなんだの強調されると
絵麻との関係を知りながらも動じないことが不自然すぎて、都合のよさしか感じなかったですから。
千尋の場合は非人間だから超然としているのも無理はないと、すんなり受け止めることができて、こちらとしても楽でした。

■国見絵麻 (CV:鷹月さくら)
幼い頃に恭介の家に引き取られた血の繋がらない妹だが、主人公にとっては実の妹と同じ存在。
作中において義理兄妹だということはほぼ言及されておらず、実の兄妹同然の扱いをされています。
義理設定をもっとシナリオに絡ませることも可能だったのに、まったく持ち出されないあたり
意図して義理設定にしたのではなくて(規制か何かで)そうせざるを得なかったのでしょうが
義理であるゆえに、倫理的な問題はさほどなくても「相手(恭介)の意思ひとつで届かない想いがある」、それがよく表されていました。

その「決して届かない想い」の終止符を描いたのが今作だけど、自殺する世界はあっても、恭介を殺す世界がなかったあたり
絵麻がどれだけ強固な意志で恭介を想い続け、想われたいと願っていたかが伝わります。
彼女の願いは恭介を自分のものにすることではなく、あくまでも想われることだったんですよね…。
だからこそ、最後に彼女が選んだ世界が「みんな一緒」だったことは尊い。
そんな尊い世界ですら、誰かの意思ひとつで簡単に崩れてしまう危ういもの…それが最終的なEDで一番強く感じたことでした。
じゃなかったら、大団円的な結末に以下のような不安を煽る会話を入れる必要もないですし。

「マージなんかに手を出したら駄目だよ」

「分かってるって。…というか、信じてないし」

「お兄ちゃんは…多分、大丈夫だろうね。私もそう思う。」

「ただね、心配なのは他のみんなの事」

「他の…?」

「もし困った事が起きたりしたら、お兄ちゃんが助けてあげてね。」

私は“あの夏”から続いている世界は、本当の世界の恭介がマージによって手に入れた世界だと解釈しています。
(そして、ときおり挿入される病室を歩くシーンは本当の世界の記憶が蘇っていることを表しているんじゃないかと)
だから、本当の世界が絵麻が病死するものから皆が生存する世界に変わったように
「本当の世界」なんて案外もろいもので、実はいつ書き換えられてもおかしくないような不確かなものだったりする。

強い想いは世界も変える(それこそ、過去を変えられるマージなんて薬が生まれてしまうぐらいに)
けれど世界を変えてしまうほどの想いでさえ届かないこともある…。

やっぱり、どうあっても「交わらない、届かない想い」に行き着いてしまう物語ですね。

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総合評価

解決編に向けていかに辻褄を合わせてあるかや、再度プレイしたときに気づく伏線の数々には感心させられましたが
今作最大の特色「妹との本心では望んでいない禁断の関係」が最大限に生かせてなかったことから
物足りなさは、初回プレイクリア後からオールクリア後まで続きました。

妹と夜ごと体を重ねている関係にある主人公が、恋人にその関係を知られたらどうなるのか…
どうあってもショッキングな展開からは逃れられない設定でありながら
妹が自らあっさりと身を引いて決着をつけ、恋人は何も知らないまま終わるのはねぇ…
ライターからすれば、そのあたりは重要な点じゃないからと省いたのかもしれないけど
単に面倒だからと、問題を棚上げした風にしか映らなかったですよ。

これほど兄を想う妹と、決して妹を女として愛することができない兄
そのどこまでも交わらない想いが主題の恋愛ADVなんて、そうそう出やしないでしょう。
というか、これが最初で最後と考えた方が自然かもしれません。
だからこそ、最初で最後の稀な機会として、その独特な設定を各ヒロインルートに絡ませて欲しかった。

需要とは反対に位置するテーマを商業に持ち込み、ラブストーリーとしては大方の予想を裏切る結末にしたこと
そして「健全な日常」を送っている人間が持つ家族間の秘密描写は素晴らしかったし
絵麻との歪んだ関係性、絵麻ルートの皮肉としか言いようがない展開を見るために買った価値はあったと思っています。
でも、「人にすすめる」類の作品じゃない。
作品の質が低いからではなくて、誰に向けての作品なのかが分からないからです。

この作品の魅力を最も堪能できるのは「妹萌え」と、絵麻のように報われない恋に悩んだ経験がある人だと思っています。
だけど、従来の恋愛ゲームとはこうあるべきものという観点からすれば
絶対にすすめてはいけない層にすすめていることになるし、後者に至っては、傷口を開かせて辛い思いを強いるだけとも言える…。
だから、最も向いている(楽しめる)人が最も大地雷を踏む可能性が高いという、変わった性質の作品。

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2010年10月31日


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