Prismaticallization レビュー

発売日 :1999年10月28日
価格(税別) :5800円
対応機種  :PlayStation
メーカー :アークシステムワークス
メモカ使用容量 :1ブロック

―システム―

セーブ  常時可能だがシステムデータはなし。1データごとに1ブロック消費する
スキップ  手動スキップのみ。オプションで全文と既読の設定可能
読み返し  なし
オート再生  なし
ボイス  なし
おまけ  キャラ別の立ち絵とイベント絵鑑賞、BGM鑑賞モードのみ(どちらもオプションの項目から入れるため、いつでも鑑賞可能)
その他  ボタン配置のカスタマイズ、ソフトリセット、スタッフロールのカットが可能

―あらすじ―

受験を控えた高校三年生の射場荘司は、幼なじみの柊明美に誘われて古い知り合いが経営するペンションを訪れた。
何年も交流が途絶えていた明美が自分を誘ってきたことを不審に思いながらも
避暑地での初日はこれといった出来事も起こらないまま、平穏に終わる。
ところが翌日の朝、荘司が奇妙な物体を拾った瞬間、彼の意識はペンションを訪れる直前に戻される。

荘司自身に自覚がないまま、再び始まった“今日”。
そしてこれが、幾度も繰り返される「終わらない一日」の始まりだった。

―ゲーム内容―

繰り返される一日から抜け出すために、メッセージスキップを多用しながら試行錯誤を重ねるADVゲーム。
珍しいことにゲームオーバーやバッドEDなどの強制終了・中途EDが存在しないため
プレイヤー自身が明日を迎えるための条件=各ヒロインEDの条件を探ろうとしない限りは、延々と一日がループし続けます。
だから、通常のADVのようにバッドEDを迎えることで自分が失敗した、誤った行動を取ってしまったと判断することが出来ず
消去法で答えを見つけ出すやり方が通用しません。

そしてもうひとつ風変わりな点が、次週以降のプレイでなければフラグ立てが有効にならない部分です。
このゲームには言動選択肢(話しかけるor無視する、誘いの乗るor乗らないなど)がない代わりに
特定のポイントを通過した際、そのポイントで起きた出来事を“記録”するかどうかの選択を迫られます。
(念のため書いておくと、これは通常のセーブデータとは別のものです)
この記録は5つまで保存出来ますが、いくつ記録したか、どこで記録したか、あるいはまったく記録せずとも
その回のプレイには何の影響も及ぼしません。
次週以降のプレイで記録に応じたポイントに来きたとき、自動的に記録は“解放”され、そこで初めて変化が現れるんです。

つまり、“記録”はフラグを立てるための「仮のスイッチ」に過ぎず、それ単体では意味がない。
そのスイッチが正式に稼働するポイント=解放ポイントに通過することでようやく正式なフラグが立つんです。
フラグが立てば、それに応じた新たな会話・イベントが発生して新たな記録が可能になるので
今度はその新しい記録が解放される=フラグが立つポイントを目指します。
この記録&解放を繰り返していき、EDに繋がるラストイベントを発生させるために必要な記録を解放させる。
それがプレイヤーの最終目的になるわけなんですね。

ただ、最初に試行錯誤を重ねると書いたように、やみくもに記録と解放を繰り返していても、ループからは抜け出せません。
最初こそ、「解放されるポイントは記録した時間・場所と同じ」という単純さで頭を悩ます必要もありませんが
次第に「記録したポイントとは別のルート、違った時間帯」など、ちょっと捻った解放の仕方が要求されます。
また、この解放タイミングは1つに限定されていないので、正解ポイントにたどり着く前に解放されてしまうこともあります。

それゆえに、プレイヤーはそれぞれの記録&解放がどういった分岐を生じさせるのか
解放がどのタイミングで行われるのか、ダミーポイントでの解放を防いで正しい解放を実行するにはどうしたらいいのか
この3点を押さえる必要があるんです。

考えなければいけないことがいくつもあるということで、小難しいシステムだなぁ…と敬遠したくなるかもしれませんが
このゲームには「秘密の示唆」という名のヒントコマンドが搭載されており
このヒントの与え方が、プレイ続行を促してくれる丁度いいバランスになっています。
確実なヒントにはなるけど、表現をぼやかしたり、言い切らないうちに終わっているからネタバレを目にする危険性がありません。
何よりも、プレイヤー自身が考える余地は十分残されているんです。

私がすべてのEDを自力で見られたのは、このヒント機能のおかげだと断言出来ます。
「開放され難いが、条件が揃えば…」というヒントのときは、それなら絶対に見つけなきゃとはりきったし
いっこうに終わりが見えないときは「終わりが近い」というヒントを支えに、最後まで投げ出さずにいられた。
こうして最後まで、このゲーム最大の魅力である「自力で解くことの悦び」を貫き通せました。

長々と説明してきましたが、私のこのゲームに対する見解は
近年のテキストADVとしては非常に稀な、能動的に解こうとしないとクリア不可能、
手探りに試行錯誤を繰り返さなければ、魅力・面白さが大幅に損なわれる作品だということ。
私がヒント機能を褒めるのも、この機能があったからこそ、最後まで攻略サイトに頼らないでプレイ出来たからです。
もし早々に自力プレイを断念していたのなら、今とは大分違う感想になっていたはずです。

自分で何度もループを経験して、徐々にシステムを理解していく…その過程こそが要だから
ADVをプレイするときは、シナリオに集中出来るよう最初から攻略サイトの情報通りにプレイする
そういったユーザーにはまったく向いていません。
フローチャート通りにプレイしたり、動画を見ただけでは意味がない。

実際にプレイして、「ひたすら既読スキップ押し続けて、フラグを探すだけの作業的なゲームでつまらない」
そういった批判的な評価になったとしても、仕方がないというか、むしろ簡潔にこのプリズマを表現した感想だと思います。
(私自身、システムを把握してからは、それまでの熱中ぶりが沈静化してしまった)
けれど、ただボタンを押し続けるだけで必ずクリア出来てしまう受動的なADVばかりの中
先ほども書いた「能動的に解こうとしないとクリア不可能」な点はもっと評価されてもいいんじゃないかと思うんですよ。

ただ、ループものや自分で手探りに解いていくというキーワードに惹かれるものを感じなくて
それ以外の要素、恋愛シミュレーションやシナリオ面に期待しているのなら
最初から攻略サイトを見てやるつもりだという人同様にスルーした方が無難です。

プリズマは女の子キャラの比重が大きいという広義のギャルゲーには当てはまりますが
狭義の「女の子との恋愛を体験する」要素は限りなく薄いです。
主人公とヒロインたちは互いに恋愛対象として意識する段階には程遠い状態ですし
主人公に至っては、相手が真面目に話している中、内容には関心を払わず
どうして彼女の話が飛び飛びなのかを冷静に分析しているようなキャラです。
さらに、舞台となる期間は1日限り、ループ現象にも気づいていない。

こんな状況下で恋愛展開を期待する方が無理な話です。

シナリオにおいても、ループを繰り返すことで1周目2周目では気づかなかったヒロインたちの人間像が浮き彫りにされていきますが
劇的な出来事などは起こらず、娯楽性の低い内容になっています。
しいて挙げれば、あるキャラ同士に亀裂が生じるイベントがあるぐらい。
ただこれも、事態は自然に収束しますし、悲惨な結末を迎えたりはしません。
ループものというと、残酷な終わり方(一番分かりやすいのは死ですね)を迎えたことにより
次こそは違う運命を導いてやる…と決意する流れが定番ですけど、このプリズマにおいてはそういった分かりやすい図式はありません。
それにいくつかの謎に関しては、「解決編」などが存在しないため、最後の最後で謎が解ける快感が待ち受けているわけでもない。
言及されなかった謎は各自で解釈・補完するタイプなんです。

私にとって、このゲームのストーリーは
プレイヤーがループから抜け出すその過程自体にあると思っているぐらいだから、今の内容でも特別不満はないですけどね。
アクションゲームなどで、あそこの崖へジャンプするタイミングが掴めなくて30回もやり直して大変だった〜
…そういったものに近い。
あそこのシーンが胸に迫ったとか、そういった感想は特に出てこないんですよ。

だからこそ、ADVはシナリオがすべて。
このプリズマに対しても、プレイするならシナリオで評価を決めるという人はやらない方がいいと思うわけです。

背景が手抜きを通り越して「放棄」レベルなあたりは目を瞑れませんでしたし
(通常背景も問題ありだけど、それ以上にイベント絵と呼ばれるものが女の子だけしか書かれておらず
おまけから見直すと背景が空白の状態になっていたりする)
一部の項目名が分かりにくいのは残念でしたが
スキップが当時としてはかなりスピーディー、ボタン配置を好みで変えられる、
×ボタンでメッセージの一括表示可能、短いのにきちんと飛ばせるスタッフロールなど
システム周りは好感触でストレスなくプレイ出来ました。

特にボタン配置を変えられた点は、実際に使ってみると、考えていた以上によい機能だと思いました。
直前にプレイしていたゲームとボタン配置が異なっていたとき、新たな配置に慣れるのに少し時間がかかりますが
このゲームでは好きなように変更出来るため、その心配がありませんでした。
そして特定のボタンを長時間押し続けることによって生じる押し疲れやレスポンスの悪さを、定期的にボタン配置を変えることで防げる。
ヒント機能にも言えることですが、作り手はユーザー視点でゲームを作ることが出来る人だと好感が持てました。

難を言うと、スキップ時にグラフィックが表示されず、どのシーンを通過したか見落としやすいので
通過したシーンを確認出来るようにバックログが欲しかったこと、
使わないリセットボタンあたりに「内時性確認」をワンボタンで呼び出せる役割を与えて欲しかったです。
左上に表示されるオブジェで記録数は確認出来るんですけど、詳細までは分からないから
記録内容を知るためにいちいちメニュー画面を呼び出さなければならないのがちょっと面倒でした。

―総合評価―

凡作、良作、秀作、駄作…そのどれにも当てはまらず、“奇作”という言葉でしか表現出来ない問題作とも言えるこのゲーム。
個人的には独創性、新鮮さに欠ける無難な仕上がりの作品よりも
このプリズマのように洗練さに欠けても挑戦的・野心さを感じられる作品の方が好きです。
それに、この種の作り手のやりたいことが前面に出た作品で見られがちな
独りよがりさ、ユーザーないがしろな部分がプリズマではそれほど見られなかったですしね。
久しぶりにADVというジャンルで、ゲームでしか表現出来ない・ゲーム特有の面白さを体感出来ました。

ADVもシナリオさえよければいいってものじゃない、“ゲーム”のひとつであることを忘れないで欲しいものです。

2009年7月24日

当時の雑記に書いた感想(7月9日〜7月17日)


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