2005年5月の山城愛仙園訪問記

5月1日の午後、東京都在住の仙太郎は、関西に行くとよく立ち寄る山城愛仙園を今年も訪問しました。
仙太郎はずいぶんあちこちのサボテン専門業者を訪れましたが、中でも一番数訪れているのがこの山城愛仙園ではないかと思うのですが、とにかく大変古くからのお付き合いです。
最初の訪問は昭和34年6月、山城愛仙園が「サボテン日本第39号」に広告を初めて出した時で、当時大阪近辺にはサボテン業者があまり無く、柏原市の黒田芳明園か、芦屋の白仙園くらいしかなかったものですから、豊中市在住の仙太郎は直ぐ近くの尼崎市戸の内の運河の堤防沿いに出来たこのサボテン業者に喜んで出かけたものでした。半地下式の三角屋根の典型的なサボテン用温室が2本あり、武勲丸などの他ではあまり見られないギムノなど買ってきたものでした。(この武勲丸はその後、優型ギムノを守る会の山名さんが気に入られて持って行かれました)
その後、愛仙園は事業拡大のために阪急電車の逆瀬川近くの武庫川堤に引っ越しましたが、ここにも仙太郎は刺の太い海王丸(のちに愛仙園海王丸などと言われたもの)など、色々なギムノを求めて何回も訪問しました。
次に愛仙園は阪急園田駅の近くに引っ越しました。ここでは建物の屋上にたくさんの温室を並べていましたが、ここは今でもご自宅になっているようです。
更に愛仙園は事業を拡大し、今の豊中市にも栽培場を増設しました。
その間、おそらく仙太郎が愛仙園を訪れた回数は30回ではきかないような気がしますが、その間に園主の山城さんも頬のこけた少し頼りない若者から、今ではすっかりお腹の出た恰幅の良いおじさんになりました。
品種が揃っていることではぴか一の専門業者で、今でも仙太郎は趣味の会での競りを除けば、ギムノの珍しい品種は殆どここで手に入れています。特に古い趣集家がコレクションを処分するようなときは山城愛仙園に託すことが多いようで、昔の珍奇種が手に入るチャンスはこの園が一番のような気がします。
ここで売っている培養土の出来も最近のものはかなり優秀で(かつては正直言って大したものではなかった)、へたに自分で調合した培養土よりもサボテンのご機嫌がよいので、少々高いのが玉にきずなのですが、今では殆どここの培養土を使っています。(村主さんのお薦めで、中大球でも「中小球実生苗用」と言うのを使います)


写真1.
栽培場の金鯱
豊中の栽培場は大きな温室が大小合わせて7本ほどあって、園田と同じく全て事務所建物の屋上にあります。
今ではサボテン人口も減り、価格も相対的に下がって窃盗に合うことも少なくなったようですが(昭和のサボテンブームの時は盗難事件が非常に多かった)、愛仙園には高価な植物が多いですからセキュリティの上でもこの方法は安全ですし、周りに建物が出来てしまった時の日当たりのことなどを考えるとコストはかかりますが良い方法ではないかと思います。
大きな金鯱がずらりと並べられている専門業者は今ではそう多くないと思うのですが、山城愛仙園が大きな業者であることを証明する光景と言えるかも知れません。


写真2.
展示室内の黒王丸
3階の事務所に上がると(2階は植木鉢などの栽培用品の販売所になっている)、事務所内の広い広間にずらりとサボテンが迎えてくれます。期間を限定した特集物などが展示されている展示広間があるのです。
今回はそこに黒王丸の巨大群生株が鎮座していました。日本国内での生長期間が長いことが知れる状態が見て取れる通り、まだCITESが締結されていない古い時代の原産地球ですが、こんなのがあるところが尋常な専門業者ではない証拠と言えるかも知れません。
最近はサボテン趣集の対象が限定される傾向にあり、昭和の頃に比べると品種数が少なくなりましたが、それでもここの品種の多さは折り紙付きで、ここで見つからないサボテンは他でもなかなか見つかりません。


写真3.
刺物販売の温室。
信州の趣収家の所へ行かないとなかなか見られない標本球クラスの刺物がずらりと並んでいます。
仙太郎は本当は刺物も好きなのですが、大きくなるのでフレーム栽培では厳しいのです。
これまではせめて大きくなりにくい金冠竜など置いていましたが、これも結局はかなり大きくなるので、最近とうとう置けなくなりました。
温室があったら欲しいサボテン群です。


写真4.
太平丸の標本球群
最近、アリゾナ州の道路拡張工事に関連してCITESが発行され、輸入されて来た太平丸を中心にかなりの数が置いてありましたが、なかなかの面構えの球が揃っています。
それにしても太平丸も高くなりました。昔は10センチ球クラスだったら千円しなかったものですが、今では当時の10倍以上の値段です。輸入コストがかかるのだから仕方ないのかも知れませんが、本当に買いにくくなりました。


写真5.
ロフォフォラの標本球群
これも本格的な趣収家の温室顔負けの大きな標本球が揃っていました。
水やりも結構控えているらしく、徒長した部分も見られない良い姿の球が揃っています。


写真6.
牡丹類の標本球群
他のサボテン業者と比較しても、山城愛仙園の牡丹類の品揃えは多いように思います。
牡丹類は今では圧倒的に国内実生による球が多いのですが、ここの牡丹類はCITES前の古い輸入原産地球が大変に多いという特徴があります。品種改良が進んだ国内球の姿ではなく、個性の入り交じった原産地球の姿をここでは目の当たりにすることが出来ます。今では貴重な輸入球も並べてみたいと思う人は是非ここを訪問すると良いでしょう。


写真7.
ギムノの標本球群
最近ではあまりその姿を見かけなくなったギムノの標本球群をここでは今でも見ることが出来ます。殆どは古い趣収家の元から引き取ってきた球のようですが、仙太郎もここで京大古曽部園芸場の五大州や昔のラゴネシー、伊丹さんの紅蛇丸のカキ仔その他、色々な懐かしいギムノに出会って手に入れたものでした。
この日も昭和30年代に輸入された原産地球の五大州のカキ仔や、懐かしい思い出のあるビカラーの標本球など、色々な古いギムノを手に入れることが出来ました。今では数少ない、貴重なギムノ宝庫です。


写真8.
緋牡丹錦の群像
さほど良い斑ではない緋牡丹錦のパレットが棚の下にどっさり並べてありました。
こうしてみると並斑の緋牡丹錦も、群像化するとなかなか美しいものです。


写真9.
一般的な品種のコーナー
山城愛仙園というと高級品のイメージを持つ人が多いようですが、一般的な品種もしっかり、それもかなりの種類が置いてあるのです。一鉢千円もしないサボテン群たちですが、この日もこれらの一般種と、温室の外の棚にずらりと並んでいる一般種の多肉植物類を買い求めている女性のグループが来ていました。お家の出窓で少量を育てているのだと言っておられました。
ホームセンターと違ってしっかり管理されていますからひからびていたり、根ジラミや綿虫が付いているようなこともありませんから、一般的な品種を買い求める際でも仙太郎は必ずこのような業者で買います。
この日も私の親父(実はこの撮影の日の3日後に急逝しました)が住む老人ホームのお友達に頼まれたサボテンを7品種ほど買い求めて帰りましたが、やはり一般種は日頃買い求めている種類に比べて圧倒的に懐に優しいですねv(^-^;)


写真10.
接ぎ木苗のコーナー
斑物や高級品種の一部は接ぎ木苗で売られています。
昔はフレーム栽培が多かったですから、接ぎ木苗でもフレームに入る寸法で接がれていたものでした。
でも今は温室栽培が全盛の時代、接ぎ木苗も遠慮なく高く接いであります。
要するにフレーム栽培者には買って帰ってから台木を途中でちょん切るのでなければ指をくわえて見ているしかなく、手の出ないコーナーなのですねf(^-^;)


写真11.
多肉植物類のコーナー
多肉植物の品揃えも大変多く、パキポディウムなどの標本球は温室内に、その他の一般的な多肉植物類は外の棚にずらりと並んでいます。
多肉植物を買っている人達はサボテン大家のおじさん達とは違う人達が多いようで、この日もこのコーナーにいたのはホームセンターなどでも見かける若い2人連れの女性のグループでした。大小合わせて5鉢ほど、合計金額でも2千円ほどの買い物をしておられました。