2003年1月の山川さん訪問記


鸞鳳玉の背が低いタイプにmyriostigma var. strongilogonum と言うものがありますが、この品種の改良種にあたると思われる、山川ストロンギで有名な山川さんの温室を訪問しました。
今では珍しい木製の半地下式の本格的なサボテン専用温室で、その為に今回始めての訪問でしたが、農業用トンネル温室が立ち並ぶ中、遠目からも一目でお家の場所が分かりました。
山川ストロンギがあまりに有名なので、山川さんの温室は鸞鳳玉ばかりではないかと思っている方も多いかも知れませんが、そんなことは全くありません。
趣集は非常に巾広く、おまけに仙太郎の趣向とも大変良く合っていました。
パキポディウムのブレビカウレやディスコカクタスのトリコルニス、或いはコリファンタの鳳華丸やギムノの天平丸などの話に大いに花が咲きました。
やたらに寒い日が多い今年の冬としては珍しく、たまたま小春日和の暖かい日で、外のテーブルに腰掛けてお話をしていると、山川さんのお母様がお茶菓子やミカンなど運んで来て下さって、暖かい家庭の雰囲気まで一緒に味わせていただきました。


写真1.
サボテン専用温室の外観
2つあるうちの南側の温室は昔はよく見られたサボテン専用温室で、ご覧のようにサボテンは地面の高さに置かれています。
通路は腰の深さまで掘り下げてあって、従ってサボテンの上の空間が少なく、サボテンが天蓋に近い設計になっているのです。
このために湿度を保ちやすく、サボテンが美しく育ちます。
昔のサボテン温室は殆どこの作り方でしたが、今は手軽さが受けるのか、その殆どがビニールトンネル式の温室になってしまいました。
仙太郎にとって、この三角屋根の背の低いサボテン温室はとにかく懐かしいのです。


写真2.
収集の範囲が広いことを如実に伺わせる群像−1
ご覧のように色々な種類のサボテンが一緒に同居していて、戸澤さんの温室にも似て雑居の様相を呈していますが、とにかく見ていて飽きない景色ですね。
タイプが良く選ばれており、更にはごく一般的な普及種も大切に栽培されています。


写真3.
温室の群像−2
ディスコカクタスや盤石、精巧丸、象牙丸系などはかなりの数がありました。
盤石以外は仙太郎も大好きなサボテンたちなの、これらは時間をかけて見学させていただきました。


写真4.
有星類の群像
山川さんの名を世間に知らしめている有名かつ代表的な景色ですね。
手前から奧へ恩塚盤石、恩塚ストロンギ、山川ストロンギと続きます。
奧に見えているストロンギの大株は直径が25センチに近い巨大なものですが、そんなぶっとい鸞鳳玉は原産地球の老球でも見たことがありませんから、まさに品種改良の賜物と言えるでしょう。


写真5.
将来を託された実生苗群
大株だけでなく、何世代にも渡って色々な大きさの予備軍がずらりと勢揃いしていました。
将来はこの中から更に優れた素晴らしい標本球が誕生するに違いありません。


写真6.
鸞鳳玉類だけではありません、兜だってこれこの通り、非常に優れたタイプのものが揃えられています。
扁平なタイプがお好みなのか、背の低い株が大変多い印象を受けました。
それと羨ましいことですが、ここの標本球はその多くが本物の楽焼き鉢に植えられていました。
楽焼き鉢はなかなか見つけられませんし、更には大変高価なのでそう簡単に揃えられるものではないのです。


写真7.
ディスコカクタス・ギガンテア?の群像
ギガンテアと呼ばれるディスコカクタスは今ではかなりあちらこちらで見られるのですが、かつて入った原産地球を基準に考えるならば、刺の姿はトリコルニス、大きさはギガンテアと言ったところで、この両者を交配して作出した園芸改良種なのかも知れません。
手前左の大きなギガンテアは仙太郎がこれまでに見たディスコの中でも最高の姿のものです。
下に向かう刺がきれいに稜線に沿って一列に並び、実に端正で味わいのある姿なのですが、かつてシャボテン社に入ったトリコルニスの原産地球の中にこれに似た姿のものがあって良いなあと思っていたのですが、ここで久々にその姿に出会って嬉しくてしばらく見とれていました。
山川さんもこの標本球群の中では最も気に入っておられるようで、同じ姿の二世三世を一生懸命再生しようとなさっておられて将来が大いに楽しみです。


写真8.
白瑞鳳玉
瑞鳳玉は仙太郎が好きな有星類の一つなのですが、中でもこの白瑞鳳玉は特に好きです。
これ以外にも標本球となる大球を含め、白瑞鳳玉が何本かありました。
白鸞鳳玉同様にその濃密な白さが美しく、何故これが人機種にならなかったのだろうと不思議な気がします。
導入数があまりに少なかったために知られていないのかも知れませんが、出来ればこれから普及させて行ってほしい優型種ではないかと思います。


写真9.
コリファンタの天司丸だと思うのですが、実はこれは山堀の原産地球で、山川さんも品種名が良く分からないとの事でした。
浅めの肌色、濃い飴色の刺、多過ぎない適度な量の綿毛など、実に風格のある姿ですが、象牙丸系であるにも関わらず、これまで全く仔を吹いてくれない不思議な球なのだそうです。
わが家にある天司丸も確か山川さんから来た球でしたが、象牙丸類も実に姿形の整った良いタイプが揃っていました。


写真10.
実生苗もバラエティに富んでいて、色々な品種があります。
実生は各種、非常に沢山やっておられて、そのどれもが見事に美しく育っているのには本当に感心します。
真にサボテンを楽しんでおられる様子が手に取るように分かる、とにかく楽しい温室見学でした。