白仙園
これも昭和40年代のお話です。
神戸の芦屋市の阪神電車の線路沿いに白仙園というサボテン専門業者がありました。
夫婦二人だけで5本ばかりの温室で商いをやっておられました。
戦前から残っている古いタイプの標本球が色々置いてありました。
当時住んでいた東灘区から近かったので自転車で簡単に行けましたから、、仙太郎はここにしょっちゅうお邪魔してサボテンあさりをやっていたものです。
今、我が家に残っているサボテンはここの出身が多いのです。
栽培品には有星類とギムノ、強刺類などが特に多かったですが、時々神戸港に寄港する船員さんが持ち込む南米産の珍しいサボテンを見に行くのも楽しみでした。
最近、久しぶりに阪神電車に乗った際に芦屋駅から東に向かう電車の北側の線路際を目を凝らして見ていましたが、ビルや住宅がぎっしり建ち並んでいるばかりで、あの懐かしい温室群は見つかりませんでした。
白仙園のその後の消息を知りたいものです。
写真 1
有星類のコーナーです。
ここは自分で実生して大きく育てて売っているサボテンが比較的少なく、その多くは昔から置いてある標本球か、他から引いてきたサボテンを売っていました。
ですから温室の風景も、実生苗がいっぱい並んでいる他の業者とはちょっと違っていたんですね。
沢山の標本球が見られるのと、自分で育てなくても標本球が手軽に手に入るというのが結構気に入っていました。
写真2
有星類コーナーで、より小さめの標本球(と言っても15センチ級以上ですが)を売っているコーナーです。
今の有星類は兜と大鳳玉と鸞鳳玉ばかりが目立ちますが、このころは色々な瑞鳳玉類や般若類なども含め、品種がバラエティに富んでいました。
このコーナーも原産地球が多かったです。
真ん中の竜神木みたいに見える柱は伸びすぎた鸞鳳閣ですが、こんなになるんですね。
写真3
原産地球のエリオシケの巨大球です。径50cmくらいあったと思います。
刺の先まで飴色でしたから、おそらく当時、唖吽玉(あうんぎょく)として分類されていた品種でしょう。
ここ神戸には南米航路の船員さんがサボテンを持ち込むことが多く、種類としてはエリオシケとメロカクタスが多かったですね。
戦後久々に入ったという、20センチを越えるメロカクタスの彩雲や赫雲の真っ赤な太刺の放列に感嘆したのもこのころでした。
恐らくこれらの種類は南米の寄港先の港から近い場所で採取出来たんでしょう。
当時でもこれらのメロの原産地球は珍しかったようで、遠く関東からわざわざ車で買いに来たという人もいましたが、これらのメロは寒さに非常に弱かったようで、その後数年の内に、引き取られて行った先の趣味家の元で全て消滅して行ったと聞きます。
左隅に見えるのは、発根管理中の弁慶柱の原産地球です。
唖吽玉の上の方に角鉢がいくつか見えますが、その一番左の角鉢に植わっているのが今や幻となってしまったギムノカリキウム属の鉄冠(快竜丸A)なんです。このころはまだ8本ほどあって、黒蝶玉の名で売られていました。仙太郎も1本買って持っていました。
写真4
小さい原産地球の鳥羽玉が置いてあるコーナーです。
実はこの中に「我が家のサボテン達」の
04.にある鳥羽玉の若い頃の姿が写っているんですが、どれだか分かるかなあv(^-^)
値段は忘れたけど千円くらいだったんじゃないかと思います。内地球ならば数百円で買えましたから、やはり輸入球ともなると当時でも少し高かった。
今改めてこの写真と比べると、いつの間にか大きくなったんだなあと思います。
写真5
比較的大きな球が置いてあるコーナーですが、原産地球が結構多いコーナーでもありました。左隅の中段にある大きな新天地は仙太郎が小遣いを叩いて買って来ましたが、単身寮時代に失ってしまいました。刺が黒くて美しい新天地でしたが、惜しいことをしました。
金晃丸や福禄寿など、一般的な品種も多かったですね。
写真6
柱サボテンが多いコーナー。やはり下に並んでいる新天地などによい姿の標本球がありました。
栽培があまり上手ではなく、形の崩れている球が多かったので、なかなか良い物は見つからなかったのですがね(^-^;ゞ
写真7
白竜丸、玉翁、大冠竜、オプンチアなど、ここも一般的な品種が多いですね。
写真8
比較的小さい苗が並んでいるコーナー。
温室が大きいので北の壁際の苗は上下三段になっており、一番上の苗は下の段の隅に足を載せてよじ登って、あごを突き出して覗くという、結構危険な技でのぞき込むのでした。
・・と、そこに形の良い鳳頭のカキ仔などがちょこんと置いてあったりするわけで、とにかく宝探しが楽しい温室でした。
写真9
こちらは普通サイズの中型温室の方です。真ん中の家を挟んで東側に大温室が2本と、家の西側には主に繁殖を目的にした普通サイズの温室が3本並んでいました。
仙太郎が蛇竜丸や稚竜玉の苗を見つけてきたのは主にこちらの繁殖用温室の方なのです。
大温室の親から取れたカキ仔はその多くがこちらの小温室の方に置かれていたと言う訳なのですが、鉢の隅などにちょこんと置かれているので、それを宝探しのように探し回るのがまた楽しみだったのです。