イギリスの政治経済

地方選挙で保守党と自由民主党が大敗し、労働党が大躍進(2012-5-6

5月3日にイギリスで地方選挙が行われた。その結果は大方の予想をはるかに超える保守党と自由民主党の惨敗であった。

下の図表はガーディアン紙が作成したものである。Councilsとあるのは市長などの地方公共団体の首長である。労働党は32増加し、75となった。保守党は12減って42となった。自由民主党は1減って6となった。

Councillorsは地方議会の議員である。労働党は823議席増やし、2,158と急増した。保守党は405減らし、1,005となった。自由民主党は336減らし、431となった。


このような極端な結果が出たのはイギリスが1971年以来の不況に陥ったが為であり、失業者が10%近くにもなっていることが影響していることが背景にある。しかし、もっと国民が保守党政権に感じている不満はキャメロン首相が「金持ち減税」を行う一方で「歳出削減」を強行し、多くの教員や公務員が解雇されあっためである。

キャメロンはイギリスが格付けのトリプルAを維持するためにはこれは絶対に必要であると主張する。さもないとフランスのように格下げをされるということである。

しかし、一般国民には格付けがどうなろうと関係ない。日常の生活が圧迫されているのに「金持ち」がなぜ減税の恩恵に浴するのかといことである。キャメロンは課税最低限度額を引き上げたのだから「貧困層」も減税の恩恵に浴しているというのである。このキャメロンの考え方は米国の共和党と同じである。

財政赤字を減らしたいのならば、金持ちからもっと税金を取るべきである。それを財政削減のシワ寄せを公務員の削減といった形で国民に押し付けるとは何事だという反発は国民の各層から起こって当然である。保守党の国会議員のなかからも公然とキャメロン首相の責任を追及する声が上がっている。

また、連立政権のパートナーである自由民主党は保守党と組んでいたら次の国会議員選挙で壊滅的打撃を受けることは必至であるという声が出てきている。

逆に労働党にとっては政権奪還の絶好のチャンスが到来したことになる。エド・ミリバン(Ed Millibandは若くてハンサムであり、目下イギリスでは人気急上昇中である。しかし、今回の労働党の勝利は必ずしも「労働党の政策」に国民の多くが賛成したというより、キャメロン首相とオズボーン蔵相への反発といった面のほうが強い。(続く)