シンガポールの話題(03年7月10日開設)


17.テマセクのホー社長がCEOを辞任(09年2月6日)
 
16.シンガポールの2009年はマイナス成長(09年1月4日)

15.シンガポール高裁ウオール・ストリート・ジャーナルに罰金刑(08年11月26日)

14.シンガポール9月の輸出マイナス、米国向け不振(07年10月18日)

13.テマセク、シン・コーポレーションのせいで初めての減益(07年8月3日)

12. シンガポールの閣僚は超高級取り、首相の月給2千万円(07年4月10日)

  ⇒首相の大幅昇給は実質5年間凍結宣言(07年4月13日)

11.シンガポールの06年の成長率は7.9%、実感なき高成長(07年2月16日)

10.シンガポール、07年2月から消費税を5⇒7%にアップ(06年11月14日)

9. EUがシンガポールと香港に対して課税協力を要請(06年3月11日)

5-5. シンガポールの05年4Qの成長率は8.7%、通年で6.4%(06年2月18日)

5-4. 05年2Qの成長率は5.2%に持ち直す(05年8月11日)

5-3. 5月の輸出は3年ぶりにマイナスに(05年6月21日)

8. ヘッジ・ファンドが巨額損失(05年5月5日)

5-2.. エレクトロニクス産業の不振目立つ(05年4月23日)

6. 公認のカジノ開設に踏み切る(05年4月18日)

5-1.05年1Qの成長率は年率2.4%に低下の見込み(05年4月11日)

 

1. 03年2QのGDPはマイナス4.3%(03年7月10日)

シンガポールの今年の第2四半期のGDP成長率は前年同期比で−4.3%という激しい落ち込みを記録した。落ち込みの原因はSARS騒動による観光客の減少やイラク戦争の影響によるものといわれているが、輸出減が響いているものと考えられる。

通貨当局(MAS)は従来、高めに維持してきたシンガポール・ドルを安めに誘導いたほうが良いという考え方に転換しつつあるといわれる。

通商産業省は今年下期には米国経済の回復につれてシンガポールも回復に向かうという楽観論を述べているが、根拠ははっきりしない。観光客の増加や、航空業界の回復は間違いないが、電子機器などの輸出回復は不透明である。

それよりも、シンガポール経済全体の構造的な弱体化が問題である。

下の表をみると、製造業の伸び率の振幅が激しいが02年2Qからかなり回復している。建設はここ数年、一貫して不振である。金融関係も意外に悪い。国際金融センターとしての衰えが見られる。

表1.シンガポールの実質GDP伸び率(対前年比、%)

1999 2000 2001 2002 2003 02/1Q 02/2Q 02/3Q 02/4Q 03/1Q 03/2Q 03/3Q 03/4Q
GDP・実質 6.4 9.4 -2.4 2.2 1.1 -1.5 3.8 3.8 3.0 1.7 -3.9 1.7 4.9
製造業 13.0 15.1 -11.5 7.8 2.8 -4.7 13.5 15.5 9.9 6.2 -6.3 3.3 8.9
建設業 -9.0 -10.7 -3.2 -10.8 -10.7 -8.8 -11.1 -11.5 -11.9 -14.9 -10.2 -9.6 -8.1
電気・水道 3.3 10.9 1.7 3.8 1.8 2.6 3.0 4.7 6.9 4.9 2.0 1.0 -0.1
商業 6.5 22.3 -3.3 2.7 6.7 -4.3 4.6 4.9 5.9 5.5 0.5 8.4 12.0
運輸・通信 7.0 15.2 2.6 4.9 -2.0 5.1 5.8 5.3 4.0 1.1 -10.5 -1.7 3.4
金融 5.2 7.5 3.7 -6.3 3.7 -0.2 -8.2 -5.5 -4.9 -4.3 6.0 5.8 7.5
ビジネス・サービス 2.9 9.5 3.1 1.2 -1.8 0.5 1.1 -0.4 0.4 -1.0 -3.3 -1.7 -1.1

資料:月刊「海外経済データ」およびhttp://www.singstat.gov.sgより作成

 

(03年8月9日) 今年の成長率は0〜1%

ゴー・チョク・トン首相は8月9日の独立記念日に際し、今年の経済成長率は0〜1%程度になるだろうと、従来の0.5〜2.5%いう数字を下方修正した。かなり悲観的な見通しを述べたといえよう。

米国とのFTAも締結できたし、外国資本の投資も、製造業だけで75億ドル・シンガポール・ドル(約5,200億円)も見込めるし、いいとこだらけの筈ではないかといいたいところだが、どうもそう簡単には問屋が卸さないらしい。

(03年12月7日)03年3Qの成長率は+1.7%

シンガポール経済は3Q(上の表1参照)にはいってから輸出に回復の兆しがみられ、実質GDP(前年同Q比)+1.7%となった。輸出の伸び+5.7%に引っ張られ製造業も+3.3%となった。しかし、建設の不振は相変わらずで-9.1%である。

引き続いて10月の数字も良かったようで、製造業は前年同月比+19.3%と大きく伸びたとのことである。伸びた品目はバイオメディカルとエレクトロニクス関連だということである。

バイオメディカルとは主に薬品を指し、前年同月比+151%の伸びだということである。

エレクトロニクス関連ではコンピュータ周辺機器はマイナス11.4%と落ち込んだが、半導体が30.8%と大きく伸びた。1〜10月の累計でエレクトロニクス関連の伸び率は3.4%であった。半導体は中国向け輸出によるものと思われる。

⇒2003年の成長率は1.1%、03/4Qは+4.9%で回復の兆し(04年2月27日)

シンガポールの2003年の実質経済成長率は1.1%の伸びにとどまった。周辺諸国では最低の伸び率である。ただし、03年4Qの数字はやや持ち直し、4.9%の伸びを記録した(表1参照)。

2003年では輸出が9.5%伸びたものの、内需が-0.5%と全く振るわなかったということである。(表は未作成)

03年4Qは商業12.0%、製造業8.9%、金融サービス7.5%という比較的高い伸び率なので、かなり好況感は出てきているものと思われる。一向にさえないのは建設業で-8.1%と最近数年間は連続してマイナス成長である。

建設がダメなのは新しいビルやマンションを作っても買い手がつかないからである。過去における主な買い手はインドネシア華人であった。彼らは97・98年のインドネシアの通貨・経済危機以来すっかり購買力が低下してしまった。

製造業がやや持ち直してきたのは、中国向けに半導体や化学品などが売れ始めたことによるものである。

 

2. 04年の経済(04年7月13日)

2−1. 2Qの成長率は11.7%(04年7月13日)

シンガポール経済は最近数年間はさっぱり市内状態が続いていたが、さすがに「中国特需」の影響もあって、やや明るさが見えてきたが04年2Q(4−6月)の政府の暫定見通しでは実に11.7%という8年ぶりの驚異的数字になるという。

貿易産業省は世界一の成長率だといって鼻高々である。しかし、一般のシンガポール国民はこういう数字を聞かされても、「ああそうですか」といった感じでいるようで、浮かれまくるような人間は少ないようだ。

まず第1の要因は昨年の2Qは例のSars騒動で-3.9%成長にとどまったことの反動であろう。 第2の要因は輸出の増加である。中国向けに加え、米国向けや日本向けの増加が貢献していると見られる。その分製造業が前年同期比+18.0%伸びた。

国内では消費は回復傾向にあるものの建設は依然マイナスである。

表2-1 シンガポール経済の実質成長率(1995年価格、対前年同期比、%)

   03年2Q  03年3Q  03年4Q  2003年  04年1Q  04年2Q  04年3Q
実質GDP -3.9 1.7 4.9 1.1 7.4 12.5 7.7
製造業 -6.3 3.3 8.9 2.8 10.9 20.6 12.5
建設業 -10.2 -9.6 -8.1 -10.7 2.0 -5.9 -9.9
サービス部門 -3.0 1.7 4.3 1.0 6.0 11.5 7.2

しかし、下半期には成長率は年率4-6%にスロー・ダウンするという見方が多い。

肝心の製造業は人件費が高いこともあって東南アジアや中国に移転する動きは依然続いている。

 

2-2. 3Qの成長率はマイナス2.3%(04年10月11日)注→赤の数字を10月11日版から修正しています。

シンガポールの経済は04年2Qは前年2QがSARSの影響を受けて-3.9%だった反動から12.5%の成長を遂げ、リー・シェン・ロン新首相の就任を華々しく飾った形となったが、3Qは04年2Q比-2.3%と早くも落ち込んでしまった。(表2−1参照)

落ちこみの原因は製造業 の伸び率が2Qの+20.6%から+12.5とかなり鈍化したためと、原油価格の高騰があげられている。また、建設部門は-9.9%と相変わらず経済の足をひっぱている。

しかし、4Qは多少良くなるので04年通年では8-9%の高い成長率となるとMAS(Monetary Authority of Singapore=中央銀行)では見ている。

ただし、05年は3-5%の安定成長になるであろうとのことである。

いずれにせよ、シンガポールの製造業も中国向け輸出に大きく左右されていることは事実であり、しかもシンガポールの製造業は人件費の高騰から次第に衰退しつつあることは最近数年の傾向を見ても明らかである。

ハイテク産業が生き残りのカギであるが、周辺諸国(マレーシア、タイ)も同様な動きを見せており、今後の経済運営はいっそう難しくなってきている。日本や米国とFTAを結んでもそれが経済効果になって容易には表れない。

インドネシアにスシロ政権が誕生するのでインドネシア華人資本が再び域を吹き返す可能性があり、それがシンガポールにとって明るい材料でる。

スハルト政権時代はインドネシアの華人資本家はシンガポールの不動産をせっせと買ってくれたり、資金を運んできてくれた。

(04年10月13日追記)

シンガポール経済の問題点は国内の投資機会が徐々に減りつつあるということである。

よく投資環境の国際比較でシンガポールや香港が世界のトップ・クラスにあるといわれているが、実際はシンガポールで何の事業をやるかというと適当なものは案外見当たらない。

それを反映してか、国営の投資会社テマセク(Temasek)はしきりに海外投資のチャンスを狙っている。最近ではインドネシアと韓国がターゲット担っている。

現在テマセクはシンガポールの国内に52%の資産を持っているが、将来は国内、アジア地域、OECD(先進国グループ)の3ブロックに分けておのおの3分の1ずつに投資資産を分けるといっている。投資対象は銀行、通信が多い。

日本はタマセクのような投資会社は存在はするが少ない。また、投資先の経営に積極的に関与するということも余りない。特に銀行はそういう傾向が強い。

日本の銀行員で投資先の経営にタッチしているというケースは東南アジアの製造業などではほとんど見かけない。その点総合商社の方が積極的にやっているし、人材も育てている。

テマセク以外の企業も中国への投資が盛んである。特に多いのが工業団地開発などの不動産投資である。また、シンガポールの銀行はタイの銀行に投資をしている。

 

3. 8月12日に予定通りリー・シェン・ロン首相誕生(04年7月18日)

シンガポールのゴー・チョク・トン首相(63歳)はかねてから、リー・クワン・ユー前代首相の長男で現在副首相を務めるリー・シェン・ロン(李顕龍=52歳)氏に8月12日そのポストを譲ることを表明した。

シンガポールではリー・シェン・ロンが3代目の首相に就任することはゴー・チョク・トンが首相に就任した1990年当時から、既定路線と考えられており、かなり白けた感じで受け止められている。

リー・シェン・ロンは父親譲りの権威主義的な人物とみられており、何か新機軸が打ち出される可能性はすくない。政治的自由、言論の自由などというものはシンガポーリアンには望むべくもない。

日本人の駐在員も「いさせてもらう」という地位は一向に変わらず、政治の話は一切タブーの状態が続くであろう。

日本人の観光客もシンガポールで買い物する人がだいぶ減ったようで、オーチャード・ロード(有名ブランド点や高島屋、伊勢丹などが軒を連ねる)の日本人観光客の買い物は3億2千万シンガポール・ドルで10年前に比べ半減したといわれている。

確かに、シンガポールは高層ビルは増えたが、日本人の目から見ると、東京と大差なく、なんとなく息苦しさを感じてしまうのではないであろうか?

Economist誌は私よりもはるかに大胆で、「李王朝ーLee Dynasty」という表現を使っている。全くその通りという感じで、多くのシンガポール人が白けているのも頷け る。

リー・シェン・ロンは軍人出身でなんと32歳の若さで准将に昇進してしまった。取り立てて戦功があったという話は聞いていない。要するにシンガポール版「将軍様」といったところであろう。

彼の奥さんのホー・チン女史は国営投資会社「Temasek」の社長であり、弟はこれまた国営通信会社「Sing Tel」の社長である。シンガポールという国は一体どうなっているのであろうか?

シンガポールで一番有能な人物がリー・ファミリーというわけでもあるまい。こういうのを「家産国家」とでも言うのであろうか?最高権力者にとっては国家とは相続可能な私有財産なのであろうか?

いやシンガポールだけではなくマレーシアも最近やけにシンガポールに似てきた。歴代首相の親類・子孫のだれそれがUMNO(統一マレー組織=与党)の幹部になるとかならないとか言う話である。

そういえば、最近シンガポールとマレーシアのヨリが戻ってきたという話である。「いいじゃないか幸せならば」といったところか?

反対党員を牢屋にぶち込んだり、財産を没収したり、国民の言論の自由を奪ったりしてきたのは「李王朝」を築くためであったとしたら、何ともやりきれない話である。スタンフォード・ラッフルズも草葉の陰でさぞ嘆いていることで あろう。

この先、何十年もこんな政治体制が続くのであろうか?シンガポール人はそれでもしょうがないと思っているのであろうか?

(Temasekについてはロンドン・エコノミスト誌=04年8月12日号が特集しているのでご参考までに。下表はTemasekの所有状況である。表題のHo ho hoは言うまでもなくホー・チン女史への皮肉である。Temasekはこれ以外にもいろいろ投資を行っているはずである。後日より詳細に調べてみたい。)

 

4. テマセク30年間ではじめて資産・業績公開(04年10月13日)

国営持ち株会社テマセク(Temasek)は上に述べたとおり華々しい活躍を行っている。しかし、テマセクの業績や資産内容は1974年の設立以来、非公開であったため謎に包まれていた。

ところが10月12日同社は過去10年にさかのぼり業績内容を公開した。それによると総資産は1,810億シンガポール・ドル(以下SDと略すであり、日本円換算では約1兆1,870億円である。現金は93.2億SD保有している。

資産後悔の目的は外圧のほかに近々社債を出すための準備のためであると考えられている。

主な持ち株会社は上の表に見るとおりである。ただし、上の表からはインドネシアのIndosatなどが落ちている。

2004年3月末までの1年間の純利益は74億SD(約4,825億円)であった。これはBelgacom(ベルギーのテレコム会社)などの資産売却益を含んだ数字である。2003年3月末の利益は2億4,100万SDであった。

しかし、過去10年間の利益はさほど大きなものではなく株主利益率は年率3%であったという。2年前にホー・チン女史(リー・シェン・ロン首相夫人)が社長に就任してからテマセクの業績は急速に向上しているということのようである。

テマセクは過去2年間に33億SDを35カ国に投資した。主な投資先はオーストラリアとアジア諸国である。最近はインドのICIC銀行や韓国のハナ銀行、テレコム・マレーシアなどである。

 

5. 05年のシンガポール経済

5-1.05年1Qの成長率は年率2.4%に低下の見込み(05年4月11日)

シンガポール経済は2004年はたまたま中国向けの電子部品やコンピューター部品や化学製品などの輸出急増という幸運に恵まれ(マレーシアやタイも同じ)実質経済成長率は8.4%という異常な高さを記録した。

しかし、人件費が高く、部品製造業という面では限界供給者の地位に陥ってしまっているシンガポールは輸出停滞の影響が東南アジアでは真っ先に訪れ、05年1Qの成長率は年率2.4%(実績見込み)にまでスロー・ダウンした。

特に製造業の鈍化が著しく、04年4Qでは14.1%もの高成長だったが、05年1Qには3.0%にまでに下がっている。シンガポール政府はバイオ・メディカル部門の落ちが大きいといっているが、電子・コンピューター部品部門の鈍化が実際は大き く影響しているものと思われる。

建設部門は長期的な不況が続いている。シンガポールはかつてはインドネシア華僑が資産逃避のためにシンガポールで不動産を買っていたが、97・98年の通貨・経済危機以降そういう動きがほとんどなくなってしまったのが大きい。

周辺諸国の人々も物価高や政治的な自由のないシンガポールに移住しようという人もそれほど多くない。 言論の自由が極度に制限されており、外国人でっても、うっかり政府の悪口など言おうものなら48時間以内に国外退去を命じられらりしかねない。

シンガポールから退出する企業は後を絶たず、ハード・ディスク・ドライブ・メーカーのマクスター(Maxtor)社は3月に5,000人の解雇を発表した。Maxtorは高級品の製造はシンガポールに残すが一般品の製造については中国に工場を移転する計画である。

それは同時に半導体チップの市場が中国に移ってしまうことも意味している。

表5-1.シンガポール経済の実質成長率(1995年価格、対前年同期比、%)

   2003年  04年1Q  04年2Q  04年3Q  04年4Q 2004年  05年1Q
実質GDP 1.1 79 12.3 7.2 7.7 8.4 2.4
製造業 2.8 102 20.1 12.5 11.2 13.9 3.0
建設業 -10.7 1.0 -6.4 -9.9 -11.4 -6.5 -6.5
サービス部門 1.0 7.2 11.4 7.2 6.9 7.5 3.5

 

5-2. エレクトロニクス産業の不振目立つ(05年4月23日)

FT (Internet版4月23日付け)によればシンガポールのエレクトロ産業の不振が05年1Qに早くも目立ってきた。シンガポールの国有の半導体チップ・メーカーであるチャータード・セミコンダクター(Chartered Semiconductor)は05年1−3月期の業績が赤字になった。

また、家電ケーカーのクリエイティブ・テクノロジー(Creative Technology)社は収益が72%悪化したということである。

CS社は1Qの損失が8,450万米ドルに達した。その上赤字はしばらく続きそうだということである。CS社は台湾のTSMC社などに比べ技術的な劣位にあり、ユーザーが小規模なためコストも割高になっていると見られている。

また、同社の得意分野は通信機器用のチップであり、その部分が1Qは売り上げが21%も落ちたといわれている。05年7月には新しいウェファー工場の新規稼動もあり、当分は厳しい採算状況が強いられる。

また、クリエイティブ社はディジタル・ミュージック・プレイヤーに注力してきたが、競争相手のApple社の安売り攻勢に合い利益が大幅に減ったということである。

いずれにせよ、シンガポールの製造業は全体的に厳しい競争にさらされ、人件費も周辺祖国より高いため、今後とも劣勢を強いられることは間違いない。

 

5-3. 5月の輸出は3年ぶりにマイナスに(05年6月21日)

シンガポールの05年5月の非石油製品輸出は103.9億シンガポール・ドル(62.2億米ドル)と前年同月比-5.6%となった。4月は+6.7%であったことから、落ち込みの大きさに驚かされる。マイナスとなったのは実に35ヶ月振りのことである。

品目別では半導体と医薬品の落ち込みが大きかった。エレクトロニクス製品の輸出が非石油製品輸出の約半分を占めるが、前年同月比-4.6%となったことが響いている。

アジアNIEs(中進工業国)の仲間である、台湾(163億ドル+4%)と韓国(233億ドル+11.8%)は5月も輸出のプラスは続いているので、シンガポールのマイナスの原因は同国の特殊事情によるものと考えられる。

シンガポールは人口も少なく、給与水準も比較的高く(韓国や台湾もこの点は同様だが)為替も米ドルに対し高めに維持されてきたことから、製造業の国際競争力が近年とみに衰えてきていることは確かである。

また、半導体関連、パソコン部品関連の企業が中国やタイなどに工場を移動するという動きも目立ってきている。(#5-2.参照)

5月のマイナス傾向が6月以降も続くとシンガポール経済はマイナス成長になりかねないが、サービス部門などでどの程度挽回できるかがカギとなる。

 

5-4. 05年2Qの成長率は5.2%に持ち直す(05年8月11日)

シンガポール経済は05年1Qの2.7%から5.2%にやや持ち直した。製造業は3.4%から5.9%へとやや回復をみせた。製造業の約3分の1を占めるエレクトロニクスは 半導体やコンピュータ周辺機器が不振で05年1Qの11.0%から4.4%に伸び率が低下している。この傾向は今後も続くであろう。

薬品関係(Biomedical)が05年1Qのマイナス18.3%という急激な落ち込みから2Qはプラス2.9%に回復している。化学は6.5%から0.4%へと伸び率が鈍化している。また、石油価格高騰により、石油掘削・探査のためのオイル・リグ関係がブームを迎えている。

建設部門の伸びは1Qがマイナス5.6%で2Qは同じくマイナス0.5%とまったくさえない。マンションの売れ行きは回復しているという新聞記事はよく見かけるが、それは今までの作りすぎの分が多少捌けているということであろう。

サービス部門では卸・小売関係が8.3%と大きく伸びた。この部分は毎Q比較的伸び率が高い。中継商業都市国家としてのシンガポールがうまく機能しているということであろう。

シンガポールの市民の懐が急に豊になって消費が急拡大したという話はここしばらく聞いたことがない。観光客 はベトナムやインドやフィリピンや台湾といった周辺諸国からの来訪者が増加して、7.9%増えたという。

運輸・通信部門は05年2Qは4.6%で1Qの4.7%と大差ない。金融部門は1Qの2.0%から6.8%へと伸び率が増加した。

 

表5-4.シンガポール経済の実質成長率(1995年価格、対前年同期比、%)

   2004  04/2Q  04/3Q  04/4Q  05/1Q  05/2Q
実質GDP 8.4 12.3 7.2 6.5 2.7 5.2
製造業 13.9 20.1 11.2 14.1 3.4 5.9
建設業 -6.5 -6.4 -11.4 -8.4  -5.6 -0.5
サービス部門計 7.5 11.4 6.9 4.8 3.6 5.0
卸・小売 14.6 19.0 15.6 10.7 6.9 8.3
ホテル・レストラン 12.4 40.3 9.2 4.6 2.4 5.3
通信・運輸 9.1 18.4 9.0 6.3 4.7 4.6
金融 6.0 5.2 2.9 0.4 2.0 6.8
ビジネス・サービス 2.2 3.0 1.4 2.3 2.1 3.1

http://www.singstat.gov.sg

 

5-5. シンガポールの05年4Qの成長率は8.7%、通年で6.4%(06年2月18日)

シンガポール経済は05年4Qは8.7%と予想外に高い成長を示した。年初から年末にかけて尻上がりに好調になった。これはシンガポール国民一般の景況感とは必ずしも一致していないようだが数字の上では景気は急速に回復した。

実質ベースの基準年次を1995年から2000年に移したことも多少は影響しているようである。

外資が逃げ出してだめになったはずの製造業は05年1Qの3.2%から4Qには14.2%の伸びとなったのだからすごいといわざるをえない。

半導体とコンピュータ周辺機器を中心とするエレクトロニクス関連で05年4Qは19%の伸びとなったという。バイオメディカル(薬品)は7.6%、化学は2.6%の伸びと振るわなかった。

また、大きく伸びた分野はオイル・リグなどの海上石油掘削機器を中心とする「海上輸送機器」分野で。原油高騰による受注増で35%増加したという。精密機械分野も12%伸びた。

2005年通年での製造業の伸びは9.3%で04年の伸び率13.9%を下回った。

建設部門の伸びはマイナ成長が続いているが、マイナス幅は大分小さくなり05年通期で-1.1%にとどまった。

サービス部門の伸びは製造部門に比べ低めである。卸・小売業は05年通年で10.5%の伸びを示したが、ホテル・レストランは4.6%の伸びにとどまった。

2006年の政府見通しは4〜6%の伸びを見込んでいるという。05年よりはやや厳しくなるという見方である。

 

表5-4.シンガポール経済の実質成長率(2000年価格、対前年同期比、%)

   2004  2005  05/1Q  05/2Q  05/3Q  05/4Q
実質GDP 8.7 6.4 3.4 5.7 7.6 8.7
製造業 13.9 9.3 3.2 5.9 13.1 14.2
建設業 -6.1 -1.1 -1.1 -1.1 -1.4  -0.8
サービス部門計 7.6 6.0 4.2 5.8 6.8 7.2
卸・小売 15.6 10.5 8.7 10.2 10.7 12.1.
ホテル・レストラン 11.5 4.6 1.9 5.4 4.7 6.2
通信・運輸 8.5 4.5 4.5 4.1 4.3 5.1
金融 5.4 6.5 2.2 7.9 8.5 7.4
ビジネス・サービス 2.8 4.9 2.7 3.9 6.6 6.3

 

 

6. 公認のカジノ開設に踏み切る(05年4月18日)

シンガポール政府は国内の強い反対にもかかわらず、公認のカジノ建設に踏み切った。ひとつはマリナ・ベイでもうひとつはセントサ東南アジアである。建設費は50億シンガポール・ドル(約30億米ドル)である。

行き詰まり現象が目立ち始めているシンガポールとしてはやむをえない選択であり、リー・シェン・ロン首相も「このまま何もしないわけにはいかない」としてゴー・サインを出した。

シンガポールの世論調査では50%強の国民がカジノ建設には反対しているという。

シンガポールの国民がカジノを利用することを制限するために1日100シンガポール・ドル(約6,500円)の入場料を「安全対策費」として徴収するという。ギャンブルが好きな周辺諸国の華人が最大の顧客となるであろうが、日本人もかなりご厄介になりそうである。

マレーシアには有名なゲンチン・ハイランドがあり、インドネシアにも闇賭博場があるといわれている。タイでは闇の賭博場があって、歴史的に警察の利権の対象であったが、タクシン首相は「公営化」を狙っているといわれている。

リー首相は35,000人の雇用増加が見込まれ、観光客も倍増すると強気の見方をしている。地元のエコノミストはGDP5億ドルの引き上げ効果があり、雇用も13,000人の増加が見込まれるとしている。

 

8. ヘッジ・ファンドが巨額損失(05年5月5日)

シンガポールの大手ヘッジ・ファンドのAman Capital Management社がデリバティブ取引で巨額の損失を出したことを認めた。同時に取引の責任者の1人であったミハエル・シン(Michael Syn)氏が同社を辞職した。シン氏は元スイス系のUBS銀行のデリバティブを担当であった。

業界の消息通によると同社の運用資金は2億4200万ドルで、05年4月の取引で運用資金の18%に当たる4,300万ドルという巨額の損失を出したといわれている。年初からのロスは20%に達し、今年中に挽回することは困難であると見られている。

損失のほとんどが韓国株式市場インデクスの取引によるものであると推測されている。

シンガポールは香港に対抗してデリバティブ取引のセンターを目指しているが、先のCAO(中航油)事件に次ぐ大きな失敗事例を作ってしまった。適正な内部管理によって損失の拡大を防がないとデリバティブ取引は大きなロスを引き起こす可能性があるが、今回もその例に当るとされている。

(FT インターネット版、05年5月5日付参照)

 

9. EUがシンガポールと香港に対して課税協力を要請(06年3月11日)

EUは域内の金持ち階級で租税逃れのためにシンガポールは香港に逃げ出し、税金逃れをするものが増えているため、両国に対し、租税協定の見直しと、EUにおける「税金逃れ」の追求に協力体制をとることを要求するという。

EUはシンガポールと香港とは以前から「租税協定」を結んでいるが、個人の税金支払い状況についての情報交換が不十分のために、EU加盟国の国民が多額の資金をシンガポールや香港に送金し、そこでの運用益の税金を逃れているケースが増えてきている。

シンガポールと香港は個人の税金逃れの調査への協力には両国における税金逃れがおこなわれているという「証拠」を開示されない限り、EU側に協力する必要がないというのが現在の協定の建前となっていて、事実上調査には協力していないようである。

世界から、資金を集めて運用することによって経済が支えられている両国にとって、出身国の税金問題で外国の投資家のご機嫌を損じる必要性はないというのが、基本的な立場のようである。

日本でも、財政問題から税制の見直しがおこなわれようとしているが、小渕内閣時代に大幅な金持ち優遇策(累進税率の引き下げ)をおこなったが、今回も最高所得税率37%という数字はそのままで、より大衆課税を強化していく方針のようである。

小渕内閣の言い分は、金持ちの減税をおこなえば、金持階級がやる気を出して、「日本の経済が活性化する」というご託宣であった。しかし、実際はそうはならなかった。あの金持優遇策は間違いなく貧富の格差を拡大するのに大いに役立った。

もう1つの理由付けは、日本の税金が高いと金持は資金を税金の安い国に逃避をさせて、結局、国としては税金が取れなくなるというのである。今回のEUの要請はその問題が実在することを示している。

しかし、それはそれでよいではないかと思う。日本国民でありながら納税の義務を回避して国外に逃亡するような人間には別の報復手段を考えるほか仕方がない。そういう輩を識別するためには「納税者番号制度」に賛成である。悪質者は当然、刑事罰を受けた者と同様に公表するべきである。

われわれ安サラリーマンは減税の恩恵に浴せなかったかわりに、「定率減税、ただし上限25万円」で頭を撫でられようとした。しかし、それもなくなり、金持減税だけが残り、庶民はやがてやってくる消費税の引き上げなどに泣かされることになる。

実は庶民階級は「失業保険」などという税金も支払わされている。私もサラリーマン時代に支払った失業保険の恩恵には全くあずからなかった。それは幸せなことだったといえなくもないが、失業保険を集めて湯水のごとく無駄遣いがなされた。

失業保険は本来その個人の「持ち物」にすべきである。政府が一定の利子をつけ(少なくとも国債の利子程度の)て本人が失業したり退職するときに支給、もしくは返還すべきである。

話しが脱線したが、金持階級で実際に日本から逃げ出すなどというセコイまねをするような輩がどれくらいいるかためしにやって見れば良いと思う。1990年代の中頃までは少なくともそういう人はあまりいなかったはずである。

一部のセコイ学者風情が正月には外国に逃げて、地方税を逃れたなどという話しを聞いたぐらいのものである。

累進課税の国は北欧に見られるごとく社会も比較的安定していて、犯罪も少ない。貧富の格差拡大はかえって金持階級を不安にさせる。アメリカが良い例である。

 

10.シンガポール、07年2月から消費税を5⇒7%にアップ(06年11月14日)

WSJ(11月14日、インターネット版)によるとシンガポール政府は07年2月からGST(Goods-Services Tax= 消費税)を現行の5%から7%にアップする方針であるという。

目的は、なんと低所得者への所得再配分であるという。消費税は金持からも貧乏人からも等しく「公平に」税金をとるという、ネオ・リベラルの経済学者や財政家が賞賛してやまない課税制度であるが、シンガポール政府はそこで得た税収を低所得者に回す財源にするというのである。

リー・シェンロン首相(リー・クワンユー元首相の長男)は「消費税の値上げは低所得者層への社会的安全装置への財源にする」と述べている。

シンガポールもネオ・リベラルのお国柄で、企業・金持には居心地の良い国である。あの村上ファンドの御大将も逃げていったくらいである。

そういう国の常として、国民の所得格差が拡大する一方で、貧困者は逃げ場のない狭い国で高層アパートに閉じ込められて希望のない生活を送っている人が多いという。

言論が極端に圧迫され、野党も政治的発言が封じられて、貧しい人々の政治的不満の捌け口はない。その点まだ日本の方がややマシである。もしかすると国民が突如目覚めてダメ政府を選挙でひっくり返す可能性もある。

シンガポールの場合は国民の不満を政治的弾圧で押さえ込んでいるだけでは北朝鮮と同じになるので、何とか生活の保障をせざるを得ない。

この辺は日本よりはマシである。「郵政民営化の是非だけを問う」などといって選挙に圧勝したとたんに「老人福祉切り下げ」を国民に押し付け、 多数を頼んで反動立法を強硬採決するなどという、トンデモナイ善政(??)を強いてくれている。これははっきりいってペテンである。

新しい政府税制調査会の会長は偉い経済学者らしいが「企業減税」をやるいうのが彼の使命と考えているようである。しかし、今は法人税が高いか安いかなどと御託を並べ立てている時代ではない。

日本の企業は戦後の廃墟から、今まで立派に成長し、国際競争力も備えている。国際的に見てダメなのは国内で過保護で育った銀行などである。彼等はロクに税金を払っていないではないか。

日本で税金を払いたくない企業はどこへでも出て行ってくれといいたくなる。そのかわり、そんな企業の製品は私は買いませんよ(といっても全く迫力はないが)。 そもそも日本の政府は誰の代弁者なのだといいたい。経団連のいうことなど聞いていては困りますよ。

国民(人民)の、国民による、国民のための政府だということを片時も忘れてもらっては困る。

国民がドンドン窮乏化に追い込まれつつある実態にもっと目を向けるべきである。寝たきり老人を病院のベッドから無理やり引き剥がすような国は金持からの税金の取り方が足りないのと、政府の施策が悪いことの結果である。どちらにせよ「美しい国」のやるべきことではない。

さて、シンガポールの実態がというと2001年から2005年の間に所得の上位10分の1の富裕層は所得が 年率2.8増加している。最下位の10%は所得がかなり減っているらしいのだが、シンガポール政府は都合の悪いなかなか数字は表に出さない。

しかし、最下位から1つ上の10%は年率4.3%減り、下から上位3番目の10%は0.5%/年所得が上昇したという。

シンガポール政府としては所得の最下位20%の人々に対して、「挽回のチャンス」などという当てにならない方策ではなく、生活補助金の支給など直接手当てをしようという方針のようである。

 

11.シンガポールの06年の成長率は7.9%、実感なき高成長(07年2月16日)

普段はシンガポールの経済動向についてこのページでは取り上げにくい。というのは実際行ってみた感じと、政府発表とのギャップが多すぎるから確信をもって何かを書くことが出来ないからである。

「勝った、勝った」という景気の良い話で大体シンガポールの新聞は埋め尽くされているといって過言でない。ところが、その景気のいい話がどこまで本当かというのがさっぱり分からない。

06年1Qの製造業は前年同期比18.6%も伸びたというが、こういう話を信じるには私は歳をとりすぎたのかもしれない。

大体、2007年に入って数日後に2006年の成長率が発表され、それがほぼそのまま確報の形で2月のはじめには出てくるのである。これはひところのベトナムと良く似ている。ベトナムは1月1日には前年の経済成長が発表されていた(今はどうなっているかは知らないが)。

シンガポールは2007年は2006年にもまして高度成長を遂げるという。ご同慶の至りである。中国投資でも連戦連勝で大分稼いでいるらしい。原油の値上がりもシンガポール企業にはプラスになっているようだ。確かに石油掘削装置を作っている会社の利益はすごいものがあるだろう。

それにしても成長の成果を享受できるのは上層階級に限られるらしいのは上の記事に見られるとおりである。

 

表5-4.シンガポール経済の実質成長率(2000年価格、対前年同期比、%)

   2005  2006  06/1Q  06/2Q  06/3Q  06/4Q
実質GDP 6.6 7.9 10.1 8.0 7.0 6.6
製造業 9.5 11.5 18.6 11.9 9.5 7.7
建設業 0.7 2.7 -0.7 0.9 5.8  4.7
サービス部門計 6.4 7.0 8.2 6.9 6.3 6.6
卸・小売 9.6 10.3 14.9 9.5 10.4 6.9
ホテル・レストラン 4.3 4.6 6.2 3.8 4.4 6.1
通信・情報 5.5 4.5 5.1 3.7 3.6 6.0
運輸・倉庫 4.2 4.3 5.3 4.0 4.0 4.0
金融 7.6 9.2 8.7 9.6 7.4 11.1
ビジネス・サービス 5.9 5.8 6.1 6.6 5.1 5.4

http://www.singstat.gov.sg

 

12. シンガポールの閣僚は超高級取り、首相の月給2千万円(07年4月10日)

シンガポール政府は有能な閣僚が民間企業に流出しないように約60%の昇給をおこなうこととした。その具体的な金額を聞けば驚かない人はまずいないと思われる。

リー・シェンロン首相の年報は194万SD(シンガポール・ドル)から310万SDに跳ね上がる(+59.8%)。1SD=78.92円だから約2億4500万円ということになる。月額2000万円強である。

一般閣僚が120万SDから190万SD(約1億5000万円)にアップ(+58.3%)する。

シンガポールはただでさえ所得格差が広がり、貧困層が相対的に増えつつあり、一方消費税を今年2月から5%⇒7%にアップさせたばかりであるにもかかわらず「お手盛り」で大幅昇給させるという神経はそうとうなモノである。

彼らがこんなことを遠慮会釈なしに白昼公然とできるのは国会で反対党がゴクわずかしかいないためである。事実上与党人民行動党が独裁権を握っているためである。

日本では超豪華国会議員宿舎が批判の的になっているが、安倍首相も「これくらいのところに国会議員を住まわせなければいい政治家が集まらないのだ」ぐらいに開き直って見てはいかがなものだろうか?きっとお人好しの日本の有権者の支持が急増するであろう。

本末を転倒したとしか言いようのない「女は子供を生む機械」だの「貞操」がどうしたのだとかと発言するような閣僚がうろついているのはもしかすると給料が低すぎてマトモな人材が集まっていないセイかもしれない。

しかし、シンガポールの国民は多くが怒っているそうだ。あたりまえの話しだと思う。しかし、抵抗の手段はなさそうである。何か言えば「侮辱罪」で訴えられて全財産を没収されかねない。

 

⇒首相の大幅昇給は実質5年間凍結宣言(07年4月13日)

先に、リー・シェンロン首相以下閣僚の給与の60%近いアップを公表し、首相自身の給与は年間2億4000万円とすると発表したが、国民の強い反発から5年間は昇給を凍結すると4月11日(水)に発表した。

差額は福祉事業などに「寄付する」という言い方である点が奇異なるところである。一旦は昇給するがその部分を寄付するということのようである。あくまで恩着せがましい態度がミエミエである。

所得格差が広がる中で今回、低所得者の不満は収まらず、その強い反発の声にさすがのリー・シェンロン首相も負けた形となった。国民は大胆にもインターネットを使い、反対の署名活動を始めたのである。既に署名1,800人を超えているという。

数は少ないようにみえるが、政府の弾圧を恐れず、署名した人間が急増していることに政府は衝撃をうけたに相違ない。、

しかし、野党の反発があったから凍結を決めたわけではないというのが秘書官の弁明であった。なお一般閣僚は120万シンガポール・ドル(≒9400万円)から190万シンガポール・ドル(≒1億4900万円)に昇給するが、それは2年間、実質凍結されるということである。

いずれにせよ、普通の神経では考えられないところではある。民間に行ってもっと稼げる閣僚はそうすればいいだけの話である。他にも薄給で働いている有能なシンガポール人はいくらでもいるであろう。何しろ頭のいい国民がそろっている国だから。

 

13.テマセク、シン・コーポレーションのせいで初めての減益(07年8月3日)

シンガポール政府の投資会社テマセク(TEMASEK)は07年度(07年3月31日まで)の決算数値を公表した。それいよると、保有資産は1,640億シンガポール・ドル(S$)≒1,080億米ドルに達した。米ドル・ベースで1,000億ドル(≒11兆9000億円)を超えたのははじめてである。

2006年3月末は1,290億Sドル、すなわち約800億米ドルであり、1年間で27.1%の増加であった。

しかしながら、利益は06年度の128億Sドルから91億Sドルへと29%もの減少となった。これは全般的に投資収益が低下傾向にあることにくわえて、タイのタクシン前首相のシン・コーポレーションの買収に伴う損失を帳簿上減価したためであるという。

テマセクはバークレー銀行、スタンダード・チャータード銀行をはじめ中国の銀行などへの投資と通信会社への投資を重点におこなっている。

シンガポール国内ではシンガポール・エアライン、DBSバンク、シンガポール・テレコム、PSA(シンガポール港管理公社)、ストレート・タイムズ(新聞社)などの大株主である。

テマセク全体の保有資産のうちシンガポール企業の比率は38%(前年44%)、日本以外のアジアは40%(前年34%)とアジアへの投資が急増している。

テマセクの社長はリー・シェンロン首相の夫人のホー・チン(Ho Ching)女史である

 

14.シンガポール9月の輸出マイナス、米国向け不振(07年10月18日)

東南アジアでもっとも早く貿易統計を発表するシンガポールは07年9月の非石油製品の国産品輸出(再輸出を除く)が8月比マイナス1.5%(季節調整済み)となったと発表した。

エレクトロニクス製品は特に落ち込みがひどく前年同月比で実に11%マイナス(8月は-1.3%)となった。

米国向けの非石油製品輸出は同じく前年同月比で8.3%のマイナス(8月は2.9%プラス)と大きく落ち込んだ。

これは米国の住宅新規着工や消費減を反映したもので、シンガポールとは輸出品構成が異なるとはいえ中国や東南アジアの対米輸出にも同様な傾向が現れる可能性が強く、各国の貿易統計に9月以降変化が現れるかもしれない。

中国政府はその辺に感づいていて「輸出が落ちても内需がしっかりしているから中国経済にはさしたる影響はないであろう」などと予防線を張っているが、内需効果だけで経済が長期に支え続けられるものでないことは資本主義の歴史が証明している。中国は資本主義経済ではなかったのでしたっけ?


15.シンガポール高裁ウオール・ストリート・ジャーナルに罰金刑(08年11月26日)

シンガポールの高等裁判所はウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の08年6月と7月に掲載した記事がシンガポールの裁判所に対してケシカラヌ内容だとして2万5千シンガポール・ドル(≒16,573米ドル)の氏は以来を命じる判決を下した。

WSJの記事はシンガポールでは極く少数の野党が、政府与党から「侮辱罪」などで告訴されると、先ず例外なく多額の罰金刑に処し、被告の野党指導者は文無しにされてシンガポールにいられなくなるか、国外に逃げ出すようなことになりがちだということである。

裁判所が政治の自由や言論の自由の抑圧に一役買っているという主旨の記事だったと思う。

また、政権がリー・クワン・ユーから息子のリー・シェン・ロンに引き継がれた問題についてのコメントについても裁判にかけられ「有罪」になっている(ファー・イースタン・エコノミック・レビューのケース)。


「ASEAN憲章」がいかなる内容かは知らないが「言論の自由」や「民主的権利」といた基本的人権が白昼公然と迫害されている国が現存しているのである。

日本政府はこういう国と「自由貿易協定」を結んだといってとくとくとしているが、貿易以外の「自由」には目をつぶっているらしい。


(WSJ 08年11月25日付け電子版参照)


16.シンガポールの2009年はマイナス成長(09年1月4日)

シンガポールは米国の経済混乱とそれに次ぐ世界経済の混乱・低迷の影響をモロに受け、08年4Qの経済成長は季節調整値で年率マイナス12.5と発表されている。いずれにせよ数字が出されるのが異常に早いのが気にかかる。

2009年はマイナス2%という見通しを政府は公にしている。年間を通じてのマイナスは50年ぶりということである。

日本は「100年来の不況」だなどと麻生首相はいっているが、この100年の間には「昭和恐慌」というものがあったことをご存じないらしい。漫画本では「昭和恐慌」をテーマとしたものがまだ出ていないようだ。

つい十数年前のバブル後の大不況は今よりもっとひどかった。何しろ「長期信用銀行」や「日債銀」がつぶれてしまったのである。それに比べれば今回はそこまで行きそうにない。石原新太郎都知事の「新銀行東京」はとっくに死に体だが、これは不況のセイではない。最初からこんな銀行は必要なかった。

この大失点から都民の目をそらすために「オリンピック招致」だなどということを石原氏は言いはじめた。このキャンペーンのために都民の税金が湯水のごとく使われる。いいカゲンにしてくれといいたい。

それにしても、シンガポール経済はどうにもならないというのは本ホーム・ページでも過去何回も指摘してきたが、基本的に「製造業」は立ち行かないのである。特殊な産業のみが何とかやっている。それは海洋石油掘削の「オイル・リグ」である。

インドネシア領海などで使用されるオイル・リグはシンガポールで組み立てたほうが輸送コストも安い。keppelやSembCorpといた旧大英帝国時代からの伝統を有する造船会社がオイル・リグの最大のメーカーだが、昨年10月以降新規受注はゼロだという。

エレクトロニクスも1970年代以降積極的な外資誘致により、一時は栄えたが、「組み立て」工程の多い品種はシンガポールの高い人件費に耐えられずに、タイや中国やベトナムに移転してしまった。

高級マンション(コンドミニアム)は外国人のお金持用に作られたが、今回の世界的金融危機により、受注はガタ減りしている。国際金融センターとして生き延びるということであったが、国際金融機関そのものがヨレヨレの状態になってしまった。

観光地としての「魅力」ははっきりってほとんどない。伝統的なチャイナ・タウンはその多くがぶち壊され、高層ビルに変わってしまった。

かつて、シンガポールに駐在したことのある仲間で時々集まると、一様にシンガポールの将来については悲観的である。

シンガポールが生き返るには政治的自由の確立が先ず必要である。言論弾圧や政治弾圧をしている国は国民の自発性が失われる。国民の自発性と外国からの「好意」がなければ発展性は望めない。中国の「買弁」などになったら、ASEAN内部でも総スカン食らうことは自明である。

シンガポールの将来的な発展のためには「過去の成功体験(?)」から脱却し、リーダーの「頭の切り替え」が先ず必要である。誰もが自由に出入りし、誰もが自由に活躍できるという「スタンフォード・ラッフルズのシンガポール建国の精神」に立ち返る必要がある。頭の切り替えには1ドルもコストがかからないし、明日からでもやれるもっとも「経済的な効率の高い」やり方である。

17.テマセクのホー社長がCEOを辞任(09年2月6日)

シンガポールの国営投資・持株会社テマセク(TEMASEK)のホー(Mrs Ho Chin)社長が同社のCEO(最高執行役員、会長はダナバラン;Dhanabalan氏)を辞任し、同時に取締役からも退いたことが同社から発表された。

ホー女史はリー・シェンロン、シンガポール首相夫人であり、2002年1月にテマセクに取締役として入社し、2004年1月からCEOに就任していた。

その間、積極的な経営を行い、タイのタクシン元首相が所有していた通信会社「シン・コーポレーション」の買収をはじめ、インドネシアのインドサット(Indosat)への投資や、中国への投資、タイの銀行への投資やメリル・リンチへの出資などで急速な拡大をおこなった。

しかし、今回のサブプライム・ローンの破綻に端を発する世界的な金融・経済危機の中で、かなりの打撃を蒙ったものと推測されていた。同社の投資残高は1,850億シンガポール・ドル(≒11兆円)といわれる。

そのうち、約40%が金融機関への投資であったといわれる。今後は天然資源への投資をおこなう方針であるとダナバラン会長は説明している。

ホー女史の後任は2007年までオーストラリアのBHP Billiton者のCEOであった米国人のチャールズ氏(Charles 'Chip' Goodyear)が就任すると発表されている。