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韓国の鉄鋼業
38-9.POSCO北朝鮮から高品位原料炭と鉄鉱石の輸入を計画(08年6月26日)
38-8.POSCOの社員インドで
村民の反対運動に遭遇(07年5月14日)
38-7. POSCO07年1Qは44%増益(07年4月13日)
38-6. POSCOの06年の利益は前年比20%減る(07年1月11日)
38-5.
POSCO、11.3億ドル投じてベトナムに製鉄所建設(06年11月18日)
38-4 .POSCOの06年2Qの純利益は7,100億ウォン、前年比-44%(06年7月17日)
38-3. POSCOの06年1Qの純利益は48%ダウン(06年4月13日)
38-2.POSCOの05年4Qの純利益68%ダウン、通年では4.7%増(06年1月12日)
38-1. POSCOなど4社に価格協定の疑い(05年9月9日)
31.
韓国の鉄鋼業も供給不足(04年11月27日)
30. 造船業は鋼材価格の上昇により大幅な利益減(04年11月17日)
28. 現代自動車が韓宝製鋼を買収(04年8月2日)
フィナンシャル・タイムズ(8月1日、インターネット版)によれば現代自動車が1997年の経済危機のときに破綻した「韓宝(ハンボ)製鋼」を8,800億ウオン(約830億円)で買収することに合意した。
現代グループはかねてから一貫製鉄所を保有する計画があったが、韓国政府の強い反対と、用地、資金難などから傘下の現代鋼管に冷延薄板設備のみを作らせ「現代 Hysco」という会社として運営し、素材の熱延広幅帯鋼(HRC)をPOSCOや日本のJFEから購入していた。
しかし、HRCを自社生産するというメリットがあると考える現代グループはHRC設備を持つ韓宝製鋼の買収に踏み切ったものと思われる。
ただし、韓宝製鋼はHRC設備はあるもののPOSCOと異なり、高炉ー転炉ー連続鋳造設備という上工程を保有していないため、電気炉に良質の鉄源(高炉銑やスクラップ)を挿入して品位の高いスラブを生産する必要がある。
または、日本などから高品位のスラブを輸入しHRCを生産するということになろう。
ただし、韓宝製鋼のHRC設備で現代自動車で使用する高級冷延鋼板の生産は依然として困難であり、日本の高炉メーカーへの依存は続くであろう。
なお、POSCOは現代HyscoへのHRCの供給を拒んだため2001年には16億ウオンの罰金を科せられたことがあるとFT紙は報じている。ただし、FTがいうように現代グループの韓宝製鋼買収が直ちにPOSCOの脅威となるとは考えにくい。
30. 造船業は鋼材価格の上昇により大幅な利益減(04年11月17日)
世界第2位の造船メーカーである大宇造船(Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering Co.,)の04年3Q(7−9月期)の純利益は前年同期に比べ約3分の1の410億ウォン(39億円)に減少した。03年3Qの純利益は1,174億ウォン(112億円)であった。
営業利益は75%落ちて270億ウォン(純利益よりなぜ低いかは不明)、売り上げは7.5%増えて1兆1400億ウォンであった。売り上げ増にもかかわらず減益になったのは、鋼材の価格上昇によるコスト・アップが最大に原因である。
他の造船会社も事情は同じで、2001年、02年ころ受注した低価格の船が、完成する今になって予想だにしなかった鋼材価格の大幅アップによって、コストが急増している。
世界最大の造船会社である現代重工は3Qは330億ウォンの赤字であった。ちなみに韓国の造船会社は大量の厚板を日本の高炉メーカーから輸入している。
つい先ごろ、日産自動車が鋼材の手当てが間に合わなくなり、上を下への大騒動をしているが、その中で、日産は韓国のPOSCO に応援を頼むのだという記事が出ていた。(関連記事、第5回、23. 「鋼材不足で日産の工場停止」の記事に思う(04年11月25日)参照)
大変な名案に思えるが、実はPOSCOも舞い袖は振れない事情がある。というのはPOSCO は乗用車の外装用鋼板は技術的には生産可能であるとし、ソウルの本社ビルにもサンプル模型が展示してある が、POSCOはあまり、熱心に外装材を内外の自動車メーカーに供給しているようには見えない。
なぜならば、外装材はコストが高くつく割には適正な値段で売れないからである。それは多分に日本の高炉メーカーの責任でもあった。
したがって、韓国の自動車メーカーはほとんどが乗用車の外装材に限って言えば日本メーカーのお世話になっている。そこに日産がのこのこ出かけていったところで、POSCOの返事は聞くだけ野暮である。
もうひとつの事情がPOSCO側にある。それは11月25日の韓国の英字紙コリア・ヘラルドのインターネット版につぶさに書いてある。ご関心の向きは本文に当たっていただきたい。(http://www.koreaherald.co.kr/)
要するに、韓国もご多分にもれず供給能力が足りないのである。POSCO の既存のユーザーにすら十分に供給できていないのにとても日産自動車にまでは手がまわらいはずである。
現在自動車は「Hyundai Hysco」という子会社(もともと現代鋼管といっていたが冷延薄板設備を設置し名前を変えた)の冷延設備を使って薄板の増産を検討しているという。
しかし、素材の熱延薄板コイル(HRC)は日本製のものでなければ役に立たない。
あちこちの自動車メーカーがPOSCO詣でをしているが、肝心の「外装材」に限って言えばどうにもならないであろう。
日本の自動車メーカーにすれば、忌々しくて日本の鉄鋼メーカーなどに頭を下げられるかという思いもあるであろう。しかし、マグロのトロとも言うべき高級鋼板をあまりに安く長期間買い続けてきたこと自体、自然の摂理に反していたのである。
この辺で、アダム・スミスのいうところの「神の見えざる手」の調整が入ってきたのである。鉄鋼業界にも少しは儲けさせてやって、次の設備投資の資金ぐらいは自動車業界としても持たせるべきであったろう。高炉メーカーを絞れるだけ絞りきってしまったのである。
自分のところだけが幸せならば良いというような「ユニラテラリズム(自己中)」思想は経済の世界では通用するはずがない。ゴーン主義はまさにユニラテラリズムの典型ではなかったろうか。
もちろんこういう事態に追い込まれた鉄鋼業界にも責任は大有りである。日本の高炉会社(新日鉄、JFE,、住友金属工業など)は過当競争を繰り広げ、せっかく作った高級鋼板をいわば「叩き売り」に近い形で販売して きたのである。(最近は少しだけ値戻しした。)
なぜそんなことをしてきたかといえば、そこには「経営哲学の貧困」があったのである。そのおかげで一生を棒に振らされた社員は数限りない。まさに「万骨枯れる」惨状が繰り広げられてきたのである。
その辺の事情はエイデル研究所刊の「日本産業再構築の戦略」の「第1章 21世紀に向けての日本鉄鋼業」という拙文をご覧いただけば幸甚である。現物は萱場町の鉄鋼会館2階の鉄連資料室にある。
38-1. POSCOなど4社に価格協定の疑い(05年9月9日)
韓国の公正取引委員会はPOSCOと他の3社(Hyundai Hysco, Dongbu Steel, Union Steel)の冷延鋼板を生産する鉄鋼4社に対し価格協定(price fixing)の疑いがあるとして調査に乗り出した。
韓国の鉄鋼会社は原材料価格の高騰にもかかわらず、鋼材価格が下落傾向にあるため、特に冷延鋼板について価格協定をして値上げを図っているのではないかという容疑であるといわれる。
鉄鋼各社は自動車や電器機器のユーザーに対して05年上期に約5万ウォン(4,600円)の値上げをおこなったというもの。
公正取引委員会はもし、不正が明らかになれば、協定期間中の売り上げに対し最大10%までの罰金を科すことができる。
2003年にはPOSCOを含む鉄鋼会社は合計700億ウォンの罰金を科せられた。
POSCOは業績好調で、05年2Qには1兆2620億ウォン(約1,170億円)の純利益をあげた。これは前年同期比38%の増加であった。しかし、05年1Qの利益1兆3080億ウォンに比べ、3.5%の利益減であった。
POSCOは7月から熱延広幅帯鋼については中国からの輸入物に対抗するため、若干の値下げをおこなったが、高級鋼材の冷延製品については値下げの意向はないと言明している。なお、POSCOの05年の売り上げは23兆6000億ウォンを予想しているという。
POSCOは過去においても、日本の高炉メーカーが低収益にあえいでいた間も、比較的良好な業績を維持していた。
(FTインターネット、 05年9月9日参照)
38-2.POSCOの05年4Qの純利益68%ダウン、通年では4.7%増(06年1月12日)
POSCOの05年4Qの純益は3,820億ウォン(約447億円)と前年同期比にくらべ68%も落ち込んだ。主な原因は同社の最近の製品価格の下落によるものであるが、同社が保有していたSK Telecom社の株式の処分に伴う、特別損失1,200億ウォンも含まれる。
05年3Qの純利益は1兆900億ウォンであった。
POSCOは05年9月から原材料費の高騰の影響をモロに受けたのと、中国からの低価格鋼材の輸出攻勢に押され、韓国内の鋼材が値下がりし、11品目について6〜9%の値下げを余儀なくされた。
さらに、06年1月からは13品目について4〜17%の値下げをおこなっている。
2005年通年の純利益は4兆00億ウォン(約4,750億円)と04年に比べ、4.7%増加した。売り上げも21兆7,000億ウォンと同じく9%の増加であった。しかし、06年の売り上げは19〜20兆ウォンに減少すると見ている。(利益見通しについては言及されていない)
設備投資は2006年〜2009年の間に11兆7000億ウォンを計画している。主な狙いは高級品化のための投資と能力増強である。POSCOの主力品種はどちらかというと中級以下の鋼板・広幅帯鋼が主体で、中国との競争にマトモにさらされる。
その辺が日本の高炉メーカーとやや異なるところである。日本のメーカーは中国品(建材用途)との競合は比較的少なく、今のところ中国物はさほど入ってきていない模様である。
2005年のPOSCOの粗鋼生産は3,050万トンであり、06年はやや少な目の3,010万トンを計画している。ただし、鋼材の販売は2005年の2,870万トンよりはやや多い2,900万トンを計画している。(WSJ,インターネット版、06年1月12日、参照)
38-3. POSCOの06年1Qの純利益は48%ダウン(06年4月13日)
POSCOの06年1Qの純益は6,810億ウォン(約844億円)と前年同期の1兆3,100億ウォンに比48%も落ち込んだ。売り上げも4兆6,600億ウォン(5,780億円)と05年1Qの5兆6,600億ウォンに比べ17.7%減少した。
これは韓国の鉄鋼市場が縮小したためではなく、過剰設備に悩む中国の鉄鋼メーカーが安値で韓国に大量に輸出をしているためである。(日本にも中国鋼材は輸出されているが、日本の高炉メーカーは高級品の比率が高く、ほとんど影響を受けていない)
POSCOの06年1Qの鋼材の販売単価は56万ウォン(約6万9000円)でピークの05年2Qに比べ平均で17%低下した。
しかし、POSCOの株価は06年1Qの間に24%上昇したといわれる。その理由はインド資本(本社はオランダに置いている)のミッタル・スチール(Mittal)社がPOSCOの買収を狙っているという噂が絶えないからである。
もともと国営企業であったPOSCOは民営化されてから外国資本が68%の株式を所有しているといわれ、ヘッジ・ファンドが大株主となっている。彼らは買収の動きが出てくればあっさりと応じる可能性が極めて高い。
POSCOは創業以来友好関係にある新日鉄(3.3%の株主)にも持ち株比率を引き上げるよう依頼しているという。POSCOは新日鉄の株式を2.2%所有している。
日韓の政府首脳は小泉首相の靖国神社参拝(A級戦犯を合祀しており、軍国主義の象徴と見なされている)問題を契機にきわめて冷却した関係にあるが、民間ベースでは新日鉄とPOSCOとの間は、操業の当初から新日鉄が技術指導をした経緯もあり友好関係にある。
歴史をたどれば日本の古代の製鉄技術は朝鮮半島からもたらされたことは言うまでもない。何でもかんでも日本が韓国に対して優位にあるという「妄想」に凝り固まっているウルトラ・ナショナリストも日本にはいるが、そういう偏見の持ち主は一度「慶州」の博物館を見に行って見ればよい。
そこには、上野の国立博物館にさびしく1点だけ飾られているヒスイの勾玉のついた黄金の王冠の類の金細工が、1つの古墳の中におびただしく陳列されている。これらの「工芸品」を見ただけでも古来の朝鮮半島の文化的豊かさをうかがい知ることができるであろう。
(WSJ インターネット版 06年4月12日、参照)
38-4 .POSCOの06年2Qの純利益は7,100億ウォン、前年比-44%(06年7月17日)
POSCOの06年2Qの純益は7,100億ウォン(約866億円)と前年同期 (1兆2620億ウォン)比44% 落ち込んだ。これは06年1Qと同様な傾向である。売り上げは4兆6,700億ウォンとほぼ前期なみ(+0.2%)であった が、05年2Qの5兆3780億ウォンからみると13%減っている。。
営業利益は9,410億ウォンと06年1Qの7,900億ウォンに比べ19.1%と大幅に伸びた。これはコスト削減と高付加価値の拡販に負うところが大きかったとPOSCOは説明している。
しかし、中国からの安値輸入が一服していることが利益の増加につながっていると要因も無視できない。
POSCOの李亀澤(イー・クテク)会長はミッタル・スチールなどによる買収攻勢に対抗するには、これからは日本の高炉メーカーとの株式相互持合いなどによる協力関係をいっそうう強化していく方針であると語った(現在新日鉄との株式持合いを行っている)。
38-5. POSCO、11.3億ドル投じてベトナムに製鉄所建設(06年11月18日)
POSCOはホーチミン市に近いブン・タウ(Vung Tau)に11億3千万ドルを投資してホット・ストリップ(HRC=熱延広幅帯鋼)工場を建設する計画でベトナム政府から認可を得たと発表した。
同社は既に第1期建設計画としてコールド・ストリップ(CRC=冷延広幅帯鋼)工場の建設許可は既に得ている。この建設は2009年に完成し、年間70万トンのCRCを生産する。
CRCは一般建設用から電器製品、自動車、オートバイなど今後のベトナムにおいて需要と生産が急増すると予想される用途に使用される。
第2期の2010〜2012年の間に今回認可を受けたHRCミルが建設され、年間生産能力は300万トンとなる。同時に、CRCミルも年産能力が150万トンに増強される。また連続式亜鉛メッキ鋼板設備も新設される。
HRCの材料となるスラブはインドで計画している高炉ー転炉ー連続鋳造設備によって生産されるものをベトナムに運び使用し、一時的に不足するHRCやスラブについてはPOSCOから供給する予定であるという。
同時期に他の韓国財閥企業もベトナムに進出する計画であり、Doosan(斗山)重工業は3億ドルかけて発電所と淡水化装置を建設し、ロッテ・グループはショッピング・モールを新設するなどの計画が認可された。
中国は一段落し、次はベトナムが本格的に動き出しつつあることが窺われる。
(http://www,koreaherald.co.kr/ 06年11月18日参照)
38-6. POSCOの06年の利益は前年比20%減る(07年1月11日)
POSCOの2006年の純利益は3兆2070億ウォン(約4,100億円)と05年実績の3兆9950億ウォンに比べ19.7%減った。売り上げは20兆0430億ウォンと7.6%の減少となった。
現役の原因は@原材料価格の高騰を製品価格に転嫁しきれなかったことと、A中国の安値輸出によって国内市場が荒らされたことである。
POSCOの2006年のコスト削減努力は原材料のソースの転換などにょり1兆1000億ウォンの成果を生んだとしている。
なお、06年4Q(10〜12月)の営業利益は1兆0970億ウォンとなり、05年4Qの1兆0880億ウォンに比べ微増(+0.8%)であった。売り上げは5兆4090億ウォンと前年4Q(5兆2030億ウォン)比4.0%増加した。純利益は9360億ウォンと前年の3640億ウォンを大きく上回る形になったが、これは05年4Qに多額の特損(退職金の積み増しなど)を計上したためである。
POSCOの07年の投資計画は5兆9000億ウォン(06年は3兆8000億ウォン)を見込んでおり、そのうち1兆7000億ウォン(約2,180億円)は海外投資に向けられる。これには原料確保のための投資も含まれる。
李亀澤(Lee Ku-taek)会長はここ数年の鉄鋼の世界的な需要=生産増加により、鉄鉱石や原料炭の獲得競争が激しさを増しており、原料確保のための巨額の投資が不可欠になったと語った。
また、これから需要の伸びるインド、ベトナム、タイなどへの工場建設も今後積極的におこなっていく方針であることを明らかにした。アメリカのおんぼろ製鉄所はミッタルにお任せといったところか?
POSCOは現在120億ドルの建設予算でインドで年産1,200万トンの粗鋼生産能力を有す製鉄所を建設中である。
POSCOの2007年の営業利益の目標は4兆1000億ウォンと前年の3兆9000億ウォンに比べ5.1%増、売上高は21兆3000億ウォン(2兆9400億円)と前年比6.5%増を目指すとしている。
中国の鉄鋼業は過大投資によって国内市場から世界に向かって怒涛のごとく安物鋼材を溢れ出させている。彼等の輸出は採算よりも数量優先である。そのため、中国と競合する一般用の鋼材価格は下落しつつある。
その被害を最も強く受けるのは、かのミッタル(Mittal)であろう。POSCOも建材製品のウエイトが高いだけにかなりの影響を受けつつあることが利益の減少傾向に表れている。今年はミッタルは経営上かなり苦しくなることが予想される。
日本の高炉大手は主力が自動車用の外装材など高級鋼にシフトしているため影響は目下のところ比較的軽微である。90年代末から21世紀のはじめにかけて「日本の鉄鋼業は20年は遅れている」などという的外れな議論が横行したが結果はご覧のとおりである。
特に日産のゴーン社長がめちゃくちゃな乱暴狼藉を働いてくれたおかげで新日鉄とJFEの「2社体制」が事実上形成され、彼等は逆にユーザーに対する強力な価格交渉力を手に入れた。しかも技術力や設備も大型でしかも内容的に世界最先端を行くものを持っているのである。
俗流評論家はそういう事実を知らなかったのか、無視したのか「日本は鉄鋼生産を止めて中国や東南アジアから買えばいい」などとというご託宣を平然と述べた立て板。不思議なことに日本の高炉メーカーもそれにホトンドまともに反論していなかったような記憶がある。
しかし、いうのもおこがましいが「賢い経営」という原点を外れると日本の高炉メーカーも再びピンチに見舞われる。
POSCOの1970年代から今日までの発展の歴史を振り返ると、一言で要約すれば、POSCOは明らかに日本の高炉メーカーよりも多くの点で「賢い経営」をおこなってきたということ はいえるであろう。
日本の近年の鉄鋼産業の経営者は1980年代以降。失策の連続ばかりが目に付いた。海外投資の失敗と「多角化の失敗」は特に大きなダメッジを与えた。 過当競争にのめりこみ、自らの首を絞めた。有能な技術者をリストラの名目で放出した。
POSCOの今後の課題は、「高級鋼への取り組み」であろう。この点においては日本の高炉メーカーは今なお数歩先を歩んでいる。
38-7. POSCO07年1Qは44%増益(07年4月13日)
POSCOの07年1Qの純利益は9,820億ウォン(≒1,257億円)と06年1Qの6,810億ウォンに比べ44.2%の大幅増益となった。
売り上げは22%増の5兆7010億ウォン(≒7,300億円)であった。好調の理由としては鋼材の国際価格の上昇を挙げている。輸出価格が60%アップの50ドル/トン上昇したという。
2007年全体の売り上げ予想は前年比6%増の22兆6000億ウォン(≒2兆8900億円)、純利益は4.8%増の4兆3000億ウォン(≒5,500億円)を見込んでいる。
07年の上期は引き続き上昇基調を維持するが、下期についてはやや不透明であるとして比較的慎重な見方をしている。07年の世界の鉄鋼需要は06年比5.9%は上昇するとみている。これは中国が引き続き好調なのと、ブラジルやインドの需要が増えるためだとしている。
また、POSCOはインドの新規設備投資(総額12億ドル)は進行が遅れていることを明らかにした。これは住民の反対運動(土地問題買収)と政府の資源ナショナリズム(鉄鉱石の開発許可の遅れ)が影響しているためである。インドでのビジネス展開はなかなか容易でない。
38-8.POSCOの社員インドで 村民の反対運動に遭遇(07年5月14日)
WSJによればPOSCOがインドに製鉄所を建設する予定のオリッサ州(東海岸)において、5月11日(金)に怒れる農民がPOSCOの社員の乗った自動車を取り囲み、竹の棒などで自動車のガラスを叩き割り、一時期社員を拘束するという事件が起こった。
POSCOのインド人社員と韓国人社員が近くのディンキア(Dhinkia)村に連行され、翌朝までつるし上げられ、「二度と戻ってこない」という誓約書に署名させられ解放されたと言う。
反対運動のリーダーのサホー(Sahoo)氏の言い分では「土地問題は政府と農民の間の問題であり、なぜPOSCOの人間がここにくる必要があるのか」ということのようである。POSCOとしては計画は実行する予定であるが、農民の反対を押し切ってまでやれることではないと語ったという。
POSCOは年産1,200万トンの高炉一貫製鉄所を建設する計画であり、そのための土地4,000エーカーを取得する計画である。
このプロジェクトは鉄鉱石といういまや世界的に「貴重な資源」を利用する目的もあるが、インド国内には資源を間単に外国に売り渡すべきではないというナショナリズム感情も出てきているという。
周辺の道路整備やオリッサ州で採掘される良質の鉄鉱石を搬出するための道路や鉄道の建設も必要である。インド政府は製鉄所用地以外にも「工業団地」の新設もあわせて膨大な土地を農民から買い上げる必要に迫られている。
インドは農民は概して貧困かつ零細経営であり、土地への執着心も強く、前途は多難が予想される。
(WSJ,07年5月14日、インターネット版参照)
38-9.POSCO北朝鮮から高品位原料炭と鉄鉱石の輸入を計画(08年6月26日)
POSCOは6月25日北朝鮮から高品位の石炭と鉄鉱石を輸入するための交渉に近く入ることを明らかにした。
最近の鉄鉱石などの急騰によりPOSCOは鋼材価格を急激に引き上げており、韓国内の造船業、自動車産業は苦境に立たされている。
現代自動車は鋼材だで1台当たり150ドルのコスト・アップを強いられたとしている。
北朝鮮には30億トンの鉄鉱石の埋蔵が確認されており、そのうち13億トンは採掘可能であるという。
POSCOは北朝鮮から過去2年間に10万トンずつの石炭を輸入している。この輸入数量を倍増させるべく北朝鮮と協議中であるという。
オーストラリアから輸入していた石炭価格はトン当たり98ドルであったものが08年4月から300ドルに値上げされた。
(www.nationmultimedia.com/ 08年6月26日版参照)