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韓国の政治経済(2005年12月以前)


36-6.⇒突如金利を0.25%上げ3.75%に(05年12月8日)

36-7. 05年3Qの成長率は4.4%とやや回復(05年10月25日)

36-6. 韓国銀行金利引き上げ3.5%に(05年10月11日)

36-5.韓国経済やや復調の兆し(05年10月10日)

36-4. 韓国企業は05年下期には投資24%増の計画(05年9月9日)

37. 韓国の海外建設受注は65%増(05年8月6日)

36-3.05年2Qの実質GDP成長率は3.3%とやや改善(05年7月27日)

36-2. 05年4月の経常収支は赤字に転落(05年5月31日)

36-1.05年1Qの成長率は2.7%にダウン(05年5月21日)

25-15. 04年4Qの成長率は3.3%にダウン、通年では4.6%(05年3月22日)

25-14. 2004年の対外投資は79.4億ドルと37%増(05年2月10日)

25-13. 消費者心理は6年ぶりの低水準(04年11月24日)

25-12. 04年3Qの実質GDPの伸び率は4.6%、消費不振(04年11月21日)





1.経済危機対策の公的資金は誰が負担するのか?(02年7月7日)

1997年に韓国を襲った通貨・経済危機は政府の機敏な対応によって、その後の韓国経済は順調な回復過程にあるというのが一般的な見方である。2002年は住宅投資や個人消費が好調で、輸出もかなり貢献することから、経済成長率は6.2%にまで回復するという見方(現代経済研究所)も出てきている。

ところが、最近になって政府が金融機関救済のために支出した公的資金(Public fund)が156兆ウオンに達し、そのうち87兆ウオンは回収されるが、残り69兆ウオンは返ってこない(最終的には政府負担=国民負担)になると6月末に政府が発表した。

すなわち国民1人当たり189万ウオン(日本円換算約19万円)に相当し、この金額は将来増加するということが明らかとなった。これに対し国民からは「いったい何事か?」という怒りの声が上がり始めているという。

韓国政府は69兆ウオンのうち約70%にあたる49兆ウオンを今後25年間で償却していく(ある意味では不良債権の処理を25年かけておこなう)ということである。いずれにせよ69兆ウオンは国民の税金で支払われることには変わりはない。

また、昨年11月に監査委員会(The Board of Audit)が発表したところによると、5,000人の経営者や社員が7.1兆ウオンの資金を横領、不正着服したと言われている。

97年末の危機的状況から4年半以上も経った今頃になってこのような数字が公表され、国民が怒りだすというのも解せない話ではある。その間韓国国民は公的資金の実態について知らされてなかったのであろうか?信じられないような話である。

しかし、翻って日本の状況はどうかというと、いまだに日本の金融機関が持っている「不良債権」の額はいくらなのか判らない。小泉政権は口をひらけば短期処理をうたっており、銀行も懸命に処理額をつみ増しているようだが、一向に先が見えてこない。

銀行は 金の借り手がない(優良な?)から、普通預金などいらないという。そんな銀行産業を救済するために国民はこれ以上犠牲を払う必要があるのだろうか?

小泉首相は「構造改革なくして景気回復なし」などとうそぶいている。どうも、超長期不況(クルーグマンは実質的恐慌であるといっているが)を自然治癒に委ねる方針らしい。ところで「構造改革」という言葉そのものには反対しずらいが、構造改革というコンセプト自体あいまいである。

もっと的を絞って「行政改革」や「特殊法人大幅削減」や「予算制度の改革(親方日の丸的金の使い方の見直し)」などやってもらいたい。役人は、一度分捕った予算は何が何でも年度内に使い果たすなどの狂態を演じている。こういうことはいつでも改善できるはずである。ああそうか「改善」でなく「改革」だったっけ。

日本経済もアメリカの景気が良くなれば多少の救いはあるが、ご本家のほうはエンロン、やワールドコムなど大型粉飾決算が続出し、株価は大幅安である。ゼロックスまでも20億ドル近い巨額の計算間違い(?)があったようだ。これからもボロが次々出てきそうである。90年代後半の米国の「目もくらむような好況」というのはかなり眉唾だったわけだ。

 

2.韓国の2001年の対外投資は減少傾向にある(02年7月15日)

韓国輸出入銀行の最近の発表(7月13日)によれば、韓国の外国への直接投資(FDI=Foreign Direct Investment)は32.5億ドルと2000年の39.2億ドルに比べ約17%の減少となった。投資先は中国が最も多く14.3%を占め、次いで米国の12.5%であった。

業種別では製造業が78.8%を占め、そのうち通信機器が76.1%であった。

韓国企業は国内投資をより重視している傾向がみられる。エレクトロニクス関連製品などの国内生産は上昇しているが、日本や台湾は低賃金の外国生産基地に生産をより多くシフトしている。

(02年7月20日追加)

5月に韓国輸出入銀行が発表したとこによると2001年においては韓国企業の中国への投資は4.66億ドルであり、逆に撤退した資本は19件7.27億ドルと引き上げたほうが多かった。すなわち2.61億ドルの純減となった。しかし、1999年は2.5億ドル、2000年は3.08億ドルの純増であった。

2001年末現在の韓国企業の中国への投資残高は5,019件50.2億ドルであった。(5月15日フィナンシャル・タイムズ)

しかい、別な情報(4月13日付けコリア・ヘラルド)によると2001年の韓国の対中直接投資は21.5億ドルであり対前年比44.3%増であった。これは韓国貿易投資促進庁(KOTRA)が発表した数字である。韓国の対中投資は97年から99年まで減少した後、200年には17.3%増加したとのことである。

対中投資の多い国は香港167億ドル、米国44.3億ドル、日本43.5億ドル、台湾29.8億ドル、韓国21.5億ドルである。中国全体では468億ドル、前年比15.1%増であった。なぜこのような大きな差が韓国について存在するのかは不明である。

 

3.好調な自動車の生産と販売(02年7月19日)The Korea Times による

韓国自動車研究所(現代系)は国内販売が好調なため2002年は自動車生産は320万台に達するであろうという見通しを発表した。国内販売は162万台、輸出は158万台と国内のほうが多い。今年の前半は物品税が免除され売れ行きが好調であったが、下期に税金が上がっても好調は続くとみている。

輸出は北米向けが70万台、欧州向けが40万台である。

         1996  1997 1998  1999  2000  2001  2002                              

自動車生産  281   282  195  284   311   295  320万台

 

4.韓国経済の現状と展望(02年8月17日)

2002年の上期の韓国経済は好調であった。その要因は専ら内需であった。建設需要、自動車販売、個人消費によるものであり輸出についてはさほどのことはなかった。

内需についてはバブル的な拡大であり、民需は極めて好調であった。しかし投資の拡大はさほどでもなく、5月までは前年同月比で2〜5%増加したが6月には7.5%ものマイナスになった。賃金は4月には前年比12.7%アップと異常な増加を記録した。また企業業績は好調であったが株式市場も低迷していた。

輸出は6月には前年比20%近い増加となったが、これは昨年6月が以上に低かったためであり、それまで輸出は停滞傾向が続いていた。2001年1Qから急激に落ち込みをみせた輸出はようやく2002年2Q(4−6月)にいたり前年同期比でプラスに転じた。

輸出不振の原因はいうまでもなく米国のITバブルの崩壊とその後の不況によるものである。三星電子の半導体のみはなぜか好調のようであるが現代など他メーカーは不振である。

     2000年           2001年          ’01・1Q 2Q   3Q  4Q ’02・1Q  2Q                                        

輸出  1,727億ドル(+19.9%) 1,504億ドル(-12.7%) +2.2% -11.6 -19.8 -19.6 -11.0  +5.4

輸入  1,605億ドル(+34.0%) 1,411億ドル(-12.1%)  -1.8% -13.4 -15.5 -17.1 -11.6  +7.9

輸入も輸出と同様な動きをしめしている。2002年の上期の内需ブームの割には輸入が増えなかったのは、住宅建設や自動車といった自給率の高い分野での伸びが高かったためであろう。

02年下期には内需ブームは収束に向かうと考えられるが、それでも通年でGDPの実質成長率は5.5%程度になると政府筋は見ている。ともかく2002年1Qの5.8%成長は内需要因(+6.7%)によるものであった。このまま内需要因のみによる成長が続くはずはないことは自明である。

 

表1  韓国の実質GDPおよび支出項目別伸び率(%)

  1998 1999 2000 2001 2002 '01/1Q 2Q 3Q 4Q '02/1Q 2Q 3Q 4Q 03/1Q 2Q
GDP実質 -6.7 10.9 9.3 3.1 6.3 3.8 3.0 2.1 3.5 6.2 6.6 5.8 6.8 3.7 1.9
民間消費 -11.4 10.6 7.9 4.7 6.8 1.9 4.4 5.3 7.2 8.9 7.9 6.2 4.3 0.7 -2.2
政府消費 -0.4 1.3 0.1 1.3 2.9 0.6 1.0 1.9 1.5 5.3 4.4 1.5 1.0 4.0 3.6
総固定資本 -21.2 3.7 11.4 -1.8 4.8 -4.2 -5.2 -2.5 4.9 6.6 5.4 0.5 6.8 4.8 3.5
うち建設 -10.1 -10.3 -4.1 5.8 3.3 1.5 -0.5 8.9 10.7 9.7 3.8 -4.6 6.0 8.1 7.2
  機械設備 -38.3 36.3 35.3 -9.6 6.8 -8.4 -11.2 -15.7 -3.1 3.8 7.5 7.8 8.2 1.6 -0.8
輸出 13.2 16.7 20.8 0.7 14.9 9.0 0.6 -4.4 -1.9 2.4 12.8 20.3 24.2 17.2 10.3
輸入 -22.4 29.4 20.0 -3.0 16.4 0.3 -7.5 -5.8 0.9 6.5 18.8 20.5 20.0 17.9 7.5

資料出所;内閣府「海外経済データ」ほか新聞情報から作成

http://www.bok.or.kr のプレス・リリース参照(最新版03年8月22日)

 

5. 陰りの見え始めた韓国経済(02年11月20日)(03年3月3日追加)

2002年の上半期は住宅建設と個人消費の好調にリードされて韓国経済はミニ・バブルともいうべきブームが見られた。しかし、企業業績面でみると最大手の三星電子などの突出した好業績が目立ったものの、大多数の企業はさほどでもなく、中小企業では赤字を出している企業が多かった。株価も全体的にはさえなかった。

個人消費の好調の背景にはクレジット・カードの普及・拡大があった。これは東南アジアにも見られた現象であった。借りすぎによる個人破産も急激に拡大し、社会問題化すると同時に金融機関の採算の足を引っ張った。

2001年の3Qから建設投資ブームが約1年間続いた。これはソウルの住宅投資ラッシュによるところが大きいかった。しかし、それも02年3Qから沈静化に向かった。

しかしITバブルの崩壊から輸出は2001年2Q〜02年1Qの間極度の不振であったが、02年2Qから立ち直りをみせた。これは主に中国向けが増えたためである。

このように韓国経済は主役が交代しながら02年は何とか比較的好調な数字を残せた。

3Qの上場企業(497社)の純利益は4.73兆ウォン(4,730億円)と2Qの7.12兆ウォンに比べ32.5%悪化した。1Qの純利益は8.72兆ウォンであった。また資本金上位50社中33社は3Qには赤字を、またKosdaqに上場されているベンチャー企業の半数は今年1−9月に純損失を記録した。

上場企業の27%は営業利益が金利支払いを下回っている。

三星電子の純利益は2Q1.91兆ウォンに対し3Qは1.72兆ウォンと約10%減少したもののいぜんとして好業績をあげている。

(02年12月1日追加)

輸出は自動車、半導体を中心に好調で、10月は156億ドルと9月の139億ドルを12.2%上回った。輸入は135億ドルと9月の128億ドル5.5%増加した。その結果10月の経常収支は13.8億ドルの黒字を記録した。

一方、クレジット・カードの支払い不履行(Delinquency)率は10月には10.4%(9月は9.2%)にまで上昇した。この数字をみても判るとおり、韓国の個人消費ブームは峠を越している。

(02年12月3日追加)

ニュー・ヨーク・タイムスがJames Brooke の記事で韓国のクレジット・カード問題を取り扱っている。上に記した3Qの銀行の利益率の低下は個人カードの不払いがかなり影響しているらしい。国民の貯蓄率は2002年には27.5%に落ち込んだ。1997年には33.4%であった。

現在、韓国人の大人は1人平均3枚のクレジット・カードを所持し、銀行員は10〜15枚持っているという。

現在、韓国の銀行貸出の40%は個人向けである。韓国最大の国民銀行の3Qの利益が急落したのは、個人貸付の返済不履行によるものであり、韓国外換銀行クレジット・サービス社の2002年の利益見通し205百万ドルは、個人向け貸し倒れで赤字になる見通しである。

(03年2月8日追加) 株式相場の急落が目立つ

輸出が比較的中国向けを中心に比較的好調なため工業生産は12月も9%の伸びを示した。しかし、昨年の韓国の経済成長を支えてきた民間消費は昨年末からかなり衰えをみせてきている。

個人消費ローンは1月には昨年12月に比べ2,717億ウオン減り、222兆ウオン(22.2兆円)となった。これは消費者が限度一杯借り、もうこれ以上は返済能力がないところまできてしまことに加え、政府も個人消費ローンの貸し付けに昨年10月から規制を加えたためであろう。

ただし、住宅ローンは昨年12月1.8兆ウオン増、今年1月6,559億ウオン増と依然として高水準のプラスを維持している。

株式市場も1月22日に携帯電話では韓国最大(3,200万の加盟者中約半分のシェアを持つ)のSKテレコムが業績の悪化を発表するや急落しはじめ、2月7日にはついに株価指数(KOPSI)も577にまで急落した。

ちなみにKOPSI指数は昨年12月3日には733.6であり、今年に入って下がり続けたが1月14日にはなお650.1であった。それからわずか3週間で11.2%もの下げを記録した。3月6日にはさらに555まで下げた。

SKテレコムの売上、利益とも2002年の通年では増加している。すなわち売上は8兆6350億ウオンで前年比14%増、純利益1兆5120億ウオンで同29%増という申し分のない結果であった。

しかし、2002年4Qは売上2兆3660億ウオンと3Q比5%増であったが、純利益は1,640億ウオンと3Q比マイナス63%という結果に終わった

SKテレコムは業績悪化にもかかわらず、今年の投資計画は従来の拡大方針を崩さず2.4兆ウオン(2,400億円)を投資する方針であり、そのうち3G WCDMA設備に5,200億ウオンを充当する。これを懸念した海外投資家は同社株を手放し始めたという。

また、三星電子株も1月16日に業績発表されてから株価は2月6日までに17%下落し、1株274,000ウオンにまでに下がった。同社の主力製品である256Mb DDR DRAM の価格が下がり続け、最近は1個当たり4ドルを割り込んだことに投資家が危機感を持ったためである。

韓国銀行がおこなっているBSI=ビジネス・サーベイ・インデックス(経済調査指数)も2年ぶりの低い水準となった。2月の調査ではBSIは84となり、前回の調査(2002年4Q)の91から大幅な下落となった。これは2001年の3Qの76に次ぐ低い水準である。

各主要産業ごとにこの指数はとられているが、輸出は86→81へ、国内向け産業は101→93へと下がっている。

(03年3月3日追加)03年にはいって貿易赤字にー石油価格高騰が響く

石油の値上がりによる輸入増のため韓国は今年に入って1、2月連続で貿易収支が赤字になったと報じられている。 2月は輸出が135.1億ドルで前年同月比22.5%増であったが、輸入が138.2億ドルで同比32.0%と激増し、貿易赤字は3.2億ドルとなった。

1月の貿易赤字は88百万ドルであった。2ヶ月連続の赤字は1997年10月以来のことである。輸出は全体としては比較的好調で、特に通信機器(携帯電話を含む)は対前年同月比63.4%増の13.5億ドルに達し、半導体を上回った。

自動車は同比35.3%増で12.5億ドル、半導体は5.7%増の12.0億ドルであった。コンピューターは-5.1%、造船-23.5%であった。

向け先は中国向けが14.6億ドル、米国向けは14.4億ドルであった。   (http://www.koreaherald.co.kr  3月3日付け参照)

輸入は原油が前年同月比58.2%増え5.1億ドルの支払い増となった。韓国政府は原油の輸入関税を現行の5%から3%に、また石油製品については7%から5%にそれぞれ引き下げることを検討している。

(03年3月6日追加) 中小企業の設備稼働率は43ヶ月ぶりの低水準

韓国中小企業連盟がおこなった1,500社の調査によると03年1月の設備稼働率は70.5%と前月比-0.3%となり、99年6月以来の低い水準にまで低下した。

しかし、韓国銀行の見通しでは上半期は5.5%、下半期は5.9%と03年後半には回復していくとみている。

 

6. 失業率は上昇傾向ー若年層の失業率が高い(03年2月24日)

韓国の失業率は昨年12月3.0%から今年1月には3.0%にややあがった。日本の5.7%に比べると極めて低い数字であるが、20歳〜29歳の若年層の失業率は昨年末の6.6%から1月には8.1%へと急上昇している。

この3.1%というのは「季節調整」後の数字であって、実数は昨年12月3.1%から今年1月には3.5%に上昇している。これをみても最近韓国経済はだいぶ景気が悪化しつつあることがうかがえる。

これは高専卒以上の若者が労働市場に登場したという季節的要因も存在するらしいが、最近の韓国は新規大卒者の失業率が極めて高く、新しく職につくには学歴を1ランク落とさないと仕事が見つからないとさえ言われている。

最近の調査によれば上場企業311社中(アンケートに回答した)今年新規採用を予定している企業は131社(42%)にすぎず、109社は未決定で、残り71社は採用予定はないとしている。

日本は新規大卒者が正社員として卒業後すぐに就職するのが困難になりつつあるが、韓国も事情は同じらしい。その最大の原因は企業の海外進出に伴う「空洞化現象」によるものである。

(03年6月11日)大卒の半分以上が職に就けず

6月11日付けのコリア・ヘラルド紙によれば、新規大卒(含む短大)の60%近くが職に就けないでいるという。

サンプル調査ではあるが2,688人の4年生大卒者中、44%が就職でき、残り56%は求職中という回答があった。学部別には工学部出身者の就職率は48.2%、自然科学系が43.3%、人文科学系が36.6%、社会科学系が36.6%、芸術系が34.9%という就職率であった。

これらの数字は、大卒者の就職率は約50%程度と噂されていたことを裏付けるものであり、日本より韓国の方がやや深刻な様である。ちなみに米国も新規大卒の就職率は50%前後といわれている。

 

7. SKグループが12億ドルの粉飾決算(03年3月15日)

先にSKグループの株が急落した話しを紹介した(項目5の後半)が、3月11日に韓国第3位の財閥であるSKグループが2001年にi12億ドルもの粉飾決算をしていたことが明るみに出た。

同時に既に逮捕されているSKグループの2代目オーナーのチェ・テ・ウォン会長(42歳)は同グループの商事部門のSKグローバル社の株主に対し、個人資産を投げ出しても弁済するといっている

韓国銀行はSKグループの危機が韓国経済全体に波及しないように2兆ウオン(約2,000億円)の資金を韓国の投資信託会社(複数)に投入し、パニックに備えている。さらに追加で2兆ウオンの買いオペをおこない金融市場に資金を流すとしている。

これは規模こそ小さいがエンロン社(米国)の韓国版ともいうべきもので、銀行など金融関連株が軒並み下落している。

SKグループ本社は十分な手元資金があり、問題はないと言っている。しかし、97年危機の時に崩壊した大宇グループ並に「内容が悪い」という見方も出ており、なお警戒を要する。 借入金は8.2兆ウオン(約8,300億円)といわれている。

政府当局はこの問題がSKグループ以外に波及することはないと言明しているが、他グループも「疑惑・懸念」がもたれることは避けられない。三星は従来から「独り勝ち」の観はあったが、半導体の価格下落が続いており、LGグループや現代グループにも懸念がもたれているという。

日本の銀行は、既に韓国経済の内容がかな前から悪化しているのを見越して、最近は資金の引き上げをおこなっていたという。

「日本は韓国を見習え」などというまことしやかなお説がメディアや自称韓国通学者や評論家の間に流布していたが、筆者は必ずしもそうは見ていなかったのは、本ホーム・ページを最初からご覧いただけば判るとおりである。

しかし、韓国の製造業特に電機関連の企業は着実に力をつけてきていることは間違いのない事実である。

(関連記事:http://www.ft.com http://www.koreaherald.co.kr3月15日付など)

(03年4月1日) SKの粉飾決算第2弾ー株式市場に打撃

SK Global社は2002年は1,942億ウオンの純利益をあげてたと報告していたが、実際は2,957億ウオンの赤字であったと粉飾決算の事実を認めた。同時に、累積負債は53億ドルであり、1.69億ドルの債務超過であることも明らかにした。

これにより、今までに判明したSKグループの粉飾決算の総額は2兆200億ウオンに達する。

SKグループは今年は利益を出せると強調しているが、説得力はさほどない。

3月31日の韓国の株式市場はイラク戦争の悪影響もあって、前日比ー20.63ポイントの535.7にまで下落した。

とりわけ三星電子がー7.5%と大きく値を下げたことが注目される。

 

8. トラック労組のストがPOSCO直撃(03年5月7日)

韓国貨物輸送労働組合員約400名が大手鉄鋼業を重点に5月2日からストライキに入り既に5日間が経過し、POSCO(浦項製鉄所)では1日20,000トンの鋼材の出荷ができなくなり、110億ウオン相当の損害を受けたと会社は説明している。

また、東国製鋼では6,000トン、24億ウオン相当、INIスチールでは9,000トン、44億ウオン相当の在庫が積みあがっている。

加えて、昨日から韓国貨物輸送労働組合の京畿道ー仁川支部の組合員が「同情スト」に突入し、昌原地区の輸送がマヒ状態に陥っている模様である。

このストが長引けば自動車産業や電機産業の減産につながることは確実であり、さらに他の地域にもトラック関係のストが拡大する動きもあり、事態を重く見た盧武鉉大統領はスト参加者には厳しい態度で臨むと言明している。

組合の要求は、トラック運賃の値上げと、ディーゼル油税の減免である。POSCOと組合は話し合いが始まり、11〜15%の値上げで妥結し、浦項と光陽の諒製鉄所での出荷業務は7日には再開されたと伝えられる。

しかし、釜山港での話し合いは未だ決着がつかず、5月9日現在、依然としてストは続いている。

5月15日にはほぼ決着を見た。14日には運輸業務を支援するために軍隊の出動が用意されていたという。今回は釜山と光陽の2港が結果的に大きな打撃を受けた。

 

9. 韓国経済は深刻さを増す(03年5月19日)

韓国は国内需要と輸出の双方で不振が目立ち始めている。3月には卸売りと小売が前年同月比3%ものマイナスとなった。また2月に比べても−1.8%である。

住宅建設は03年1Qには前年比22.8%の減となった。しかし、アパートの建設だけは好調で前年同期比で+33.7%であるという。地域的にはテジョンは一大建設ブームが巻き起こり、前年同期比353.2%像であるという。

その理由は盧武鉉大統領が中央行政機関をソウルからテジョンに移してはどうかという提案をしているためであるという。

昨年は6.3%の経済成長を遂げた(項目4の表1参照)が今年は大きくスロー・ダウンして3%ぐらいまで落ちるというのがモルガン・スタンレーの見通しである。たしかに、韓国経済は02年後半から不振である。

それは企業業績に端的に現れている。03年1QはKSE上場529社の純利益は前年同期比ー35.47%の6.47兆ウオン(約6,400億円)にまで落ち込んだ。

一方、中小企業、ベンチャー・キャピタルの多いKOSDAQ699社の経常利益は84%もの落ち込みを示し2,079億ウオンとなり、純損失173億ウオン(02年1Qは純利益1.47兆ウオン)となった。大変な様変わりである。

KOSDAQグループの落ち込みに最も大きな影響を与えたのは国民クレジット・カード社で3,582億ウオンの損失を記録した。

全般的にみて製造業は純利益ー20.72%(純利益6.92兆ウオン)の落ち込みであったが、金融機関の不振は特に深刻で、営業収入は28%増の12.35兆ウオンを記録したものの、営業利益は実にー95.42%の722億ウオンとなり、純損失4,486億ウオンとなった。

韓国経済のチャンピオンともいうべき三星は総売上15.93兆ウオンと30.24%の減となり、純利益は38%減となり1.39兆ウオンとなった。

財閥トップ10社の売上合計は39.6兆ウオンと前年同期比ー19.05%となり、純利益の落ち込みはー35.81%となり2.17兆ウオンにとどまった。

全般に不振の中でも鉄鋼と造船は世界的な需要増加に支えられ比較的好調な業績を上げた。

(03年5月26日追加)また、危険な兆候として、韓国は03年4月末現在、預金額が387兆ウオンに達し、2001年末の257兆ウオンに比べ約50%も増加している。この資金が主に不動産投資に流れているとみられる。

マンションの価格も異常に高騰している。3.3平方メートル当たりの平均売り出し価格は、1999年は642万ウオン、2001年は766万ウオン、2002年は990万ウオン、2003年5月23日現在は1,036万ウオンである。

銀行の不動産融資残高は1999年末の137.7兆ウオンから03年3月末には271.5兆ウオンと2倍近くに膨らんでいる。

(03年5月29日追加)韓国銀行のパク・セオン総裁は韓国経済は低成長と高い失業率にみられるように深刻な状態にあると語った。昨年の4Qから目だって不況が進行しており、消費も53ヶ月來の低水準を記録した。

朴総裁はさらに5月13日から公定歩合を0.25%引き下げ4%とするほか、「経済界、労働、政治、教育部門でいっそうの改革が必要であると」危機感を強調した。

4月の卸売りと小売統計によれば前年同月比−4.3%と激しく落ち込んだ。工業生産は前年同月比+1.8%とわずかながら増加した。これは輸出の増加によるものである。

(03年6月5日追加)国立のシンク・タンクである韓国開発研究所(KDI=Korea Development Institute)は工業生産と輸出の鈍化により、韓国経済はさらに下降線をたどっていると発表した。

4月の小売と卸売りは3ヶ月連続の減少となり−4.3%を記録し、98年11月以来の低い数字になった。これは個人消費の低迷を意味するものである。

工業生産は4月は前年比+1.8%とプラスにはなったが、3月の+5%からみると、著しく鈍化した。また、地元企業の機械・設備投資は−4.2%ととなった(3月の+0.1%)。一方、在庫は11.5%も積みあがった(3月は+11%)。自動車と化学品の在庫増が目立った。

また、韓国銀行の調査では5月は4月よりも景況が良くなっているということである。

(03年6月28日追加)5月の工業生産は前年同月比−1.9%

統計局の発表によれば韓国の5月の工業生産は前年同月比マイナス1.9%と大きく落ち込んだ。工業生産の落ち込みは15ヶ月ぶりのことである。

半導体は+12.2%、通信機器、ビデオ、オーディオ製品は+9.1%であったが、自動車はー6.3%、機械生産はー7.2%と不振であった。

個人消費も卸売りと小売統計で見ると5月は4ヶ月連続の落ち込みとなり、前年同月比−4.6%となった。これは実働日数が少なかったことと、トラック運転手のストも影響したと見られている。

工場稼働率は4月の76.7%から5月は73.9%に低下している。

しかし、建設受注は前年同月比37%と異常な増加を遂げた。

(03年7月4日) 2003年の成長率は2.5%程度−メリル・リンチ

韓国政府は今年の実質GDPの成長率は4%程度(2002年は6.3%)にまで落ちるであろうと見ていたが、ここにきて東アジアを中心とするSARS騒動の影響もあり、さらに低くなるという悲観論が強まっている。

メリル・リンチは従来3.3%の成長を予測していたが、7月2日には2.5%にまでさらに落ち込むと下方修正した。

クレディ・スイス・ファースト・ボストンも従来の見通し3.1%を2.9%に引き下げた。

香港上海銀行はさらに厳しい見方をしており、3.4%の見通しを1.9%にまで下方修正した。

いずれも、対米向け輸出環境がさほど改善されないことや、国内需要の低迷を予想してのことである。

(03年7月15日)03年2Qの実質GDPの伸びは1.7%、補正予算で内需刺激

今年の1Qの成長率は実質で前年同期比3.7%と昨年の4Qの6.8%から大きく落ち込んだが、2Qはさらに下がり、1.9%程度になる模様である。(7月14日、ウオール・ストリート・ジャーナル)

既に、韓国銀行は03年の成長率見通しを4.1%から3.1%へと先週引き下げた。

しかし、輸出は1Qは20.8%伸び、2Qは14.9%(いずれも前年同期比)伸びており、下期も順調な伸びが予想されることから、景気全体としてはこれ以上の落ち込みは避けられると見ている。

韓国政府としても、内需押し上げのため、先週4.5兆ウオンの補正予算を決定した。また、地元企業の投資を促進するために、設備投資減税を検討しているという。

 

10. 6月の輸出は前年比22.3%増(03年7月2日)

6月の輸出は157.7億ドルと前年同月比22.3%の増加となった。特に自動車の伸びが82.5%と大きく伸びた。半導体は10.5%の伸びにとどまった(金額14.8億ドル)。

携帯電話は伸び率36.9%、金額14.4億ドル、コンピュータは7%増、11.6億ドル、家電製品は15.5%増、9.7億ドルなどが輸出増を支えた主要品種であった。

一方、繊維類は1.3%減の13.9億ドル、石油製品は6.1%減の4.8億ドルであった。

仕向け国別では中国向けが49.9%の伸びを示し、16.2億ドルとなった。米国向けも好調で16.7%増、15.6億ドル、EU向けは12.1%増の、10.9億ドル、東南アジア向けが10.0%増の、10.9億ドル、日本向け7.4%増、8.2億ドルであった。

2003年の上期合計では輸出が17.7%増の893.7億ドル、輸入が21.0%増の859.2億ドルと輸入の伸び率の方が高かった。

2003年の下期は世界経済の不振から輸出はかなり落ちるという見方を政府筋ではしている。

 

11. 外国資本の投資は半減(03月7月2日)

今年の1〜5月の外国からの直接投資は4億12百万ドルにとどまり、前年同時期の8億12百万ドルに比べほぼ半減となった。

1997年は28.4億ドル、99年は93.3億ドル、2000年は92.8億ドル、2001年は35.3億ドル、2002年は19.7億ドルであった。

多くのアナリストは投資が減っている原因としては、@韓国国内市場の低迷、A度重なる労働争議、B硬直的な行政、C地価の値上がりや賃金騰貴が上げられると見ている。(7月2日付け、コリア・ヘラルド紙参照)

 

12. 韓国銀行が金利0.25%引き下げ、コール・レートを3.75%に

韓国銀行(中央銀行)は消費者および企業の経済活動の不振に刺激を与えるため、金利水準を0.25%引き下げ、コール・レートを3.75%と過去最低の水準にした。

同時に、03年のGDP実質成長率の見通しを3.1%に引き下げた。

消費は引き続き減退傾向にあり、6月のデパートの売上は、前年同月比−4.6%となり、5ヶ月連続でマイナスとなった。

 

13. 韓国の対日貿易は過去最高の赤字(03年7月14日)

今年の上期(1−6月)の韓国の貿易赤字は84.4億ドル以上に達する見込みであり、過去最高であった1996年の上期の赤字72.7億ドルを上回ることが確実となった。

韓国の対日輸入で多い品目は鉄鋼、半導体製造装置、電子部品、機械および自動車部品である。

韓国が輸出を増やすと、日本から部品などを大量に輸入するという構造になっている。

http://www.koreaherald.co.kr  7月14日付け参照。

(詳細分析は後日)

14. IMF1997年の通貨危機の処方の誤りを認める(03年7月29日)

IMFは傘下の独立のIEO(the Independent Evaluation Office)から279ページにおよぶ報告書を出し、1997・98年の通貨危機における融資対象国(インドネシア・韓国・ブラジル)の融資条件等の一連の施策につき、誤りのあったことを認めた。

このようなことはIMFの歴史始まって以来のことである。

IMFのコンデショナリティ(融資条件)のあまりに新古典派的経済学の機械的応用に過ぎない処方については、以前から指摘され、筆者も及ばずながら拙著「東南アジアの経済と歴史」のなかで厳しく批判してきたが、IMFも公式に「自己批判」下といえる。

ただし、筆者もその全容はまだ読んでいないので、詳しいコメントは後日に譲るが(宿題がどんどん増えてさばききれそもありませんが)、韓国についての要点はコリア・タイムズ7月29日付(インター・ネット)に掲載されている。

それによると、金融の自由化が急速すぎたことと、引締め政策が厳しすぎ、98年のGDPがマイナス6.7%にまで落ち込んでしまったのは行き過ぎであったということのようである。

日本では、韓国の「構造改革」がうまくいったので、お手本にすべきであるという議論が主流の如しであるが、実態はそうでもなく、多くの資本蓄積が失われ、必要異常に体力を弱めてしまった企業が多いのである。

雇用も、「常用労働者」が減り「パート・タイマー」が異常に膨れあがり、韓国民全体としてはおおきな被害を受け、その後遺症からいまだに抜けきっていない。

 

15. 韓国の03年2Qは1.9%の伸び(03年8月22日)

韓国の03年2Q(4−6月)の対前年同期比の実質GDPの伸び率は1.9%にとどまった。韓国としては不況感のやや強い数値であるといえよう。

とりわけ不振だったのは民間消費であり、マイナス2.2%となった。これは過去のクレディット・カードの乱用のツケが回ってきたものであろう。

固定資本形成では建設投資は+7.2%と堅調であったが、機械への投資が-0.8%と依然として低い伸びを続けている。

ある意味では、企業の国内での設備投資意欲が低く、空洞化現象を物語るものかもしれない。建設が旺盛なのは依然としてソウル付近を中心とするマンション建設のブームが続いているためであろう。

輸出は実質10%台の好調な伸びを維持しており、これが韓国経済の支えになっていることは間違いない。米国、日本向けが寄与していると説明されているが、中国向けも依然好調のはずである。

部門別に見る(表2)と、農林水産業はマイナス傾向を続けているが、製造業は輸出の好調を反映して一応プラス成長(+2.2%)を維持している。しかし、増加の勢いはかなり鈍っている。

建設部門は上に述べた通り、好調で8%を維持している。

韓国政府としては内需のテコ入れのために近々36億ドル相当の財政出動を検討しているという。既に韓国政府は金利の引き下げや物品税・自動車取得税の減税なども実施している。

(03年11月22日) 03年3Qの成長率は前年同期比+2.3%−輸出の好調が支え

韓国銀行の発表によると、03年3Q(7−9月)の実質成長率は前年同期比+2.3%であった。2Qの不況感からはやや回復してきている。回復をリードしているのは輸出で+15.2%となった。これは中国向けの増加によるところが大きい。

次いで、建設投資の伸びが7.8%と以前好調が続いている。これはソウル南部のマンション、ビル建設ラッシュによるところが大きい。

一方、民間消費は−1.9%と依然として不振が続いており、機械設備投資も−4.7%と落ち込みが大きくなっている。要するに、国内での設備投資が不振を続けているのである。これはやがて輸出にも悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している。

部門別には(表2参照)農業部門が9月の台風による水害と天候不順(日本と同じ冷夏)に見舞われたため−5.6%と大きく落ち込んだ。農民の苛立ちは最高度に達しており、WTOとFTA(特にチリとの2国間貿易協定)に反対する7万人のデモがソウルであった(11月19日)。

製造業は2.4%の伸びを示した。不振だったのは繊維、衣類、自動車である。一方、情報通信(携帯電話など)、半導体、家電が輸出に支えられ好調であった。

サービス部門はレストラン、小売など個人消費にかかわる業種が不振で、金融、保険、ビジネス・サービスの分野が好調であった。全体の伸び率は1.8%とさほど大きなものではなかった。

表1  韓国の実質(1995年価格)GDPおよび支出項目別伸び率(%)

  1998 1999 2000 2001 2002 2003 '02/1Q 2Q 3Q 4Q 03/1Q 2Q 3Q 4Q
GDP実質 -6.7 10.9 9.3 3.1 7.0 3.1 6.2 6.6 5.8 6.8 3.7 2.2 2.4 3.9
民間消費 -11.4 10.6 7.9 4.7 7.9 1.4 8.9 7.9 6.2 4.3 0.3 -1.8 -1.9 -2.2
政府消費 -0.4 1.3 0.1 1.3 6.0 3.7 5.3 4.4 1.5 1.0 4.0 3.7 2.6 3.6
総固定資本 -21.2 3.7 11.4 -1.8 6.6 3.7 6.6 5.4 0.5 6.8 4.6 3.7 2.6 3.6
うち建設 -10.1 -10.3 -4.1 5.8 5.3 7.6 9.7 3.8 -4.6 6.0 8.0 7.3 7.9 7.4
  機械設備 -38.3 36.3 35.3 -9.6 7.5 -1.5 3.8 7.5 7.8 8.2 1.8 -0.6 -5.0 -2.4
輸出 13.2 16.7 20.8 0.7 13.3 15.7 2.4 12.8 20.3 24.2 15.9 8.4 14.9 23.1
輸入 -22.4 29.4 20.0 -3.0 15.2 9.7 6.5 18.8 20.5 20.0 14.2 5.2 7.7 11.7

資料出所;内閣府「海外経済データ」ほか新聞情報から作成

http://www.bok.or.kr のプレス・リリース参照(最新版04年3月23日)

 

表2 韓国の実質GDP主要部門別伸び率(%)

02/1Q 02/2Q 02/3Q 02/4Q 02/year 03/1Q 03/2Q 03/3Q
実質GDP 6.2 6.6 5.8 6.8 6.3 3.7 1.9 2.3
農林漁業 0.7 -3.7 -2.2 -6.3 -4.1 4.8 -1.4 -5.6
製造業 4.2 6.6 5.5 8.8 6.3 5.2 2.2 2.4
電・ガ・水 13.7 13.1 11.7 14.0 13.2 7.7 5.9 6.1
建設 8.6 3.1 -3.8 6.3 3.2 8.8 8.0 8.3
サービス 8.1 9.2 9.5 8.6 8.8 2.0 0.7 1.8

http://www.bok.or.kr のプレス・リリース参照(最新版03年11月21日)

 

16. 外資系企業に労働争議が多発(03年9月3日)

9月1日付けのコリア・ヘラルド紙によると、外資系企業に労働争議が多発しているようである。

韓国の貿易・投資推進庁の調査によると、今年の1〜7月の間に外資系企業で発生した争議件数は27件に達し、既に昨年1年間の26件を上回った。

なかでも、自動車部品関係の企業が14件と最も多く、そのうち7社は工場閉鎖においこまれた。そのなかには日系企業が多いという。

韓国の労働争議は最近激しさを増し、7月には現代自動車労組がストに入り、少なからぬ打撃を受けた。

外資系ではネッスレ(Nestle)社が忠清道に工場を持っているが、労組が11.7%の賃上げと労組の経営参加を要求し、7月7日から長期ストをおこなっている。

会社は賃上げを5.25%以上出せないとして抵抗しているが、近年の労賃の上昇に採算が悪化してきたため、工場閉鎖を検討しているという。

韓国のアメリカ商工会議所は政府に対し、@労組の戦闘性ー争議行動が過激すぎる、A労働の硬直性、B労務費の高騰の3点について善処するよう要望している。

これは韓国の労働組合が極度にナショナリスティックで外資系企業に厳しく労働攻勢を仕掛けるということを主張しているものではないが、労賃の急騰は韓国の製造業の国際競争力をそいでいるということは事実であろう。

思い起こせば、1970年代に韓国政府は馬山に輸出加工区を作り、多くの日系企業が進出したが、たちどころに労働争議に見舞われ、そのほとんどが撤退を余儀なくされたことがあった。

それ以降、日系企業は韓国に工場進出するケースはあまり多くはなかったが、最近再び韓国経済の回復にあわせ、進出企業が増加傾向にある。

現地企業の社長を韓国人にすれば多少は違うというようなことも言われてきたが、実際はどれほどの効果があるか疑問である。

 

17. 韓国農民代表がカンクンで抗議の自殺(03年9月14日)

メキシコのカンクン(Cancun)でWTOのシンガポール多角的貿易交渉の閣僚会議が開かれ、日本は農業問題でおおいにゴテまくっており、欧米とも調子が合わず待ったくの孤立状態にある。

なるほど、それでFTAにやけに熱心なのかと、変な勘ぐりもしたくなるが、FTAも非農業国のシンガポール以外とはうまくいっていないらしいのは、私に言わせれば勿怪の幸いである。

貿易の自由化は本来多角主義であるべきであり、WTOとかAPECの場で、もっときちんとやるべきことである。日本はコメ問題があるからニッチモサッチもいかないのは困りものである。

事情はお隣の韓国でも同様である。韓国は今回のカンクン会議に農民の代表団が「自由化反対」をアピールするために参加した。

このなかで、リー・キョンヘ(56歳)という人が、警備側の作ったバリケードの2.5mの金網によじ登り、ナイフで左胸を突き刺し、抗議の自殺をした。リー氏は元全羅北道の道議会議員で、自前の農民学校を開くなど、熱心な農業運動家であったという。

リー氏は「WTOは農民を殺す」というプラカードを掲げていたという。

その一方で、途上国はG21というブラジルなどが加盟するグループがあり、先進国は農業補助金を撤廃し、農産品の自由化をもっとすすめよという主張をおこなっていく。

米国の労働組合などは工業製品の輸入規制を求めてWTOに敵対的な運動を展開し、1999年のシアトル大会を抗議行動でご破算にしてしまった。

先進国と途上国ではさまざまな問題で利害が食い違い、カンクンにも厳重な警備体制にもかかわらず10,000人ほどのデモ隊が押し寄せているという。

私は、先進国にも、方法の善悪はあるにせよ、農民を守らなければならないという政治課題があると思う。もちろん、途上国側にも1次産品を輸出しなければ、貧しい農民の生活水準の向上はできないという事情がある。

しかし、前のウルグアイ・ラウンドで先進国は一気に工業製品の輸出自由化を途上国に押し付けすぎたことは否めない。2001年のドーハ・ラウンドでも自由化理念のみがさらに加速され、本音と建前のギャップがいっそう拡大しまった。

そこには、自由化は世界各国の貿易を促進し、全ての国民を豊にするという一見もっともらしい「経済学の論理」が先行していたことは間違いない。

アダム・スミスの「国富論」には確かにそういうことが書いてある。スミスは貿易自由化のためには植民地すら放棄しろとも書いている。しかし、全ての国が18世紀のイングランドではないのだ。

ドイツのリストはスミスの自由化論は当時の後進工業国ドイツには当てはまらないといっている。21世紀の今も工業製品の自由化などを気前良くやってしまっては食べていけない人が大量に出てくる。物事には節度が必要である。

東南アジアでもタイは1855年にイギリスとボウリング条約を結んだが、そのときイギリスがタイに課した条件は、工業製品の輸入関税を3%以下にせよというものであった。

その結果、タイはどうなったか?100年後のタイの工業といえば「精米業」以外の何があったかである。確か、米を入れる麻袋工業もあったような気がする。要するに工業らしい工業はほとんど育たなかったのである。

現在タイは電気製品など工業製品の大輸出国である。マレーシアも然りである。ではいつからそうなったかといえば、最近10年あまり前からのことである。

1985年のプラザ合意によって、急激な円高に見舞われた日本の企業が輸出基地をタイやマレーシアに日本から移転してからの話しである。しかし、工業製品の輸出国に転換できた国は韓国や台湾や中国や東南アジアの一部の国に限られている。

特に中国と東南アジア諸国は外資の進出による影響が決定的であった。

先進国は工業資本の利益を追求するのに急なあまり、国内の農業問題を二の次にしてきたことは確かである。困った農民にはある程度の補助金(総額は極めて大きいが)を支給して黙らせてきたともいえよう。

農業問題については私はまったくの素人だが、日本に即して言えば、戦前の5反百姓をベースにした農業政策が今現在も有効なはずはない。しかし、太陽と水があれば大量の米を生産してくれる水田は本来最も効率の良い「生産設備」であることは確かである。

これが、日本や韓国の農民を苦しめるモトになっているのは一体どういうことであろうか?農業政策が根本から間違っていたのか、あるいは農業が工業化の「行き過ぎた成功」の被害者なのだろうか?

日本にも韓国にも深刻な農業問題があることは今回改めて明らかになった。

亡くなられたリーさんはきっとすばらしい情熱家で先祖伝来の農業をこよなく愛された方であろう。謹んでご冥福を祈るとともに、第2のリーさんが出ないことを切に望みたい。

14日、カンクン閣僚会議は参加146カ国、とりわけ豊な国と貧しい国の意見が折り合わず、何の成果も見ないまま失敗に終わった。その結果、米国や日本(EUは別)はFTA競争に躍起となるであろう。

それが、進行していけば、WTO体制はますます機能不全に陥るであろう。

まず、大事なことは世界銀行が言うような「自由化を推進すれば2015年までに5,200億ドルの貿易量が増加し、1億4400万人が貧困から脱却できる」というような、散漫な楽観論から脱却して、もっと具体的な現実論に立ち返る必要がある。

 

18. 来年の韓国経済は依然として不振(03年9月21日)

韓国のいくつかのシンク・タンクは来年の経済も国内投資と個人消費の低迷からせいぜい5%前後の「低水準」にとどまるであろうという見通しを出している。

日本では4〜6月期の成長率が1%(年率では3%台)に達したことから、「改革の効果が出はじめた」などとハシャギ回っている総理や経済大臣がいて、とんだお笑いを呼んでいるが、韓国では5%位では景気不振である。

支えは中国向けの輸出だけというのは日本と同じである。日本は設備投資が出てきたなどといっても輸出用の設備増強と、老朽設備の更新である。地方経済はほとんど死に掛かっているようなところが多い。

小泉ー竹中流ではない「ニュー・ディール」政策が必要である。郵政が民営化(私営化)されてもメリットが出てくる保証は何もないし、景気回復にはどう考えてもつながらない。

下手すると民間業者に「良いとこ取り」されて、残された公営事業が赤字になり、後で国民の税金を使って尻拭いさせられるのが落ちである。運輸会社が儲かって、国民が赤字をかぶるという姿が見え見えである。

韓国のエコノミストの言い分では5%弱程度の成長率では所得水準はほとんど上がらず、消費者信用のデフォールト(支払い不能)はさらに増加するという見方をしている。

表3 主要研究機関の2004年GDP伸び率見通し

三星経済研究所 4〜5%
IMF 4.7%
韓国経済調査研究所(民間) 4.4%
LG経済調査研究所 5%
Credit Suisse First Boston 5.4%

(03年9月22日)製造業の3社に1社は金利支払いの利益を確保できず

韓国銀行の調査によれば、調査対象の1,335社についてみると、03年上期は売上高は前年同期比6.2%の増加をみたが、連結経常利益は1年前の9.2%から7.3%に低下した。

その要因は主に外部的なものである。ウォン高傾向にあるなかで輸入原材料価格が上昇した。

黒字企業の比率は02年上期は75.3%であったが、03年上期は71.3%に減少した。

支払い金利をカバーできない企業の比率は33.3%に達した。02年の下期は28.8%であったことからも今年に入ってからの企業業績の低下は明らかである。

(03年9月26日)8月の自動車の国内販売は過去5年間で最も不振

韓国の8月の国内自動車登録台数は24,407台にとどまり、過去5年で3万台を割り込んだのははじめてである。

ただし、1−8月の合計では515千台増え、1,462万4千台となり、2002年末に対して3.7%増となった。

 

19. 造船業は活況を呈している(03年9月26日)

最近、あまり好調とはいえない韓国経済のなかでも造船業は極めて好調であるというレポートが9月24日付のニューヨーク・タイムズに掲載されていた。

韓国の造船業は1999,2000,2002年に次いで今年も日本を抜いて世界一の建造量になるという。

現代重工は今後3年半分の受注残がある。韓国全体の9社の造船会社の平均でも2年半の受注残を抱えている。

30万トンの原油タンカーの値段は6,700万ドルで、LNGタンカーの価格は2億ドルであるという。ただし、日本の造船会社の受注価格より安いといわれている。

韓国の2002年の新造船建造量は1,240万グロス・トンであり、2001年比39.7%増であった。受注残は2,750万Gトンと、前年比36.7%増であった。

一方、ライバルの日本の数字は2002年の建造量は1,150万Gトン、受注残は2,400万Gトンであった。

EUの建造量は400万Gトン、新興勢力の中国の建造量は160万Gトンであった。

専門家のバーソロミュー氏の話しによると、韓国の新造船は急速にハイテク技術を取り入れ、船員の省力化が進んでいるという。

最近の受注増の背景には2重船底にするという傾向が進んでいるためという。座礁時のタンカーの油モレ事故を防ぐには2重底の船腹が必要であるということから世界的に規制が強化されているという。

すなわち、EUでは1983年以前に建造されたタンカーは2005年までにリプレースし、それ以降のタンカーについては2010年までにリプレースしなければ入港させないことにしたという。

 

20.不動産バブルの崩壊近し?(03年10月26日)

韓国経済は国内需要が落ち込み、輸出の好調で何とか支えられているという状況である。昨年の今頃から、韓国の経済は確かにおかしくなってきた。国内では自動車販売が10月になってやや持ち直しているという。それ以外は不振が続いているようである。

今まで、韓国の景気を支えてきた最大の部門は、ソウル市南部のマンション建設ブームであったが、最近の調査ではマンション購買希望者の間で急速に近い将来急激な値下がりを懸念するムードが出てきているという。( http://www.koreaherald.co.kr 03年10月26日付け)

国営の韓国住居研究所(Korean Research Institute for Human Settlement)が先週初めに発表したレポートによればクアンナム地区(ソウル南部)のマンション価格は40%はオーバー・バリューになっているという。

韓国政府は10月7日に不動産バブルのこれ以上の進行を阻止するために、新たな不動産融資に対する規制と不動産取得税を増加させる措置をとった。9月には不動産融資が2.3兆ウォンという昨年11月以来の高い伸びに達したためである。

 

21.製造業の海外工場移転が中国中心に進む(03年10月26日)

かんっくの関税局の発表によれば、1998年以降5年間で4,129件の韓国企業の海外工場建設がおこなわれ、そのうち70.7%が中国への進出であるという。

1998年368件、99年464件、2000年623件、2001年1,070件、今年に入って9月までに790件合計3,315工場が韓国での操業をやめ、海外移転してしまったという。

また、韓国商工会議所の調査によれば10社中9社までが将来中国への投資計画を持っているという。

韓国の輸出は7〜9月は中国向けのシェアが米国向けを追い抜きトップになった。03年通算でも中国向けが史上初めて、トップになる見込みである。

表4 韓国の主要国別輸出(単位:100万ドル)

資料:http://www.bok.or.kr/

⇒最近の動向は#27参照

 

22. 輸出は空前の好調さだが、内需はさっぱり(04年3月2日)

韓国の2月の輸出は194.6億ドルに達し、前年同月比45.9%のプラスとなった。この伸び率は1988年8月の52.6%に次ぐ大きな伸び率である。一方、輸入は174.1億ドルで同25.6%の伸びであった。貿易黒字は20.5億ドルとなった。

3月までは今の好調が維持できるが、ウォン高傾向と輸入原材料費の高騰があり、先行き楽観は禁物だとの見方を通商産業・エネルギー省はしている。

輸出の向け先としては中国向けの増加が著しい。それに加え経済の回復傾向にある米国向けと日本向けが増えている。

輸出品目では半導体、自動車、携帯電話が主力となっている。特に半導体は前年同月比75.6%増、自動車60.5%増、コンピュータ50.5%増、造船49.4%増、無線通信機器48.1%増が目立つ。

一方国内需要は低迷が続いている。1月の自動車販売は75,794台と前年同月比39.4%ものマイナスになった。自動車の在庫も積みあがっており、輸出の動向如何では原産せざるをえない除去うに達しているという。

ルノー・サムソン自動車は昨年12月より8時間操業(1シフト)に生産をおとしている。

 

23. EU商工会議所が韓国に市場開放と知的所有権の尊重を要求(04年3月4日)

EU商工会議所は韓国は市場へのアクセスが難しく、自動車などはEUに140万台も輸出していながら、韓国への輸入は15,766台と極端に少ない。

また知的所有権問題も深刻で韓国はコピー商品の製造が世界でもトップ・クラスであるとして強い不満を表明している。

 

24. 03年の成長率は3.1%と低調ー輸出が支え(04年3月25日

昨年の韓国経済は3.1%の伸びにとどまった(2002年は7.0%の成長であった)。国内消費と設備投資が不振であり、輸出と住宅建設投資が成長に寄与した。

表1  韓国の実質(1995年価格)GDPおよび支出項目別伸び率(%)

  1998 1999 2000 2001 2002 2003 '02/1Q 2Q 3Q 4Q 03/1Q 2Q 3Q 4Q
GDP実質 -6.7 10.9 9.3 3.1 7.0 3.1 6.2 6.6 5.8 6.8 3.7 2.2 2.4 3.9
民間消費 -11.4 10.6 7.9 4.7 7.9 -1.4 8.9 7.9 6.2 4.3 0.3 -1.8 -1.9 -2.2
政府消費 -0.4 1.3 0.1 1.3 6.0 3.7 5.3 4.4 1.5 1.0 4.0 3.7 2.6 3.6
総固定資本 -21.2 3.7 11.4 -1.8 6.6 3.6 6.6 5.4 0.5 6.8 4.6 3.7 2.6 3.6
うち建設 -10.1 -10.3 -4.1 5.8 5.3 7.6 9.7 3.8 -4.6 6.0 8.0 7.3 7.9 7.4
  機械設備 -38.3 36.3 35.3 -9.6 7.5 -1.5 3.8 7.5 7.8 8.2 1.8 -0.6 -5.0 -2.4
輸出 13.2 16.7 20.8 0.7 13.3 15.7 2.4 12.8 20.3 24.2 15.9 8.4 14.9 23.1
輸入 -22.4 29.4 20.0 -3.0 15.2 9.7 6.5 18.8 20.5 20.0 14.2 5.2 7.7 11.7

資料出所;内閣府「海外経済データ」ほか新聞情報から作成

http://www.bok.or.kr のプレス・リリース参照(最新版04年3月23日)

 

25. 2004年の韓国経済

25-1. 04年2月は輸出に支えられて景気回復の兆し(04年4月1日)

中国向け輸出の好調に支えられて昨年から回復の兆しの見え始めた韓国経済は2月には国内消費にも火がつき工業生産は3年半ぶりの回復を示した。日本や台湾もほぼ同じような動きが見られる。

04年2月の工業生産は前年同月氏16.6%増という目覚しい回復を示した。年率では22.2%増となり、2000年8月以来の高い伸びとなた。

その基礎となったのは輸出が195億ドルと前年同月比、実に47%もの増加となったことである。同時に貿易黒字も62ヶ月ぶりの30.6億ドルに達した。ITバブル期なみの数字を記録したことになる。

国内の売上高も全円同月比2.4%と高い伸びを示した。ディスカウント・ストアの売り上げは19.7%と高い伸びを示した(1月は3.4%増)。数ヶ月マイナスを記録した百貨店売り上げも5.1%(1月は−13.2%)増となった。

 

25-2. 最近の韓国経済の印象(04年5月4日)

4月20日から27日まで久しぶりに韓国を訪問した。前回訪問の7年前と比べて韓国の町並みは驚くほど良く整備され、極めて整然としていた。改めて驚いたのは江南地区の発展である。

きれいな高層ビルが立ち並び、コエックス・センターのあたりは人手ごった返していた。困ったことは道路が広すぎて、しかも横断道路が余りなく、東京とは大変な違いであり、韓国のお歳よりはうっかり繁華街に出かけられないなと思った。

通行人の身なりは大変にこざっぱりしていて、日本から旅行にやってきたという学生の、「ホームレス予備軍」な薄汚い若者は皆無であった。

私は、ソウルから晋州までを飛行機、晋州→釜山→慶州→浦項→大邸をバスの乗り継ぎ、大邸からソウルまでは噂のKTX(新幹線)で一周してきたが、釜山の昔ながらの繁華街は別として、町が大変きれいになって落ち着いてきたいるのに驚いた。

バスの値段がベラボーに安く、最長距離のところでも3,600ウォン(360円)という申し訳ないような値段だった。しかも、ほとんどのバスが一列3人がけでゆったりしていた。

KTXは大邸からソウルまで2時間足らずの距離であったが、値段は34,900ウォン(3,500円)という安さであった。大変静かで乗り心地は良いのだが、座席の幅が飛行機なみでやや窮屈であった。

なぜか、車掌は飛行機のスチュワデスに決して引けを取らない大変な美人が乗務していた。日本人と思しき乗客はほとんどいいなかったが、社内アナウンスは韓国語以外は日本語、英語、中国語でなされていた。

POSCOの光陽製鉄所を見学させてもらったが、その広大にして整然たるレイアウトには、元同業者の目から見て感嘆させられた。韓国の技術者の設計思想の高さを物語るものである。

例えば高炉の規模は5基とも3,800立方メートルの内容積で統一されている。日本の場合は4,000立方メートルがあったり、5,000立方メートルがあったりで、バラバラである。

高炉地区も粉塵がほとんど見られない。周辺の構造物も腐食している部分はほとんど見受けられない。彼らは日本から学んだ点も多々あったと思うが、日本の製鉄所よりも、よっぽどうまく工場をマネージしている印象を受けた。

ただし、品質の程度については今のところ日本の鉄鋼メーカーの方がだいぶ上であろうというのが私の見方である。その根拠は日本が韓国に輸出している製品の単価の方が、韓国が日本に輸出している単価の方が一般的に高いからである。

(詳しくは「日本産業再構築の戦略」エイデル研究所刊第1章参照)

浦項ではその昔、泊めていただいたPOSCOの迎賓館が客室30ほどの「迎日ヒルトン・ホテル」に変身していた。税込み77,000ウォン(7,700円)という手ごろな値段で、しかも環境は抜群であった。

韓国人の友人とは何回も食事をしたが、かなりの店でも(料亭風のところには行かなかった)かなり安かった。

ソウル市内のホテルは日本のビジネスマンが多くとまるホテルは大体1泊1万円くらいで、他の物価と比べてやや割高感があった。タクシーは初乗りが1,500〜600ウォンでどこまで行っても5〜6,000程度にしかならないのには驚いた。

もっと、すごいのは地下鉄で、ソウルも釜山も1区間700ウォンで2区間が800ウォンでそれ以上の遠距離区間はなく、1時間近く乗っても80円くらいにしかならないのにはこれまた驚きであった。ちなみに大阪市営地下鉄は1区間2駅程度で200円である。

ソウル市内には大型デパートがあちらこちらにあるが、混んでいるのは食料品売り場(デパ地下)のみで、上のほうの婦人服売り場などは換算としていた。友人の話によれば、それは韓国が不況だからだということである。

肝心の経済の話であるが、輸出産業を活況を呈しているが、国内はソウル市内(しかも江南地区)のマンション建設以外はさっぱりだとのことである。自動車販売のみはやや上向き傾向にあるという。

それだけ、一般市民の生活が圧迫されているとのことである。

輸出先も中国のウエイトが急増し、米国向けはかなりシェアーが低下しつつある一方、日本向けは結構数字が増えていると言うことであった。

確かに、韓国の携帯電話の質の高さはすごいものがある。自動車の運転席に携帯電話のセット場所がついていて、電話機を手に取らなくっても通話もできるし、充電もできる(日本のも当然あるであろうが、韓国では友人の最近買った中古車にも設置されていた)。

また、スピード違反取り締まり用の監視カメラに近づくと、「ここの制限速度は70KMです」などと携帯が教えてくれる念の入りようである。

それから、仁川国際空港のだだっ広さには驚嘆した。成田空港のせせこましさと混雑には全く辟易させられる。成田がダメなら羽田沖でも鹿島沖でもどこでも良いから、早く何とかしないとどうにもならない。

韓国は目に見えて変わっている。韓国の経済にはもちろん問題点は多々あるが、その変化のスピードはすごい。日本の小泉改革などは誠に発想が矮小であり、郵政改革がその目玉だなどという貧困な発想では困る。80円の郵便が一体いくらになるのだ。

無駄な公共事業の資金源を絶つなどといっていないで、それをやらせてきた仕組みをなくせばよいのだ。日本の場合はほとんどが「人災」なのだ。それを変えるには政治家の姿勢が変わらなければどうにもならない。

政治面でも韓国は少数派のウリ党が一夜にして過半数与党になった。よきにつけよきにつけ変化の激しい国である。

 

25-3. ついに不動産バブルが崩壊?高級住宅の売り上げ-90%(04年6月9日)

6月8日付けのコリア・ヘラルド紙のインターネット版(http://www.koreaherald.co.kr)によると、韓国経済の「内需の支え」であったソウル南部の江南区(クヮンナム=新興ビジネス・住宅街)の高級住宅建設に急ブレーキがかかろうとしている。

というのは、政府はかねてから不動産投機の規制を行おうとしてきた(上記記事#20参照)がようやくその成果が出始め、4月から同地区の高級マンションの売り上げが通常ベースの90%減という急激な落ち込みを見せているという。

既に、住宅販売業者の35%とネット・ワーク市民(netizen)の44%は不動産バブルの崩壊が始まったと見ている。

韓国経済は輸出は中国向け中心に絶好調を維持しているが、内需は一部地域(ソウル周辺など)の不動産投資が活発なこと以外は、個人消費の落ち込みが続いており、全体的には不況感が払拭し切れていない。

加えて、盧武鉉政権はソウルの一極集中を避けるために「首都移転構想」を打ち出したこともあり、ソウルの不動産投機熱は沈静化に向かう流れにはあった。

しかし、売れ行きが一挙に90%も下がるということは、異常事態であって、「政策効果」が過剰に出てしまったことによる失敗ともいえよう。しばらく様子を見た後に別途の対策が採られるものと思われる(韓国は役人の頭が柔軟なせいか政策転換が機敏である)。

韓国経済全体としては輸出の増加や三星電子の積極投資に見られるごとく、明るい材料があり、それが雇用増にもつながっている(日本と同じ)と見ることができる。不動産バブルの崩壊が韓国経済に大きな打撃を与えるが、「危機に直結」することはないであろう。

問題は、中国経済の動向である。下表に見るごとく、2003年の韓国の輸出先は米国に代って中国がトップになってしまった。

表27-1 韓国の輸出(主要向け先別)  (単位;%、100万ドル)

  輸出向け先別シェア   同対前年伸び率
  2000年 2001年 2002年 2003年 2000年 2001年 2002年 2003年
米国 21.8 20.7 20.2 17.7 27.6 -17.0 5.0 4.4
日本 11.9 11.0 9.3 8.9 29.0 -19.4 -8.3 14.1
中国 10.7 12.1 14.6 18.1 34.9 -1.4 30.6 47.8
香港 6.2 6.3 6.2 7.6 18.3 -11.7 7.3 44.4
ASEAN4 7.2 6.8 7.2 7.0 12.2 -17.0 13.2 16.3
EU5カ国 9.8 9.3 9.2 8.5 16.3 -17.0 7.2 10.7
輸出総額 172,268 150,439 162,471 193,817 19.9 -12.7 8.0 19.3

資料出所;韓国銀行統計月報より作成

EU5カ国=英、独、仏、伊、蘭

 

25-4. 国内投資のシェアは経済危機時並に低下(04年7月27日)

韓国銀行の発表によると、04年1−3月の民間設備投資はGDE(国内総支出)の構成比で8.9%(2003年は9.5%)にまで低下した。

これは1997−98年の水準であり、韓国経済の不振を物語っているという。国内投資の減少は国内消費の低迷と、中国などへの海外投資の増加によるものである。

国内民間消費は前年同期比-1.4%と依然不振を続けている。これはクレジット・カードによる消費が04年上期で40%減少していることt対応している。

6月末現在で370万人が収入以上の負債を抱えているという。

 

25-5. 6,7月と消費者物価が急騰(04年8月3日)

韓国では内需不振が依然続いているが、消費者物価のみは6月3.8%、7月4.4%(いずれも対前年同月比)と急上昇している。要因は石油価格の上昇をはじめとする、輸入原材料の」上昇によるものである。

4.4%という上昇率は2003年3月の4.5%に次ぐものである。不況下の物価上昇は民間消費のいっそうの減退を招きかねない。韓国では1バーレル1ドル原油価格が上昇すると、GDPに与える影響は-0.1%であるとされている。

また貿易収支にも-750百万ドルの悪影響を与えると関係省庁は推測している。

 

25-6. 7月のIT関連輸出は伸び率が鈍化(04年8月6日)

韓国の輸出総額は7月は6月に比べ216.9億ドルから213.5億ドルへとマイナス3.4億ドルになた。

輸出の約3分の1を占めるIT関連製品野輸出が7月は61.9億ドルと6月の64.2億ドルから2.3億ドルマイナスになった。前年同月比でみると7月はプラス30.8%と依然高い伸びを示しているが、04年6月のプラス48.7%に比べ鈍化した。

当局はまだまだ先行き不安という段階ではないといっているが、IT関連輸出は5月をピークにして下落傾向が続いている。

 

25-7. 04年2Q(4-6月)の成長率は5.5%(04年8月20日)

韓国の04年2Q(4−6月)の実質経済成長率は5.5%とわずかながら1Qよりも改善されている。

しかし、民間消費-0.7%の不振が響いている。建設投資も伸び率が低下しているが、設備機械の投資が1Qの-0.3%から2Qは+6.2%と大きく改善されている。

現在の韓国経済の成長を引っ張っているのは輸出である。向け先としては中国向けが大きく寄与していることは間違いない。そのため製造業の伸びは依然として2桁を維持している。

輸出が鈍化すれば韓国経済はかなり深刻な不況局面を迎えることになろう。

この間、韓国企業の業績そのものは好調であると伝えられる。特に銀行は不良債権を減らし、04年3月末の21.3兆ウォンから6月末には18.1兆ウォンと3.2兆ウォン減らした。

 

25-8. 韓国の銀行は04年上半期は大幅利益増(04年8月29日)

韓国政府当局の発表によると、国民銀行はじめ民間19銀行の今年上半期(1−6月)の純利益は3兆63百万ウォン(約3,490億円)に達し、前の期の7,335億ウォンの約5倍になった。

これは2002年の上期の3.5兆ウォンを上回る数字である。

銀行の貸付が増えたの金利の引き下げ措置によって利ざやが拡大したことが直接の原因である。また、不良債権の処理が進んできたことも利益の増加につながっている。

金融機関の不良債権は2003年末には18.7兆ウォンあったが、04年6月末には18.1兆ウォンに減少した。

このことが韓国経済の上向きを意味するものではないが、金融機関の利益率の向上は積極的な投融資につながる可能性があり、景気面では明るい材料であることは間違いない。

 

25-9. 消費マインンドの冷え込みの一途(04年9月10日)

韓国政府は消費者心理の上昇と投資意欲の向上をねらいとして04年8月に公定歩合を3.5%に引き下げ(-0.25%)、景気押し上げ効果を狙ったが、今のところその効果は出ていない。

今後6ヶ月間の消費者心理指数は7月には89.6ポントであったものが8月には87.0ポイントといっそう低下している。4月には99.9%にまで回復したが、その後4ヶ月連続で低下したことになる。

これは収入が最近6ヶ月間で減少してきている家計の比率が7月の36.5ポイントから38.8ポイントに増えてきており、一方収入が増加している家計は7月の18.4ポイントから8月は16.7ポイントに減ってきているという事実の反映である。

企業業績は向上しているが勤労者の収入が逆に落ち込んできているということであろう。

経済成長率は04年は5%程度が見込まれるが、05年は4%前後に落ち込むという見方が体制を占めている。

 

25-10. 9月のサービス部門の「生産」は0.8%減(04年11月7日)

韓国の9月のサービス部門のアウト・プット(生産)は前年同月比マイナス0.8%となった。これは8月の-1.7%、7月の-1.4%に次ぐ、3ヶ月連続のマイナスである。サービス部門がGDPの56.7%(03年)を占める韓国ではきわめて由々しき状況である。

特に、不動産とレンタル部門の落ち込みは-10.8と非常に大きかった。落ち込みの大きかったのは塾と「予備校」で実に-14.5%であった。こういうことは進学熱の高い韓国では考えられない現象であり、大卒の就職率が悪いことの反映かもしれない。

個人消費の動向を直接反映する小売の落ち込みが大きく、昨年比-2.4%であった。個人消費の回復の決め手は富裕層がもっと消費を増やす必要がある政府当局者は述べている。

一般庶民はクレジット・カードの債務不履行者が急増している現状を考えると、今後あまり消費を増やしそうもないからである。消費者心理指数は9月が88.9、10月が88.0と依然不振が続いている。

政府は12月には韓国版「ニュー・ディール政策(景気刺激策)」を発表するという。

 

25-11.韓国銀行は金利引下げー景気対策(04年11月12日)

米国では景気がよくなってきたということで金利引き上げに踏み切った(11月10日、フェデラル・ファンド金利の誘導目標を1.75⇒2.00%に)が、韓国では景気刺激策の一環として韓国銀行(中央銀行)は今年2度目(前回は8月)の金利引き下げを行った。

韓国銀行はオーバーナイト・コール・レートを現行の3.50%⇒3.25%にまで引き下げた。これはウォン高傾向の歯止め(韓国銀行はドル買いをおこなって抵抗してきた)にもなると考えられている。

インフレが高進するなかで金利引下げはさらにインフレをあおることにもなりかねないが、インフレ要因は異常な石油高(原油価格は下げに転じている)にあるとして、あえて今回の措置に踏み切った。

金利を多少上げ下げしても景気対策上の効果がどの程度あるかは不明であるが、中央銀行の姿勢は評価すべきものがある。

 

25-12. 04年3Qの実質GDPの伸び率は4.6%、消費不振(04年11月21日)

韓国の04年3Q(7−9月)の実質GDP の伸び率は前年同期比4.6%と2Qの5.5%から鈍化した。04年に入って輸出の好調な伸びで前半は5%台の比較的順調な伸びで推移してきたが、個人消費のマイナスが続き、建設の伸び率が低下してきた。

肝心の輸出は2Qが2702%というきわめて高い伸びであったが、3Qは17.6%と伸び率が低下してきた。しかし、輸入の伸び率も同時に落ちてきているのでGDPの伸び率にはあまり影響していない。

産業部門では農業が豊作であり、5.5%と高い伸びを示した。製造業は11.6%(2Q=13.6%)とやや鈍化している。

建設業は2Q=3.6%から3Q=2.0%とかなり鈍化した。期中に、ソウルの不動産価格が下げに転じるなど今後さらに建設業は後退が予想される。

サービス部門の伸びは個人消費の不振を反映してさえない。特に教育部門が良くないといわれている。

 

25-13. 消費者心理は6年ぶりの低水準(04年11月24日)

04年4Q(10−12月)における消費者心理指数は39.3ポイントと1998年3Qの通貨・経済危機の時(34.9ポイント)以来の低い水準にまで落ち込んでいる。

この消費者指数が50を切ったのは02年4Q(47.3ポイント、前の02年3Qは55.5であった)で、それ以降9四半期連続して50を割っている。50を切るということは消費者心理が冷え込んでいるということを意味している。

三星経済研究所は先行きについても悲観的である。消費者が過去の負債を一掃するまでは、消費は上向かないのではないかと見ている。それだけ、2000〜02年までのクレジット・カードによる消費ブームのツケが大きく影響している。

当時の日本の「韓国通エコノミスト」は韓国経済のパフォーマンスの良さを吹聴し、「韓国政治経済礼賛論」が跋扈していたのである。

韓国人の全人口4,800万人の13人のうち1人は負債支払期限を3ヶ月以上遅れている(通常は不良債権とみなされる)。これは、負債能力のない子供や老人を含めての数字であるから、実際はかなり高い比率と考えてよい。

今年の韓国経済を支えてきた輸出は実額ベースで見ると、04年2Qは前年同月比29.5%であったが、3Qは17.5%と伸び率が大幅に鈍化している。これから先、中国向け輸出がどれくらい伸びるかによるが、今までのような高い伸びは期待できそうにない(これは日本も同じ)。

04年の実質GDPは5%前後を維持できそうであるが、05年は4%を下回る可能性も出てきた。1998年以来最大の試練を迎えつつあるといってよい。

盧武絃(ノムヒョン)政権は米国のルーズベルト大統領のひそみにならって「韓国版ニュー・ディール」政策を行う(公共支出を増やして経済活性化の呼び水にしていく)と宣言している。

 

25-14. 2004年の対外投資は79.4億ドルと37%増(05年2月10日)

韓国企業の2004年の対外投資は79.4億ドルと対前年比37%増となった。韓国の対中国傾斜は際立っており、投資額の約半分が中国向けであるといわれている。

中国の労賃は2004年の上期(1−6月)で900米ドル(月平均150ドル)であり、韓国の12,570ドル(月平均2,095ドル)の7.2%に過ぎない。

ついで、多いのは北米向けで、15億ドルの投資を行った。また、EU にも積極的な投資を行っており、7億1,000万ドルに達した。起亜自動車がドイツとチェコスロバキアに自動車組み立て工場を建設した。(Korea Herald,05年1月26、 27日、参照)

表25-14-1 韓国の対外投資

  2000年 2001年 2002年 2003年 2004年
対外投資額(億ドル) 60.4 63.5 63.0 58.1 79.4

資料出所;韓国財務経済省

また、上とは別資料だが、KITA(Korea International Trade Association=韓国国際貿易協会)の集計によると韓国の対中国投資は以下の様になる。

2004年の投資額は62.5億ドルと03年の44.9億ドルに比べ39.2%もの増加である。

表25-14-2 韓国の対中国向け投資

2001年 2002年 2003年 2004年  累計 
対中国向け投資(億ドル) 21.5 27.2 44.9 62.5 196.9

中国で営業している韓国企業の数は27,128社に達する。累計の投資額は196億9,000万ドルである。

Korea Herald 紙(05年1月26日付け)によれば米国の対中投資は2004年は39.5億ドルと、03年の41.9億ドルから5.7%減っている。台湾も31.2億ドルと03年の33.7億ドルからみると7.4%のマイナスになっている。シンガポールは20.1億ドルと03年の20.5億ドルに比べやはり減っている。

(残念ながら日本についての記述はなかった)

 

25-15. 04年4Qの成長率は3.3%にダウン、通年では4.6%(05年3月22日)

韓国経済の04年の実質成長率は4.6%とまずまずの実績であった。しかし、成長の内容は輸出に支えられた製造業の好調によるものであった。製造業は04年の成長率が11.4%というきわめて高いものであった。

また、農業も04年は7.4%という比較的高いのもであった。これは天候に恵まれ全般に方策であったことと、03年のマイナス(-5.3%)を「挽回」したものであったが、数字の上では04年の成長を支える形になった。

しかし、民間消費(個人消費)が低迷を続けた(03年=-1.2%、04年=-0.5%)。その理由は既に述べたように02年までの個人消費の異常な高さと、個人信用の崩壊(クレジット・カードの支払不能件数の増加)であった。

また、設備投資も国内より海外(特に中国)が優先された結果、04年の固定資産形成は1.9%にとどまった。04年4Qの総固定資本形成は-1.2%とマイナスになったことが注目される。特に、住宅建設の低調が響いた。

05年の見通しとしては4%台の実現は困難と見る向きが多いが、個人消費の回復の兆しもあり、極度の落ち込みは避けられそうである。ただし、中国向け輸出が落ち込むと3%前後の成長率にまで落ち込む可能性がある。

 

表34-1 韓国の実質GDP((2000年価格)伸び率(前年同期比’%)

  '03/1Q '03/2Q '03/3Q '03/4Q '2003 '04/1Q '04/2Q '04/3Q '04/4Q '2004
国内総生産・実質 3.7 2.2 2.4 3.9 3.1 5.3 5.5 4.7 3.3 4.6
農林水産業 -5.1 -1.3 -9.1 -9.1 -5.3 6.8 3.1 5.3 10.4 7.4
製造業 5.1 2.6 3.3 8.0 5.5 12.2 13.7 12.0 8.0 11.4
電気・ガス・水道 7.1 8.9 3.1 3.7 4.7 6.3 6.6 7.4 4.3 6.2
建設 8.4 7.7 8.1 8.4 8.6 4.9 3.7 2.2 -2.2 1.7
サービス 1.9 1.1 1.6 2.4 1.6 1.5 1.7 1.3 0.6 1.3
民間消費 0.3 -1.8 -1.9 -2.2 -1.2 -1.3 -0.5 -0.8 0.6 -0.5
政府消費 4.0 3.7 3.5 3.5 3.8 3.0 4.2 2.9 1.9 3.0
総固定資本形成 4.6 3.7 2.6 3.6 4.0 2.2 4.3 3.0 -1.2 1.9
 建設 8.0 7.3 7.9 7.4 7.9 4.9 3.6 1.3 -3.4 1.1
 機械設備 1.9 -0.6 -5.0 -2.4 -1.2 -0.3 6.2 6.8 2.5 3.8
輸出 15.9 8.4 14.9 23.1 15.6 26.9 26.9 17.7 9.8 19.7
輸入 14.2 5.2 7.7 11.7 10.1 12.3 20.7 12.0 11.1 13.8

Data; http://www.bok.or.kr/ 下欄は国内総支出伸び率

 

 

26. 記者クラブ制度廃止に踏み切る(04年6月15日)

韓国は、日本の植民地時代に政府の言論統制の1手段として特定新聞社の記者だけが入れる記者クラブ制度を設け、戦後も一貫して維持してきた。

韓国の民主化の流れは1990年代に入ってから急速に高まってきたが、最近、ウリ党の勝利をきっかけに、民主主義体制下でこういう制度があるのはおかしいという議論が政府部内にもメディア側に急速に出てきて、近く記者ククラブ制度を全廃するという。

その代わり、オープン・ドアの記者会見室を設置し、登録した全ての記者が自由に取材活動できるようにするという。しかし、保守的な新聞社やテレビ局はこういう動きに最後まで抵抗したという。

登録した記者は月50ドル支払う義務がある。その結果、青瓦台(大統領府)に出入りできる記者は90人から300人に急増した。

以上はニューヨーク・タイムスの6月15日付けの記事(インターネット版)の骨子である。(日本のメディアはこういう話を記事にするとは考えられない)

韓国に記者クラブ制度を戦前の言論統制時代に持ち込んだ当の日本は、言論統制の形は多少スマートになったようだが、この記者クラブ制度は連綿として、継続されている。

誰も止めようなどとは言い出さない。日本では民主主義や自由主義などというのは所詮はお題目だけのものだと考えている人が多数派なのだから。

かくして文明社会では最も質の悪いメディアがバッコして政府の愚民化政策に協力している。国民はたまに洗剤のオマケなどもらうが(我が家ではもらったことはないが)、お金を払って「愚民化政策」唯々諾々として協力させられている。

韓国は遅れているとか、貧しいとか言うイメージをもって、いまだに韓国人を蔑視したり差別したりしている日本人は依然少なくないのが現状である(特に年配日本人)が、最近の韓国の急激な変化を見ていると、こりゃマズいぞという感じを持たざるをえない。

日本は変わらないどころか、戦前の大日本帝国時代に逆戻りしているのではないかとすら思われる。国民一人一人がもっと賢くならなければ日本はとんでもないところに持っていかれてしまいそうだ。

 

27. トップ6財閥の2003年の利益率は低下(04年7月5日)

積極的な拡大経営を続けているSamsung(三星)グループをはじめとして、LGグループ、Hanjinグループ、Hyundai(現代)グループ、Kolonグループなど大手グループの2003年の経常利益率は2002年に比べ大きく低下しているという。

FSS(Financial Supervisory Service)に提出された6社の報告書によると、6社合計の2003年の経常利益は5.46%と2002年7.04%に比べ1.58ポイント%下落した。

特に優良企業として韓国の証券市場を引っ張ってきたSamsungは2002年から4%ほど下落し、7.36%に大きく下落した。

同グループの売り上げは2003年には3.3%増加し、122.4兆ウォンに達したが、普通利益(Ordinary Profit)は2002年の12.8兆ウォンから2003年は9.2兆ウォンへと約30%も下落した。

LGグループの経常利益率も4.43%から4.03%に減少した。

Hyundaiグループは2003年は経常損益で2,264億ウォンの赤字、純損益では3,503億ウォンの赤字となった。他の各社も利益率の減少になった。特にKolonは経常ベースで682億ウォンの赤字であった。

(04年7月5日、 Korea Herald インターネット版)

なお、7月5日現在の為替相場は1,000ウォン=94.4円である。

 

28. 現代自動車が韓宝製鋼を買収(04年8月2日)

フィナンシャル・タイムズ(8月1日、インターネット版)によれば現代自動車が1997年の経済危機のときに破綻した「韓宝(ハンボ)製鋼」を8,800億ウオン(約830億円)で買収することに合意した。

現代グループはかねてから一貫製鉄所を保有する計画があったが、韓国政府の強い反対と、用地、資金難などから傘下の現代鋼管に冷延薄板設備のみを作らせ「現代 Hysco」という会社として運営し、素材の熱延広幅帯鋼(HRC)をPOSCOや日本のJFEから購入していた。

しかし、HRCを自社生産するというメリットがあると考える現代グループはHRC設備を持つ韓宝製鋼の買収に踏み切ったものと思われる。

ただし、韓宝製鋼はHRC設備はあるもののPOSCOと異なり、高炉ー転炉ー連続鋳造設備という上工程を保有していないため、電気炉に良質の鉄源(高炉銑やスクラップ)を挿入して品位の高いスラブを生産する必要がある。

または、日本などから高品位のスラブを輸入しHRCを生産するということになろう。

ただし、韓宝製鋼のHRC設備で現代自動車で使用する高級冷延鋼板の生産は依然として困難であり、日本の高炉メーカーへの依存は続くであろう。

なお、POSCOは現代HyscoへのHRCの供給を拒んだため2001年には16億ウオンの罰金を科せられたことがあるとFT紙は報じている。ただし、FTがいうように現代グループの韓宝製鋼買収が直ちにPOSCOの脅威となるとは考えにくい。

 

29. 新規大卒の就職率は60%(04年10月5日)

韓国教育省の発表によると、4年制大学36校の新卒者の就職率は約60%である。一方、2年制の短大11校の卒業生の就職率は67%と比較的高い。短大卒の就職率は2001年には76%であった。

4年生大学の中で80%以上の就職率を記録したのはKorea University, Kyunghee University, Sogang Universityの3校のみであった。名門のソウル大学(国立)は60%にとどまった。

ソウル大学の卒業生の就職率が低いのは意外であるが、総合的に多くの学部を抱えていることや、採用側もソウル大学卒業生は幹部候補生として処遇しなければならないという意識があり、かえって採用がためらわれるという事態になっているのではないかとも推測される。

学部別には医学部卒は100%就職できるが、法学部卒は60%と低いという。


36. 2005年の韓国経済

36-1.05年1Qの成長率は2.7%にダウン(05年5月21日)

韓国銀行(中央銀行)が発表した05年1Qの実質GDP対前年同期比の伸び率は2.7%とスロー・ダウンしてる。これは台湾とよく似た傾向である。タバコの値上げがGDPを押し下げたなどという説明がなされている。

要は建設投資が-2.9%と悪く、個人消費は+1.4%と04年4Qに引き続きプラスに転じているが、伸び率自体以前低い水準にある。輸出が+7.4%でまずまずである。それによって製造業の伸び率が5.3%となり、経済の崩落を食い止めている。

中国向け輸出の伸びが止まるとかなり深刻な事態が予想される。

 

表36-1 韓国の実質GDP((2000年価格)伸び率(前年同期比’%)

  '03/1Q '03/2Q '03/3Q '03/4Q '2003 '04/1Q '04/2Q '04/3Q '04/4Q '2004 05/1Q
国内総生産・実質 3.7 2.2 2.4 3.9 3.1 5.3 5.5 4.7 3.3 4.6 2.7
農林水産業 -5.1 -1.3 -9.1 -9.1 -5.3 6.8 3.1 5.3 10.4 7.4 2.6
製造業 5.1 2.6 3.3 8.0 5.5 12.2 13.7 12.0 8.0 11.4 5.3
電気・ガス・水道 7.1 8.9 3.1 3.7 4.7 6.3 6.6 7.4 4.3 6.2 6.3
建設 8.4 7.7 8.1 8.4 8.6 4.9 3.7 2.2 -2.2 1.7 -3.0
サービス 1.9 1.1 1.6 2.4 1.6 1.5 1.7 1.3 0.6 1.3 2.2
民間消費 0.3 -1.8 -1.9 -2.2 -1.2 -1.3 -0.5 -0.8 0.6 -0.5 1.4
政府消費 4.0 3.7 3.5 3.5 3.8 3.0 4.2 2.9 1.9 3.0 3.2
総固定資本形成 4.6 3.7 2.6 3.6 4.0 2.2 4.3 3.0 -1.2 1.9 0.1
 建設 8.0 7.3 7.9 7.4 7.9 4.9 3.6 1.3 -3.4 1.1 -2.9
 機械設備 1.9 -0.6 -5.0 -2.4 -1.2 -0.3 6.2 6.8 2.5 3.8 3.1
輸出 15.9 8.4 14.9 23.1 15.6 26.9 26.9 17.7 9.8 19.7 7.4
輸入 14.2 5.2 7.7 11.7 10.1 12.3 20.7 12.0 11.1 13.8 5.2

Data; http://www.bok.or.kr/ 下欄は国内総支出伸び率

 

36-2. 05年4月の経常収支は赤字に転落(05年5月31日)

韓国の05年4月の経常収支は9億950万ドルの赤字となった。これは2003年4月以来、2年ぶりのことである。ただし、05年1-4月の累計でみると50.4億ドルの黒字であり、04年の同時期の72.7億ドルから見ると減ってはいるが、さほど大きな問題ではないと財務当局は見ている。

特に4月に赤字になった理由は株式配当の海外への支払いが2億1000万ドルあったことも影響しているという。

4月は景況がいっそう悪化しており、個人消費はマイナス0.5%(3月は+0.3%)、企業投資はマイナス0.3%(3月は+1.4%)となった。工場稼動率は78.9%と3月の80.9%に比べやや落ちている。

工業生産は昨年の4月に比べ3.8%の増加となった。しかし、季節調整値で見ると3月に比べ1.7%のマイナスである。これを産業別に見ると自動車生産は3月に比べ4月は4.5%ダウンしているが、機械生産は4.1%のプラスになっている。

しかし、建設受注は+8.3%(3月は+5.3%)増加しており、徐々に景気も上向きになるであろうという見方をしている。

ただし、財務省としては当初見込んでいた2005年の5.0%の成長目標は実現が困難であると認めている。おそらく、05年4-6月期が景気の底で05年後半には回復するであろうという見方をしている。しかし、輸出の展望などその根拠ははっきりしない。

 

36-3.05年2Qの実質GDP成長率は3.3%とやや改善(05年7月27日)

韓国銀行(中央銀行)が発表した05年2Qの実質GDP対前年同期比の伸び率は3.3%と1Qの2.7%に比べやや好転した。

成長をリードしているのはやはり製造業で04年にくらべスロー・ダウンしたとはいえ5.3%の伸びを1Q,2Qともに維持している。建設部門はマイナスからプラスに転じたとはいえ1.6%のプラスで,依然として低調である。農業は4.2%とまずまずの伸びを示した。

支出ベース(表36-3の下半分)でみると輸出の伸びの鈍化が目立つ。1Qの+7.4%から2Qの+5.1%へと鈍化してきている。これはウォン高の影響も少なからず受けている。個人消費は1Qの+1.4%から2Qは+2.7%とかなり改善されている。個人の消費マインドが上向いてきたとされている。

建設投資が-2.9%から2Qの+1.8%へとプラスに転じたが勢いはない。

韓国経済は中国への依存度が急激に増しており、中国向け輸出の伸びが止まるとかなり深刻な影響を受ける。中国に進出している韓国企業は過当競争に巻き込まれ、業績はあまり振るわず、約半数が赤字であると言われている。

 

表36-2 韓国の実質GDP((2000年価格)伸び率(前年同期比’%)

  '2003 '04/1Q '04/2Q '04/3Q '04/4Q '2004 05/1Q 05/2Q
国内総生産・実質 3.1 5.3 5.5 4.7 3.3 4.6 2.7 3.3
農林水産業 -5.3 6.8 3.1 5.3 10.4 7.4 2.6 4.2
製造業 5.5 12.2 13.7 12.0 8.0 11.4 5.3 5.3
電気・ガス・水道 4.7 6.3 6.6 7.4 4.3 6.2 6.3 7.3
建設 8.6 4.9 3.7 2.2 -2.2 1.7 -3.0 1.6
サービス 1.6 1.5 1.7 1.3 0.6 1.3 2.2 2.4
民間消費 -1.2 -1.3 -0.5 -0.8 0.6 -0.5 1.4 2.7
政府消費 3.8 3.0 4.2 2.9 1.9 3.0 3.2 4.2
総固定資本形成 4.0 2.2 4.3 3.0 -1.2 1.9 0.1 2.0
 建設 7.9 4.9 3.6 1.3 -3.4 1.1 -2.9 1.8
 機械設備 -1.2 -0.3 6.2 6.8 2.5 3.8 3.1 2.8
輸出 15.6 26.9 26.9 17.7 9.8 19.7 7.4 5.1
輸入 10.1 12.3 20.7 12.0 11.1 13.8 5.2 5.6

Data; http://www.bok.or.kr/ 下欄は国内総支出伸び率

 

通貨のウォンは下の表に見るとおり米ドルに対して05年に入りやや高めに推移している。05年4月26日には1ドル=1000ウォンの大台を下回った。とことが日本円に対して、従来1000ウォン=100円という長年の「常識」が崩れ、現在1000ウォン=109円と大幅に強くなっている。

これは日本からの機械や部品輸入が割高になったことを意味し、同時に日本との輸出競争をいっそう厳しいものにしている。

 

表36-3 最近のウォンの動き(ドルと円)

  対米ドル(Won/$) 対円(円/1000Won)
04年12月31日 1047.9 98
05年3月1日 1004.0 104
05年4月26日 998.8 106
05年6月1日 1010.7 106
05年7月1日 1034.0 108
05年7月26日 1028.5 109
05年8月5日 1014.8 110
05年9月8日 1025.8 108

 

36-4. 韓国企業は05年下期には投資24%増の計画(05年9月9日)

韓国産業協会の調査によれば、韓国企業(上位600社)は05年下期(7〜12月)には36.6兆ウォン(約3兆3900億円)の投資を計画している。これは前年同期にくらべ24%増である。05年上期は30.2兆ウォンで前年同期比18%であった。05年通算では66.8兆ウォンと21.4%となる見込みである。

その背景としては国内景気の回復と輸出増加をあげている。投資の内容としては研究開発に可なり力点が置かれているという。

韓国の上位30財閥は05年上期の投資額が20.6兆ウォンと全体の56%を占める。さらに10大財閥だけを見ると17.7兆ウォンとなる。

過去2年間は個人消費と並び、企業投資も不振であったが、ここにきてようやく回復の兆しがみえてきたと政府は見ている。(上の表36-2参照)

しかし、建設投資は政府の投機抑制方針は変わらず、相変わらず不振は継続すると思われる。

(http://www.koreaherald.co.kr 05年9月9日参照)

 

36-5.韓国経済やや復調の兆し(05年10月10日)

韓国経済は04年4Qから3%成長を続けていたが、05年3Q(7-9月)は1年ぶりに4%台の成長にカムバックしそうな勢いである。それは株価の騰勢にも現れているが、個人消費が耐久消費財を中心に上向いてきていることと中国向け輸出がやや勢いを盛り返しつつあるためである。

韓国の財務省の見方によれば3Qは4.3〜4.8%の成長が見込まれるという。

いずれにせよ韓国経済の不振は以外に長かったので。もう少し統計数字の動きを観察したい。(続く)

 

36-6. 韓国銀行金利引き上げ3.5%に(05年10月11日)

韓国銀行は04年11月に基準金利(オーバーナイト・コールレート)を3.25%と過去最低水準にまで引き下げ、景気浮揚を図ったが、今回は石油価格の高騰や個人消費が盛り上がりをみせているため、ややインフレ傾向にあるとして、金利引き上げ(+0.25%)に踏み切り、3.5%とした。

韓国銀行(中央銀行)のパク・セウン総裁はこれで米国のフェデラル・ファンド・レートの3.75%に近づいたと述べている。韓国としては米国の金利動向もにらみながら、金利水準を決めているということのようだ。

韓国のインフレ率は05年9月は前年同月比2.7%であった。これは05年8月に比べ0.7%の上昇であり、警戒感を強める必要がある水準だとのことである。これにより、多少とも個人ローンが抑制されるとみている。

個人ローンの拡大により、支払不能に陥ったケースが多く、結局景気にマイナス効果をもたらした経験(2003年、04年)から、個人信用の拡大には韓国銀行としても極度に警戒的である。

 

⇒突如金利を0.25%上げ3.75%に(05年12月8日)

韓国銀行は基準金利を10月10日に3.25⇒3.50%へと引き上げたばかりだが、12月8日(木)にさらに0.25%ひきあげ、3.75%にすると発表した。通貨のウォンは米ドルに対しても強めに推移しており、金融関係者の間でも意外と受け止められている。(FT,インターネット版、12月8日)

韓国銀行の説明では現在のインフレはさほども無いが経済も回復基調にり、原油価格も再度上昇してきており、潜在的なインフレ圧力があるからという。米国の金利上昇にあまり差をつけられないようにしておこうという配慮も働いているのではないだろうか?

それにしても日本の金融政策はひどすぎる。最近はアジアの金融当局のほうがはるかに賢く立ち回っている。なによりも「経済的常識」が働いている。

円安のほうが良いなどというのは輸出業者の言い分だ。そのためにセロ金利をいつまでも強いられる庶民階級はたまったものではない。トヨタや日産はウハウハだろうが、われわれは自動車を買う気すら起こらなくなってきているのだ。政策にはバランスが必要であることはいうまでもない。

他のページでも書いたがまさに日本は世界で日ましに孤立しつつある感じがする。ブッシュが可愛がってくれるからいいんだではすまされない。

12月14日にクアラルンプールで「東アジア・サミット」なるものが開かれるが、中国や韓国の首脳とのトップ会談も相手にしてもらえないようだ。他のASEAN諸国の首脳も日本にはかつてのような「畏敬」の感情は持っていないであろう。

何かコトあれば真っ先に資金援助をし、イラクに自衛隊を派遣したりして、これほど「国際貢献」をしているというのに!

また、対アジア諸国の為替に比べてすら円はどんどん安くなっている。こんなことでは、アジアの経済大国としての面子すらたたない。

一方、日本の民間銀行は小泉政権下でわが世の春を謳歌している。一方、ささやかな預金に金f利もつけてもらえない老人階層は医療費の引き上げなどでたたかれる。しかし、年寄りも先の選挙では小泉政権に投票した人が多いのだから自業自得といったところであろう。

「東アジア共同体」のリーダーの資格は自ら放棄したも同然なのだから、大きな顔をしないで静かにしているほかは無いだろう。いつの間にかなさけない国になったものだが、そのほうが分相応かもしれない。

これほど日本が国際的に「孤立感」を漂わせたのは、「満州事変」とその後の「大東亜戦争」のとき以来60年ぶりのことであろう。何が面白くてこんなことをやっているんであろうか?「ウルトラ・ナショナリズム」などいまどき何のご利益もありませんよ。

最近の韓国の為替と株価の動き

  ウォン/米ドル 韓国株価指数
 10月3日 1047.7 1221.0
 10月17日 1050.0 1176.4
 11月1日 1042.9 1189.0
 11月16日 1037.4 1267.2
 12月1日 1034.8 1309.6
 12月8日 1033.8 1324.2

 

36-7. 05年3Qの成長率は4.5%とやや回復(05年10月25日)

韓国の05年3Q(7-9月)の成長率(実質国内総生産)は前年同期比で4.5%と、2Qの3.3%からやや回復した。これは個人消費(4.0%)と輸出(11.7%,含むサービス)の増加によるものであると韓国銀行(中央銀行)は説明している。

製造業が輸出の好調を反映して7.3%の伸びとなった。

輸出は半導体、電子部品、通信機器(携帯電話など)の輸出が好調であった。固定資本形成では建設が0.4%と不振が続いているが、機械設備は4.2%の伸びを示した。

なお、05年の通算では3.8%の成長(04年は4.6%)にとどまると見ている。

表36-7 韓国の実質GDP((2000年価格)伸び率(前年同期比、%)

  '2003 '04/1Q '04/2Q '04/3Q '04/4Q '2004 05/1Q 05/2Q 05/3Q
国内総生産・実質 3.1 5.3 5.5 4.7 3.3 4.6 2.7 3.3 4.5
農林水産業 -5.3 6.8 3.1 5.3 10.4 7.4 2.6 4.6 1.8
製造業 5.5 12.2 13.7 12.0 8.0 11.4 5.3 5.2 7.3
電気・ガス・水道 4.7 6.3 6.6 7.4 4.3 6.2 6.3 7.3 5.6
建設 8.6 4.9 3.7 2.2 -2.2 1.7 -3.0 1.7 0.6
サービス 1.6 1.5 1.7 1.3 0.6 1.3 2.2 2.5 3.4
民間消費 -1.2 -1.3 -0.5 -0.8 0.6 -0.5 1.4 2.8 4.0
政府消費 3.8 3.0 4.2 2.9 1.9 3.0 3.2 4.1 4.6
総固定資本形成 4.0 2.2 4.3 3.0 -1.2 1.9 0.1 2.1 2.0
 建設 7.9 4.9 3.6 1.3 -3.4 1.1 -2.9 1.7 0.4
 機械設備 -1.2 -0.3 6.2 6.8 2.5 3.8 3.1 2.9 4.2
輸出 15.6 26.9 26.9 17.7 9.8 19.7 7.4 5.5 11.5
輸入 10.1 12.3 20.7 12.0 11.1 13.8 5.2 5.5 10.7

Data; http://www.bok.or.kr/ 下欄は国内総支出伸び率

05年12月2日に改訂

 

37. 韓国の海外建設受注は65%増(05年8月6日)

韓国国際建設業協会の発表によれば、05年1〜7月の海外の建設工事受注高は154件、62.3億ドルに達した。これは前年同期の37.7億ドルに比べて65.3%の増加である。

受注は中近東の工事が多いという。最近の原油価格の上昇によって中近東の産油国は建設ブームが再来し、上記の受注額の70.6%に当たる43.8億ドルが中近東からの受注で、前年同期比55.5%の増加である。

アジア地区からの受注は12.5億ドルで、16.5%増である。

工事内容としてはプラント建設で、53.3億ドルで、全受注高の85.5%を占める。エンジニアリング・ワークは3億6000万ドルである。

韓国のゼネコンの海外受注は1997-98年の通貨・経済危機を機に賃貸していたが、その後着実に増加させてきてるという。2004年の受注高は74億ドル(7.4兆ウォン)であったが、2005年は受注高は100億ドル(約9.9兆ウォン)に達すると見られている。

一方、国内の工事は2003年の102兆ウォン(約10.2兆円)から2004年には94.6兆ウォン(約9.46兆円)に落ち込んでいた。05年も不振は続いている。