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中国の政治経済


C16-1,中国の木材輸入、世界の森林を破壊(2016-3-23)

C15-2,中国の’One Belt, One Road'政策(2015-12-5)

Ch.15-1中国の地下銀行(2015-11-20)

Ch 13-2 破綻に突き進む中国経済の問題点、IMFも指摘(2013-7-29)


Ch13-1. 中国がASEANを威嚇(13-7-24)

 86.バンク・オブ・アメリカが中国の銀行株を売却(09年1月9日

82-3.07年1~4月の都市部の固定資産投資25.5%増(07年5月21日)

85.中国政府は過剰外貨を国際金融市場で運用開始(05年5月19日)

82-2.中国の07年1Qの成長率は11.1%、政府も警戒感、株は暴落(07年4月19日)

84. コゲ付きに悩まされる中国企業が増加(07年3月28日)

83.中国の石炭輸入が輸出を上回る(07年3月11日)

82-1..中国株暴落、9%近い下げ、ニューヨーク株大暴落を誘発(7年2月27日)

50.⇒カナダに高飛びした高山、逮捕後釈放される(07年2月26日)

81.胡錦濤主席のザンビア訪問で物議(07年2月9日)

76-11. 中国の06年の貿易黒字76%増、とどまるところを知らず(07年1月11日)

60-2.光大 銀行に再び政府資金投入か?(06年12月15日)

80. 中国、農地保護のために不動産業者への土地料金を2倍に(06年11月21日)

76-10.銀行の預金準備率さらに0.5%引き上げ9.0%に(06年11月6日)

79. 上海で年金汚職事件発生(06年8月30日)

48-6.危機にさらされている都市の飲料水対策に本格的取り組み(06年8月23日)

76-9. 中国人民銀行、今年2度目の金利引き上げ6.12%に(06年8月18日)

76-8.たまる一方の中国の貿易黒字(06年8月10日)

75-2.中国、自動車部品の関税引き上げ延期(06年8月4日)

78. パソコン・メーカー聯想(Lenovo)の利益が90%も減る(06年8月3日)

76-7.上海の不動産価格急落(06年8月1日)

76-6. 中国政府が経済過熱対策を打ち出す(06年7月25日)

76-5.中国の06年2Qの成長率は11.3%、輸出と投資で伸びる(06年7月19日)

76-4. 中国の06年上期の原油輸入は15.6%増(06年7月13日)

77-2.中国の金融機関は2,200億ドルの不良債権に直面か、Fintch社('06年5月31日)

76-3.銀行の貸し出し急増で警戒感強まる(06年5月16日)

41-8. 中国株が急回復し2年前の水準に(06年5月13日)

77-1. 中国銀行が香港で近く98億ドルの株式公開売却(IPO)計画(06年5月10日)

76-2. 06年1Qの成長率は10.2%(06年4月16日)

76-1.06年3月の貿易黒字は1120億ドルに達する(06年4月12日)

54-3. 中国建設銀行05年の純利益が4%減少(06年4月7日)

48-5. 河川の汚染対策を100億元かけて実施(06年3月31日)

75.中国の05年の自動車輸出17万2800台に(06年2月16日)

74(48-4).河川に面した化学工場が水質汚染への脅威となっている(06年1月25日)

73. 温家寶首相、最近の地方の騒乱は役人の貪欲が原因(06年1月22日)

72. 中国の2005年の石油消費は微減(-0.3%)であった?(06年1月17日)

41-7.外資への株式市場規制緩和、上海コンポジット1200を回復(06年1月7日)

71(48-3).広東省、韶関市カドミニウム汚染、またも飲料水危機(05年12月21日)

70.中国のGDPは04年は1兆6,500億ドル、1人当たり1,300ドル(05年12月13日)

69.(48-2) ハルピン市で4日間以上の断水騒動(05年11月24日)

53-10. 10月の固定資産投資も27.2%増と高水準持続(05年11月18日)

68. ロンド金属取引所で中国政府の銅ディーラーが失踪?(05年11月14日)

  ⇒中国政府は銅取引による損失を認める(06年1月25日)

53-9. 05年3Qの成長率は9.4%だったが、その先は?(05年10月23日)

67. フォルクスワーゲンが赤字転落の中国子会社の再建策(05年10月17日)

66.石油消費抑制のために自動車税の引き上げを検討(05年9月29日)

53-8. 設備投資ブームは続くが、外資はやや沈静化(05年9月15日)

53-7. 05年8月も輸出の伸びは32%と高水準(05年9月13日)

41-6.株式 投資家保護のための特別基金設置(05年9月9日)

65. 7,000箇所の炭鉱を閉鎖(05年9月1日)

53-6.05年1~7月の都市部の固定資産投資は27.2%増(05年8月17日)

64. 元中国銀行副会長劉金宝に執行猶予付き死刑判決(05年8月16日)

63. 中国はついに元の対米ドル固定を取りやめ(05年7月21日)

53-5. 中国の05年上期の成長率は9.5%(05年7月20日)

53-4. 4-5月のFDIは減少に転じる(05年6月28日)

62. 中国金融局長、収賄容疑で逮捕(05年6月28日)

61. 外資の中国銀行株所有枠拡大の動き(05年6月23日)

60. 光大銀行を政府が救済(05年6月20日)

54-2..バンカメが中国建設銀行に25億ドル投資(05年6月17日)

41-5.中国政府、株式市場テコ入れに150億ドル投入か?(05年6月15日)

44、シンガポール検察庁は中航油(CAO)の幹部5名を刑事告発(Ch,44)

41-4. 株価回復の妙手(?)で1,100ポイント回復(05年6月9日)

59. ウエブ・サイトを全て政府登録に(05年6月8日)

24-2..鳥インフルエンザに警戒警報発令(05年5月23日)

53-3. 05年1-4月の固定資産投資25.7%増(05年5月22日)

59. 米国は中国の繊維製品にたいし再び数量規制(05年5月16日)4-5-3へ移動

58. 不動産市場に警戒信号点滅(05年5月5日)

 ⇒中国政府、不動産価格の沈静化に努力(05年5月13日)

57. 中国にホット・マネーの大量流入(05年4月26日)

56. 教科書問題で改めて中国、韓国から強い反発(05年4月6日)

55. 「新歴史教科書」問題でアサヒ・ビールが槍玉に(05年3月30日)

 ⇒アサヒ・ビールも会社は「新しい歴史教科書」支援は行っていないと釈明(05年4月3日)

54. 中国建設銀行張恩照会長汚職容疑で辞任(05年3月16日)

53-2. 繊維製品輸出の急増(05年3月11日)

53-1. 05年1月の貿易黒字は65億ドル(05年2月10日)

52.政府はダメ国営企業の救済は将来おこなわないようにする?(05年2月3日)

51. 上海株式コンポジット指数68ヶ月ぶりに1200ポイントを割る(05年1月31日)

50. 中国銀行ハルピン支店で10億元持ち逃げ事件(05年1月25日)

49. 外国資本と国内資本の税率の一本化を検討(05年1月20日)

48. 環境保護総局、建設中の発電所などの建設中止命令(05年1月19日)

47. APP(シナルマス・グループ)中国雲南省の森林破壊(05年1月19日)

34-8. 04年の乗用車販売は230万台(+15%)にとどまる(05年1月13日)

34-7. 04年末の外貨準備高は6,099億ドルに達する(05年1月12日)

46. 中国工商銀行、巨額な営業利益が不良債権で消える(05年1月6日)

 ⇒中国商工銀行で9億ドルの不正事件発覚(05年1月18日)

45. 長虹の対米輸出商社APEXが巨額赤字「(05年1月4日)

44. China Aviation Oilシンガポールの子会社が5.5億ドルの欠損(04年12月2日)

 ⇒Chen Jiulin(陳久霖) の栄光と没落(04年12月6日)

 陳久霖、シンガポールに帰国後逮捕(04年12月9日)

 ⇒CAOは負債5億ドルの棒引きを要請(05年1月6日)

43. 04年1-10月の外資投資額は538億ドルに達する(04年11月16日)

42. 中国は投資家の天国ではない(04年11月11日)

 

1. .中国の貿易←ここをクリックしてください 。

 1-1.中国の2002年の貿易動向

  ⇒輸出の主力は繊維から電機・機械類(テレビ、パソコン周辺機器など)に(02年11月11日)

  ⇒中国の対米輸出の主役は機械・電機関連製品にシフト(02年11月13日、03年2月24日データ更新)

  1-2. 中国の2003年の輸出は34.6%の伸び(04年2月13日) 

  ⇒中国はいまや米国以外にも欧州にも輸出急拡大(04年2月18日)

  1-3. 2004年の中国の貿易

  1-3-1 2004年上半期の中国貿易(04年8月27日)

2. 中国は22%の鉄鋼関税を課す(02年11月14日)

中国政府は11月20日から輸入鋼材に対して3年間平均で22%の輸入関税を課すことを決定した。これは米国が先にセーフ・ガードを発動し輸入関税の引き上げをおこない、EUも対抗措置をとったことに対応するためだそうである。

日本と韓国は例外措置を求めているが中国側は交渉に応じるつもりはないとのこと。中国の経済貿易委員会によれば今年の上半期に中国は1,170万トンの鋼材を輸入し、これは前年同期比37.5%増にあたるとしている。

そのため、中国は鉄鋼産業が打撃を受け、雇用にも大きな影響を受け、せっかく「高級品」増産のためおこなった巨額の投資がむだになり、鉄鋼業の利益が損なわれたというのが主な言い分である。 (11月14日付フィナンシャル・タイムズの記事参照)

こういう措置によって中国側が自ら受ける損害については時間が経過しないと理解されないであろう。しかし、最近の中国の輸出が①でみたように機械・電機が中心になっていることを考えれば、輸出に大変な悪影響が出ることは自明である。

このような政策が急に飛び出すのが、中国に投資する場合の怖さである。日本の電機メーカーも十分に留意する必要がある。中国政府はもっとリーゾナブルな対応をしないと、せっかくの外資進出に水をさす結果になるであろう。

 

3. 03年1Qの成長率は9.9%-ああ、もうどうにも止まらない!?(03年4月15日)

中国政府筋の発表によれば、中国の今年の1Q(1-3月)の実質GDPの対前年同期比の伸び率は9.9%であった。これは4半期の伸び率としては、過去6年間で最高の数字である。

工業生産が12.7%増、固定資本投資が27%増、外国貿易の数量が40%増、海外からの直接投資(FDI)が57%増の131億ドルというすさまじさである。

マネー・サプライではM2の伸びが3月には前年同月比18.5%であり、これまた快調である。

中国経済の好調さの原因は対米輸出が依然として好調を続けていることによって支えられている。米国は不況局面にあるが輸入は意外なことに減少していない。03年1-2月の商品輸入総額は2033.84億ドルで前年同期比13.3%増である。

しかし、この数字はいずれ減ってくるものと思われる。米国の個人消費や住宅建設は既に減退傾向が出てきている。

また、中国の設備投資、不動産投資についてはこのままの勢いはしばらく止まらないのではないかと考えられる。何故なら、目下不動産バブルの真っ最中だからである。これは誰にも止められず、いずれ悲惨な結末を遂げる。

FDIについては内容が良く分からないが、日系企業などはそろそろ投資先の変更を検討している企業も少なくない。一辺倒は災いの基である。

(この項続く)

 

4. 中国の貿易摩擦←クリックしてください

4-1.EUは中国への特恵関税を廃止(03年6月30日)

4-2. 米国の中国たたきが激化(03年10月29日)

4-3. 米国は中国製の繊維製品などに輸入制限を検討(03年11月20日)⇒テレビに波及(03年11月26日)

4-4. EUも中国製繊維製品の輸入急増に繊維メーカーが対抗措置を要求(04年1月15日)

4-5. 米国の対中国輸入規制(04年6月19日)

 4-5-1.米国が中国製木製家具に対して高関税(04年6月19日)

 4-5-2. 米国が中国製靴下に輸入数量規制(04年10月24日)

 4-5-3. 米国は中国の繊維製品にたいし再び数量規制(05年5月16日)

 

5. 03年2Qの成長率は6.7%にダウン(03年7月17日)

1Qには9.9%の高成長を記録したが、2QはSARS騒動の影響で6.7%成長にスロー・ダウンした。その結果、今年上期の成長率は8.2%であった。

SARS騒動の影響を最も強く受けたのはサービス産業であり、0.8%の伸びにとどまった(02年2Qは6.9%)。小売売上は6.7%の成長(03年1Q=9.2%)であった。

輸出の伸びは34%、固定資本形成は31%増と依然として好調を維持した。ただし、輸出の先行きは暗いという。

中国国家統計局の楊調査主任の見通しによれば03年の年間成長率は7~7.5%は維持できるという。

 

6.. 不動産投資への過大貸付に警告(03年7月22日)

中国では上海を中心にビル建設ブームが続いているが、03年上半期の貸付累計額は293.2億ドル(約3.5兆円)に達した。今年上期の不動産貸付額は55億ドルでり、前年同期比55%増である。

このうち約半分は個人住宅向け融資であると考えられるが、不動産価格が下落した場合、金融業界全体が巨額の不良債権を抱え込むことになると中央銀行は警告を発している。

中国の銀行は既に国営企業に対して、一説によると5,000億ドル(約60兆円)もの不良債権を持っているという。

ゴールドマン・サックスの最近のレポートではGDPの21%に相当する、2,520億ドルの不良債権処理を2004年末までにやる必要があるという。(ウオール・ストリート・ジャーナル03年7月22日参照、 http://www.wsj.com 有料)

 

7. 8月の製造業の生産は前年同月比17.1%増(03年9月10日)

中国国民統計局の発表によれば、8月の製造業生産は3,498億元(42.5億ドル)に達し、前年同月比+17.1%となり、ますます好調を維持している。

1~8月の合計では2兆5270億元で前年同期比16.5%像であった。SARSの影響は極めて軽微であったことをうかがわせる。

好調だった部門は自動車、電機機器、通信機器であった。電機機器のなかで特に注目すべきは携帯電話の生産で8月は前年同月比54.7%増というすさまじさであった。

それ以外ではエアコン、冷蔵庫、洗濯機が32.0~74.4%増加した。

ただし、洗濯機などの白物家電メーカーはハイアール(海爾)などの一部のメーカーを除いて過剰生産・安値販売などで業績が悪く、買収されたり倒産しているという(9月10日フィナンシャル・タイムズ)。

自動車の8月の生産台数は368,000台と前年同月比48.8%増となった。そのうち169,000台が乗用車であった。なお7月の乗用車生産は171,000台であった。

8月の輸出は2,318億元で前年同月比28.5%増であった。

これ以外にも、建設ブームが続いており、このまま中国が走り続けられるのか、傍目ながらハラハラさせられるところである。

「どうにも止まらない」状態は依然続いている。日本や、韓国、台湾も東南アジア諸国も中国のブームに少なからぬ恩恵(?)をこうむっていることは間違いない。

このようなブームの資金を支えているのは外国の金融機関ではないらしい。外国銀行の人民元による貸付シェアは2001年の15%から2002年には7.4%に落ちているということである。(9月9日ファイナンシャル・タイムズ)

ブームをファイナンスしているのが国内の銀行であれば、ブームが崩壊したときに国際金融パニックに陥る可能性は少なくなる。問題は中国内の金融機関の混乱だけでとどまる可能性もある。

もし,そうだとすれば外国の要因によって人民元を切り上げたりする必要性は当面ないということになる。あるのは米国や日本の「泣き言」だけで、中国政府としては聞かないふりをしていればよい。

そのかわり、外国の銀行がノコノコ出かけていって、中国企業や政府機関に貸し付けたりしたら、とんでもない災難が後から降りかかってこないとも限らない。過去にも、さんざ痛い目に合わされてきたことを思い出せばよい。

ともかく、予想以上のピッチで中国は実力をつけてきていることは間違いない。問題なのは、その場合に外資系企業が果たした役割を中国政府が忘れてしまう可能性があることである。タイのタクシン政権がその良い例である。

タクシンはタイの通貨危機の責任を外国企業にあると考えている。中国に何か問題が起こったときどうなるか?日本の企業は今からよく考えておく必要があえる。

 

8. 中国の金融監督官庁が近く国営銀行を査察(03年9月12日)

中国政府は建設バブルの膨張などにともなう国内銀行の異常な貸し出し増をチェックするため、来週に国営銀行4行への査察をおこなうという予告を発した。

適当に説明資料を用意しておけという趣旨であろう。4行とは中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、中国銀行である。

2003年1~7月の銀行融資は1兆8870億人民元(約2279.8億ドル)も増加しており、既に2002年の総額1兆8500億人民元を上回る勢いである。

中国の銀行の不良債権比率は公式には03年の1~6月の間に4.02%改善されて、22.19%にまで低下してきたということになっている。しかし、この数字には欧米銀行はあまり信を置いていない。不良債権比率は30~50%位はあるだろうという見方が多い。

それ以外にも、不正融資をめぐるスキャンダルがあちらこちらから出続けている。

市場経済が始まり、順調に動き出したかに見える中国経済もあちらこちらで多額の授業料を支払うまでは簡単には軌道には乗らない。

 

9. 白物家電メーカーの不振が顕在化(03年9月12日)

9月10日付けのFinancial Times の報道によれば、近年急成長を続けてきた中国の現地資本白物家電メーカーのうち、ハイアールのような一部の超優良企業を除き、かなりの有力メーカーが業績不振のため買収されたり倒産しはじめたという。

その一方で、外資系企業は逆にブランド力に物を言わせて、着実にマーケット・シェアを拡大しているという。外資の洗濯機は1999年には15%のシェアであったが、03年上半期には44%にまでシェアを拡大しているという。

地元の有名企業のリトル・スワン(Little Swan)は20%ほどのシェアを持っていたが、赤字に転落し、政府保有の株式を南京の民間企業に売却した。

第3位のRoyalstarもイスラエル資本のElco Industries社に売却された。

Little Duck社は2年間赤字が続いた後、地元のトラック・メーカーへの売却交渉をおこなっている。

これらの企業の採算を悪化させているのは、激しい値引き競争と材料費の値上がりによるものであるという。たとえば鋼材価格は40%、プラスチック価格は20%値上がりしたということである。

 

10. 03年3Qの成長率は9.1%、「大躍進政策」、第2ラウンドたけなわ?(03年10月26日)

10月16日に中国政府は今年の第3Qの成長率は9.1%に達し、1~9月合計で前年比8.5%の成長を遂げたと発表した。SARSの影響のあった第2Qは6.7%の成長であったから、その回復振りのすさまじさが伺われる。

特に、成長の牽引力となっているのは建設投資で1~9月には30.5%の驚異的伸びを示した。そのため、鋼材やセメントなど作っても作っても追いつかない有様で、鉄鋼会社の新設も相次いでいるという。

ただし、生産設備は小型で、内容積300~600立方メートルの日本では大昔に姿を消してしまったような溶鉱炉が次々作られているという。現在、日本で稼動している高炉は内容積5,000立方メートル前後の高炉である。

1958年の8月から毛沢東の指導の下に「大躍進」政策が採られ、土法高炉と称する超小型の銑鉄製造炉が作られ、全く使い物にならない鉄の塊を大量に生産したが、今回はだいぶマシなようである。

しかし、このような反時代ともいえる製銑設備を使ってまで大増産をやること自体、私には今日の中国の「高度成長」なるものの危うさが気になってならない。

宴の後に、これらの群生した設備はどうなっていくのであろうか?エネルギー多消費型、旧式設備は必ずや中国国民の負の遺産となって重くのしかかることは目に見えている。

資源・資金の有効活用がなされなければ、将来の中国にとって大問題である。このような鉄鋼大増産は民需だけではなく、政府の公共工事支出が大きな要因となっていることは間違いない。

また、石油生産は完全に頭打ちになっている、石炭も電力も目一杯の感じである(表6)。

地方経済の成長は中央政府にとっての最重要政策課題であることは確かだが、成長のための合理的計画なしに無理な成長を図ることは無意味かつ有害である。

なお03年1~9月の小売は前年同時期に比べ8.6%の伸びであったという。

表 6 中国の主要物資生産量

  1999 2000 2001 2002 '02/99
粗鋼(万トン)   12,395   12,850   15,163   18,255 1.47
セメント(万トン) 57,300 59,700 66,104 72,500 1.26
発電量(億kwh) 12,393 13,556 14,808 16,540 1.33
石油(万トン) 16,000 16,300 16,396 16,700 1.04
石炭(億トン) 10.45 9.98 11.60 13.80 1.32
食糧(万トン) 50,8.9 46,218 45,264 45,711 0.98

資料出所:「中国情報ハンド・ブック、2003年」蒼蒼社ほか

 

11. 米国の中国たたきが激化(03年10月29日)⇒4-2に移行

 

12. 中国の石油消費が急増(03年11月14日)

中国は高度成長真っ盛りであり、加えて自動車販売が急増していることもあり、国内の石油消費が急増している。

中国政府の石油に関する統計は信頼性がさほど高くないと信じられているが、確実にいえることは既存の油井からの生産は完全に頭打ちとなっており、今後は一大石油輸入国として国際石油市場を圧迫するということである。

IEAの発表によると、2003年の世界の石油消費は7億8600万バレル/日と昨年より130万バレル/日増加した。さらに2004年には110万バレル/日の増加を予想している。

中国の石油消費は2002年は495万バレル/日から2003年には539万バレル/日に増加し、さらに2004年には570万バレル/日にまで増加すると見られている。

これは世界の石油消費増加量の約30%分に相当する(WSJ03年11月14日より)。

(03年11月21日)新華社通信によれば03年の中国の石油輸入量は8,000万トンに達する見込みである。02年は7,000万トン、金額にして127億ドルの石油を輸入した。

近い将来(10年以内に)、中国は日本の石油輸入量を越えるであろうとシノペックのワン(王)チミン社長は語っている。

⇒中国の03年4Qの石油消費は日本を抜いて世界第2位に(04年1月21日)

IEA(International Energy Agency=国際ネネルギー機構)によれば2003年4Qの中国の石油消費は546万バーレル/日と日本の543万バーレル/日を抜いて、米国についで世界第2位となった。

米国は2,000万バーレル/日以上を消費する桁違いの石油消費国である。石油のためにはイラク侵攻も辞さないというのも頷ける。

中国のエネルギー消費は自動車のいっそうの普及とともに爆発的に増えていくことは間違いない。そうなると石油資源をめぐって新たな米-中対立も起きかねない。中近東の石油も日本との争奪戦となりかねない。

03年の中国の原油輸入量は9,100万トンと前年比31%の増加であった。2030年には中国の石油輸入量は1,000万バーレル/日に達すると見られている。

その前に、現在ですら石油価格の高位安定(既に35~6ドル/バーレル)というまことに困った問題が世界の人々を悩ますことになりつつある。

 

13.米国は中国製の繊維製品などに輸入制限を検討(03年11月20日)⇒4-3に移行

 

14. 中国の経済統計数値には欠陥があるー当局者が認める(03年11月21日)

中国の国家統計局のリ・デスイ理事は中国の過去の国内総生産の統計など国際的な標準や慣行に従ってつくられたものではない。そのため、中国の経済実態からズレたものも存在する。

また、ひとたび発表すると、それを修正するのが困難であった。今後は、統計制度をより合理的に改め、統計内容を充実させていくと語った。

確かに、その通りであり、たとえば名目GDPは金額が記載されているが、実質GDPは指数のみで計算されており、両者間のアンバランスが調整されているようには見えなかった。ぜひ改善を望みたい。

 

15. 中国は2004年から税制の大幅見直しを検討(03年11月30日)

11月26日のファイナンシャル・タイムズの記事によれば,中国政府は来年以降,大幅な税制改正を検討している。その骨子はおよそ以下のとおりである。*項目のコメントは筆者の見解で ある。

①国内企業と外資との法人税の差をなくしていく。ということは,外資にとってはかなりの増税になる可能性がある。中国は現在,外国からの投資を呼び込むために,極端な優遇税制を採用している。

平均的に見て建前上は国内企業は33%(実際は25%しか払っていない)、外資は経済特区などの場合は15%程度(実績は13%)である。

そのため,国内企業はいったん,何らかの形で資金を海外(香港を含む)に移して、後に「外資」という装いに変えてから、国内で投資を行う。そうすれば、かなりの税制上の特典を与えられるからである。

よいうことは、中国にはここ数年400~500億ドルの外資が入ってきていることに名手いるが、実際はその繁文以上が「国内企業」でsるとさえ言われている。

②付加価値税から機械設備購入のコストを控除する。これが100%実施されたら,中国は大変な設備投資ブームが起こるであろうことは間違いない。その結果は設備投資バブルとその崩壊という結果に終わることは明らかである。

したがって,実際は加速償却的な内容にとどまるであろうと予想される。

③将来的には法人税と付加価値税の統合をはかる。

⇒2006年には法人税を統一(04年2月7日)

中国政府は従来優遇されていた外資の法人税を引き上げ、国内企業の税率を引き下げる形で2006年には法人所得税の一本化を図るという考え方を-財務部の幹部は再確認した。

税率は24~28%の間になるであろうとLiao Luming(国家税務総局Director)は語った。現在外資の平均的な税率は20%で国内企業の税率は33%である。税率の統一は国内企業からの強い要請と、2001年にWTOに加盟しタ時の約束事項でもあるという。

外資の投資額累計は2003年末までに5,010億ドルに達した。契約ベースでは9,430億ドルであったという。

 

16. 中国の企業破綻と不良債権処理←クリック

16-1.国営銀行の不良債権の本格処理が始まる(03年12月17日)⇒#16に移行、上の青字部分をクリックしてください。

16-2(18) 国営銀行に450億ドルの資金注入(04年1月7日)

16-3(35). 珠海市が出資しているツー・クアン(珠光発展)・グループ の破綻(04年6月12日)

16-4(38). D’Long(徳隆)社の救済に中国政府が乗り出す(04年8月28日)

16-5. 中国の企業破綻と不良債権処理(04年9月6日)

 

17.中国の鉄鋼業 ←クリックしてください

 

20. 03年の実質成長率は8.5%と6年来の最高(04年1月15日)

中国は2003年の実質経済成長率が過去6年間の最高の6.5%に達したものと思われると国家税務総局長の謝旭人(Xie Xuren)氏は述べた。中国政府の税収がそれだけ高くなっているということである。以下は謝局長の談話である。

03年の税収は全体で20.3%増加し、固定資産投資は35%、産業の利益は40%はそれぞれ増加した。輸入関税は899億元増加し、付加価値税(増値税)は1,066億元の増収となり、これは2002年の3,458億元に比べ約3分の1の増加である。

03年には輸出リベート1,430億元支払い、それ以外に税法上の輸出優遇措置を609億元おこなった。しかし、今年は、中国政府は付加価値税の減免を3%縮小するのでこれらの金額は減少するであろう。

また、自動車の売れ行きが03年は30~40%増加したので、これも税収には大きく貢献した。

GDPに占める税収は1%ほど増加し、17.6%となった。外国企業は税制面で国内企業より優遇されてきたが、WTO加盟後は税制の差別をなくすべきであるという、国内企業からの強い要請が出ている。

正式には1月20日に国家統計局から発表される予定である。(WSJ04年1月13日の記事参照)

⇒03年は9.1%成長達成(04年1月20日)

国家統計局は2003年の実質経済成長率は9.1%であったと発表した。これは1996年の9.6%以来の最高の伸び率であった。2QはSARSの影響で伸び率はいったん6.7%に鈍化したが、その後急回復し、4Qは9.9%の伸び率になった。

名目GDPは米ドル換算で1兆4,000億ドルとなり、国民1人当たりGDPは1,090ドルとなった。

固定資産形成の伸びが03年1-9月期で前年同期比26.7%であったが、2002年の30.5%の伸びに比べるとあっや鈍化の兆しが見え、政府の引き締め政策の効果が出てきていると当局者は語っている。

輸出は前年比35%の伸びを示したが、FDIはほぼ2002年並であった。

2004年も7%以上の成長を遂げるものと当局は考えている。

表20 中国の部門別実質伸び率(%)

  実質GDP 1次産業 2次産業 うち工業 うち建設 3次産業
 1993 13.5 4.7 19.9 20.1 18.0 10.7
 1994 12.7 4.0 18.4 18.9 13.7 9.6
 1995 10.5 5.0 13.9 14.0 12.4 8.4
 1996 9.6 5.1 12.1 12.5 8.5 7.9
 1997 8.8 3.5 10.5 11.3 2.6 9.2
 1998 7.8 3.5 8.9 8.9 9.0 8.3
 1999 7.1 28. 8.1 8.5 4.3 7.7
 2000 8.0 2.4 9.4 9.8 5.7 8.1
 2001 7.5 2.8 8.4 8.7 6.8 8.4
 2002 8.0 2.9 9.8 10.0 8.8 7.5
 2003 9.1 2.5 12.5     6.7

資料;月刊「海外経済データ」内閣府ほか

 

21. 2003年の海外直接投資は1.44%増にとどまる(04年1月15日)

03年の中国への外国からの直接投資(FDI)は前年比1.44%増の535億ドルにとどまった。02年は01年比12.5%増であったから伸び率自体はかなり鈍化したが、依然として高水準であることには変わりはない。

ただし、03年12月だけをみると前年同月比34%増であった。

03年に設立された外資系企業は41,081社に達した。これは前年比20.22%増である。

投資国の順位は①香港、②バージン諸島、③日本、④韓国、⑤米国、⑥台湾、⑦シンガポール、⑧西サモア、⑨ケイマン諸島、⑩ドイツである。このうち、香港やバージン諸島などは実際は中国系企業が外資に成りすませて中国に投資しているケースが少なくない。

したがって、純粋なFDIはこれよりはるかに低い数字であろう。その中でも、最近は韓国の対中投資が目立っている。(続く)

 

22. EUも中国製繊維製品の輸入急増に繊維メーカーが対抗措置を要求(04年1月15日)⇒4-4に移行

 

23. 2003年の中国産自動車販売は34%増の439万台(04年1月18日)

中国は輸出ブームに加え国内消費も部分的には急拡大している。

中国自動車製造業協会によれば、昨年の中国産自動車販売は全車種合計で02年比34%増加し、439万台に達した。

そのうち国産の乗用車は197万台に達し、輸入車も加えれば優に200万台は突破している。

中国人の性格として、誰かが自動車を買うと、それにつられて買う人が増えるので、今後さらに自動車の販売は爆発的に増える可能性があると見る関係者もいる。

協会の予想では今年の乗用車販売は250~62万台であるが、300万台に達する可能性もあるという。

03年12月の国産車の販売は456,451台で02年12月の販売台数227,348台の約2倍というすさまじい増加ぶりである。

各国から中国の自動車市場の急拡大を当て込んで次々とメーカーが進出してきているが、価格競争が激化し、売れない古い型の車の在庫が積みあがっている。

低級車はすでに国際価格を下回っており、これから中級車以上の価格競争が激しくなると見られている。

また自動車用素材である鉄鋼やアルミの価格は急上昇しており、現地の自動車メーカーの採算は悪化しつつあるという。

(WSJ 04年1月18日付けインターネット版参照)

⇒自動車政策の改革を検討(04年1月20日)

1月19日付のWSJによれば中国政府は自動車政策の改革を検討しているという。その骨子は

①外資への規制をもっと緩め、地元メーカーへの技術移転の義務付けを緩和したりする。たあDし、50%の出資比率の上限は変えない。

②地元資本の自動車業界への安易な進出は認めず、弱小メーカーの群生を規制する。

 

24. 中国の鳥インフルエンザ

24-1.鳥インフルエンザ中国でも発生(04年1月27日)

今まで中国には発生していなかったといわれた鳥インドネシアが広西壮族自治区(Guangxi)のアヒルに感染していることが判明した。そのため14,000羽のアヒルが処分されたと新華社は報じている。

さえあに、河北省のニワトリと湖南省のアヒルにも発生が確認された。

中国政府はほかの地域への汚染は確認していないとしているが、感染が広がっていく可能性はある。

⇒発生源は中国との疑いがもたれている(04年1月29日)

タイの英字紙ネーション(29日付)によれば、今回の鳥インフルエンザの発生源は中国南部ではないかという疑いがもたれていることを報じている。

29日(木)タイ政府は関係各国の担当官をバンコクに招請して、鳥インフルエンザに関する緊急国際会議を開いている。

世界保健機構(WHO)は中国に対し、香港の旅行者2名(父親と8歳の娘)が昨年2月中国福建省を旅行した際に死亡した事件の説明を求めている。WHOはもちろん中国を発生源と断定しているわけではないが、疑いのあるいくつかの可能性を 調査したいとしている。

その父親は香港に帰ってから死亡し、死因はH5N1ウイルス(鳥インフルエンザ・ウイルス)によるものであることが確認されているという。息子も罹病したが回復した。

イギリスの科学週刊誌”New Scientist"は「中国で遅くとも2003年の中ごろには発生している」と報じているという。

その根拠として、1997年に香港で発生した鳥ウイルスの予防ワクチンを中国南部の農民が大量に投与したことによってH5N1ウイルスが拡散した可能性があることを論じている。

予防ワクチンとウイルスの間にはわずかな遺伝子上の違いしかなく、そのワクチンが不完全なものであったりすると発症することなく鳥の体内に留保されたまま、取引されて拡散する可能性があるのだという。

インドネシアでは鳥を大量に処分する資金がないのでワクチン投与で対処しようとしていたがWHO関係者はかえって事態を悪化させる可能性があるとして難色を示した。そのため、インドネシア政府はやむなく大量処分に踏み切ったという。

中国政府は当然のことながら、発生源説を根拠がなく無責任な発言として強く否定している。

 

24-2..鳥インフルエンザに警戒警報発令(05年5月23日)

中国では渡り鳥の雁178羽が鳥インフルエンザ(H5N1)で死亡していることが05年5月初め青海湖の鳥島で発見されたため、野鳥の生息地への立ち入りを制限し始めた。 同時に300万個の鳥インフルエンザ・ワクチンを現地に急送して拡大を防ごうとしている。

ベトナムではヒトからヒトへの鳥インフルエンザ・ウイルスによる死亡例が出ている疑い出てきている。ウイルスの突然変異の発生の可能が高い。

また、鳥インフルエンザとの関連は明らかではないが、5月のゴールデン・ウイーク前に深圳(しんせん)では子供を中心に1万人以上が「インフルエンザ」にかかったことが報告されている。

2003年後半から鳥インフルエンザで死亡したと確認されている人数はベトナムで36人、タイで12人、カンボジアで4人となっている。

(BBC インターネット版、05年5月22日付、参照)

 

26. 大型ショッピング・モールの新規建設禁止(04年2月23日)

中国政府はバブル気味の経済に歯止めをかける目的で遅ればせながら、売り場面積2ヘクタール以上の大型ショッピング・モールの新規着工を全国的に一時禁止すると発表した。

現在、中国では不動産関係への銀行融資残高は1300億元に達しているといわれる。

昨年は94カ所の大型ショッピング・モールがオープンし、04年末には236ヶ所に達すると見られている。

中国商業統一連合によれば、ショッピング・モール建設投資は1700億元に達し、そのうち1300億元が銀行融資であるという。

上海は35ヶ所、広州は27ヶ所、深圳は20ケ所、北京、成都、大連、重慶、武漢にはそれぞれ10ヶ所以上が建設されているといわれる。

 

27. 04年1月の生産者価格3.5%上昇ー金利引き上げ方針(04年2月24日)

中国の生産者物価は03年11月1.9%、12月3%、04年1月3.5%(対前年同月比)と上昇傾向が顕著になってきた。同時にいままで低位安定していた消費者物価も1月には3.2%上昇した。

そのため、中央政府もインフレに対する警戒感を抱き始め、また不動産バブルに歯止めをかける必要から、金利引き上げを検討し始めていると24日のニューヨーク・タイムズは報じている。

 

28. 出稼ぎ労働者の送金が農村経済を潤す(04年2月27日)

現在、中国では約9,800万人の農民が都市部に出稼ぎに出ていると推定されてい。彼らの農村への送金額は2003年は3,700億元(約4兆8千億円)に達したものと推定される。前年比8.5%増である。1人当たり3,768元であった。

このように都市部で大勢の農村からの労働者を吸収できたのは外国からの直接投資があったためである。

農民の平均収入は昨年は2,618元/人と推定されている。しかし、その中の農業から得られる収入は60%以下になっている。出稼労働者からの仕送りは収入全体の8%び及んでいる。

これがあるので、農民もテレビや冷蔵庫といった電化製品が買えるのである。

 

29. 中国政府は経済の過熱にブレーキを意識(04年3月5日)

中国では第10期全人代(国会)第2回会議が本日から開催されている。その中で温家宝首相が冒頭演説をおこない、今年の成長率は7%(昨年は9.1%)に押さえ、農村の近代化に注力するという方針を打ち出した。

バブルの拡大を防ぐために金融規制を強化し、また、国際的な人民元の切り上げ圧力にもある程度対応すべく何らかの準備も行うことにするようである。

農村の近代化は政策目標に掲げられるのは毎度のことといってよいが、今回は少しばかり熱の入り方が違うような印象を受ける。今のままでは都市と農村の経済格差がいっそう拡大し収拾がつかなくなりつつある。

経済の拡大基調は輸出と都市部の不動産建設と全国的な公共投資のばら撒きによってバブルが拡大していることは明らかだが、その割りに物価は全面的上昇という感じではない。

もちろん鉄鋼などの不足資材は上昇しているが、消費財はさほっどでもないようである。これは何を物語っているかというと、過当競争の結果、価格が上がらないということであろう。

ということは企業レベルでの利潤率が低く、赤字企業が大量に発生していることを意味している。それらの企業は銀行からファイナンスされており、銀行にしてみれば隠れた「不良債権」が日に日に積み上がっていくというということになる。

銀行の融資が途切れれば、それらの不良債権は表面化することになるが、融資を続けている間は、潜在的な不良債権である。外部から見ればそれらは不良債権には見えない。

中国政府は国内で債券を発行して資金を集めているが、それでは足りずに金融機関に資金の国外調達を大量にやらせ始めた。国営企業も香港の株式市場に上場して資金調達を図るところが今後急増するであろう。

日本の金融機関や商社などは過去にさんざレッスン・フィーを支払ってきたのでおいそれとは引っかからないと思うが、資本主義社会は「学習効果が長続きしない」という特徴を持っているので要注意である。

⇒金融引き締め政策はまず不動産投資から(04年5月18日)

韓国の済州島で開かれているアジア開発銀行の総会で、中国財務部のリー・ヨン次官は中国政府の課題は経済の過熱を抑え、2004年の成長率を何とか7%程度にしたいと語った。

最近同じ趣旨の発言が政府高官からなされており、4月28日ごろからアジア諸国の株式市場はいっせいに下落に向かっている(本ホーム・ページ、第3回、東南アジアの経済の項参照)が相当な切実感をもって具体的な政策が語られたようである。

金融引き締めの具体策としては銀行の預金準備率を0.5%引き上げ8%にするほかに不動産投資の抑制を各銀行に指示しているということである。中国の政策担当者は「不動産投資」の経済に与える影響力をさほど重視していなかったことも明らかにされた。

しかしながら民間部門の独走を止めることは非常に難しいという認識を示している。中国では実験段階にある「市場経済」だから試行錯誤はやむをえないという認識なのであろう。

しかし、200年の歴史を持つ資本主義社会でも民間の暴走は止められない場合がほとんどであった。80年代後半の日本ノバブル経済をみればそれは明らかである。

また、04年の成長率を7%にとどめるという目標は到底無理である。既に1Q(1-3月)の成長が9.8%に達してしまい、04年上半期では9%程度になるものと予想されている。

下期には多少落ちるとしても、単純に計算しても5%ていどにまで落ちないと7%にまでは下がらない。そのような急激な引締め策は取れないし、世界経済も米国で恐慌でも起こらない限り無理であろう。

 

30. 都市部に2,400万人の失業者(04年3月10日)⇒37-0.に移行

 

31. 中国企業の香港における株式公開売り出し(IPO)は概して不振(04年4月1日)

中国企業は資金調達のために香港で株式公開販売(IPO)を最近急増させているが、外資系の銀行やファンド・マネージャーは警戒感から余り買いに出ていないという。(4月1日ウオール・ストリート・ジャーナル Internet版参照)

例えば中国の最大の半導体チップ・メーカーであるSMI(Semiconductor Manufacturing International Corp. )の株式公開販売についても売り出し価格が高すぎる面もあって余り買い手がつかなかった。

他の各社も最近は余り株式の買い手がついていないといわれる。その理由は、上場企業の経理内容の不透明性が高いというのが最大の理由であろう。

特に、国営銀行が投資抑制方針から融資を絞り始めたため、香港で外資調達の手段としてIPOを行う企業が増えているが、それらの多くが、情報を余り公開してこなかった経緯があることと過去の経理上の数字に信頼性が低いことが挙げられる。

最近まで中国企業の株式は非常に高い人気のものもあった。例えばニューヨークで上場されたChina Life Insurance Co,の株式は34億ドル販売され、2003年の世界記録となった。

また、小さい野菜生産会社のChina Green Holding Co,のIPOには1,600倍に上る申し込みが殺到したといわれている。

しかし、3月18日に売り出されたSMI は僅かに9%しか売れなかったといわれている。株価もIPOの時の1株2.35香港ドルに対し、一時期10香港セントほど上昇したが、今は5.2%下がっているといわれている。

Tom Online 社の株式は3月11日のIPOの売り出し価格より15%下がっているという。

これからも中国4大銀行の1つである中国建設銀行の50億ドルのIPOや、中国第2位の有線電話会社の20億ドルのIPOなど大型案件がひしめいてるといわれているが、どれくらい買い手が集まるか懸念されている。

中国経済は目下バブル的高度成長を続け、日本、台湾、韓国、タイ、マレーシアなど対中国輸出の急増で大いに潤い、それが国内消費増につながるという「好結果」をもたらしている。

日本の政府関係者も、勘違いして「小泉改革の成果がようやく出てきた」などとノー天気な発言が見られるが、何のことはない中国のバブルで少しばかり景気が上向いてきただけのことである。

中国通の一部には中国の物価上昇がさほど出ないのでバブルとはいえないなどと的外れな発言をしている向きもあるが、過当競争が激しいため物価の上昇が抑制されているだけの話である。

物価の抑制効果が利いているということは原料高のなかで個別企業段階ではかなりの企業が赤字を抱えつつも生産・販売を行っているということである。

資本主義国では赤字経営はしばしば倒産に結びつくが中国の場合は国営銀行の見えざる不良債権というう形で矛盾がなかなか表面化しない。したがって、このまま放置しておけば国営銀行の不良債権が雪ダルマ式に増加していく。

そういう国営銀行が香港で株式を公開販売するなどといっても、おいそれと飛びつく外国の投資家は少ないであろう。

 

32. 温家寶首相ダム建設中止を指示(04年4月9日)

温家寶首相は中国西方の「ヌ川」の上流で計画されていた大型ダムの建設中止を指示したらしい。これは中国政府が環境問題に真剣に取り組む意思のあることを内外に表明したものであり、極めて喜ばしいことである。

ヌ川はビルマのサルウィン川と直接つながっていて、タイ領とも接している。

中国政府が環境保全政策を真剣に考え始めたとすれば(希望的観測かもしれないが)中国本土のみならず、現在雲南省にいくつも作られたダムによる被害を受けているメコン川下流域のタイ、ラオス、ベトナム、カンボジアの住民にとっては何よりの朗報である。

現在の雲南省のダムのせいでメコン川流域が歴史的な渇水状態になり、タイの東北部の農民の間では水争いが深刻化し、米の2期作がかなり困難になっている地域が出てきている。

また、上流(中国)の水の汚染が下流域の漁業にとって深刻な影響を与えつつある。

中国は雲南省のダムが下流の東南アジア諸国にいかなる影響を与えつつあるか真剣に調査すべきである。

ダム建設は水力発電所の建設により、貧しい農村の経済の活性化に資するものという発想であるが、その環境に与える影響は計り知れないものがある。

しかし、水力発電所がなければ経済発展が図れないなどというのは余りに「市場原理主義者」的発想である。

現在メコン川流域開発構想なるものが日本も仲間に入って進められつつあるが、開発の被害がどの程度になるか全く予想もつかない一大暴挙である。即刻、一連のプロジェクトの見直しを進めるべきである。

「空気のきれいなところは、まだ空気が十分利用されていないのだから、そこに工業を移転すべきである」といって物議をかもした人物がクリントン政権の財務長官をつとめ、今はハーバード大学の学長に納まっているサマーズである。

本当にいい加減にしてもらいたいものだ。「悪質な経済学」ほど人類に危害を加えるものはない。

 

33.自動車ローン(04年5月27日)

33-1. 自動車ローンや投機資金流入も規制(04年5月27日)

中国政府は経済の過熱化を防止するため、不動産投資などへの融資を規制し始めたが、今回新たに自動車ローンへの融資規制を強化することになった。

自動車の売れ行きは昨年は前年比30%以上も急増したが、自動車ローンの支払不能件数も増加しているという。ただし、自動車ローンは最近20%から8%にまで落ち込んでいるとGMは述べている。理由は、銀行のローン管理がずさんだからだという。

北京市だけでも自動車ローンの焦付き1億2千万ドルにも達しているという。

また、自動車販売の急増は中国が世界から注目(非難)を浴びている石油の輸入急増の原因とも見られている。

また、海外からの投機的資金の流入も規制鶴措置を講じるという。外国企業は20万ドル以上の外貨の持ち込みについては使用目的をはっきりと明示するという措置を7月1日から実施するという。

中国の2003年の対外債務は02年比13%増の1,936億ドルに達している。

また、中央政府は地方政府が勝手にさまざまな投資(公共事業を含む)や融資を行わないように監視を強めるとしている。

しかし、「中央に政策あれば、地方に対策あり」と称して何とか抜け道を考えてやっていくというのが地方の今までのやり方であったが、どこまで中央の規制が徹底するかはわからない。

このような具体的な融資規制はバブルの崩壊という事態を避け、景気過熱を徐々に沈静化させるのにはある程度の効果を発揮するであろう。

それに完全に失敗したのが1997年の東南アジアの通貨危機であった。

(5月27日 WSJ インターネット版参照)

 

33-2. 自動車ローンの焦げ付きは900億元に達する(04年10月28日)

10月28日付けのSCMP(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト)紙(インターネット版)が伝えるところによると、中国の銀行は自動車ローンの不良債権額は900億元(日本円=1兆1,600億円)に達しているとのことである。

中国の自動車の売れ行きは今年の半ば以降鈍化しているが、最近は年率50%を超える勢いで伸びてきた。乗用車販売で見ると、2001年の販売台数は78.1万台、02年は113万台(前年比46%増)、03年は200万台(同、77%増)であった。

今年に入って自動車の販売は次第に伸びが鈍化し、9月はついに前年同月比マイナス3%であったとのことである。ただし、04年1-9月の合計で見ると前年同期比+17%という高い伸びを記録した。これは中国政府が自動車ローンを規制した影響が大きいという。

それもそのはずである、銀行の自動車ローンの焦げ付きがすでに日本円で1兆円を超える規模にまで急拡大していたのである。これこそバブル経済の典型的現象である。

もっとも被害が大きいのは中国農民銀行(ABC=Agricultural Bank of China)だといわれている。同行は自動車ローンの3分の1が焦げ付いていおり、その額は全国の焦げ付き額900億元の約半分近くに達しているという。

ABCの2001年からの自動車ローンは総額1,138億元に達したが、そのうち回収できた額が726.9億元であり、非回収率は36%に達するという。各支店には回収率を上げるように檄を飛ばしているという。

自動車ローンが急増した第1の要因はは自動車価格が急落したため、ローンを返済するよりは新しい安い自動車を買ったほうがよいという買い手側の「合理的発想」によるものであるという。

第2の要因は景気調整が進んでき業種や事業によっては収入が減ってきており、文字通りローンの支払いができなくなっているためである。もちろん銀行側にも責任があり、ろくに審査もしないで融資しているケースが少なくない。

銀行が担保に抑えているはずの自動車を無事回収できたとしても、中古車市場が確立していないため、販売が困難であるという。

新車の売れ行きもがた落ちで、売れない新車の在庫は04年8月末で40万台に達するという。

04年10月から銀行の貸し出しルールが改定され、自動車の場合、借り手は個人用が20%、商業用が30%、中古車の場合は50%それぞれローンの頭金を支払うことが義務付けられた。

 

34. 2004年中期の経済動向

34-1 やや沈静化の兆しか-5月の工業生産の伸び17.5%に鈍化?(04年6月11日)

加熱気味に推移している中国経済にやや沈静化傾向が表れた。5月の工業生産は対前年同月比17.5%(4,310億元)と4月の19.1%に比べ鈍化したと国民統計局政発表した。それにしても依然高水準であることには変わりはない。

中でも鉄鋼の生産は5月は13.3%増と4月の20.6%増に比べかなり伸び率自体は落ちている。一方、自動車の生産は33.3%増で、4月の34.6%増と大して変わりはない。

これは自動車といた耐久消費財需要は相変わらず根強いものの、不動産投資や公共投資(いずれも鉄筋棒鋼やセメントの主要需要産業)には多少の歯止めがかかりつつあることをうかがわせる。

建設投資は5月は+18.3%で4月の+34.7%に比べれば伸び率は低下したとはいえ、依然高水準が続いている。

また。資金流通指標であるM2の伸びも17.5%(総額23.5兆元)と4月に比べ1.6%ポイント減少した。これは2002年末の17%にかなり近づいた数字である。

消費者物価指数は4月は3.8%アップで上昇傾向が続いているが、中国政府は危険水域は5%であると考えており、現在のところさほど不安視はしていないという。

しかし、個別に見ると穀物は+32.3%、食用油は24.6%、果物、肉類、卵はほぼ20%前後と日常生活必需品の値上がりは激しいものがあり、単に総合的な消費者物価指数の伸びだけで見ると判断を間違うであろう。中国のインフレは激化している。

確かに、中国政府は経済の過熱はさまざまな後遺症を生むことを警戒しており、手の届く範囲のことを着実に実行しようとしている。

ただし、金利の引き上げは逆に一気に不良債権などのさまざまな内部問題を顕在化させる可能性があり、そこまで踏み切れない段階にある、というかそういう手は打てない段階に来ていると見るべきであろうか。

 

34-2. 乗用車の販売は減少傾向(04年7月21日)

#33で見たように中国政府は自動車販売へのローン規制を強化し始めているが、効果は着実に出てきているようである。

中国自動車製造業協会の発表ではセダン車(4ドア乗用車)の販売は4月220,100台、5月177,700台、6月167,300台とここ数ヶ月着実に減少している。

中国は04年1-6月は270万台の自動車を生産した。これは前年同期比27.1%増である。一方、販売は260万台であり、前年同期比24.2%増となり、生産が販売をやや上回っている。

2003年には自動車販売は前年比75%増と、爆発的な増加を示したが、最近、自動車ローンの規制により販売のペースが着実に低下傾向にあることは注目に値する。

ガソリン価格の上昇や自動車保険が高くなったことも販売減の要因である。しかし、外資系の自動車メーカーは長期的には中国市場は拡大を続けると見て、積極的な投資を続けており、過去12ヶ月間で120億ドルの投資を中国政府に約束している。

(http://www.chinapost.com.tw/ 7月21日参照)

自動車販売や鉄鋼業の非近代的設備への投資は削減されつつある。その意味では中国は全面的バブルへの突入は回避されるかもしれない。しかし、厄介なのは都市部の不動産投資(ビル、マンションなど)である。

不動産業者は投資を止めると倒産する危険があるから、あくまで投資を続けるという経営行動に走りやすい。すなわち、自転車操業的になっているのである。これは1997年の東南アジアの通貨危機の最大の原因となった。

中国でも同じことである。資本主義経済というのはそもそも「学習効果」はないというべきなのであろうか?仮にあったにしても長続きしないことだけは確かである。

 

34-3. 株式市場の下落傾向止まらず(04年9月10日)⇒41-1に移動

 

34-4. 04年8月の消費者物価は7年来の上昇(04年9月13日)

8月の物価指数は対前年同月比5.3%の上昇となり、7月よりも0.7%上昇した。この数字は7年ぶりのものであり、インフレ圧力が中国経済に重くのしかかりつつある。生産者物価は8月は6.8%の上昇であった。

消費者物価はいったん上昇した後、7月まではやや沈静気味に推移してきたが、8月になり石油価格の国際的上昇圧力をベースにして輸入原料・中間材料の高騰が直接消費者物価にも反映してきたものである。

内訳を見ると、食品関係が極端に値上がりしており、ガソリンなども値上がりしているが衣類や家電製品が値下がりしている。

食糧(主に穀物)は実に31.8%の値上がり、油脂22.5%、肉および加工品23.5%、卵30.3%、水産品15.6%、野菜類5.8%である。また石油価格の値上がりを反映してガソリンなどが10.5%、都市間交通費も2.9%値上がりしている。

一方、衣類は1.7%の値下がり、家庭用品1.1%の値下がり、耐久消費財2.5%の値下がりとなっている。食品の値上がりは低所得者の家計を圧迫するものであり、社会問題に発展しかねない。

8月の工業生産は前年同月比15.9%で7月の15.7%をやや上回ル高水準を続けている。4月に出された政府の「引締め政策」は実際的には生産や投資にはあまり効き目がなかった形となっている。ただし、上に見るとおり株価にはモロに影響している。

また、8月は固定資産投資(不動産と設備投資)が前年同月比26.3%も上昇している。1-7月の累計の31.1%増から見ればやや下がってはいるものの依然として高水準であることには変わりはない。

輸出も8月は依然好調を維持しており、前年同月比37.5%の上昇であり、輸入も35.6%上昇している。貿易収支の黒字は44.9億ドルであった。

なお、輸出の今年の1-8月の合計は3,606億ドルで、前年同期比35.8%の上昇、同じく輸入は3,615億ドルで40.8%の上昇となった。貿易収支の赤字は9億ドルである。

ちなみに、03年1-8月の貿易収支は88.6億ドルの黒字であった。今年に入り石油・原材料などの国際価格の高騰が直接響いている。

このようにマクロ的な数字で見る限り、中国経済は好調そのものといえるが、株価の異常な下落は中国の経済体質にどこか欠陥があると見なけらばならないであろう。それは、おそらく業績に問題のある企業が意外に多いのかもしれない。

 

34-5. 04年の経済成長率は9.4%に-中国社会科学院(04年10月12日)

中国社会科学院のWang Tongsan氏は10月11日に北京で開かれた経済セミナーで後援し、04年の中国経済の実質成長率は9.4%前後になるであろうという見通しを発表した。

また、2005年についても政治的、経済的な突発事故がない限り8%以上の成長は確保できる見通しであると述べた。

農業部門は4%以上の成長を続けている。第2次産業部門は04年が11.7%、05年が10.8%と2桁成長を続けるであろう。第3次部門(サービス)の成長率は04年7.9%、05年が7.5%の成長を遂げる見通しである。

総固定資本形成は04年6兆8,330億元、05年7兆8,650億元(いずれも名目値)となるであろう。名目ベースの伸び率は04年24.1%、05年が15.1%である。実質ベースの伸び率は04年が17.1%、05年が10.8%になるものと予想される。

また、国内総生産(総支出)に占める総固定資本の比率は04年が50%以上、05年が51%以上と、異常なまでの投資主導型経済である。

消費は実質で04年が9.8%、05年で9.5%を見込んでいる。投資、消費ともすさまじい勢いで中国経済は驀進している感じである。

輸出は04年は輸出入とも30%の伸びが見込まれ、05年は20%前後にややスロー・ダウンする。

ただし、懸念材料は物価の上昇傾向で8月の物価(#34-4参照)は5.3%と以上に高い伸びを示した。特に穀物価格の上昇は異常なものがあり(31.8%上昇)警戒を要する。

経済のボトル・ネックは輸送力とエネルギーであり、この部門への投資意欲は盛んであるがマネー・サプライを絞る政策が採られており、今後に悪影響を及ぼしかねない。(http://www.sina.com 参照)

外資を中心とした輸出の大幅な伸びを起点として、設備投資意欲がたかまり、政府も地方への交通網の拡張や電力投資などを行い、現在は投資ブームが経済を牽引している感が強い。

雇用の急増は消費ブームを誘発し、いまや歯止めが利かない状態で中国経済は突っ走っている感じである。こんな状態がいつまで続くはずがないというのが歴史上の経験からも言える。

その意味で社会科学院の見方は全体にナイーブに過ぎる感じである。

 

34-6. 04年3Qの成長率は9.1%とややスロー・ダウン(04年10月25日)

中国政府は10月22日(金)に04年3Qの実質経済成長率が9.1%となったと発表した。2Qは9.6%であったので0.5%だけ若干スロー・ダウンしたとのことである。04年1-9月前年同期比9.5%の伸びであった。

それにしても9月末からたったの3週間でGDPの数字が発表されるというのは大変なことである。日本ではおよそ考えられない。いや先進工業国でこんな芸当ができる国というのは寡聞にして聞いたことがない。

中国の統計システムはいったいどうなっているのであろうか?官僚の能率がすこぶる良好なのかも知れない。あるいは、そうと大胆な推計(GDP の数字はどこの国でも大胆に推計して行くっている)を行っているに違いない。

だから、その国の経済動向を観察するにはほかの統計資料を参考にせざるを得ない。

04年1-9月の総固定資本形成(工場設備など)は27.7%の成長であった。04年1-8月の伸びは30.3%であったとのことであるから、9月単独ではかなり下がったのであろう。

インフレ率は9月は5.2%と7、8月の5.3%にくらべ、ほんの少しだけ下がった。物価は上がっても国民の消費意欲は衰えをみせず、9月の小売売り上げは前年同月比13%プラスであった。(物価が5.5%上がったとしたら、実質的には7.5%の伸びか?)

いっぽう、自動車の販売は9月は前年同月比マイナス3%であったとのことである。ただし、04年1-9月の合計で見ると前年同期比+17%という高い伸びを記録した。これは中国政府が自動車ローンを規制した影響が大きいという。

携帯電話の2Qの売り上げは1Qに比べ23%もの落ち込みを見せた。また、ノート型パソコンの売り上げは1Qに前年同期比36%と急増した後、2Qには6%マイナスになったという。

要するに、中国経済もここ数年の一本調子の伸びから、業種によっては急速に伸びが鈍化しているものも出てきているということに尽きるであろう。

10月に入ってから家電向けの薄板(多くは輸入品)価格が急上昇しているという。これは必ずしも家電の実需が増えたためではないがエアコン等一部の品目で着実に需要が増えているものが存在するためであろう。

また、4月から引き締め対象にされてきた鉄鋼、セメント、電解アルミの3業種の設備投資は着実に減ってきていると当局者は語っている。

確かに内陸部の鉄鋼会社が強引に行ってきた投資は技術的にも革新性がなく、エネルギー多消費型設備を量的に拡大したものが多く、将来禍根を残しかねない。

周辺諸国(台湾や韓国やシンガポールなど)は今年はまあまあだが2005年には輸出のスローダウンが影響して経済の伸びが鈍化すると見ている。おそらく中国の景気のスロー・ダウンを見越しての話であろう。

 

34-7. 04年末の外貨準備高は6,099億ドルに達する(05年1月12日)

中国の2004年末の外貨準備高は、03年末より2,067億ドル増加し、6,099億ドルに達した。

外貨準備高の増加の一部は輸出の伸びによってもたらされたものであり、04年の輸出は対前年比35.4%増の5,933.6億ドルに達した。貿易黒字は319.8億ドルと前年比26%像であった。

外国からの直接投資は04年1-11月の実績で575.5億ドルに達し、03年合計の535億ドルを上回っている。

また、ホット・マネー(短期資金)の流入は950億ドルに達した。中央銀行は過剰流動性を吸収するために、950億元(115億ドル)の債券 販売(売りオペ)を最近開始した。中央銀行の1年もの債券の利率は3.27398%である。

外国の金融機関は元の切り上げが近いと見て、短期資金を中国に持ち込んだものと見られる。これら、短期資金の向け先は主に上海を中心とする不動産業であったと見られる。

この「短期資金が不動産投資に向かう」というのは、1997年の通貨危機のときのタイ、インドネシアによく似たパターンである。

中国政府は不動産業と建設関連産業(鉄鋼業、セメント)への融資を規制しようとした。しかし、その効果は十分に上がっているとはいえない。

国内景気の引き締め策として、金利をむやみには上げられない。金利を上げると、短期資金の流入がいっそう激しくなるからである。

中国政府が外国(特に、米国)からの「元切り上げ圧力」を緩和するために、さしあたりできる為替対策として、中国人の海外観光旅行や海外への投資を推奨している。(WSJ,05年1月12日、Internet版参照)

 

34-8. 04年の乗用車販売は230万台(+15%)にとどまる(05年1月13日)

商務部の発表によれば、04年の中国の自動車販売は前年比15%増の約230万台となった。03年は約200万台と対02年(120万台)比+66%という急激な伸びであった。

04年は前半までは好調な販売ペースが続いたが、後半に入ると伸びが鈍化してしまった。

内容的には高級車志向が強まっているという。従来はフォルクス・ワーゲンのサンタナといった1万1千ドルクラスの普及型タイプの車がうれていたが、最近は3万ドルクラスの車も売れるようになったという。

自動車全体の生産は507万台であり、03年比14.1%増となった。このうち乗用車は270万台(240万台説もある)といわれている。売れ行き不振のため流通在庫40万台、メーカー在庫10万台計50万台の在庫があるといわれている。

ただし、現在のところ詳細については不明の点が多い。

http://www.sina.com.cn/  05年1月14日、中国記者報 など参照) (続く)

 

 

36. 米国の対中国輸入規制(04年6月19日)⇒ 4-5に移行

 36-1.米国が中国製木製家具に対して高関税(04年6月19日)

 36-2. 米国が中国製靴下に輸入数量規制(04年10月24日)

 

37. 中国の労働問題

37-0. 都市部に2,400万人の失業者(04年3月10日)

労働・社会保障部長の鄭斯林(Zheng Silin)は『中国の労働市場の状況は暗い』と以下のように語った。現在中国経済はバブルといっていいほどの急拡大を続けており、昨年は860万の雇用を作り出した。

しかし、2004年現在都市部だけで2,400万人の失業者がおり、今年は900万人分の雇用を創出する目標であるがなお大量の失業者が残ってしまう。

都市部の失業率は昨年末現在で4.3%であったが、02年末に比べ0.3%増加している。今年末には4.7%へとさらに増加する見通しである。

この数字には国営企業を解雇され、前の雇用主(国営企業)から何らかの補償(失業手当など)をもらっている人は含まれていない。

また、農村部の8億人については公式の「失業統計」は存在していない。8億人のうち5億人が就業年齢者であるが、そのうち約1億人が職を求めて都市部に流出して工場、レストラン、建設現場などで働いている。

(http://www.wsj.com/ 有料記事、3月10日参照)

なお、世界銀行はこれよりもっと厳しい見方をしていて、実質失業率は10%を超えており、上海のような繁栄のまただ中にある大経済都市でも、繊維産業の大規模なレイ・オフがあったため12%程度の失業者がいると見ている。

37-1.貧困層の増加(04年7月21日)

中国では年間ドル(1日あたり21セント=23円)以下で生活する人々を「貧困層」と定義しているが、2003年には貧困層が80万人増加し、2,900万人に達したとのことである。これは全人口13億人の2.3%以下である。

しかし、1年間77ドルという定義自体世界標準の316ドルから見るとかなり低いといわざるを得ない。

昨年貧困層が増加したのは主に「自然災害」によるものであるという。(WSJ、7月20日、インターネット版参照)

37-2. 中国の貧困層は激減(04年9月9日)

上のような見方がある反面、中長期的に見れば中国の貧困層は激減している。9月9日付けの「中国青年報」に掲載されている精華大学の胡鞍鋼教授の論文では、1993年の貧困層の数は8,000万人であったが、2003年には2,900万人と激減しているという。

胡教授によれば、減少の原因として人口構成の変化により若年層の就業機会が著しく増加したことや、教育レベルの向上が指摘されるとしている。

また、この間の中国社会の特徴として、小家族化=核家族化が進んでいる。1986年に施行された「義務教育法」によって、家計の教育費負担などが増えた一方、文盲率が著しく減少し下層階級の雇用機会が増加した。

平均の教育年数がこの間4.61年から7.11年に増加した。

教育レベルの向上は発展途上国の所得レベルの向上に直結することは間違いない。われわれの世代では小学校の「読み書きそろばん」が重視されたが、基礎レベルの教育は社会的平等への第一歩であったことは間違いない。

読み書きと計算能力があれば、大人になって仮に失業しても何とか次の就業機会にありつくことができた問おう経験的な事実あた。それを「詰め込み教育である」などといって忌避する日本の最近の風潮は全く困り者である。

37-3. 華南地区では低賃金労働者が枯渇している(04年9月9日)

労働・社会保障部の最近の調査によれば広東省の珠江デルタ地帯(香港の後背地)や揚子江デルタ地帯や福建省や浙江省などでは最近10%もの人手不足に見舞われているという。

現地の企業では労賃を上げたり、福利厚生を向上させるなどして労働者の確保に躍起になっているという。特に労働力不足に見舞われている企業は月額賃金700元(日本円換算約9,300円)以下が多いという。

また、熟練労働者の転職も極めて多くなってきているという。

これらは、かって10年ほど前にタイやマレーシアにおいて見られた現象である。

 

38. 家電製品の乱売合戦始まる(04年9月28日)

中国は10月1日の国慶節を控えて「ゴールデン・ウィーク」ムードに浸っているが、このところ家電製品の大幅な値引き合戦が目立っている。これはもちろん最近の現象というよりは、今年の4月ころから始まったものである。

例えば、長虹社製の43インチ型デジタル・カラーテレビは5,999元(約8万円)で売り出されている。最近の価格と比べると2,000元引きである(1元=約13.4円)。

また、42インチのプラズマ・テレビは2000元下がって17,999元(24万7千円)で売り出された。これはついこの前までは2万5千元前後で売られていたものである。32インチの液晶テレビは13,999元(18万8千円)、HDVが1,380元(1万9千円)といったところである。

これ以外にも洗濯機などのほとんどの電気製品が大幅に値引き販売されているという。

三星電子が液晶テレビの大幅値引きを行い、これに日系企業の一部も追随するという動きが数日前にも報道されていたが、各社とも在庫増に悩まされている商品については今回のゴールデン・ウィークに向けて「積極販売」に乗り出している。

 

39. 中国の石油消費は鈍化の兆し(04年10月13日)

石油価格が連日高騰し、1バーレル当たり54ドルというような前例のない水準にまで急上昇している。需給バランスで見ると石油は供給が需要を上回っており、いずれは価格は下落するという見方が多い。

今の原油価格の高騰をあおっているのはヘッジ・ファンドであるという。ちょっとした噂をネタに価格を支配していくというのはここ20年くらい顕著になってきた現象である。

ミルトン・フリードマン先生からは投機は価格安定に寄与する」などといった説明を受けたことがあるが、今回の石油価格騒動は話がどうも逆なような気もする。ヘッジ・ファンドはともかく「変化がないと商売にならない」らしいから始末におえない。

それはさておき、中国の石油需給の動向が国際石油市場に少なからざる影響を及ぼしてきたことは間違いない。

最近のIEA(国際石油委員会・本部パリ)の説明によると、中国の石油消費は2003年は552万バーレル/日だったものが04年には632万バーレル/日に80万バーレル(14%)も上昇しているという。

しかも、時間の経過とともに石油需要は急上昇し、04年2Qの石油需要は前年同期比25%増になった。しかし、7月ごろから変化が出始め、7月の対前年同月比の需要増は12%、8月のさらに落ちて6%になったという。

あまりの石油価格の高騰に、さすがの中国人も消費を手控え始めたということなのであろうか?これは中国における自動車販売のスロー・ダウンにも連動した話であろう。

IEAの試算では世界全体の原油消費量は2003年が7,970万バーレル/日だったものが04年には1日当たり270万バーレル増加し(3.4%)、8,240万バーレルに達する見込みである。

05年の増加率は1.8%増の8,390万バーレル/日程度となるであろうと見ている。これは世界経済の動向にもよるが、前回よりも伸び率が鈍化すると見ているという。50ドル台の価格が続けば世界経済も不況になるし、伸び率鈍化は避けられない。

04年についてみると、中国は世界の需要増加分270万バーレル中80万バーレル(33.3%)を占めているのだから、たしかに「中国要因」は小さいとはいえない。

しかも国内生産は減少傾向にあり、増加分は直接、輸入増につながっているので、その市場への影響は大きい。中国は電力については石油から天然ガスへの転換や原子力発電や風力発電など多角化にかなりの努力をしている。

水力発電を今以上に雲南省あたりで増やされるとメコン川下流域のタイやベトナムやカンボジアの農民・漁民が迷惑するのでご遠慮いただきたいが、石油価格への補助金を出している各国政府も方針転換が必要であろう。

ただ、われわれとしては中国人にあまり自動車に乗るななどとはいえた義理ではない。

 

40. 河南省で民族紛争、死者150名?に-戒厳令(04年11月2日)

華中の河南省で10月29日(金)に漢族と少数民族の回族(回教徒)との間で大規模な衝突が起こり、警官18名を含む総勢148名の死者がでた。政府は戒厳令をしき事態の沈静化に努めている。

ことの発端は回族のタクシーの運転手が漢族の6歳の少女をはねて死亡させたことにある。漢族の家族は賠償を求めて回族の集落に押しかけたところ紛争になり、ついには大規模は暴力衝突に発展したという。

場所は山東省の西隣の河南省の省都である鄭州(Zhengzhou )と開封(Kaifeng=北宋の都)の中間に位置するZhongmou(中牟)県 のNanren村のLうという男と近くのNanwei村のLiuという男との間の喧嘩に端を発したものである。

それが両村の村民あげての乱闘に発展し、警察だけでは紛争を制御できず軍隊が出動した。

なお。新華社通信の記事としてBBCが伝えるところによると、死者の数は7名で、負傷者は40名以上に達し、18名が逮捕されたということである。数軒の家が放火され、農民は農具と棍棒で殴りあったという。

回族は中国全土で約850万にしかいないが、比較的広範囲に分布していて、結束も強い。今回も紛争を聞きつけた周辺の回族がトラックに乗り応援に駆けつけたという。

農民同士の紛争ではあるが、社会的な貧富の差がフラストレーションとしてたまっており、特に少数民族はその中でもより貧しい人が多く、機会があれば暴発する危険をはらんでいるといえよう。

ニューヨーク・タイムズと新華社とでは死者の数に大きな違いがあるが中国政府はこういう事件を過小に報道しがちである。 しかし、148名というのは村をあげて喧嘩をしたにしても銃火器を使わない限り、いかにも多過ぎるような気がしないでもない。

死者の数というのは当局が正しく発表しない限り、謎のまま終わってしまうことが多い。日本の学者でも「天安門事件での死者はなかった」などといっている人もいる。 もっとすごいのは「南京虐殺事件はなかった」などとまじめに論じている国立大学の先生もいる。

この種の民族紛争は中国ではめったに報道されることはないが、 今回はニューヨーク・タイムズが書いてしまったので新華社もある程度数字を出して対抗せざるをえなくなったものと思われる。

民族紛争ではないが最近では重慶市の万州地区で警官が市場で売り子の農婦を殴打したことがきっかけで1万人を超える大規模なデモが起こったと報道されている。

(http://www.nytimes.com/2004/11/01/参照)

 

41. 中国の株式市場

41-1.. 株式市場の下落傾向止まらず(04年9月10日)

ここ数ヶ月、中国の株式市場の崩壊ともいえる下落傾向が続いており、04年9月9日の上海市場(コンポジット)の終値はついに1281.748ポイントと1300の大台を割り込んでしまった。 鉄の底が割れたという表現で現地紙は大きく取り上げている。

これは5年ぶりの安値である。(hrttp://news.xinhuanet.con/ 04年9月10日版参照)

中国政府が景気の過熱を防止しようとして4月末頃から金融を中心に引締め方針を発表して以来、株式市場は平均的にほぼ一貫して下げ続けている。 しかし、実際は4月のはじめころから下落に転じていた(下表参照)

株式市場を圧迫するとして、最近は新規株式の上場を認めない方針を採ったが、それでも株式市場の下落傾向は止まっていない。その理由の1つは金融引締めによる資金不足で株式市場から資金が引き上げられていることが考えられる。

理由のその2は企業業績が不透明だということである。要するに、企業が正しく業績を株主に公開しているとは限らないのである。ときどき監督官庁が査察を行ったりして、思いがけない粉飾決算が明るみに出たりする。

現在、中国経済はバブル的な好況状態にあるが、全ての企業の業績がよいとは限らない。何が飛び出すかわからない怖さが中国の株式市場には存在するのである。

上海市場のA株(中国の企業・個人のみが売買できる)の指標の推移を04年4月以降見てみると、以下の表の通りかなりの勢いで落ち込んでいることが判明する。

4月1日 4月15日 5月3日 6月1日 7月1日 8月2日 9月1日 9月8日 9月9日 9月10日 9月13日
 1843.91  1760.44  1673.41  1656.72  1512.79  1440.69  1386.40  1373.45  1347.15  1350.26  1322.11

最近の中国ではこういう事態が政府と民間で議論されるようになってきた。政府当局は株式市場に介入するつもりはないと繰り返し述べているが、タイの通貨危機のときも、まず株式市場の崩壊から始まった事は記憶にとどめて置かれるべきであろう。

(9月13日追記)上海コンポジット株価指数(中国企業・中国人のみが売買できるA株と外人が買えるB株との総合指数)は9月13日には1260.32とさらに大きく落ち込んだ。株式市場はパニックに近い状態になりつつある。

政府も事態を放置できない段階に来ているとみており、何らかの対策が打ち出される公算が強くなった。

(10月25日追記)

政府は上海コンポジット指数が1300ポイントの「鉄底」を割り込んだ段階で、介入し1500ポイント近辺まで一時期押し上げたが、持続せず、また10月25日現在は1311まで下げてしまった。政府は手持ちの「 年金・保険基金」などを使って再度介入の構えである。

さらに、国内および外資との合弁保険会社も株式市場で資金運用できるように規制を緩める方針であるという。政府系資金だけでは株式使用の建て直しは困難であることを政府も認識し始めたようである。

 

41-2.証券業界救済のために600億元支出計画?(04年11月9日)

中国政府は苦境に陥っている証券業界を救済するために600億元を投入する計画である。これは先週、黄菊副首相が深圳における演説で明らかにしたものである。

中国の証券会社132社のうち大半は巨額の累損を抱えている。それは過去において投資家に利益保証をし、また、最近では株価の下落によるためである(上記#33-3参照)。

黄菊副首相は現金を投入するとは明言していないが、非公式には当局は現金を割り当てる必要があることを認めているという。

(htty://www.ft.com/ 04-11-09 参照)

なお、新華社のインターネット版では黄菊は証券会社の健全化の方策が必要であると言う趣旨の発言をしているが、国家資金の投入といった話はしていない。しかし、現状のまま放置はできないということであろう。

上海コンポジット指数も1300近くに張り付いていて、そこから大幅に上にいくという様子もここしばらくは見られない。

中国の株式市場が国民から見放されているのは、中国企業の経理内容が不透明だというのも大きな要因である。昨日までもてはやされていた企業が突如として大赤字であったなどという話が時々ある。

 

41-3.上海株式コンポジット指数68ヶ月ぶりに1200ポイントを割る(05年1月31日)

低迷の続いている中国株式市場は1月31日、上海株式コンポジット(A株、B株総合)指数で大引けで1191.82となり前日比マイナス21.55ポイントと大きく下げた。(上の#34-3および#41参照)

今年に入ってから中国政府は株式市場テコ入れのために、取引税(売り手、買い手双方から徴収)を従来の0.2%から0.1%に引き下げたばかりである(1月24日)。そのときは一時的に活況を呈したものの、ほんの4-5日のうちに勢いを失いついに、本日1200ポイントの大台を割ってしまった。

これは1999年5月21日の1168.72以来の水準である。

2004年のGDPが9.5%という高度成長のなかで、株価がこのように不振を続けるということは、経済のどこかに深い病巣が隠されているとみるのが自然であろう。その病巣とは何かが問題である。

基本は企業収益が悪いということに尽きる。思いがけない粉飾決算や、会社幹部による会社資産の持ち逃げや、不良債権の拡大などである。

日本では報道されたかどうか定かではないが05年1月8日のhttp://sina.comが引用している「21世紀経済報道」の記事として、武漢証券の大投資家である魏武という人物が120億元(約1,500億円)の借金を踏み倒して姿をくらましたと書かれていた。

個人が株投機の損をこれほど拡大させたとは信じがたい話であるが、もしこれが事実とすれば、株取引は百鬼夜行の世界であると一般投資家が考えてもおかしくないような事件である。

また、つい最近の1月27日の「証券日報」によれば大鵬証券が約50億元(620億円)の欠損を出し、破産宣告したと伝えられる。こういう情報をみると中国では最早、証券バブルがはじけて一種のパニック状態に陥っているのではないかとすら感じられる。

現地の日本企業はもちろん、中国株ブーム到来などというお囃子に日本国民もだまされないようにしたほうがいいだろう。

⇒1日に63.57ポイントの急上昇で1200を回復(05年2月2日)

あまりの低迷に政府がテコ入れしたとみえて、2月2日は上海コンポジット指数が2月1日の1188.93から63.57ポイントという急上昇をみせ1152.5まで急上昇し一気に1200ポイントを回復した。

1日で5.3%も株価が上昇したのは過去2年間では初めてのようである。どのようにして回復した(させたのか)は明らかでないが、政府筋が強力なテコ入れを行ったことは間違いない。1300ポイントのいわゆる「鉄鍋底」を割った時(04年12月20日頃)も政府がテコ入れして一時的に回復したが長続きはしなかった。

⇒企業年金基金の株式投資が認可される(05年2月6日)

2月4日付で労働・社会保障部は企業年金管理規定を改正し、株式市場への投資が認められるようになった。

現在、企業年金基金は1,000億元(1兆2,500億円)近くあり、毎年800-1000億元今後増加が見込まれるとしており、この資金の一部がが株式市場に投入されれば、市場の安定化にもつながると見られる。

ただし、あくまでリスクの少ない銘柄への投資となることはいうまでもない。

 

41-4. 株価回復の妙手(?)で1,100ポイント回復(05年6月9日)

中国の株式市場はGDPの高い伸び率(05年1Q=9.5%)とは逆に、低迷を続けており、「鉄鍋底」といわれた1,200ポイント(上海コンポジット指数)はとっくの昔に割り込み、1,100ポイントを突き破り、ここ数日1,000ポイント前後まで落ち込んでいた。

その背景は、マクロ経済の好調とは裏腹に、個別企業の業績が振るわないところが多いことや、企業経営に透明性がなく(これは日本にもゴクまれに?見られるが)、株主が再三再四、痛い目に会わされた結果の反映であろう。

業績がよいはずの会社がある日、経営者の「持ち逃げ」に遭い、すっからかんになっていたなどというのはよくある話である。日本でも名門企業の代表格でもある鐘紡が長年、粉飾決算を続けて、ついには上場廃止に追い込まれるなどという事件が起こったばかりである。

それはさておき、上海コンポジットが6月8日に8.2%という異常な上昇を遂げ、前日の1030.94から1115.58と何と84.64ポイントも上昇してしまった。

これは一体何事が起こったのであろうかと思っていたら、WSJや新浪(sina.com)やSCMP(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト)の説明では、証券管理監督委員会(証監会と略称)が「基金管理公司」(fund management companies)に対し、「彼ら自身の出している、または他のファンド会社が出しているミューチュアル・ファンドを自由に売買してよい」おこなってよいというお墨付きを出 したためであるといわれている。

これにも制限がついていて、少なくとも5,000万元以上の純資産を有する企業は、ミューチュアル・ファンドを買うことが許される。しかし、株式所有はその会社の純資産の60%を超えてはならないというものである。

WSJの記事では、企業に自社株買戻しとその償却を認める方針を明らかにした モノであるという。多分、これが最も判りやすい説明であろう。法人の株式売買が自由化されれば(制限つきにせよ)株価は上昇することは間違いない。

「証監会」の自由化方針なるものの内容も部外者にはいまいちわかりにくい点がある。利害関係者は独自でお調べいただきたい。

その結果どうなるかはもう少し様子を見ないと判らない。おそらく「短期的」効果で終わってしまう可能性がある。 また、株価急上昇の要因についてももう少し、詳しい情報が必要である。

⇒株価上昇の本当のきっかけは「神秘資金」の投入か?(05年6月9日)

新浪(sina.com)の引用する「深圳商報」によると、株式市場に最近の1ヶ月の間に「神秘資金」(秘密資金)が3度導入されたという。1度目は5月19日、2度目は6月6日、3度目は6月8日であり、これが規模も大きく、最大の成果を上げたという。なるほど。

上に述べた「制度上の手直し」だけで、これほど急激に株価が上がるのは変な話ではあった。問題はさらなる「神秘資金」が用意されているかどうかである。今回限りでは株価上昇は短命に終わる可能性が高い。

 

41-5. 中国政府、株式市場テコ入れに150億ドル投入か?(05年6月15日)

6月15日のニューヨーク・タイムズ(インターネット版)によると、中国政府の高官は株式市場のテコ入れのために、約150億ドル(約1兆6千億円)程度の資金を投入するかもしれないということである。

現在、上海と深圳の証券市場に国有企業が1,400社上場されているが、ほとんどが2001年のピーク時に比べ、株価が40-50%下落しているという。最近は特に株価の下落が激しく、上海コポジット指数が、1000ポイント前後にまで落ち込み、ようやく1100ポイント前後まで戻してきたところである。

中国政府としては上で見たようにさまざまな手段を毎週のように講じているが、打ち続く株式の低迷で、証券会社の多くは採算不振に陥っており、倒産するケースも珍しくない。中国政府としては、これ以上の証券会社の破産は好ましくないとして20数社の救済案を策定中であるといわれる。

不振に陥っている証券会社に対しては将来は1/3は破産、1/3はリストラ(合併や、縮小による再生)、1/3は救済という方針で臨むとされている。今回も「銀河証券」には数十億元を投入して、「救済」に当たるとしており、今後次々と個別証券会社の対応策を打ち出し行くといわれている。

この150億ドルは既に上の「神秘資金」として既に使われているかもしれないが、これらの証券業界の再活性対策費と多くが使用されることになろう。

何度もいうようだが、株価上昇の決め手は、企業の利益率の向上と、経営の透明性である。それ以外の条件としては、資金が急激なインフレにならない程度に潤沢に市場にあり、短期金利が割安なことである。中国では国全体に「資本不足」の状態が続いている。

国民の株式への信頼が失われている現在、株価は急には上がらない。日本人のお金持ちのあわて者が中国株を買うかも知れないが。

 

41-6.株式 投資家保護のための特別基金設置(05年9月9日)

中国証券管理監督委員会は株式投資家が証券会社の倒産などにより株式投資家が損害を蒙らないように63億元の基金を設立する方針を明らかにした。

詳細はまだ明らかにされていないが、一般の投資家がここ数年思いがけない不祥事で予想外の被害を蒙る事件が続発し、株式市場に対して不信感をもっていることへの心理的配慮を狙ったものと考えられる。

(9月9日付、FTおよびWSJ インターネット版参照)

 

41-7.外資への株式市場規制緩和、上海コンポジット1200を回復(06年1月7日)

中国政府は特定の外国金融機関に対し、中国の上場企業への投資を一段と緩和した。これは既に存在するQFII(Qualified Foreign  Institutional Investors=適格外国機関投資家)に対し、113社のClass-A株や元建て債券などの売買を認めるということである。

なぜこういう措置がひつようかというと、中国人の株式投資家の70%以上が、株式投資に不信感を持っているといわれる現状の中で、外国の機関投資家の市場参入がなければ、中国の証券市場は活性化しないという判断がはたらいたものと思われる。

2005年の株価は8年来の最低を記録し、しかも2004年からIPO(新規上場)は中国では全くおこなわれず、香港市場やニューヨーク市場で各社は新規上場をおこなった。それくらい、中国国内での株式市場への不信感は強いと見るべきである。

最近まで、中国の上場企業の3分の2は「非流通株式」を保有していた。これは国有企業が依然として大きなウエイトを占めているためである。しかし、中国政府は昨年、300社のこれら「非流通株式」をClass-A株式(一般に売買できる)に転換してきた。

新年早々の1月4日(水)に中国の証券取引関係官庁(商務部や中国証券管理監督委員会など5機関)は共同声明を発表し、「証券改革を完了した」企業については有資格の外国の機関投資家は「流通株式」を買うことができると発表した。

ただし、このルールは1月末から適用され、「投資対象企業の少なくとも10%」の株式を保有し、しかも最低3年間は保有し続けなければならないという「制限」が依然としてついている。(WSJ Internet版、06年1月5日参照)

このような、新たな措置により、外国資本の証券市場への規制がいっそう緩和されたことを好感してか、年初来株式市場は好調であり、上海コンポジット株式指数は1月6日には久しぶりで1200ポイントを回復した。

下の表で見るごとく「鉄鍋底」といわれた1200ポイントを切ったのは05年4月16日であった、その後下がり続け、5月16日には1100ポイントを切り、さらに7月18日には1012.10ポイントまで下げた。その後、政府は何度もテコ入れをおこないようやく年末には1161.06まで戻してきた。

中国経済は2005年には9.8%の成長を遂げたといわれるが、株式市場は異常な低迷を続けてきたことが「不思議な」現象であった。その背景には企業の業績が芳しくなかったことと、企業経営に対する不信感があった。

優良企業のはずが突如、粉飾決算であったり、あるいは経営者が大金を持ち逃げしたりというような不祥事が相次いだのである。しかし、こういういわば道徳なき資本主義が、普通の資本主義経済に転換していくのにはまだまだ長い年月が必要である。

日本でも、90年代鋼板から小泉政権時代まで「規制緩和」に発して「何でもあり」の風潮が、とんでもない事件を次々と誘発している。「市場に任せておけば全てがうまくいく」とはアダム・スミスも言っていないのである。

表41-7上海コンポジット指数

 05年4月15日  1216.96
    5月16日  1095.47
    7月18日  1012.10
   12月30日  1161.06
  06年1月4日  1180.96
     1月5日  1197.27
     1月6日  1209.42

 

41-8. 中国株が急回復し2年前の水準に(06年5月13日)

2004年の4月ころから暴落をし続けていた中国の株式市場はこのところ、急回復を示している。特に、5月12日は前日より65.46ポイント上昇し1602.83となった。1600ポイント台となったのは2004年6月4日以来のことである。年初(1180.96)からみると35.7%も急上昇している。

これは05年7月18日には1012.1にまで下落した株式市場を再活性化しようとして中国政府は株式市場テコ入れ策を行い、資金を市場に投入する一方で、証券取引関係官庁(商務部や中国証券管理監督委員会など5機関) がさまざまな「証券改革」を行い、企業会計の透明性を高める一方、有資格の外国の機関投資家は「流通株式」を買うことができるようにしたことも利いている。

昨今の動きを見ると、外国人投資家が日本市場から中国市場へシフトしているようにも見受けられる。

日本では「小泉改革」なるものがさほどのものではなかったということが次第に明らかになってきたことに加え、近いうちにゼロ金利体制という「歪んだ金融政策」が見直されることは必至の情勢になってきた。

一方、中国は依然高度成長が続いているし、さらに米国政府からの圧力によって、さらに人民元が先行き高くなることは間違いないという観測から、中国株が急に買われだしたものと思われる。

しかしながら、中国を除くアジア諸国の株式は05年の間に、既に大きく上昇し、中国株だけが「出遅れ」ていたということもある。

その意味では、さらに上げ基調は続くという見方があると同時に、市場には不信感が根強く残っているという見方だある。(ニューヨーク・タイムズ、06年5月12日、David Barboza記者)。いずれにせよ、5月の連休明けからの上昇が急すぎることへの警戒感はぬぐえない。

中国の「証券改革」で企業の透明性が一挙に増したというようなことは、およそありえないことも銘記すべきであろう。

 

表41-8上海コンポジット指数

 04年4月6日  1864.13 
    6月4日  1617.71
 05年4月15日  1216.96
    5月16日  1095.47
    7月18日  1012.10
   12月30日  1161.06
  06年1月4日  1180.96
     2月1日  1285.05
     3月1日  1306.59
     4月3日  1319.47
    4月17日  1378.61
     5月2日  1440.22
     5月9日  1531.16
    5月12日  1602.83

 

 

 

 

42. 中国は投資家の天国ではない(04年11月11日)

HSBC(香港上海銀行)の副社長(個人投資家担当)であるスティーブ・カリヤポン(Steve Kaliyapong)氏はバンコクで開かれた投資セミナーで、中国に対し過剰な楽観論に基づき投資をすべきでないと次のように警告した。

中国は急成長を遂げつつある巨大市場であるが、競争力のある経済環境ではない。そのいくつかの理由をあげれば、①法令システムの対応が遅い、②エネルギー特に電力不足、③不適切な金融制度、④高水準の不良債権、⑤熟練労働力不足などである。

中国政府は戦略的産業と、人口の60%を占める農民(農業部門)への保護政策は今後も続ける。これはWTOに加盟したからといって変わるものではない。

失業率は公称4%であるが実態ははるかにそれを上回る。たとえば国営企業内で実質的に解雇されていても、そこから失業手当をもらっている間は失業者にはカウントされていない。

また、季節的に失業する1億1,400万人(一定期間しか仕事がない)を数えれば失業率は2桁である。

法制面については、改善されてはいるが依然として、しばしば改定され(朝令暮改的)、国際慣行からもずれていることが多いので要注意である。

電力不足は深刻で2005年においても3,000万キロワットが不足する。特に夏場の江蘇省や杭州(淅江省)などはひどく、週に3-4日は電力不足のため工場閉鎖を余儀なくされる。しかし、この電力不足は2008年には解消されると見られている。

中国の金融業界は国営商業銀行中心主義である。しかし、国営銀行の不良債権は非常に多く、中央銀行としては2003年末は15%を超えないように指導した。商業銀行はそれに応えるべく懸命になって貸し出しを増やしてしまった。それが景気過熱の原因になっている。

政府は景気過熱を沈静化させるために方針を180度転換して、今度は引き締めにかかった。最近は金利を027%引き上げた。商業銀行はこれを機に貸出金利を引き上げ、他方、預金金利を低く抑えており、利幅を拡大させ大儲けをしている。

これで被害を受けたのは一般の民間企業と、預金者である。(http;//www.bankokpost.com/ 04年11月10日版参照)

これらは中国経済の問題点として、しばしば指摘されることばかりであるが、中国との関係が深いHSBCの幹部がタイの企業家(ほとんどが華人系)に対して注意を呼びかけているところが注目される。

日本でこういうセミナールが開かれると、中国経済礼賛論が圧倒的で、中国に投資しないものはバカだといわんばかりの言い方をされる場合が多い。日本企業も中国ではさんざ痛い目に会っている企業が多いのである。しかし、それはあまり報道されない。

それを報道すると中国通のえらい学者先生や評論家が攻撃してくるという。変な国である。

 

43. 04年1-10月の外資投資額は538億ドルに達する(04年11月16日)

中国政府が11月15日(月)に発表した04年1-10月のFDI(海外直接投資)は538億ドルに達し、前年同期を23.5%上回り、すでに03年合計の金額(535億ドル)をも上回った。ヨーロッパ、米国、アジアからの投資が多かったとのことである。

10月だけでも51億ドルであった。

スイスに本社を置くABBエンジニアリング社も2008年までに5千人を中国で雇用し、そのうち半分以上が技術者とする予定である。売り上げも40億ドルを見込んでいるという。

このような外資による投資ラッシュに対し、中国当局は過度に外国に依存する経済は必ずしも好ましくないなどと、かつてのタイのクシン首相のようなことを言い出している。(http://www.ft.com/04年11月16日参照)

しかし。心配はご無用である、538億ドルの投資のうち大部分は中国資本が「外資に化けて」香港やケイマン諸島などから入って来ているのである。何しろ外資は税制面などで優遇されているから。

外資への優遇措置がなくなれば、たちどころにFDIは減ってしまうという仕掛けになっているはずである。

 

44. China Aviation Oilシンガポールの子会社が5.5億ドルの欠損(04年12月2日)

WSJ (インターネット版、12月1日)によると、中国で航空機用オイル(ジェット燃料など)をほぼ独占的に販売している「CAOS=China Aviation Oil (Singapore) Ltd」社がシンガポールの裁判所に「財産保全」のための「保護」を請求した。

CAO(中国航空油料集団公司)社のシンガポール法人CAOS(2001年からシンガポール上場)は石油のデリバティブ(先物投機)に失敗して5.5億ドル(約566億円)の損失を蒙ったということである。

CAOSに対し、親会社であるCAOH=CAOホールディング社(本社、中国)とシンガポールの国営投資会社であるテマセク(Temasek)社はおのおの5千万ドルの資金注入を行う。

テマセク社は現在、CAOS株式を2%保有し、将来、CAOHから株式の譲渡を受け持ち株を増やす意向であるといわれる。

CAOSはシンガポール市場で9.34億シンガポールドル(約5億7,030万米ドル)の株式発行による資金調達をおこなっており、今回その大部分が失われた結果になった。

同社の株式は11月30日(月)以降取引停止になっている。

しかし、CAOHは10月21日にドイツ銀行経由でCAOS株15%を14%の割引で売却しており、この段階でCAOSの損失を予見して株式を売却するという、典型的な「インサイダー取引」を行ったという疑惑をもたれている。

同社にはシンガポールのDBSバンク、UOBバンクのほか欧米の金融機関としてはゴールドマン・サックス、バークレー銀行、BNP Paribas、ソシエテ・ジェネラルなどが、また、中国の通信銀行、工商銀行も融資している。

日系の債権者として三井物産や住友・三井・スタンダード銀行の名前も挙がっている。

シンガポール警察は「インサイダー取引事件」として調査を開始した。

CAOSの社長(職務執行停止中)のChen Jiulin(陳霜林)はインサイダー取引ではないとしきりに弁明しているが、状況はきわめて不利である。

⇒Chen Jiulin(陳久霖) の栄光と没落(04年12月6日)

WSJは今回のCAO(中国航空油料集団公司)の事件の主役、Chen Jiulin(陳久霖=43歳)について、12月6日のインターネット版 (有料)で詳しい分析をしている。コメントを加えつつ粗筋を以下に紹介する。

陳は湖北省の貧しい農民の息子として生まれた。彼の生まれ育った村には1960年代、70年代を通じて電気は通じていなかった。父親は共産党員であった。少年時代にカセット・テープを買ってもらい英語の勉強に熱中したという。

彼は後に北京大学に入学する。1987年に北京大学の法学部を卒業後、Air Chinaに入社し、中国とドイツの合弁のメンテナンス会社で働く。その後、CAO(中国航空油料公司)に移る。

7年前にシンガポールにやってきて、休眠状態のCAOの現地子会社の運輸会社を航空機燃料を輸入する会社に仕立て上げた。、

その会社はCAOSとしてシンガポール株式市場に2001年に上場を果たし、急速に人気をはくし、2004年にはいって、10月4日(ピーク時)には80%も株価は上昇した。内外の優良銀行がCAOSに競って融資をした。

彼はシンガポールですっかり有名人になり、随筆集も出版している。また、大変名誉(!)なことに日本の経済発展のすばらしさに言及し、日本の企業が成功したのは「極東の道徳=儒教のこと?」と文化の影響を受けているからだと喝破(!)したという。

陳は年収450万ドルの高給取りにまで出世してしまった。03年にはて世界経済フォーラムは陳を45歳以下の若手のトップ経営者の1人として紹介している。

中国の駐シンガポール大使はCAOSは中国企業の中では最優秀企業であるなどと賛辞を送っている。本国の中国共産党の機関紙でもCAOSを褒めちぎっていたという。

ところが上に見たとおり、今年の11月25日にシンガポールの裁判所に債権者に対する「資産保護」の申請をしている。デリバティブで5億5千万ドルの損失を出したというのである。また、株式の15%を緊急処分している。これが損失が明らかになった後の売却であることが明らかになった。

しかし、今回の事件を見る限りは陳さんご自身は「極東の道徳や文化」をあまり熱心に実践したようにも見受けられない。デリバティブの失敗といっても石油の先物を安値でヘッジファンドに売り向かっていったらしいのである。

要するに、石油の買い手であるCAOSが現物取引をしていればこんなに損が出るはずがない。なぜ、不必要なギャンブルをやったかがわからない。

彼は日ごろ、株主に対し「透明な経営」を行うことを強調していたという。ところが、そういう文章を書いてからまもなく、2003年後半からCAOSがデリバティブを始め、わずかの間に坂道を転 げ落ちた。

始めのうちは好調であったが、2004年に入ってから調子が狂い始め、今日の事態を招いたという。しかし、会社が火の車になってからも陳は東洋の哲学について随筆を書き続けていたという。この辺は普通の日本人のサラリーマンにはできない芸当である。

三井物産は1億4,360万ドルの債権を持っているという。ベルギーとドイツのFortis銀行は3,310万ドル、ゴールドマン・サックスが1,590万ドルであるという。

三井物産はこのところ不祥事が続いている。何か「成果主義」みたいなものを導入した結果社員にあせりがあるのではないだろうか?世界一の商社である。落ち着いてしっかりとした実績を上げてもらいたいものである。

しかし、今回のこの事件はなぞの部分があまりにも多すぎる。いったい誰の責任で石油の投機をを行ったのかもはっきりしていない。陳は自分の個人的利益のためにやったのではないといっている。

「インサイダー取引が有罪になれば」陳はチャンギー刑務所暮らしである。43歳といえば日本の普通の大企業ではせいぜい課長クラスである。いくら中国が「発展途上」といっても、一介の国営企業のマネージャーに年俸5億円も出すちというのが私にはわからない。

はっきりいえば、石油および航空燃料の輸入業務を行う、現地の会社の責任者クラスである。本社(親会社)がありながら、出先の企業に膨大な利益を出させるというのも以上だし、たかだかそのマネージャーに年俸5億円も出すというのはもっと異常である。

中国という国の経済のあり方が、常軌を逸しており、それをすばらしいなどといって「ノー天気」な賛辞を送っている日本人の方も、同様にどうかしているといわざるを得ない。

また、株式をドタンバで売りさばいたドイツ銀行の言い分では「会社は健全」であると言う説明を受けていたとのことである。国営会社が持ち株の15%を鹿の4%ディスカウントで売りに出すこと自体、普通の状態ではないことに気がつくべきであったろう。

また、デリバティブを万一陳が自分だけの判断でこういうことをやったとすれば、陳もバランスのある価値判断ができなくなってしまったのではないだろうかと思わざるを得ない。 中国を取り巻く、異様な「熱気」に頭がボーットしていたとしか言いようがない。

それにしても、この手の事件は中国には余りに多い。資本主義的な商慣行や商道徳については、中国はまったくといっていいほどダメである。 中国は高度成長の中で、株式市場が低迷している。これは国民が企業なるものに信頼を寄せていない何よりの証拠である。

ウソで固められた企業経営が蔓延していると国民は見ている。何が起こってもおかしくないから国民は企業の株を買わない。それを「10万円の元手で1億円になった」などといって囃したて、日本人に中国株を買えなどといって騒ぐ証券会社が後を絶たない。

日本企業がいくら「極東の道徳と文化」とやらで武装されてはいても、いい気になって中国に突っ込んでいくとこういう事件に巻き込まれかねない。

「虎穴にいらずんば虎児を得ず」などと陳は書いていたかもしれない。しかし、商道徳について孔子様が何か言及していたはずはない。

陳久霖、シンガポールに帰国後逮捕(04年12月9日)

CAOSの陳久霖は中国に一時帰国していたが、12月8日(水)にシンガポールに帰ってきた。シンガポール警察は陳久霖を逮捕し身柄を拘束したが、数時間後に保釈金を支払って釈放されたという。

シンガポール政府も親会社のCAOHが国営企業なので手荒な扱いは避けているものと思われる。CAOHのJia Changbin

(莢長斌)社長もCAOS再建のために努力をするとはいっているが、債権者にどの程度弁済するかは今後の話し合いである。

シンガポール政府としても投資会社Temasekが出資したばかりであり、このまま破産・清算というわけにはいかにであろう。CAOHの莢長斌社長もシンガポール政府に対し、債務のリストラについては最善を尽くすと約束している。

ところで、CAOSの債務は上記の5億5千万ドルに留まらない可能性が出てきた。というのはCAOSはSPC(Singapore Petoloreum Corp.)の株式を20.6%買うという約束をSatya Capitalという証券会社にしており、その金額が3億6,200万シンガポール・ドルであるという。

Satyaは既に集めている株式を市場で処分する必要があり、その際発生する実損をCAOSに請求する権利が発生するからである。その損失額は1,000万米ドルであるといわれている。

なお、中国本土では今回の事件により、航空会社へのジェット燃料などへの供給に支障をきたす可能性も憂慮されている。(http://www.scmp.com, 04年12月9日)

⇒CAOは負債5億ドルの棒引きを要請(05年1月6日)

CAOHはシンガポールでの新しいパートナーであるTamasekとも協議していたが、債権者に対して5億ドルの借金の棒引きを要請していると伝えられている。また、5.5億ドルといわれていたCAOSの負債は実際のところ不明であるという(FT,05年1月6日、インターネット版)。

CAOSのコンサルティングをやっている会計法人デロイト・トゥシュ(Deloitte Touche)はCAOSの負債5億ドルを棒引きする(させる)案で債権者を説得するようにアドバイスをしているという。

これはCAOSが商社であり、ろくな資産を持っていない事実上無価値に等しい会社であり、このまま倒産させれば、債権者の取り分は商法上はほとんどゼロに近いという「弱味」を突いた提案である。

一方、CAOH(中国本社)はCAOSに変わる別会社を立ち上げて、そこ経由で国際市場から航空機用燃料を調達する態勢を整えているという。

中国の国営企業が子会社の経営のチョンボのツケを商法上は責任がないといって債権者に背負わせるというのは、信じがたいことであるが、前の広東省投資信託公司倒産の時も同様なことをやった前例がある。

国営企業といえども、中国の企業に金を貸すのはベラボーにリスクが高いことを認識すべきである。株を買うのも同様にリスクが高い。インターネットで中国株の売買を勧めている証券会社もあるが、投資家は十分な警戒感が必要であろう。

日本の某経済紙によると、最近の中国の株安の原因は「中小企業に資金が回っていかないからだ」などとまことしやかな説明をしているが、中国人自身が中国企業をあまり信用していないことのほうが重要である。

CAOHはCAOHとTemasekが5,000万ドルずつCAOSに投入し再建を行う計画をTamasekに提示しているという。

陳久霖はCAOH(中国本社)は巨損を事前に知っていたと告白(05年2月22日)

CAOS(シンガポールの現法)の前の責任者であった陳久霖(Chen)は昨年10月3日の段階で、CAOSが既に8,000万米ドルのデリバティブによる損失を知っていたと新華社が最近になって報じている(sina.com、2月19日付け)。

その段階で陳久霖はCAOHに支援を求めたが、本社は何も対応してくれなかった。その後、2週間がむなしく過ぎ、結果として損失が5億5000万ドルにまで拡大してしまったと述べている。

その間、BP PLCがCAOSの球状を見かねて、「手仕舞い」のアドバイスをしてくれた。その段階で手を売っておけば、損害は2億ドルですんだ。しかし、本社側が一向に決断せず、時間をロスしたため損失が膨れ上がってしまった。

この陳久霖の言い分に対し、本社は目下のところ、「適当な時期がくるまでコメントしない」といっているが、債権者の一部(例、三井住友銀行 は2,600万ドルの返済要求、韓国の石油化学会社SK Energyも1,400万ドルの返還要求)からは既に、債務の返済訴訟を受けている。

いずれにせよ、CAOH(本社)が知らぬ顔をして押し通すことはできないであろう。

既に、CAOとしては債権者と債務の大幅免除(債務の42%のみ返済する案)を交渉していると伝えられるが、CAOの責任で行った投機の失敗を銀行や商社に尻拭いさせるということ自体、下品な話である。(WSJ Internet、2月22日ほか)

⇒CAOは最高56.1%までの債務弁済を提示(05年5月16日)

CAO(中航油)は5億1000万ドルの債務に対し、今すぐ弁済を要求する債権者には45%、5年間の分割払いに応じる債権者には56.1%弁済するという案を提示した。

 

⇒シンガポール検察庁は中航油(CAO)の幹部5名を刑事告発(05年6月12日)

シンガポール検察庁はCAOS(シンガポールの中航油現法)の幹部5名を文書偽造、インサイダー取引、財務報告不実記載などで6月8日(水)に債権者会議の当日、逮捕した。債権者会議ではCAOSの再建計画そのものは97%の賛成を得て承認されたという。

逮捕者のうちの1名はCAOS(シンガポールの中航油現法)の会長であり、中国本社のCAOH(中航油)の社長でもあるJia Changbin(莢長斌)である。Jia Changbin(莢長斌)は250万シンガポール・ドル(約150万米ドル)の保釈金で6月10日までには釈放されている。

現地法人の責任者で事件の主役である陳久霖(Chen)については15の罪状で身柄を拘束されていたが6月11日夜、200万シンガポール・ドル(約120万米ドル)の保釈金を積んで、保釈された。15の罪状のうち13件については最高7年の禁固刑となっており、有罪は避けられないであろう。

残りの3名はいずれも現地法人の経理担当取締役などの経営幹部であり、それぞれ保釈された。しかし、5名もの身柄が一時的にせよ拘束されたことで、シンガポール政府としても、この種の経済犯には厳しい姿勢で臨むことを内外にアピールしたものと思われる。

なお、Jia Changbin(莢長斌)は中国への帰国申請をしたが、シンガポール当局に拒否された。   

(続く)

 

45. 長虹の対米輸出商社APEXが巨額赤字「(05年1月4日)

中国のテレビの最大の輸出商社であるApex Digital Inc.が昨年4億6750万ドル(482億円)の未払い負債を出し、Apex社の創業者の1人である、デヴィッド・チー(David Ji=季龍粉)会長が四川省で 昨年10月逮捕され、保釈後も軟禁状態であることが明らかになった。

Apexは四川長虹(Sichuan Changhong Electric Applinace=中国政府が54%の株式保有)社の生産するテレビやDVDを米国に輸入し、長虹社の業容を拡大した最大の貢献者であると見られていた。

長虹のトップの1人であったHuang Zuejui氏は綿陽市の共産党書記にまで出世したが、今回の事件を期に解任された。綿陽市の租税収入の半分は長虹社からもたらされていたという。

長虹は2年半ほど前にApexと組み、低価格でDVDなどを米国市場に売りまくった。Apex社は1997年にJi氏が台湾のパートナーと組み設立した製造・販売会社である。2002年には8ヶ月間で300万台の長虹テレビを米国内で販売した。

また、長虹はテレビ・メーカーとしても国内最大級で市場シェア13%を占めていた。しかし、製品のほとんどがブラウン管方式のものであり、薄型テレビへの進出は資金不足から遅れていたといわれている。

長虹は昨年は13億ドル相当のテレビを生産し、そのうち6億ドルを輸出していた。 しかし、Apexから4億6750万ドルの回収ができないため赤字になったといわれる。

Apexとのビジネスを進めていったのは長虹の倪潤峰(Ni Runfeng)社長だが、独裁的な権力を振るっていた同氏は昨年7月社長を解任された。既にこの段階でApex問題は顕在化していたものと思われる。

別の電器メーカーTCLは長虹に「天才的技術者」万明堅上席副社長を社長として派遣し、業容の改革(移動通信媒体、ハイテク化、ソフト化など)を行うといわれている。万氏は四川電子科学技術大学出身である。

今回明らかになったことは、中国のAV機器、家電製品は確かに輸出は急増しているが価格面で相当無理しているということである。これに対抗する日本や韓国の電器メーカーは容易でなかったであろう。

中国の急成長した企業は多かれ少なかれこのような問題を抱えている。すなわち、利益よりも量的拡大を優先するという方針である。これは中国経済そのものが成長の割には内容が充実していないという事実にも対応しているといえよう。

(ニューヨーク・タイムズ05年1月1日号、新華社05年1月3日号など参照)

(05年3月26日追記)

四川長虹、赤字481億円という記事がようやく日経新聞(05年3月24日、朝刊)にお目見えした。それによると米国代理店APEXの「資金繰りが悪化した」などと書いてある。最大で3億1千万ドルの売掛金が回収不能になる恐れがあるそうだ。

他にも、在庫評価損や濃くs大投資1億8千万元の焦げ付き(どういうことか説明なし)もあり〆て37億元という中国の上場企業としては史上最高の赤字となるということである。

日本の新聞記事というのは、どの新聞も、特にアジアについては大体間延びがしているものが多く、カッタルイ記事が多いのはどうにかならないものだろうか?読者諸兄姉はすべからく英語のインターネト記事を読むにしくはない。ホリエモンならずともそういいたくなる。

 

46. 中国工商銀行、巨額な営業利益が不良債権で消える(05年1月6日)

中国工商銀行(ICBC)は2004年の営業利益は前年比18%増加して747億元(90.3億ドル=9,400億円)に達したが、その多くは不良債権の処理と準備金の積み立てで消えてしまった。

その結果ICBCの2004年末の不良債権比率は2003年末より2%減少し、19.1%になったという。

それらの会計処理をした後のICBCの「帳簿上の利益(Book Profit)」は03年の26.6億元から04年は31.6億元(約400億円)となった。

フィナンシャル・タイムがつかんでいる情報の一つによれば中国の銀行が抱える不良債権の額は2,000億ドル(約20兆8千億円)といわれている。

昨年12月に財務次官のLou Jiweiが語ったところによると4大銀行のうちICBCと農業銀行が弱体であり、政府も資金投入を検討しているとのことである。

⇒中国商工銀行で9億ドルの不正事件発覚(05年1月18日)

中国商工銀行で74億元(約9億ドル)の不正融資が発覚し、数十名の関係者が逮捕されたと1月17日付けのWSJ(Internet)は新華社電として伝えている。

事件の舞台となったのは広東省のFoshan(佛山)支店でビジネスマンのFeng Mingchangという人物が主犯である。ニセのL/Cや不動産登記書などを使って、ローンを引き出したというもの。

この事件で実損は20億元(2億4000万ドル)以上出るといわれている。

最近中国ではこの主の事件が多い。

 

47. APP(シナルマス・グループ)中国雲南省の森林破壊(05年1月19日)

インドネシアのウイジャジャ一族(華僑)の所有するシナル・マス(Sinar Mas=黄金の光=中国では金光集団と表現されている)はAPP(Asia Pulp & Paper)という世界最大級の紙パルプ会社(シンガポールに本社)を経営している。

ところが、APPは2001年に140億ドルという巨額債務の支払いが不能となった。

2003年の10月にはEUと日本の債権者とインドネシアのBPPN(銀行再建庁)とは67億ドルの債務を22年分割払いとすることで、一応の合意ができた。

しかし、米国の債権者はそれを不服として、米国内で裁判を起こすなど、なかなかすっきりとした決着にはいたっていない。

APPはインドネシアのスマトラに巨大な工場を持っているが、中国にも子会社(APP China Group)を持っている.その中国の子会社の株式を相当部分の借金の返済に当てることになっていた。

ところが、その中国の子会社が雲南省の森林を大規模に破壊してパルプを生産してきたとして中国の環境団体グリーン・ピース(緑色和平)に攻撃され、APP製品のボイコット運動が行われ、既に浙江省 のホテル組合(約400社)では不買を決めている。

APPは雲南省政府と2002年に契約を結び、農民から用地を安く徴用(1ムー(0.06ヘクタール)あたり0.8元=9.7セント)し、膨大な森林破壊を行い、跡地にユーカリを植えるという方法をとっている。

雲南省とは2,750万ムーの土地を借り受け、そのうち518.3万ムーを既に荒地にしてしまったという。

雲南省の森林破壊は農業生産に対してはもちろん、下流域に重大な自然災害を及ぼす恐れもあり、今回は国家林業局が問題を重視し、調査に乗り出すこととなった。また、雲南省の河川はメコン流域につながっている。(http://www.sina.com/ 参照)

シナル・マスはインドネシア(スハルト時代の)ではこれくらいのことは、当たり前のこととしてやってきたという感覚があるであろう。しかし、中国政府は最近環境問題についてはかなり厳重な対応をするようになってきている。

しかし、APPが中国で紙生産を止めると中国の紙需給が一挙に逼迫し、全国的に「紙価を高める」結果になりかねない。そうすると、日本から大量に中国に紙が輸出されることになるかもしれない。

(続く)

48.環境問題

48-1. 環境保護総局、建設中の発電所などの建設中止命令(05年1月19日)

中国環境保護総局(局長、解振華)は1月18日、13省における30のプロジェクトが環境基準に満たないとして、建設中止命令を出したことを発表した。

そのうち26は発電所がらみであり、三峡ダム関連も含まれるという。従来、環境保護総局は予算も少なく、強制力も弱い役所として認識されていたが、今回の強硬措置は関係者に衝撃を与えている。

環境保護総局によれば、現在200件の発電所建設計画がよせられており、もしそれらを全て認可すれば、中国の石炭消費量は倍増し、硫黄酸化物の排出も急増することは目に見えている。

また、水力発電所も今回の対象になっている。三峡ダム関連では最大の金沙江渓洛渡水発電所(12,600MW)以外に他の2箇所の発電所 (4,200MWと100MW)も含まれている。それ以外に23箇所の発電所も対象になっている。

また、蘭州の石化プラント、佛山(広東州)の製紙工場、内蒙古と福州の高速道路など合計30のプロジェクトが槍玉にあがっている。これらのっほとんどは既に国務院で承認されているが、環境評価については未承認であったという。

同局が今回の強硬措置に出たのは環境問題が極めて深刻化しているからだという。

潘岳(Pan Yue)副局長によれば、問題がここまで来たのは、同局内に多くの原因があるとして、外部からの働きかけ(政治的圧力やワイロも含め)に弱かった点を改善していくという。

今後、中国でプロジェクトを進めていく上で、環境問題のウエイトが高まっていくことは間違いないであろう。特に、雲南省でこれから次々に出てくる水力発電所計画については、下流域のメコン川沿岸諸国(ラオス、タイ、ベトナム、カンボジア)への影響も考慮されるべきである。

 

48-2(旧69). ハルピン市で4日間以上の断水騒動(05年11月24日)

中国東北部の黒竜江省の省都ハルピンでは11月21日から4日間の予定で断水がおこなわれている。理由はハルピン市から松花江の380Km上流にある吉林市にある化学工場が11月13日に爆発炎上し死者5名、負傷者60名を出す大事故が発生した。

その際、化学物質のベンゼンが大量に松花江に流出し、それがハルピン市の水道の水源に到達したというものである。ベンゼンの濃度は基準値の108倍といわれ、市民はスーパー・マーケットからペット・ボトルの飲料水などを買いつくした。

政府は1万6千トンの飲料水をローリーで運び込んだといわれるが、ハルピン市の380万人の市民の1日の使用量にも満たない量だという。

当局は最初は4日間の断水と発表していたが、被害が予想以上に大きいらしく、現在は断水がいつまで続くかは明言を避けているという。汚染された水が実際にハルピン市に到達するのは11月24日(木)であり、2日間でハルピン市付近を通過するといわれている。

学校は11月30日(水)まで臨時休校とされている。また、市内の15の病院が事故にそなえて待機中であるとのことである。また、中国政府の発表は後手後手にまわっており、市民は苛立ちを募らせている。

しかし、ベンゼンの含有値が基準以下になるのはいつかははっきりしないというところであろう。(BBC,インターネット版ほかNYTなど参照)

 

⇒環境保護総局長の解振華氏が責任を取らされて解任(05年12月3日)

松花江のベンゼン汚染事件の責任を問われ、環境保護総局長の解振華氏が解任された。後任には前の林野庁長官の周生賢(Zhou Shengxian)氏が任命された。

今回の事件は石油化学工場の爆発により、ベンゼンなどの有害化学物質が大量に松花江に流出し、ハルビンやロシア領まで被害が及んだものである 。解氏の解任の理由が、吉林の事故の後適切な対応を怠ったということのようである。

しかし、先ず責任を取るべきは「中国石油(Petro China)」や石油化学工場の幹部であり、それを管理監督していた国務院の幹部であろう。 また、吉林市の当局者であろう。汚染物質の流出状況が、真っ先に北京に報告され、それを解氏が隠蔽したとでも言うのであろうか?

その辺の事情は外部の人間には知る由もないが、解氏が最高責任者として真っ先に責任を取らされた理由がよくわからない。

解氏が解任された最大の理由は、解氏は中国政府の一部の幹部から常々「ニラマ」れていた可能性ががある。というのは解氏はかなり、強行に環境行政をやり、「三峡ダム」にも工事中止を求めたこともあった。(#49参照)

「江戸の仇を長崎で討つ」のたとえではないだろうか?解氏は一言で言えばヤリ過ぎたのであろう。彼の解任で中国の環境行政がどう改善されるかが見ものである。 中国で環境汚染事件のたびに環境保護総局長のクビをすげ替えていたら、毎週のように首切りをやらねばなるまい。

なお解氏は1949年天津市生まれ。1969年共産党入党というキャリアからして「文革」世代であろう。1977年清華大学工程物理系卒業。その後、環境学を学び、環境行政に主に携わってきた。1998年から環境保護総局長を務めていた。第16回、中央委員 であり閣僚級の人物であるという。

周生賢氏は1949年寧夏呉忠生まれ。1968年呉忠師範学校卒。1972年共産党入党。高級経済師。寧夏の中学教員を振り出しに、寧夏回教自治区の行政畑一筋。1992年国家林業局副局長。2000年11月国家林業局長。

周氏はどちらかというと事務系の行政官僚である。第16回、中央委員候補。

 

48-3.(旧71).広東省、韶関市カドミニウム汚染、またも飲料水危機(05年12月21日)

吉林市の石油化学工場の松花江のベンゼン汚染事件に続いて、今度は広東省北部の韶関(Shaoguan)市(人口50万人)の国営精錬工場で事故があり、カドミニウムが近くを流れる北江(Bei River)に流出し、環境基準の10倍を超えるカドミニウムが検出された。

そのため、同市は12月20日(火)から水道の供給をストップし、下流域にも警戒警報を出した。

韶関市から90Kmほど下流にある英徳(Yingde)市(人口100万人)は早速厳戒態勢に入り、汚染水が市内の水道源にはいりこまないようにダムの水門を閉ざしたという。市内には給水車が出動し、市民に水道水の使用を控えるように呼びかけている。

北江は広州市(人口1,000万人)の近くを流れ海に注いでいるが、一部は広州市を流れる珠江にも流れ込んでおり、同市の水道源に何らかの影響がでる可能性がある。

また、北江の水は流域の水田などで広く利用されており、水稲のカドミニウム汚染などが今後大きな問題となる可能性を秘めている。また、流域の魚類の汚染も当然ながら問題となろう。

 

48-4(旧.74).河川に面した多数の化学工場群が水質汚染への脅威となっている(06年1月25日)

周生賢(Zhou Shengxian)環境保護総局長は昨年末の「松花江汚染」問題の反省として次のように述べた。

「現在中国には21,000の化学工場があり、そのうち50%以上が揚子江と黄河に面して建てられている。また、多くの工場が環境基準を満たさない状態で操業を続けている。このまま放置すれば「松花江事件」の再発は十分考えられる。

少なくとも100箇所以上の工場が危険な状態にある。現在、状況確認の調査をおこなっているが、旧正月(1月29日)の連休明家には結果を公表する。」

以上のように、水質汚染問題の深刻さを改めて強調している。中国の水が「危機的状況にある」ことは十分認識されており、中国では改革開放以降、ペット・ボトルの飲料水の消費量が爆発的に増えている。

先の「松花江汚染」事件の時もハルピンのスーパー・マーケットの映像が写し出されたが、山積みされたペット・ボトルをみて普段から飲み水に大量に使用されていることを改めて認識させられた。

中国は工場廃水を未処理のまま工場に垂れ流しているところがまだ相当あり、工業用水の回収率もきわめて低いといわれている。中国経済のネックはエネルギーだといわれていたが、水のほうがより深刻かもしれない。

(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、06年1月25日、参照)

 

48-5. 河川の汚染対策を100億元かけて実施(06年3月31日)

工場排水のタレ流しなどによる河川の汚染がひどく、住民の飲料水が著しく危機にさらされている河川について、中国政府は100億元(約1460億円)の予算をかけて,清浄化対策を実施することにした。

具体的内容は明らかになっていないが、200以上のプロジェクトを実行する。この金額は従来に比べ1桁多い予算であるという。

05年11月の松花江事件以来4ヶ月間に、明らかになったものだけで73件の汚染水の排水事故が起こっているという。

水資源局によれば、全国1300箇所の給水施設の40%は「工業用水と農業用水にのみ適合」するというレベルであるという。

中国経済というよりは国民の日常生活にとって、汚染水のみならず、水の供給そのものが危機に立たされている地域もすくなくない。中国政府が全力を傾注していくべき課題であることは間違いない。

 

48-6.危機にさらされている都市の飲料水対策に本格的取り組み(06年8月23日)

中国政府は公害や工場の事故などによる突発的汚染により飲料水の水質が急速に悪化しつつあると認識し、その対策に本格的に取り組むことを建設省、仇保興(Qui Baoxing)次官が語った。

仇次官によれば、中国政府は今後5年間に1兆元(約14兆5000億円)をかけて都市部の飲料水改善対策をおこない、外国資本にも廃水処理設備などへの投資を呼びかけたいとしている。

中国では現在278都市で廃水処理施設がなく、また既にある廃水処理設備も多くは稼働率30%以下であり、またせっかく作っても稼動していない設備もあるうという厳しい現状を語った。

仇次官は2005年末には巨大都市の2兆立方米の排水のうち、処理されたものは52%にしか過ぎないが、それでも5年前の30%よりは大分改善されたと説明している。

水質汚染が中国では最も差し迫った環境問題であり、ほとんどの中国の運河、河川、湖水が汚染されている。地方に住む人のうち3億人が化学や汚染物質で汚染された飲料水の脅威にさらされていると述べた。

また、中国北部では今年は数十年ぶりの干ばつに見舞われているとも語った。特に、重慶や四川省では干ばつと猛暑に苦しむ人々の様子が日本のメディアでも紹介されている。一方において、華南では台風による大洪水被害がでている。

日本の一部では中国は急速に日本に追いつき、やがて日本は経済的に追い越されるなどという一種の「中国脅威論」が語られ、それが小泉の靖国参拝支持にまでつながっていくという妙な精神構造が出来上が りつつあるような雰囲気さえ感じられる。

しかし、よくみると(ちょっとみただけでも)中国の現状は未だにかなり厳しいレベルにあり、日本人としてもできることは協力して助け合っていくということが必要であろう。 大気汚染などは日本や韓国にも直接的な影響があるのだ。上海と北京の高層ビルを眺めてこれが中国だなどという見方は間違いである。

いつの間にか「日米同盟関係」などということが当然のように言われ、そのうち米国の軍事侵攻に率先してお付き合いさせられ、やがてはアルカイダなどという物騒なイスラム 過激派から、テロの対象にされる(イギリスのように)というようなことにならないように気をつける必要がある。

「日米安保条約」と「日米同盟」は根本的に違うのである。それがあたかも「同じ」ものだというのが自民党の主流のネオ・コン(ウルトラ反動主義)の主張であるように見受けられる。

外交の基本は「善隣外交」であることは当然である。そもそも隣国といがみ合っていたのでは「枕を高くして眠れない」ではないか。

 

49. 外国資本と国内資本の税率の一本化を検討(05年1月20日)

1月20日付の新華社通信、英語版(Internet)によれば、楼継偉(Lou Jiwei)財務部副部長(次官)は現行のさまざまな優遇税制をなるべく単純化していきたいと、次のように語った。

『法人税についても、産業や地域によって税率が異なっているが、例えば、法人税を一律15%にするかもしれない。

また、外国資本については税率は11%だが、国内資本は22%である。また、国営企業のうち、大企業と中期業については30%である。これらの法人税は一本化されることは避けられない。

中国はWTOに入ってからは、外資と国内企業の取り扱いは平等にしなければならないのである。税率を引き下げて、税収を減らすことによって、改革、すなわち行政の効率化が図られなければならない。また、政府の余計な干渉も減らすことも必要である。

外資にとっては、多少の税率アップはさほど問題でないであろう。彼らは中国に安い人件費と大きな市場を目当てにやってきているのである。』

ただし、Lou副部長は何時から税制の一本化を実施するかは明らかにしなかった。

もし、外資と国内資本の税率の差がなくなれば、おそらく、中国に対する「直接投資=FDI」は現在の年間600億ドルといった数字から大幅に減る可能性がある。現在のFDIには中国の資本が「外資」を装って、大量に入ってきていると考えられるからである。

この話は過去にも出たが、現在かなり検討が進んでいることが感じられる。早ければ、今年3月に開催される予定の全人代にかけられる可能性がある。ただし、共産党内には強硬な反対論が存在すると言われているので予断は許さない。

もし、決まれば、おそらく、外資に対する法人税は現行の11%から15%くらいに引き上げられることは確実と見られる。

 

50. 中国銀行ハルピン支店で10億元持ち逃げ事件(05年1月25日)

上海に上場している東北高速道路社は中国銀行のハルピン支店に預けておいた2億9,330万元(約36億4,000万円)が行方不明であると1月15日に訴えを起こした。 しかし、東北高速の会長張暁光は刑事犯として拘留された。

表向きの理由は「公金流用」の容疑であり、持ち逃げ事件とは無関係だと説明されている。しかし、真偽のほどは明らかでない。

それに先立ち、昨年末、中国銀行ハルピン支店河松街出張所の高山(Gao Shan) という出張所長が6億元をもって失踪した。 このなかには黒龍江省社会保障基金の資金1億8000万元も含まれていた。高はカナダに高飛びしたと見られている。

その後の調べで、黒龍江省辰能哈工業大学(Chenergy ハルピン工科大学)ハイテク技術リスク投資有限公司の資金3億元も行方不明であることが判明したという。 しかも社長のZhao Qingbinは1月はじめ問題が表面化するや自殺してしまった。

合計12億元もの大金が行方不明になってしまったことになる。この手の話が中国では少なくない。

全国の銀行で規則違反で処罰を受けた人間が全国で4,000人以上おり、高級管理者としての資格を剥奪された者が244人に及んでいるという。(京華時報)。

中国銀行と中国建設銀行は近くニューヨークで株式の上場を計画しているが、今回のような巨額のスキャンダルが表面化すると、上場が困難となるであろう。(京華時報、SCMP=サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、Internet版、1月25日 など参照)

 

⇒カナダに高飛びした高山、逮捕後釈放される(07年2月26日)

中国銀行ハルピン支店河松街出張所の高山(Gao Shan) という出張所長が04年末に客の金6億元をネコババしてカナダに逃亡したと噂されていた。

高は07年2月16日にカナダ当局に「入国管理法違反」容疑でで北バンクーバーの自宅で逮捕され、拘置されている。高はそこで、妻子とシアワセな(?)生活を送っていたのであった。逮捕は中国政府の要請によりおこなわれたと警察官は語っている。

しかし、カナダ当局は高が公衆に危害を加える危険はないとして30万カナダ・ドル(25万8000米ドル相当)の保釈金で釈放されるという。

入管事務所では高は移民としてカナダに入国しており、カナダに永住権を持っている人物だとの解釈である。しかし、虚偽の申告だと認定されれば国外退去もありうる。

高は裁判を受ける権利があり、カナダへの永住権を主張することは可能だが、入国したときの事情がはっきりしないとなんともいえないという。

実際、高が横領した金額は1億2800万ドルという巨額なものであった。

高とは別に、密輸で巨富を築いたLai Changxing という人物もカナダに居住しており、中国政府は強制送還を求めている。

現在カナダと中国との間には犯人引渡し協定はなく、カナダ政府としては強制送還されれば、当人は「死刑」に処される可能性があるということで、中国側の要求には応じていない。

(WSJ,07年2月26日、電子版他参照)

 

51.上海株式コンポジット指数68ヶ月ぶりに1200ポイントを割る(05年1月31日)⇒41-3に移動

 

52.政府はダメ国営企業の救済は将来おこなわないようにする?(05年2月3日)

2月2日付の新華社通信の伝えるところによれば、温家宝首相は国務院常務委員会を開催し、「国有企業の破産問題」を議論し、将来条件がととのえば、破産状態に陥った国営企業を救済しないで、市場から退出させる(破産させる)か市場に任せることとする方針を決めたという。

しかし、そういうことは、あくまで「条件次第」であって、「社会的影響が大きすぎる」などといって救済してしまうことは日本の例から見ても明らかである。

なぜ、国務院がこのような方針を明らかにしたかといえば、資金の国営企業の不祥事をみても経営幹部の「経営の失敗」が多すぎるからである。中国航空油料公司事件や国営銀行の不良債権の多さなど、そのほとんど全てがトップ・マネージメントの責任である。

国営企業には共産党幹部がトップで入っており、問題が起これば党(国家)が何とかしてくれるという「甘えの構造」を打破しようという考え方が出てきたということであろう。

⇒4年以内に国営企業救済を止める(05年3月27日)

国営企業監督管理委員会は4カ年計画を定め、今後4年以内に国営企業は市場原理により、外資や民間企業と同様に倒産すべき企業は破産法に従い倒産させることを決めたと新華社は報じている。

近年3,377社の国営企業が経営不振により倒産し、さらに1,800社の国営企業が破産に瀕しているとのことである。

 

53. 2005年の中国経済

53-1. 05年1月の貿易黒字は65億ドル(05年2月10日)

中国の1月の輸出は508億ドルに達し、04年の1月に比べ42%の増加であった。これは、世界的(主に米国とEU)に繊維、衣類、履物などの輸入数量制限が05年1月から撤廃された結果輸出競争力の強い中国が一気にこれらの分野の輸出を拡大したものと思われる。

一方、輸入は443億ドルで前年同月比24%の伸びにとどまった。特に、石油の輸入は780万トン(180万バーレル/日)と前年同月比マイナス24.1%と大きく減少した。鉄鋼の輸入も190万トンと40.8%減少している。ただし、鉄鉱石の輸入は61.8%増加し、2,090万トンに跳ね上がっている。

(WSYJ.05年2月9日、 Internet版参照)

 

53-2. 繊維製品輸出の急増(05年3月11日)

05年1月から米国やEUで繊維製品輸入の枠(クオータ)が撤廃されたことに伴い、満を持していた中国は早速集中豪雨的な輸出を開始した。

中国の繊維輸出入商業会議所は05年1月の対米向けアパレルの輸出は前年同月比80%増の9億8900万ドル似たし、繊維の輸出は43%増の5億4000万ドルに達したと発表した。

また、EUにはアパレルの輸入は11億ドル、繊維の輸入は4億3000万ドルとおのおの43%増であった。とりわけ女性用のシャツとブラウスは前年の3倍に達したという。一方それらの価格は41%下落した。

米国とEUのアパレル産業の労働者たちは輸入の急増に音を上げている。特に欧州アパレル・繊維組織はEU加盟25カ国に対し、12のカテゴリーの製品について「セーフ・ガード」を適用するように要求した。EUでは昨年だけで既に16万5000人の繊維産業労働者が職を失っている。

米国も、ブッシュ政権は中国からのアパレルと繊維の輸入について「早期警戒システム」を構築して輸入の監視に当たることを考えているという。

中国政府は繊維製品の輸出税を2%から4%に引き上げ、輸出を抑制しようとしているが、効果はあまり見られないようである。中国側は強気の姿勢で米国もEUも繊維製品の競争力強化のために10年間を費やしながら、いまさら何を言っているのだとの発言を行っている。

(WSJ, Internet 05年3月11日付け参照)

⇒05年2月の輸出も引き続き好調(05年3月11日)

05年2月の輸出は対前年同月比30.8%増加の445.3億ドルに達した。これには繊維製品の輸出が依然として大きく寄与している模様である。一方、輸入は399.2億ドルと前年同月比マイナス5%と落ち込みをみせた。

輸入の減少は設備投資にブレーキがかかっているため、資本財の輸入が減っているものと見られている。しかし、内容をよくみないと断定はできない。

53-3. 05年1-4月の固定資産投資25.7%増(05年5月22日)

中国の景気動向は一向に沈静化する様子はなく、05年1-4月の固定資産投資は前年同時期に比べ、25.7%増加した。しかし、これは04年の同時期の42.8%と03年の30.5%に比べれば伸び率としては低めになっているという。

政府の05年の投資の伸びの目標は16%であり、現在目標を大幅に上回るペースで固定資産への投資が行われていることになる。しかし、新規投資は明らかにスロー・ダウンしていて既に着工済みの投資が早いスピードで行われているという見方がされている。

その根拠としては最近中国では資本財である機械・設備の輸入のペースが落ちてきており、それが経常収支(貿易収支)の黒字の拡大につながっているのだという。

もし、その通りだとすれば年後半の投資のスピードは可なり落ちてくることになろう。しかし、2008年の北京オリンピック関連投資は依然として動き続けるであろう。

また、消費も依然好調で05年4月の小売売り上げは前年同月比12.2%増であったという。都市部は13.1%増、農村部では10.4%増と、都市と農村の格差は依然進行している。

なお、3月の小売売り上げの伸び率は13.9%であったので、多少はペースが落ちてきているという見方を当局者はしている。

 

53-4. 4-5月のFDIは減少に転じる(05年6月28日)

中国向けのFDI(外国からの直接投資)はOECDの調査によると2004年は549億ドルに達し、03年比約80億ドルの増加となり、過去最高を記録した。その可なりの部分は不動産投資に流れ、また、中国での利益の「再投資」もかなりあったという。

中国政府の発表では2004年のFDIは606億ドルであった。両者の差は明らかではない。

今年に入ってからは投資の増勢が鈍り、05年4月は前年同月比-27%、5月は-22%と落ち込みを見せているという。これは不動産投資に対する警戒感の現れであるともいえよう。

また、中国政府も安易な外資の流入(実は中国企業が香港あたりにプールしておいた資金を「外資」と称して国内に持ち込むケースが可なり多い)を規制し始めたことも影響していると見ることができる。

(6月25日付け、SCMP参照)

⇒05年上期のFDIは微減(05年7月15日)

05年上期(1-6月)のFDI(外国資本直接投資)は285.6億ドルに達したが、前年同期比でみると3.2%の減少となった。これは不動産投資に対する政府の規制などの効果が出ているためと考えられている。

しかし、ベンチャー・キャピタル投資も14%減少している。これは金融当局による規制強化によるものみられる。この分野は中国企業の海外子会社が外資を装って中国に入ってくるケースが多いとして金融当局が最近、目を光らせてきているという。

 

53-5. 中国の05年上期の成長率は9.5%(05年7月20日)

国家統計局が発表した05年上期(1-6月)の実質国内総生産は9.5%の伸び率を達成し、依然として昨年の平均の伸び率を維持している。

成長の主役は総固定資産形成(設備投資と建設)であり、前年同期比25.4%の伸びを達成した。これにともない、鉄鋼生産も好調で粗鋼生産は1億6500万トンと前年同期比32%増となった。

しかし、鉄鋼生産については建材用の低品質の設備投資を課題におこなった「成果」でもあり、これが順調に実需につながっているかどうかは疑問である。中国政府は鉄鋼メーカーが世界の建材市場にダンピング輸出をしないように指導していると伝えられる。

中国国内の鋼材価格や不動産価格は下落傾向にり、エネルギー消費も沈静化しつつあるという。

日本の大手高炉メーカーは自動車・電機・造船といった高級用途の鋼材生産に特化しているため、当面は中国の鉄鋼の過剰生産の影響は受けないであろう。

個人消費の動向を示す、個人所得の伸びは都市部では前年同期比9.5%、農村部は12.5%であったという。

6月の工業生産の伸びは前年同月比16.8%、小売の伸びは12.9%であった。なお消費者物価指数はこのところ落ち着きをみせ1.6%にとどまったが、製造業者物価指数はエネルギー価格の高騰などを反映して5.2%とかなり上昇している。

この数字だけからは即断しにくいが、マクロ的にみて製造業者の利益率は平均して低下している可能性が高い。

 

53-6.05年1~7月の都市部の固定資産投資は27.2%増(05年8月17日)

中国国家統計局の発表によれば、都市部の固定資産投資は7月は前年同月比27.2%増で、1~7月の累計で3兆4600億元と前年同期比27.2%増と、依然として投資意欲の衰えは見えない。2004年合計では25.8%の伸び率であったからそれを上回る勢いが続いていることになる。

このうち、不動産投資は7,587億元と前年同期比23.5と好調そのもので、政府の抑制方針はまるで利いていないようである。過大な投資はいずれ過剰能力として表面化してくるため、政府としても、いっそうの引き締め策を検討せざるをえない段階に来ている。

 

53-7. 05年8月も輸出の伸びは32%と高水準(05年9月13日)

05年8月の中国の輸出の伸びは7月の人民元切り上げ(約2%)にもかかわらず、衰えをみせず前年同月比32%の678億2千万ドルに達した。輸入は23%増の577億8千万ドルであった。このため貿易収支は100億4千万ドルの黒字となった。

05年1~8月の累計では輸出は4,756億7千万ドルと前年同期比32%増、輸入は4,154億5千万ドルと14.9%の伸びにとどまった。貿易収支の黒字は602億2千万ドルとなった。

このように輸出の伸びに対し輸入の伸びが低くなったのは05年からだが、中国の組み立て製品の部品(電子部品など)の自給率が急速に高まり、周辺諸国からの輸入の必要性が急速に減ってきているためである。

そのため、東南アジア諸国はもちろん日本、台湾、韓国も可なりの影響を受けつつある。この傾向は今後も続くことは間違いない。中国はたまりすぎた外貨をどうして行くかが今後の大きな課題となる。

やはり、米国のトレジャリー・ボンド(国債)の大量買付けが目下最大の資金需要であるが、インドネシアなど外貨不足国への貸付等も積極的におこなっていくであろう。

すでに05年7月から一部実行されている、ASEAN-中国の「自由貿易協定」によってASEAN側は決定的なダメッジを受けつつある。

(物価指数)

05年8月の消費者物価指数は前年同月比1.3%と比較的低い伸びにとどまっている。05年1~8月の累計でも2.1%増と9%台もの高度成長下にあっては比較的低い水準にとどまっている。ちなみに04年8月は5.3%の上昇であり、警戒警報が出されていた。

一方、生産者物価指数は05年8月は5.3%、7月は5.2%と可なりの高水準である。05年1~8月の累計でも5.5%と高い。

8月は原材料と燃料(石油など)の上昇が8.1%あった。銅、ニッケル、アルミ、亜鉛などの非鉄金属は7.5%から18.1%上昇した。鉄鋼は過剰生産から、2.8~3.3%の上昇にとどまった。

このような生産者物価指数は消費者物価指数にどう反映されるのであろうか?本来生産者物価指数に消費者物価指数が近づかなくてはバランスが取れないはずである。

輸入価格がある程度低ければ、消費者物価を押し下げる効果はあるが、中国の場合消費財は国内生産が圧倒的に多い。

となると、価格の差は製造業者が負担していると考えざるを得ない。そうなると、一般的には中国での製造業者の採算は悪化しているはずである。これは製造業者が激しい過当競争を繰り広げているという事実と対応している。

家電メーカーが赤字経営が多いことは既に報じられている。赤字でもなかなか倒産しないのが、中国の特徴でもある。倒産させれば中国の銀行の不良債権額は跳ね上がる。今後とも要注意である。

 

53-8. 設備投資ブームは続くが、外資はやや沈静化(05年9月15日)

中国統計局の発表によれば05年1~8月の都市部の固定資産投資は官民合わせて4兆1150億元(約56兆円)に達した。これは前年同月比27.4%増である(05年1~7月については#53-6参照)。1元≒13.6円

工業生産は05年1~8月は16.3%と大幅に伸びている。

中国政府はエネルギー開発に力点をおいており、同時期に石炭部門には546億元と前年比86%増、石油開発には770億元、同25.6%増の投資をおこなった。

電力、配電、天然ガス開発、水資源開発にも合計で3,990億元(+35%)の投資をおこなった。

また、石炭輸送などのネックになっている鉄道には504億元(+39%)の投資をおこなった。

また、過熱が取りざたされている不動産部門には8,920億元(1兆2千億円)の投資がおこなわれた。これは22.3%増であった。

これに反して、外国からの直接投資は05年1~8月で全円同期比で3.2%減少しているという。これは5年ぶりのことだという。さすがに、中国一辺倒ともいえる投資はそろそろ限界が来た感じは否めない。

これからは中国にかわり、インドやベトナムやインドネシアなどがクローズ・アップされてくるであろう。また、里帰り現象も起こっている。

 

53-9. 05年3Qの成長率は9.4%だったが、その先は?(05年10月23日)

中国経済は高度成長を続け、05年の3Qは9.4%の成長、05年1~9月の成長率も前年同期比9.4%と驀進を続けている。これは昨年来、中国政府が不動産、鉄鋼、セメントなどの過熱気味の部門の投資にブレーキをかけてもなおこの高度成長が実現した。

この間、9ヶ月で貿易収支の黒字が、昨年の同時期の約3倍の1,000億ドルに膨れ上がった。その分ドルが中国に吸い上げられたのは主に米国と考えてよいが、「被害」は東アジア、東南アジア諸国にも及んでいることを看過できない。

これらの諸国は大雑把に言うと、中国からの輸入が30%も増えたのに対し輸出の伸びはその半分の15%程度に落ち込んでいる。

なぜそうなったかといえば、アジア諸国からの中国向け輸出は電子部品、コンピュータ部品などの部品、半製品があるいは1次産品が多いのに反し、中国からの輸出は「完成・組み立て品」が多いという特徴を持っているからである。(本ホーム・ページの中国の貿易、2005年上期を参照)。

加えて、日本企業や台湾企業などは電子部品、コンピュータ部品の工場をせっせと中国に建設しており、ついに東南アジアからのこれら部品類をあまり輸入しなくてもすむ「自給体制」が中国に着々と整いつつある。

そうなると、東南アジア諸国はもっぱら中国の工業製品の「輸入国」の立場に急速に追い込まれつつあるというのが現在の姿であり、この傾向はさらに続く。逆に言えば、中国の貿易黒字はいやが上にも拡大し続ける

中国にとっては「メデタイ」話しで笑いがとまらない格好である。これは11世紀頃の中国の宋時代から磁器(青磁など)が輸出品として飛躍的に増加し、世界中の金銀が中国に集中した時期に似ている。

しかし、その反面、韓国、台湾、を初め東南アジアに不況風がいっせいに吹き始めたのである。2004年には6%前後の成長を遂げた各国は2005年に入って3.5~4.5%前後の成長率が軒並み下がってしまったのである。

これは世界史上における石油価格の高騰が原因であるという説明がなされているが、中国との貿易バランスの影響は多分それ以上に大きいと見てよいであろう。要するにアジア諸国に中国が「失業を輸出」し始めたのである。

さすがに、中国のエコノミストは日本のボンクラ・エコノミストとは違い、その辺の問題点は把握している。

昨今の中国の政府や学者には「中国の黒字」は深刻な問題だという認識が出てきている。だから、何とか内需を盛り上げなければならない。それには個人消費の増加が必要で、同時に所得格差を解消し、貧困層の消費を増やす必要があると考えている。実現可能かどうかは別としてマトモな発想である。

もちろん、中国の投資の行き過ぎに対する懸念も持っている。ネオ・リベラルの経済学では「投資こそが成長の言動力」であるなどといって「サプライサイド」重視の経済学こそが主流だなどとうそぶいているが、需要を超えた過大投資がいかなる災厄をもたらすかは1930年代の世界恐慌の歴史を顧みれば一目瞭然である。

もっと卑近な例として、1997・98年のアジア通貨・経済危機の原因をみれば明らかである。その原因を「為替の固定相場制」だなどという的外れな議論が通説然としてマカリとおっている「経済学の貧困」には同業者として悲憤にたえない。

愚かしい議論でも多数であればそれが「通説」になってしまうから恐ろしい。

中国も、同じ問題が起こっているのである。中国の投資は「沿岸部と内陸部の格差」を是正するための高速道路、高速鉄道などの公共投資は比較的投資効率が高いと考えられるが、上海などに林立する高層建築は一体誰のためのものかといいたくなる。

これは1990年代前半のジャカルタやバンコクよりももっとひどい。これらの投資は「利益を生まない」非効率な投資としてやがて中国の国民経済の負担としてのしかかってくるであろう。

鉄鋼業についても同様である。世界的に2~3流のあるいはそれ以下の設備を作りまくったのが最近の中国の鉄鋼業の投資である。そのほとんどが「建設用鋼材」で最近、市況も大幅に下がっているらしい。これは既に海外に怒涛のごとく流出し始めている。

もちろん、日本の高炉メーカーと競合する「高級鋼材」の供給能力は1トンたりとも増えてはいないが、世間ではまたしても「鉄鋼産業危機論」のような俗説がはびこり始めた。これはアメリカの通俗エコノミストに多く見られる現象である。彼らは今でもアメリカの製鉄業が世界一だと思っているフシがある。

鉄鋼産業以外にも過大投資がおこなわれているが、外資による投資は比較的「ムダ」が少ないといえよう。というのは電子部品の投資などは世界の自給バランスを個別企業が「計算」しながらおこなっているからである。

恐ろしいのは「中国企業」がやみくもに行う、それいけドンドン式の拡張投資である。それは家電産業やオートバイ産業に典型的にあらわれ「過当競争」の原因になっている。そのため、これらの企業の採算はトミに悪化している。株式市場も下落している。

それらのツケはやがて「金融資本」に回ってくる。いつその問題が噴出すか?それはさほど遠い将来の話とは思えない。

 

53-10. 10月の固定資産投資も27.2%増と高水準持続(05年11月18日)

中国の都市部の05年10月の固定資産投資は前年同月比27.2%と、9月の29.3%よりはやや落ちたものの依然として高水準を維持している。また、05年1~10月の都市部の固定資産投資の総額は5兆5,790億元(≒82兆円)と前年同期比27.9%増である。

ただし、2003年、04年といずれも50%近い伸びを示したことに比べれば、さすがに伸び率そのものは落ちてきている。

中国政府としては固定資産投資をこれ以上加速させる意図はなく、むしろ個人消費の増加に期待している。高度成長といっても、国民全体の消費増につながらなければ「貧富の格差」拡大だけが残ることになり、国内の不満はいっそう蓄積されていくからである。

また、鉄鋼投資にに見られるごとく、世界の3流レベル技術水準の設備投資が増えてしまうと、短期的に見ても国民経済上の「重荷」に転化することになり、「量より質」への転換が政策課題である。

その点では先進工業国からの直接投資は製造業やIT関連に関しては技術的にも「最新鋭」のものが比較的多く、中国政府としても大いに歓迎したいところである。

 

 

54.中国建設銀行

54-1. 中国建設銀行張恩照会長収賄容疑で辞任(05年3月16日)

3月15日付けのWSJ(Internet版、およびSCMP)の伝えるところによると、香港の業界筋の情報として、中国建設銀行の張恩照(Zhang Enzhao、58歳)会長は収賄容疑で取調べ中であり、3月13日(日)に辞表を提出したと報じている。容疑は張会長が上海支店長時代のものであるといわれている。

容疑の内容については明らかにされていない。また、彼は建設銀行の党委員会の書記であ り、全体の権限を掌握していた実力会長であった。

同行は中国4大銀行の1つ(第2位)であり、中国銀行と並んで「優良銀行」として近く海外に上場も計画されていたという。この上場(IPO)計画はご破算になる公算が大である。透明性のない企業には外国人投資家(一部の日本の証券会社は別として)は魅力を感じないのは普通である。

この事件が株価に影響したためか、せっかく1300ポイントの鉄鍋底水準(これ以上下がらないであろうといわれていた最低水準)を回復していた上海総合指数が今週に入り大幅に下げている。(3月14日1293.5⇒3月15日、1269.14⇒3月16日、1255.59)

融資相手は建設・不動産業が中心であり、勢い不良債権も多く、2003年末には「不良債権」処理のため225億ドルの国家資金が注入された。中国建設銀行と中国銀行の頭取を務めていたWang Xuebing(王雪冰)も不正融資事件で解任、逮捕され、12年の禁固刑に服している。

また、中国銀行の香港支店長であったLiu Jinbaoも2003年に収賄容疑で逮捕・解任され、現在は自宅軟禁中であると伝えられる。

(05年3月16日追記)

中国建設銀行は本日取締役会を開き、張恩照会長が「個人的な理由で」辞任を申請していることに対し、辞職を認めた。張会長の代行として、現在副会長を務めている宋振明氏が任命された。

日本人の八城政基氏も社外取締役になっている(04年9月から)が、出席はしなかったという。なお、正式な会長は中国人民銀行から派遣されるという観測もされている。

FTによれば04年9月からだけでもCCB(中国建設銀行)の行員は50名もが7億6000万人民元(約96億円)をネコババして御用になっているという。会長が悪いことをしているような会社は下も悪(ワル)がはびこるものである。これは日本の企業でも同じことである。

度重なる国営銀行幹部の「不祥事」は中国経済の実態を示すものであり、市場経済(資本主義経済)の初期段階ではほとんどの国が経験してきたことでもある。

しかし、模範的なコーポレイト・ガバナンスのご本家であると、多くの日本の経営学者やメディアが賞賛してやまない米国などもエンロン事件やワールド・コム事件など未だににぎやかなことである。

個々人が合理的な「経済人(ホモ・エコノミクス)」として好き勝手に行動すればこういうことになるのは当然である。資本主義社会というのは所詮はこんなものなのであろう。やはり、アダム・スミスの道徳情操論の世界に立ち戻ってから出直さなければならないのであろうか。

⇒張恩照、米国で訴えられる(05年3月21日)

3月21日のニュー・ヨーク・タイムスとFT(Internet版)によれば、中国建設銀行の張恩照前会長はカリフォルニア州で金融サービス会社のAllied Information Service社から100万ドルのワイロを受け取ったとして、米国対外腐敗行為法違反(US.Foreign Corruption Practices Act)の罪で告訴されていると報じている。

中国建設銀行は2002年に新しいコンピューター・システムを導入した際にAIS社を指名し、1億7600万ドルの受注をし、その見返りとして100万ドルを受け取ったというものである。

実際に訴え出たのは中国のITコンサルティング会社のGrace & Digital Information Technology 社で、同社の口利きでAIS社は受注できたのに、同社の受け取るべきコミッションがワイロという形で張氏の懐に入ってしまったことで訴訟を起こしたようである。

中国建設銀行はそのほかにも数々の問題融資があった模様で、2001年には長春支店で3億元(約38億円)の行方不明金が出てきたと、3月21日の新華社は伝えている。

なお、張会長の後任には中国銀行副総裁で外国為替管理局長の郭樹清氏が中国銀行共産党組織の書記に任命されたことから、同行会長に就任するものと見られている。

⇒張恩照の息子は香港で失踪(05年3月25日)

張恩照の息子のZhang Jigangは香港で行方不明になった。どこかに雲隠れしたものと見られている。彼は香港上海銀行の投資部門に勤めていたが無断で欠勤しているという。

 

54-2..バンカメが中国建設銀行に25億ドル投資(05年6月17日)

WSJ(Internet版、6月17日付け)が伝えるところによると、バンカメ(Bank of America Corp.)が中国建設銀行(以下、建行と略称)の株式9%を25億ドル支払って買い取り、中国市場に本格的に参入することとなった。(結果的に30億ドルを支払って9%の株式を取得した。)

さらに、建行が05年後半に株式を公開する場合は、9%の株式所有水準を維持するために、追加で5億ドルの出資をするろいう。さらにバンカメは5年半の間に、建行が公開買い付けをした株価で株式を19.9%まで買い増す、非排他的オプション(non-exclusive option)を有することが取り決められたという。

この協定は本日(6月17日)、バンカメのKenneth Lewis会長と、建行の郭樹清(Quo Shuqing)会長の間で署名される予定である。

建行は上記のごときトラブルに見舞われ、かつ不動産部門への貸付も多い(他の銀行も同様だが)中で、大胆な選択に踏み切ったことが注目される。これは到底日本の銀行には考えられない行動であろう。

 

54-3. 中国建設銀行05年の純利益が4%減少(06年4月7日)

中国建設銀行は2005年の純利益が471億元(約700億円)となり、04年の490.4億元に比べ4%減少した。同行は原因は貸し倒れ引当金の上積みや増税によるものだと説明していうr。

税引前の同行の経常利益は17%増加したという。純金利収入は1,165億5,000万元であった。貸付額は10%増えて2兆4,600億元(36兆4000億円)となり、企業への融資が72%を占め、個人向け融資は19%であった。

融資額の10%増という数字は4大銀行の平均値7.8%を上回るものであるという。

同行の05年における不良債権比率は3.84%で、04年の3.92%に比べ低下しているという。不良債権引き当て金は137.1億元と前年の61.1億元から大幅に積み増した。

おそらく、潜在的な不良債権はこれを大幅に上回っていることは間違いない。同行は一般の中小企業向け融資にも力を入れているというが、もともと不動産企業への融資比率も高く、現在の中国の不動産バブル崩壊時には不良債権が大きな問題となるであろう。

(WSJ Internet版、06年4月7日付け参照)

 

55. 「新歴史教科書」問題でアサヒ・ビールが槍玉に(05年3月30日)

3月29日(火)の新華社、インターネット版によると、中国や韓国(日本国内もだが)で特に厳しい批判を浴びている、歴史歪曲教科書の「新しい歴史教科書」(扶桑社)に日本の大企業が関与しているとして企業名を挙げて批判した。

その大企業とはアサヒ・ビール、三菱重工、東京三菱銀行、いすゞ自動車、日野自動車、清水建設、大成建設、中外製薬、味の素、住友生命などである。どういう協賛の仕方をしているのかはあきらかではないが、おそらく赤字といわれるこの「教科書」出版に対して資金援助をしているのかもしれない。

これら企業のなかで、特に袋叩きにあっているのがアサヒ・ビールである。アサヒ・ビールはかなり前から中国で生産を行っており、よく知られたブランドだからであるというほか、同社の名誉顧問である某氏(実名が出ている) が靖国参拝問題について、「靖国参拝をしないような政治家は、政権担当の資格がない」といった趣旨の発言を行ったとされている。

アサヒ・ビールについては長春市のスーパー・マーケットが販売を中止しており、そのことが大きく報道されたことを見ても、アサヒ・ビールのボイコット運動が全国的に広がる可能性もある。

この記事はインターネット版の一面トップの位置に大きく取り上げられており、名前が上がっているほかの各社も要注意である。これらの名門企業がなぜ「新しい歴史教科書]などに協賛するのか、私のような市井の貧乏書生にはまったく理解できない。

右翼といわれるこれらの執筆者の歪んだ価値観や歴史観はきわめて我田引水的な主張ばかりで間違っているばかりか、今までの日本にとって不必要でるし、今後も必要ない。事実関係を極めることこそが必要である。

ところで、昨今のライブドアで不必要に堀江社長タタキが行われている。テレビ朝日などではこの人がと思うような人までがヒステリックにホリエモンをボロカスに罵っていたのをみて唖然とした。女子アナまでがホリエモン叩きに迎合的なそぶりを見せていたのは見苦しい限りであった。

その同じテレビ朝日のスタッフが韓国の盧武絃大統領の「心変わり」を朝番組で口汚く「批判していた。盧武絃大統領は当初日本と親密な関係を構築しようとして、韓国の大統領としては異例なまでの態度を示してくれたことは記憶に新しい。

しかし、盧武絃大統領を「変節」にまで追い込んだのは誰であろうか?テレビ朝日の「識者」は盧武絃大統領を韓国の国内世論に押された意気地のない人物であると酷評していた。しかし、 盧武絃大統領を窮地に追い込んだのは実は日本人自身なのである。

小泉首相は相変わらず靖国参拝を続けるし、一部の右翼・保守政治家は「韓国(盧武絃大統領)が日本との歴史問題に理解を示しているのに中国は一体なんだ」という言い方をしてきたのである。

これは当然中国人や韓国人の耳に入る。これによって盧武絃大統領の立場は国内的にも国際的にもなくなってしまったのである。

テレビ朝日に出ている常連コメンテイターの一部は時に進歩派みたいな顔も見せるが、根っこは右翼的風潮に迎合してテレビに出て金が稼ぎたいだけなのではなかろうか?「バス(時流)に乗り遅れるな」というのが彼らジャーナリストの真骨頂なのであろう。

(05年4月1日追記)

インターネット、sina.com(3月31日)によれば三菱重工は「新しい歴史教科書」への協賛は一切行っておらず、新華社の記事は事実無根であるとの声明を発表したとのことである。、

⇒アサヒ・ビールも会社としては「新しい歴史教科書」支援は行っていないと釈明(05年4月3日)

4月1日のwww/sina.comによるとアサヒ・ビールは中條高徳名誉顧問が「不参拝靖国神社的政治家、没有当政治的資格=靖国神社を参拝しないような政治家は、政権担当の資格がない(筆者の意訳)」と発言し、かつ会社としても「新しい歴史教科書」発行に際して資金援助をおこなったという記事に対し、中條氏個人の発言は別として会社としては資金援助などは行っていないと釈明した。

アサヒ・ビールは94年くらいから経営不振に陥っている国営ビール会社などを次々買収し、現在は中国でも有数のビール会社になっているが、思わぬところで足をすくわれた形となった。

アサヒ・ビールは日本においても「スーパー・ドライ」がヒットしてからシェアーを伸ばしキリンを抜いてトップの座を占めるまでにいたったようであるが、それに反比例して会社の庶民に対する姿勢ももだいぶ変わってきた。

一部の最高幹部は小泉首相に肩入れして、しきりに「新古典派的」主張を公言するようになってきた。要するに貧富の格差拡大是認論である。アサヒ・ビールの経営者がコンナ発言をするようになるとは夢にも考えられないことであった。

還元すれば、一部のトップ経営者の右傾化が進んでいたのである。中條氏 は公式ホーム・ページを開いて、自己の信念を披瀝しておかれる。昭和2年長野県生まれ、生まれ陸軍士官学校卒で、旧制松本高校から学習院大学を卒業後アサヒ・ビールに入り、常務取締役営業本部長 時代にアサヒ・スーパードライの拡販に貢献があり、1988年には副社長に就任という立派な経歴である。

自らの肩書きとしてアサヒ・ビールの名誉顧問を標榜していることは確かである。これについてはアサヒ・ビールは責任なしという言い訳は通らないであろう。ホーム・ページにおいては明らかに右翼的な傾向の 言辞を掲載し、著書も出され、日本の侵略戦争を肯定的にとらえている。

つまり、「新しい歴史教科書」とほぼ同一のトーンの主張をされている。中條氏がいかなる思想を持つかはもちろん本人のご自由である。しかし、公式ホーム・ページに「アサヒ・ビール特別顧問」という肩書きを掲載したらアサヒ・ビールはそれを関知せずとはいえないであろう。

アサヒ・ビールのボイコット運動は中国のあちこちに飛び火しているようである。それだけでなく、思いがけない方向に事件が発展しつつある。

それは国連における日本の「常任理j国入り反対」運動が中国全土で「署名運動」という形で動き出したということである。これはもちろんアサヒ・ビールや「新しい歴史教科書」問題だけが原因ではないが、日本政府の右傾化に対する重大な懸念の現れであろう。

今まで「政冷経熱(政治関係は冷ややかだが、経済関係は熱烈)」などといわれてきたが、アサヒ・ビール事件をきっかけに経済にも悪い影響が出て くることは避けられそうもない。中国では日頃フラストレーションを感じている人々が少なくない。各地で反日デモや暴動などが起こるを懸念せざるをえない。

アサヒ・ビールも現地の総支配人だけに「釈明」させているようだが、本社サイドでもダンマリを決め込んではおられない状況であろう。 早急に事態打開の手を打つべきであることはいうまでもない。本件については日本のメディアは例によっておおむねダンマリである。これも無責任である。

また、 韓国政府も正式に日本の常任理事国入りに反対の立場を表明した。周辺諸国に対する日本政府・小泉政権の配慮を欠いた対応がこういう事態を招いたといわざるをえない。

⇒イトー・ヨーカ堂など日本のスーパーが被害に(05年4月5日)

案の定、反日デモがあちこちに広がり、四川省成都にあるイトーヨーカ堂のスーパーJuscoが4月2日、デモ隊に襲われ、また深圳のイオンもデモ隊に襲撃された。アサヒ・ビールのボイコット運動も各地に飛び火していると伝えられている。

ただし、中国政府は事態の沈静化に努めている様子で、ここ1-2日は反日的な記事は新華社や新浪(sina.com)には見当たらない。

今回の事件は中国がリスクの多い国というよりは、小泉政権の唯我独尊的な外交姿勢とそれに便乗している右翼勢力の行き過ぎが招いた中国国民の反発の結果であろう。

国連の安保理常任理事国問題にしても中国が拒否権を発動したら日本はアウトになるのではなかろうか?

(続く)

56. 教科書問題で改めて中国、韓国から強い反発(05年4月6日)

4月5日に文部科学省から来年度に使用される中学生用の教科書の「検定結果」が発表された。それがまた中国と韓国で強い反発を呼んでいる。新たな反日運動を引き起こす恐れが多分にある。

おそらく日本人の多くはこの問題について「竹島・尖閣諸島」問題以外は中国や韓国の言い分について理解は可能なのではないだろうか?

教科書問題については古くは家永三郎博士の長年の訴訟闘争があったことを思い出すが、問題は日本の帝国主義的侵略や朝鮮・台湾の植民地化問題である。

「新しい歴史教科書」に同情的な某氏(東大経済学部卒)の説明によると、①朝鮮が日本の植民地になったのは先方が希望したからだ、②創氏改名は朝鮮人が希望したからだ、③南京虐殺はなかった、④大東亜戦争亜は「聖戦」である、⑤従軍慰安婦は「希望者」のみがなった、⑥戦前の朝鮮・中国からの強制連行・強制労働は先方の希望者のみ連れてきたなどということである。

日本が朝鮮を先方の希望で植民地化したのであれば、先方が独立したいといってきたときに「ああそですか」といって独立させてやれば良かったではないか?それどころか独立運動をやった人々に対して言語に絶する残虐な弾圧を加えた事実はどう説明するのであろうか。

大東亜戦争が欧米列強によって植民地化された東南アジア諸国の「解放戦争」であるというならば、まず率先して日本が朝鮮と台湾を独立させて世界に「範をたれる」べきではなかったか?

上の①~⑥のどれをとっても到底受け入れられない歴史の歪曲である。

しかも驚くべきことは、これらの歴史歪曲グループのブレーンに東大の歴史学の名誉教授で、学生時代に「歴史研究会」に所属し、マルクス主義者だった人物がかかわっているというのである。こんなことをすれば後世に名を汚すだけの話だと思うがどうだろうか?

過去に日本人がやってきたことはあまりにも残酷でおぞましいものであり、振返ることすら辛いようなことであることは間違いないが、それを「美化」して「無実」を叫ぶだけのどれほどの根拠と意味があるのだろうか?

こういうゆがんだ歴史観を教えられた子供たちが成人して中国や韓国や東南アジアに会社の駐在員として派遣された場合、自分が習ってきたことを現地の人に「おい、こうだろう」といって語れるであろうか?

私は右翼反動思想に凝り固まった某東大経済学部卒(学生時代にマルクス経済学の講義をさんざ受けて無事卒業している)の人物にこういってやった、「お前さんの言い分が正しいと思うなら、南京や韓国に自分で出かけていって、堂々と主張してきたらどうだ?」と。

彼は行かないですむが、歪んだ歴史教育を受けた日本の若者は仕事で駐在する可能性があることを忘れてはならない。要するに現地の人とじかに接触するのである。その場合彼らはどういう取扱いを受けるであろうか?

小泉首相は口を開けば「感情的にならず、冷静に」などといっているが、加害者と被害者では立場が180度違うのである。人を殴っておいて、相手に「怒るな」などといって済まされるのだろうか?

おぞましい過去の歴史を背負っていては、「日本人は胸を張って世界に出て行けない」などと考える人もいるだろうが、過去の歴史の反省にたって、戦後60年の「平和主義に徹し、経済発展をとげ、世界に貢献している日本」は大いに誇りうる存在である。

それを、自己中心的な歪曲された歴史観を持ち出して、相手を怒らせて一体何のためになるのだろうか?

 

57. 中国にホット・マネーの大量流入(05年4月26日)

中国の2004年の資本収支は1,107億ドルの黒字を記録した。このうち610億ドルがFDI(外国資本の直接投資)であり、197億ドルが証券投資であるという。「誤差、脱漏約30億ドル」を除く270億ドルがいわゆるホット・マネーであると見られている。

これは近い将来の人民元切り上げなどを見越して、投機的に中国に入ってきた「外資」である。これは03年よりも50%増加しているという。こういう資金は中国の金融機関を通じて不動産投資などに向かう。

05年1Qの住宅建設投資は1,769億元(214億元)と前年同期比24.4%もの増加である。不動産投資全体では2,324億元であり、26.7%増加である。まさに不動産バブルの真っ只中に中国経済はある。

まさに通貨危機前のタイやインドネシアと同じ現象が出てきている。中国政府としてはホット・マネーの過剰流入は避けたいところであるが、これを規制すると今度は株式市場を冷やしかねない。

とはいっても株式市場は既に十分(?)冷え切っている。前にも述べたとおり鉄鍋底といわれた「防衛線」の1,200ポイント(上海コンポジット指数)を最近は切りっぱなしという状態が続き、4月25日の大引けでは1157.97であった。

これは1999年5月20日の1147.91以来の6年ぶりに低水準であり、”新浪財経(sina.com)"は「兵敗如山倒(戦破れ、山が崩れる如し)」といささかオーバーな形容をしている。時々は政府のてこ入れで1200ポイントを回復するが長続きはしない。

経常収支の黒字も04年には687億ドルに達した。これは03年よりも約30%増である。

その結果中国の外貨準備は膨れ上がる一方で04年末には6,1000億ドルに達し、さらに05年3月末には6,590億ドルに達している。いやがうえにも中国政府に対し人民元切り上げがかかる。

人民元が切り上がれば、短期資金を中国に持ち込んでいる外国金融機関にとっては大もうけである。

果たして思惑通りいくであろうか。不動産バブルがはじければ中小銀行は当然破綻をきたすし、中国政府は面倒見切れないから放置することにもなりかねない。ホット・マネーが逃げ遅れることは大いにありうることである。

「歴史は繰り返す。1度目は悲劇として、2度目は喜劇として。」ー誰の言葉だったか?

(WSJ Internet版、05年4月25日参照)

 

58. 不動産市場の動向

58-1.不動産市場に警戒信号点滅(05年5月5日)

中国政府は景気の過熱を抑えるために貸し出し規制を行っており、特に地方の不動産物件について影響が現れていると05月5日のSCMP(サウス・チャイナ・モーニング・ポストのインターネット版)は報じている。

例えば青島では平均の不動産価格の上昇率が05年1Qは11.7%増(前Q比)ととなり、04年4Qの19.8%増(04年3Q比)に比べ低下してきているという。依然として2桁の価格上昇が続いているという解釈もできるが、流れが変化してきていることに注目すべきである。

大連においても不動産販売に行列ができなくなったといわれている。その他の都市でも需要が減ってきているという。

上海や北京においても同様な傾向が見られ、05年4月の不動産価格は3月に比べ9%低下しているという。特に今まで急騰を続けてきた中~高級住宅の価格が下がり傾向を見せ始めているようである。 ある不動産業者は今後数ヶ月でさらに5%ぐらいは下がると見ている。

また、上海では金融機関の貸付先として不動産業界向けが多いというのも不気味である。

上海の高級住宅は香港、台湾、東南アジアの華人が投機目的で競って買い進んだため、価格が異常に高騰した。これは1997年の東南アジアの通貨危機の前夜にタイ,インドネシア,マレーシアなどで起こったのとまったく同じ現象である。

華人資本家の最も得意とする投資分野は商業、金融、株式、不動産部門であるといわれているが、短期の利益を求めて不動産投資にはきわめて熱心である。

投機対象の物件は短期的に異常な高騰を示すことがありうるので特に要注意である。

 

58-2.中国政府、不動産価格の沈静化に努力(05年5月13日)

中国政府は不動産価格の異常な高騰に対する新たな対策を決め、近々実行に移すという方針が明らかにされた。(WSJ Internet版5月12日参照)

2004年の不動産価格は前年比14.4%上昇し、05年1Qには12.5%上昇した。特に上海では上昇が著しく、1平方メートル当たり1万元(1,200米ドル)になっている(それでも日本よりは可なり安いが)。

中国の一般的な市民には手が届かない範囲にまで高騰してしまったという政府の認識である。そのような中で、一般市民向けの低価格住宅供給は2004年には4.6%にまで下がり、2003年の6%よりもさらに悪化している。

中国政府が採ろうとしている対策は以下の通りである。特に上海では上海では取得後2年以内に転売される場合は特別の税金を課すことにより、投機的売買を抑制すると。また、不動産業者が土地取得を申請する場合には家屋の規模と価格を明らかにさせ、利益を3%以内に抑制する。

また、土地取得後1年以内に家屋を完成できなかった場合は罰金を課し、2年以内に完成できなかった場合は土地の使用権を剥奪する。

しかし、このような方法で本当に投機が防げるのかはなお問題を残している。以前に行った「土地の供給を絞る」というやり方はかえって不動産価格の騰貴を招いてしまった。

⇒.上海のマンション価格は下落に転じる(05年7月30日)

SCMP(South Chia Mourning Post, 05年7月30日付け、インターネット版)によれば、上海の不動産市場は弱気に転じている。

ある不動産業者によれば、価格は10-15%値下がりし、昨年4Q並みにしないと売れなくなってきてるという。それでも30%程度のマージンはえられるとのこと。

また、中古マンションの価格は昨年の今頃に比べ30%ほど値下がりしているということである。

 

59. ウエブ・サイトを全て政府登録に(05年6月8日)

中国政府は国内の全てのウエブ・サイトとブログを政府に登録するように通達を出した。期限は05年6月末までで、違反すると最高100万人民元(1ドル=8.28人民元)の罰金を科せられる。

政府は既に74%が登録済みであるといっている。

その狙いは明らかに言論統制にある。

 

60.-1 光大銀行を政府が救済(05年6月20日)

光大(China Everbgight)銀行は2004年は45.8億元(約600億円)の赤字を計上するなど経営不振が続いており、不良債権も265億元(約3,500億円)に達し、再建策が検討されていた。

国務院・中国銀行業監督管理委員会が対策を検討していたが「中央匯金公司」が中心になって光大銀行に100億元の資本注入を行い、再建を図ることが決定された。この「中央匯金公司」なるものは実態がよくわからないが、政府系の金融機関であることは間違いない。

この不良債権を光大グループなどで処理した後に、「中央匯金公司」が資本注入して再建を図るという段取りのようである。また、光大銀行は先にシンガポールで5億ドルを超える赤字で破綻した「中航油」のシンガポール法人にも可なりの債権を保有しているという。

光大銀行は1999年に光代集団が当時多額の不良債権を抱え苦戦していた「中国投資銀行」を買収して成立した企業である。

今回の光大銀行の「破綻」は支店の無分別な融資の結果であるとされているが、行員の不正も影響しているものと思われる。

また、同時に光大証券も来月(05年7月)には再建計画ができるといわれている。中国共産主義体制化にあって、民間資本の代表選手でもあった光大グループがここに来て大いに揺れている。

(新浪;sina.com,05年6月18日版、SCMP05年5月27日版、参照)

 

60-2.光大 銀行に再び政府資金投入か?(06年12月15日)

WSJによると中国政府は光大(China Everbgight)銀行に対し、25~30億ドルの政府資金を投入することを閣議決定したと関係者筋が語った。

中国政府は06年末までに、最低自己資本比率を8%まで引き上げるように各銀行に指示を出しているが光大銀行は2%程度までしかいきそうもないないということである。(05年6月にも救済を受けているー上記#60-1参照)

中国が2001年にWTOに加盟したときに、2006年12月11日までに、銀行の個別貸し出し(Retail banking)業務を外国銀行にも開放することを約束していた。その約束はIPOによって外国資本の中国銀行の株式取得が次々に進んでいることいよって一応は果たされた形になっている。

光大銀行も財務内容を改善して、07年の後半には香港で20~30億米ドル規模のIPOをおこなおうとしている。そのためには、今のうちに政府からの資本投入が必要だということである。

さきに、香港でおこなったICBC(中国商工銀行)のIPOが大成功をおさめ、それをキッカケにして、中国の株式市場が急に息を吹き返し、ついに12月14日の上海株式(コンポジット)では2249.11ポイントと史上最高水準にまで達した。

これによって、外国からは「潜在的不良債権の多さ」を指摘されていた中国の大手銀行の「不安」は払拭された形になり、中国政府としてもホットしたところでもある。この上光大銀行が上手く片付けば万々歳といったところであろう。

そのためにも政府としては光大銀行のIPOの成功には期待を寄せているはずである。しかし、光大銀行資本投入をすれば、他の中小銀行が次々に政府資金の投入を申請してくることを恐れているという。

光大銀行の昨年末の総資産は5,301億元(677億米ドル)であり、光大グループが株式の21.4%を保有している。

 

61. 外資の中国銀行株所有枠拡大の動き(05年6月23日)

SCMP(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト)のインターネット版(6月23日付け)の報道によれば、中国のCBRC(the China Banking Regulatory Commission=銀行業監督管理委員会)の政策・規制局のLi Fang副局長の談話として、外国資本の中国銀行への出資増加は地元銀行の競争力を増加させるので好ましいと語ったという。

現在のところ外国の投資家は合計で25%まで中国の銀行の株式を保有でき、個人としては20%が上限と定められている。これらは2004年の1月におのおの5%ずつ増枠されたものである。

これをさらに、増枠することによって、外国銀行の経営ノウハウや資金力をいっそう吸収できるという議論がCBRC内部で強まっているということである。

Li副局長は、現在中国の銀行が抱えている不良債権は25~30%(実態は50%はあるという見方も存在する)は12%程度にまで引き下げることができると述べている。そうなれば、外銀の中国進出が容易になるという考え方である。

果たして、そう簡単に不良債権が減るものなのであろうか?現在の不動産投資はかなり投機的な成果魚持っており、既に全国規模でなされた鉄鋼業の大設備投資も「国際競争力」というレベルではお話にならないような低い技術水準での拡大投資であった。

これらの大部分は現在「不良債権」というカテゴリーには入っていない。しかし、いずれはこれが顕在化することは目に見えている。

 

62. 中国金融局長、収賄容疑で逮捕(05年6月28日)

6月27日付けのSCMP(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト)のインターネット版の報道によれば、国際的にも著名な中国財政部の金融局長徐放鳴(Xu Fangming)氏が汚職容疑で逮捕された。

容疑の内容は具体的にはまだ明らかにされていないが、数百万元のワイロを受け取ったとされる。

消息通の話しでは逮捕のきっかけは農業開発銀行の一連のスキャンダルの捜査の中で徐局長の名前が浮かんだのではないかとはいわれている。先週、同行のHu Chushou 前副頭取が600万元の収賄容疑で逮捕された。

Hu氏と前任のYu Dalu氏は1996年~1999年の間に"Beijin Mei He Electronics"という会社に9億2000万元(約120億円)の融資をおこなった際にワイロを受け取ったという容疑で逮捕され取調べを受けている。

徐金融局長は中国開発銀行や輸出入銀行など多くの政策銀行の幹部スタッフの成績査定に基づく給与の決定など強大な実質的権限を有していたという。

徐局長は上海大学で経済学と金融論を学び、官界入りをした。大学の同期生には中国光大グループの前会長で2002年に汚職容疑で逮捕され現在15年の刑で服役中のZhu Xiaohuaがいるという。

資本不足の中国では金融関係の不正・汚職は根が深く、広範囲に及んでいるものと推測される。

 

63. 中国はついに元の対米ドル固定を取りやめ(05年7月21日)

WSJの7月21日付インターネット版によれば、中国銀行はホーム・ページで94年から続けてきた通貨元の対米ドル固定相場(1元=8.28人民元)を廃止し、通貨バスケット(複数の通貨の平均)制度を取り入れ、変動幅を「管理しながら広げる」という方法で、一種のフロート制(変動相場制度)に切り替えることにしたという。

当面は1ドル=8.11人民元ということで2%程度の米ドルに対する切り上げに踏み切ったようである。その影響は7月21日の夕刻までには出ていない。

今後の運用としては中国人民銀行(中央銀行)がその日の為替取引終了後に、翌日の変動幅を決めて発表するという方式をとり、その幅は対米ドルで0.3%以内を念頭においているという。米ドル以外の通貨についてはもう少し幅を広げる方針のようである。

ただし、変動幅の管理があまりにきつすぎると諸外国から反発を買う恐れがあることはいうまでもない。こういう方式はタイなども取り入れている制度で、限りなく固定相場制度に近いフロート制ともいうべきものであろう。

米国は中国政府に対し、当面少なくとも10%くらいは切り上げるべきだと主張していたが、今回ようやくその方向に向かって動き出したといえよう。

中国政府は現在7千億ドルの外貨準備があるといわれ、人民元が投機筋の動きにそう簡単には振り回されることはない。2%の切り上げでまず様子をみるというのは穏当な策といえるかもしれない。

 

64. 元中国銀行副会長劉金宝に執行猶予付き死刑判決(05年8月16日)

元中国銀行副会長で香港中国銀行頭取であった劉金宝(Liu Jinbao)氏は汚職容疑で吉林省長春市中級人民法院(高裁)で裁判を受けていたが2年間の執行猶予付き死刑判決を受けた。また全財産を没収され、政治的権利の終身剥奪の判決を8月12日に受けた。

2年間の執行猶予付き死刑判決というのは、執行猶予期間が終わったら、終身刑に切り替えられるものであり、実質終身刑と変わらない。

劉金宝は17万3000ドルのワイロを受け取り、170万ドルの公金横領を他の3名の共犯者とともにおこなった罪に問われていた。

この程度の犯罪で死刑(実質終身刑)とは大変厳しい判決であるという印象を受けるが、中国の金融業界の相次ぐ不祥事を減らすために「一罰百戒」を狙ったものと見ることができよう。

また、近く株式公開をおこなう同行にとって、きちんとしたマネージメントを今後おこなうという宣言を狙いとした判決であるとも受け止められている。

同種の犯罪に対しては12年の禁固刑がほぼ前例になっていたようである。彼の場合、背後に何か特別の事情があったのかもわからない。

劉金宝は香港中国銀行頭取時代に、New Nongkai Global Investmentという会社に2億7000万ドルの融資を行い、そのうち9,500万ドルがコゲ付いた。その責任を問われて2003年5月に解任され、その後の取調べで不正が発覚し、裁判を受けていた。

 

65. 7,000箇所の炭鉱を閉鎖(05年9月1日)

中国政府は度重なる炭鉱の事故による犠牲者の急増を防止するため、安全基準も満たしていない炭鉱約7,000箇所の一時的閉鎖を含む閉鎖措置を決めた。

昨年は炭鉱における火災などにより6,000人近い死者を出し、05年も1~6月の実績で既に約2,700人が犠牲になっており、その後もさらに700人ほど増えているといわれている。

しかし、実態はこれらの数字をはるかに上回っているともいわれている。実態を報告すれば、操業停止や罰金を課せられるため、地方の役人にワイロを贈ってまでゴマ化しをおこなっている経営者も少なくないという。

中国炭鉱安全管理局では全国で大小あわせて24,000箇所もある炭鉱の安全総点検をおこなっているが、既に1,324箇所の炭鉱閉鎖を決め、さらに5,700箇所については年末まで操業を禁止する措置をとったという。その間、安全対策が適正に採られなければ、恒久閉鎖となる。

事故発生の最大の原因としては、炭鉱内の空気循環設備が悪く、かつ防火対策が採られていないためと見られている。

 

66.石油消費抑制のために自動車税の引き上げを検討(05年9月29日)

WSJ(9月27日付け、インターネット版)の報じるところによれば、中国政府は石油消費を抑制鶴政策の一環として大型車種について自動車取得税の大幅な引き上げを検討しているという。

現在は自動車購入時の消費税は排気量1,000CC以下のものは3%、1,000~2,200ccは5%、2,200ccを超えるものには8%という税がかけられている。

これでは特に大型車に対する需要抑制効果があまり期待できないとして、2,200ccと4,000cc以上と大型車種の分類を2つに分け、この大型車に対して、率は明らかにしていないが20%程度の税を新たに上乗せするkとを検討しているという。

今年に入ってからは中国の自動車販売はスローダウンしてきているが、2000年には209万台だったものが、2004年には507万台と爆発的に需要が伸びた。こういう増加傾向は長期的のも続くと見られ、世界一の自動車販売国になるのもさほど遠い未来ではないと予想される。

中国人はステイタス・シンボルとしても大型車を好む人が多く、大型車には高率の税をかけ需要抑制をすべきであるという声が政府内場うでも強まっているという。

最近中国では貧富の格差が急激に拡大し、「勝ち組」の見せびらかし行為が目に余り、それが貧困層の不満を誘発しており、各地で社会的不満を原因とする暴動が多発したり、また警察官への襲撃事件も多発しているという(9月28日、BBC).

月餅も1個で1,000元もする超豪華品が贈答用に製造販売されているという。

こういう風潮に対し、中国政府は危機感を感じ、抑制政策に乗り出すことは間違いない。貧富の格差の拡大は、汚職の急増とともに中国共産党支配を根底から揺るがしかねない。

 

67. フォルクスワーゲンが赤字転落の中国子会社の再建策(05年10月17日)

フォルクスワーゲン(VWと略称)は中国でナンバー・ワンのシェアを占めてきたが、後続のホンダ、トヨタ、日産などの各社に追い上げられ、シェアも下がると同時に、価格競争に巻き込まれ収益も悪化してきた。

05年上期にはついに2,300万ユーロ(約32億円)の赤字に転落したという。昨年の同時期には2億5,100万ユーロ(約350億円)の利益を上げていた。 (1ユーロ≒138円)

シェアも数年前までは50%を占めていたが05年8月には17%まで落ち込んだ。

フォルクスワーゲンの中国の合弁会社は「上海フォルクスワーゲン」と「FAWーフォルクスワーゲン」の2社である。どちらム、大幅なコスト削減をおこなう必要に迫られていると危機感をつのらせ「オリンピック・プログラム」なる再建策を策定したという。

コスト削減の方法のひとつに「集中購買」をあげている。また、材料・部品の中国化も重要項目として取り上げているという。さらに、決め手としては2009年までには10~12の新しいモデルを投入する予定であるという。

中国ではフォルクスワーゲンは大衆車としてのイメージが定着しており、タクシーなどに大量に使われていた。中国人には「ミセビラカシ効果」のある車種が選好される傾向にあるため、従来モデルでは今後の競争に勝ち抜けないことは明らかである。

⇒投資計画縮小(05年10月19日)

また中国でのVWの生産能力は年産90万台であるが、2年前に2008年には160万台にする計画であったが、この増産計画は当分棚上げにすることにした。

(FT 05年10月18日、 Internet版参照)

 

68. ロンド金属取引所で中国政府の「銅ディーラー」が大量の売り残を残して失踪?(05年11月14日)

ロンドン金属取引所(London Metal Exchange=LME)の中国政府銅トレーダーの劉其兵(Liu Qibing、37歳)という人物が、ここ数週間、姿をみせず行方不明になっているという。

劉氏は中国の国家物資備蓄局(SRB=State Reserve Bureau)で働いており、銅地金10万~20万トンのショート・ポジション(ネットの売り残)を残したまま数週間連絡を絶っており、中国のSRBも05年12月末までの納期にそれだけの量をデリバリーできないであろうとみられている。

劉氏はSRBの事務所にも姿を現していないという。SRBは劉などという職員はいないといっており、関係者の疑惑をいっそう深めている。 劉氏は40歳代の年齢で、この道10年のベテランであり、過去には「良好な実績」をあげていたという。

また、SRBの「金属管理センター」役員の王会民(Wang Huimin)氏は劉という人物について知らないし、中国政府は「銅の売り」はLMEにおいてやったなどという話しは聞いていないといっているという。

王氏は「中国は上海先物取引所で銅の先物取引を主にCofco Futures社を使ってやっている。中国には銅の在庫はふんだんにあり、いつでも銅の国内市況を沈静化できる」とも語った。

しかし、LMEの関係者のなかには中国の当局者がそういう言い方をするのは「銅相場の引き下げを狙った」ゼスチャーではないかと見る向きもある。.銅の相場が下がればそれだけ、中国側の損失は少なくてすむからである。

LMEの銅のストックは65,350トンしかなく、相場は上がる一方であり、中国側も対応に苦慮していると見られている。05年11月14日(月)のLMEの銅価格は「中国問題]も影響してトン当たり4,132ドルという史上最高の価格をつけている。 (11月17日には4,183ドル)これは半年前と比べ40%の高騰である。

中国政府の銅の戦略的備蓄の推定値はは10万~50万トンとバラツキが大きく、実際は20万~25万トン位であろうというのが大方の見方である。

この問題がどういう結末を見るのか注目に値する。というのは中国はシンガポールで中航油という国営石油販売会社が先物取引で失敗して、大きな損失を出し、債権者に多大の損害をかけたばかりだからである。(上の#44参照)

銅の先物取引では1996年に住友商事が26億ドルといわれる大損を出した世界記録がある。

今回は中国側の損失はトン当たり470~700ドルと見られ、最大1億4000万ドル(11月19日、sina.com)と予想されている。

(WSJおよびFTのインターネット版参照)

⇒その後の動向(05年11月23日)

SCMP(South China Morning Post)がその後に伝えるところによれば、劉其兵(Liu Qibing)の銅のショート・ポジション(売り残)は3万トンで価格はトン当たり3,300ドルであるということである。現在の相場は約4,200ドルであるから、損失は約1億2千万ドルという計算になる。

中国側は上海市場でスポット売りをおこなって価格を引き沈静化させようとしている。また、中国政府はこの劉其兵の取引は上司の監督を受けずに、個人プレーでおこなったものであるという立場を崩していないという。

また国家物資備蓄局は中国政府の証券監督管理委員会の監督外の組織であるとして、中国政府の直接の責任外の組織の起こした事件であるかのごとき言い方がされ始めている。

劉其兵は1990年に武漢大学を卒業し、国家物資備蓄局に入り、1995年にロンドンで半年間のトレーニングを受けた後に職務に復帰し、銅の取り引きで、的確な予想を行い膨大な利益を同局にもたらし、輸出入課長に昇進した。

 

⇒中国政府は銅取引による損失を認める(06年1月25日)

国家物資備蓄局(SRB=State Reserve Bureau)はウエブ・サイトで今回の銅先物取引で多額の損失を蒙ったことを認め(金額は明らかにせず)、今後の取引については慎重を期し、管理を徹底するよう自ら戒めているという。(WSJ, インターネット版、06年1月24日付け)

 

69. ハルピン市で4日間以上の断水騒動(05年11月24日)⇒48-2に移動

 

70.中国のGDPは2004年には1兆6,500億ドル(05年12月13日)

中国国家統計局が最近おこなった全国調査では、従来公表してきた数字よりも3,000億ドルも多い1兆6,500億ドル(2004年)であったことが判明したという。これによれば国民1人当たりGDPが約1,300ドルとなる。

統計局は12月20日までには、過去のデータの修正も含め詳しい数字を発表したいとしている。

中国の国民所得統計はもともとが資本主義国の統計とは成り立ちが違う(農産品や工業製品の統計が中心で、サービス部門の統計は過去あまりとられていなかった)ため、厳密な比較の対象とはなりにくかったが、今回どういう数字が出てくるのか期待がもたれるところである。

今までの数字では2004年のGDPは13兆6500億元であり、そのうちサービス部門は4兆3,400億元とGDPの29%を占めていた。この比率自体が低すぎるような感じがする。

 

71.広東省、韶関市カドミニウム汚染、またも飲料水危機(05年12月21日)⇒48-3に移動

 

72. 中国の2005年の石油消費は微減(-0.3%)であった?(06年1月17日)

1月17日付のWSJ(Internet版)によれば2005年の中国は9.8%の経済成長(実質国内総生産)を遂げたにもかかわらず、石油の見掛け消費(生産+輸入―輸出)は微減(-0.3%)の640万バーレル/日となったという数字が発表されて、エネルギー関係者を困惑させているという。

中国政府の発表によれば、原油の輸入は05年は+1.5%、ディーゼル油の輸入は-34%であった(国内生産についての数字はこの記事には書かれていない)。国家開発改革委員会はこの件についてコメントを避けている。

ドイツ銀行の石油専門家のデヴィッド・ハード(Devid Hurd)氏は11月までのトレンドで行けば3%の消費増になると思っていたが、12月に急に数字が落ちたとしか思えないと首をかしげているという。

ただし、2004年は15%以上の消費増であった。見方によっては04年で輸入した石油の在庫を05年になって取り崩したとも考えられる。

また、中国の「エネルギー消費」そのものは増えているが、石炭や天然ガスへの転換や水力発電などの増加によって石油そのもの消費は抑制されたという見方も可能であろう。

中国の石油消費は世界の石油市場に与える影響が大きいだけに、さらに詳細な数字の発表が待たれるところである。(別の記事で中国石油(PetroChina)の原油生産は2004年の8,292億バーレルから05年には8,420億バーレルへと1.5%増加したと書かれている)

ちなみにIEA(国際エネルギー連盟)は2006年の中国の石油消費は6%程度増加すると予測している。

 

73. 温家寶首相、最近の地方の騒乱は役人の貪欲が原因(06年1月22日)

温家寶首相は最近頻発している村レベルでの騒乱は、地方の役人が農民の土地を十分名補償もしないで勝手に取り上げることに原因があると指摘した。

土地問題だけでなく、汚職や公害や賃金不払いなどに対する集団的な抗議行動が中国では急増している。あまり、公には報道はされていないが、インターネットの普及などで外部に漏れるケースも出てきている。

公安部(警察)が1月19日(木)に明らかにしたところによれば2005年の国民の集団的抗議行動は87,000件に達しこれは04年に比べ6.6%増であり、そのうち「社会秩序を乱す」行動は13%増(字数は明かさず)であり、「政府(官憲)の干渉を必要とした」騒乱は19%増加した

これは最近の中国の高度成長の恩恵に浴せなかった農民、地方からの出稼ぎ労働者、破綻した国営企業の労働者などの不満が爆発した結果である。

裁判所に訴え出ても満足な解決はなかなか得られず、政府や共産党への抗議はきびしく抑圧される中で、一般国民の不満は直接的抗議行動という形で現れる。

こういう集団的抗議行動は1994年には10,000件であった。11年間で8.7倍に増加した。

今年に入ってから1月14日に広東省の中山市の近くの三角(Sanjiao)鎮のPANLONG(蟠龍)村で、土地の不当収用(騙し取られた)に抗議した農民が警察官と衝突事件を起こしており、13歳の少女を含む2名の死者が出ていると伝えられている。

また、05年12月6日には広東省、汕尾(Shanwei)市付近のの東州(Dongzhou)村で風力発電の用地買収をめぐって村民が騒乱を起こし、警察部隊が発砲し少なくとも4名(村人によれば20~50名、多数が行方不明)を出している。

 

74.河川に面した多数の化学工場群が水質汚染への脅威となっている(06年1月25日)

周生賢(Zhou Shengxian)環境保護総局長は昨年末の「松花江汚染」問題の反省として次のように述べた。

「現在中国には21,000の化学工場があり、そのうち50%以上が揚子江と黄河に面して建てられている。また、多くの工場が環境基準を満たさない状態で操業を続けている。このまま放置すれば「松花江事件」の再発は十分考えられる。

少なくとも100箇所以上の工場が危険な状態にある。現在、状況確認の調査をおこなっているが、旧正月(1月29日)の連休明家には結果を公表する。」

以上のように、水質汚染問題の深刻さを改めて強調している。中国の水が「危機的状況にある」ことは十分認識されており、中国では改革開放以降、ペット・ボトルの飲料水の消費量が爆発的に増えている。

先の「松花江汚染」事件の時もハルピンのスーパー・マーケットの映像が写し出されたが、山積みされたペット・ボトルをみて普段から飲み水に大量に使用されていることを改めて認識させられた。

中国は工場廃水を未処理のまま工場に垂れ流しているところがまだ相当あり、工業用水の回収率もきわめて低いといわれている。中国経済のネックはエネルギーだといわれていたが、水のほうがより深刻かもしれない。

(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、06年1月25日、参照)

 

75.中国の自動車

75-1.中国の05年の自動車輸出17万2800台に(06年2月16日)

WSJ(2月15日付け、インターネット版)の報道によれば、2005年の中国の自動車輸出は172,800台、うち乗用車は31,000台に達したという。一方輸入車は161,600台であり、輸出台数がわずかながら輸入を上回った。

最もよく売れた車種の1つのチェリー(Cherry)は4ドア・コンパクト・カーで主力で18,000台の輸出実績をあげた。価格は1台あたり7,000~8000ドルの間だという。チェリー・オートモビル社は2008年までには30~40万台の輸出をおこないたいとしている。

日系ではホンダが広東工場で製造したコンパクト・カーのジャズ(Jazz)を9700台主にヨーロッパ向けに輸出したといわれ、今年は輸出台数を26,000台にまで増やす意向だという。

地元企業の乗用車の輸出先としては最終目標は米国とEUが考えられているが、現在のところは品質面のハードルをクリアーできていない。将来、品質が改善され、中国からの輸出が増えれば、新たな貿易摩擦の火種になることは間違いない。そういう事態は後10年以内にやってくるであろう。

現在のところは輸出台数はトラックが多く、シリアなど中近東向けが多かった。

 

75-2.中国、自動車部品の関税引き上げ延期(06年8月4日)

中国は一部の高級自動車部品の輸入関税を30%(標準品13~17%)課すなどして、欧米から批判を受けていたが、さらに国内の自動車部品産業の育成という目的で高い関税をかけようとしていた。

EUと米国は06年3月にこの中国の高関税を不服としてWTOに提訴していた。

これに対し中国は06年7月に関税引き上げ措置を延期したが、今回さらに08年7月1日まで関税の更なる引き上げをおこなわないと発表した。

高級自動車部品の高関税の影響を強く受けるのはドイツのメルセデス・ベンツやBMWであるという。そのため特にEUは中国の自動車部品の高関税については強い抵抗感を示してきた。

最近、中国では自動車および部品の輸出が一大輸出産業に成長しつつあり、この部門の貿易収支は大幅に黒字となっている。

06年上期の輸入(自動車及ぶ部品等、HS-XVII-87)は輸出105億1291万ドル、輸入79億7451万ドルで、このアイテムだけでも25億3840万ドルの黒字をたったの半年間で稼いでいることになる。

これが例えば2004年の数字を見ると輸出が118億2466万ドルに対し、輸入が131億268万ドルと、自動車関連の貿易収支は12億7802万ドル(FOBとCIFとの差を考えれば収支はほぼトントン)とわずかながら赤字であった。

しかし、ここ2年足らずのうちに自動車部品のない成果が一挙に進んだ。というより、日本の自動車部品産業の大量の工場進出があったと見るべきである。そのため、電気製品はもとより、自動車産業も「輸出産業」として中国は世界の競争市場に乗り出してきたのである。

このような客観情勢の中で、中国政府の「自己中心主義的」ともいえる貿易政策と産業保護政策に批判が出てくるのは当然といわなければならない。

中国に限らず、「ジコチュウ」は米国でもEUでも日本でも共通しているが、このようにあからさまに貿易統計面で数字が明らかになってしまってはどうしようもない。中国は自動車部品の関税(標準ひんで13~17%)の引き下げも検討すべきであろう。

 

76. 2006年の中国経済

76-1.06年3月の貿易黒字は1120億ドルに達する(06年4月12日)

06年3月の中国の貿易黒字は111.9億ドルと史上2番目の額となった。過去の最高は05年10月の120.2億ドルである。輸出は780.5億ドルで前年同月比28.2%増、一方輸入は668.6億ドルで21.3%増である。

どうしてこういうことにないなったかといえば、組立て産業主体の中国に、部品産業が増えて(日本と台湾・韓国企業に大いに責任がある)、輸出は増えるが東南アジアなどからの部品の輸入をあまり増やす必要がない(物によっては逆に部品の輸出も増やす)という構造変化ができてしまった。

いっぽう、中国は自国産業保護のために自動車部品などに20%以上もの高率関税をかけて欧米と貿易摩擦を引き起こすなど余計な紛争の種を作っている。日本からのステンレス鋼板にダンピング課税をかけるなど的外れとしかいいようにない保護政策を採り続けているのである。

しかし、ある意味では、中国政府にとっては「必要な保護政策」なのかもしれない。輸出を増やして外貨を稼いでいるが、その主役は最新の設備と技術を持ち込んできた外資系企業なのである。

従来からある中国企業は鉄鋼業に見られるごとく世界的レベルでは3流の技術と設備で「量的な拡大」に狂奔した結果、国際競争力を持っていない企業が少なくない。しかし、中国政府が保護する必要があるのはあくまで「国内企業」なのである。

そこで、大きな矛盾が生じてしまう。国内企業の保護を止めて、どんどん自由化すれば外貨の増加は防げるのではないか?しかし、そうすると政府は国内の企業・資本家から攻撃される。

輸出の伸び率が輸入の伸び率を大きく上回る構造は2005年のはじめ頃から定着し、中国の貿易黒字は拡大の一途をたどる。このままいけば中国はここ数ヶ月のうちに世界最大の外貨保有国になることは間違いない。

これが中国にとってメデタイことかどうかは話しは別である。中国はこの外貨の処理に困ることになるであろう。

中国政府がまずやるべきことは通貨「人民元」の切り上げである。現在ようやく1ドル=8元まで来たが、香港なみに7.7元程度にすべきである。それよりも為替規制をもっと緩めるべきである。

そうすると、今の為替レベルでも繊維産業は半分程度赤字であるといわれているが、ばたばた倒産する企業が増えるかもしれない。

輸出価格は上昇するが輸出量は減ることになる可能性が高い。量が減れば、その分もっと賃金が安いベトナムやカンボジアやインドネシアの繊維の輸出が増えるであろう。

そうなると、中国国内の繊維業者は困ることになるが、それはそれでやむをえないであろう。中国だけが全ての国内産業を保護するような権利はないはずである。なぜなら「世界一の外貨保有国」になったのだから。

 

76-2. 06年1Qの成長率は10.2%(06年4月16日)

胡錦濤国家主席は06年1Qの中国の経済成長率は前年同期比10.2%に達したと語った。しかし、中国政府としてはどうにもとまらない「高成長」に若干の危惧の念を抱いているという。

それは、言うまでもなく「反動」が怖いからである。中国の高度成長が「軟着陸」に失敗すれば、想像を絶する社会的混乱を招き、中国共産党の一党独裁体制にひびが入りかねないからである。

だいたい、1人あたりのGDPが年間1,000ドルを越えると、1党独裁体制の維持が困難になるというのが、世界的な通例だからである。中国も、どうやらその段階を迎えつつあるようである。

高度成長を続けているからといって、中国経済が「健全」であるとは限らないというのが、私がいままで縷々述べてきたことである。

高度成長はまず、米国への過度の輸出増加によってもたらされた。その輸出を支える設備投資が海外からどっとやってきた。日本からも2005年には65億ドルもの投資があったといわれている。

この数字が正しいとすれば、日本企業・日本人が、われもわれもと、「バスに乗り遅れるな」という日本帝国主義時代の「主体性欠如」の行動様式があらたまっていない証左といえよう。いずれ痛い目に会う企業が続出する危険をはらんでいる。

外国企業ばかりか、中国の国内企業も設備投資や不動産投資に狂奔している。それが、バブル的ともいえる10%成長の実態である。

資本不足の中国企業は銀行から資金を借りまくるという行動に出ている。06年1Qの銀行の新たな貸し出し額は1兆2600億元(約18兆6000億円)であると中央銀行は発表している。これは2006年全体の貸し出し増加目標額の半分以上になっているとのことである。

問題は、これらの投資がそれぞれ「適正な利潤」を生む投資なのかどうかということに尽きる。

政府としても、この動きにブレーキをかけたいことは山々であるが、ブレーキをかけると一気に経済が失速する恐れがある。そうなると今までの巨額の融資のかなりの部分が「不良債権」として表面化する恐れがあるので、うかつな手段は取れないのである。

2006年は世界経済が押しなべて好調だなどといっているとトンデモないことになりかねない。とりあえずは米国の経済動向をジット見守ると何かがわかってくるかもしれない。住宅投資がどうなるか、個人消費がどうなるかとりあえず要注目である。

日本の設備投資や個人消費や雇用動向の数字だけ眺めていて、やれ「構造改革」の成果だの、「自立的な回復軌道に乗った」などと一喜一憂してもしょうがない。それは世界経済の動向、特に米国と中国の動きに密接に関連したものだからである。

 

76-3.銀行の貸し出し急増で警戒感強まる(06年5月16日)

06年4月の中国の銀行貸出額は予想を上回る(中央銀行の年間予想は16%)ハイペースで進んでいることがわかり、政府や中央銀行に「警戒感」が強まっているとSCMP(香港の英字紙、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト)などは報じている。

SCMPによれば06年4月のM2は前年同月比18.8%も伸びており、3月の18.8%に引き続き高水準で推移している。これは多少の金利引き上げでは歯止めがかからない水準であるという認識が経済政策担当者の間に広まっているという。

国家情報センターの経済予測部部の次長であるZhu Baoling 氏はあるフォーラムで「金利引き上げだけでなく,預金準備率の引き上げや、柔軟な為替政策など総合的な対策が必要となるであろうと」と語った。

06年3月末のM2の額は31.4兆元に達し、中央銀行の目標値を11ヶ月連続で上回った。中号銀行は金利を4月27日から0.27%引き上げ、5.85%とした(預金金利は2.25%のまま)が、投資の勢いは一向に衰えず、06年1Qには30%も増加した。

06年1-4月の貸出額は1.58兆元に達し、年間目標額である2.5兆元の63%に既に達している。

中国経済の過熱感は消費の急増にも現れている。06年4月の小売売り上げは5,775億元に達し、前年同月比13.6%となった。これは3月の13.5%を上回るハイペースである。

06年1-4月では小売売上高は2兆4,200億元に達し、前年同期の13%像である。都市部の消費は14.1%増、農村部の消費は12.5%と都市部の伸びが高いが、農村部もかなり高いことを示している。

これは課税限度額の引き下げとともに、農業に対する免税措置が大きく影響しているものと見られる。中国政府は個人消費の拡大を促進する政策をとってきた。

このような「過熱感」の行き過ぎに対し、中国共産党内部でかなり危機感が強まっているように見受けられる。例えば、党幹部の養成学校の中央党校研究室副主任の周天勇博士も「高度成長の行き過ぎは経済構造を歪め、経済危機をもたらす危険が大きい」と 語っている。(sina.com/ 05年5月15日付け)

 

76-4. 中国の06年上期の原油輸入は15.6%増(06年7月13日)

WSJ(7月13日、インターネット版)によれば中国経済は06年上期は10.3%の成長となったのではなかと推測されているが、エネルギー消費も増加を続けており、上期の原油輸入は前年同期比で15.6%増となった。05年上期の伸びは3.9%であったというからかなりの増加である。

これは、自動車の普及によるものと、まずは考えられるが、実際に最も大きく影響しているのが「原油生炊きの火力発電」のせいであると言う。また、この15.6%増というのは「輸入」の数字であり、「実消費」の数字ではないことにも留意する必要がある。

6月の輸入は300万バーレル弱/日であり、それは中国の消費量の約40%に相当する。IEAの予測では今年の中国の石油消費は日量700万バーレルと推定され、05年よりも6.1%増となると見られている。これよりも増えそうだという見方も存在する。

中国の輸入増加は当然国際石油価格に影響を与え、現状1バーレル70ドル台というレベルは当面続く可能性がある。

中国政府は国内の石油製品価格を規制しており、中国の製造業者はそのメリットを受け、低いエネルギーコストの恩恵を受け、輸出増加を続けていくことになる。これは「元安」という為替ファクターとは別の「輸出補助」効果をもたらすものであることは間違いない。

米国やECの製造業に対してだけでなく、発展途上国の工業製品の輸出にとってもかなりの痛手となる。

 

76-5.中国の06年2Qの成長率は11.3%、輸出と投資で伸びる(06年7月19日)

中国経済は過熱的成長が続いており、06年2Q(4~6月)の実質経済成長率が11.3%(1Qは10.3%)とさらに加速していることが明らかになった。

特に好調なのは固定資本形成で前年同期比約30%の伸びとなった。内容は明らかにされていないが、工場や機械設備もさることながら、全国的に展開されている高層建築のラッシュに負うところが大きいと見られる。

中国では地方ごとの競争意識が強く、上海や北京に続けとばかり各地の主要都市で、豪華高層ビルが競って建設されている。こういう状態になると途中で止められず、「行き着くところまで行く」しか仕方がない。

この資金をファイナンスしている銀行は上期で既に年間貸し出し予定額の87%を貸してしまったというからすさまじいものである。6月のM2の伸びは前年同月比18.2%であり、やや落ち着いて きたと見られている。これは政府の引き締め政策が多少効果をもたらしているということである。

今のところは各銀行とも見かけ上は好業績である。通貨危機前の東南アジアの金融機関と同じである。

輸出は06年上期(1~6月)で2兆7000億元で昨年比24.7%の伸びとなった。輸出の伸びは05年までの30%台の伸びから見るとやや落ちているが、依然高水準であることには変わりはない。その割りに輸入の伸び率が低いから貿易収支の黒字は拡大を続けている。

6月の貿易収支の黒字は145億ドルで5月の130億ドルを上回っている。6月末の外貨準備は9,411億ドルにまで達した。

工業生産は6月だけで前年同月比19.7%の7,818億元(約11兆4,500億円)に達したと国家統計局は発表している。伸びが高いのは通信機器やパソコンやその他の電子機器といった電気機械類で前年同期比25.7%の伸びとなった。

繊維産業は15.4%、非鉄金属精錬は16.3%、鉄鋼産業は25.8%(2億2200万トン)、自動車生産は27.8%(389万台)、うち乗用車は53.2%(201万台)といった高い伸びを記録した。

鉄鋼の伸びが高いのは、建設需要がきわめて旺盛であることを物語っている。2億2200万トンというのは粗鋼生産の数字であると思われるが、年率4億4000万トンというのはあまりに過大である。それを非効率な小型高炉などをフル稼働させて作っていると思うと空恐ろしさを感じる。

問題は、これが何時まで続くかである。10年は続くとか、北京オリンピックが開催される2008年までは大丈夫だとか言う説があるが、終わりは意外に早くやってくる可能性がある。

1997-8年の東南アジアで起こった通貨・経済危機の基礎となった不動産バブル現象が今中国で繰り返されているのである。高層ビルのテナントや買い手がつかなくなったときが節目である。

原油高の影響が世界的に拡大しているが、先進国(米国や西欧や日本)の消費が落ちて、中国製品の輸出がさらに鈍化していくことも目に見えている。

これらの2つの条件が重なるとひどいことになる。日本ももちろん深刻な打撃を受ける。

 

76-6. 中国政府が経済過熱対策を打ち出す(06年7月25日)

中国政府はバブル的な成長が一向におさまらない経済成長に多少のブレーキをかけるために具体的な対策をうちがした。

その①;中央銀行(中国人民銀行)が7月21日(金)に預金準備率を0.5%引き上げ、大手国営銀行と連合証券銀行(Joint Stock Bank)については8.5%とし、その他の中小銀行や信用協同組合については9.0%とするように指示した。これは8月15日以降に実施される。

これに先立ち、6月にも同様な措置を行っている。その結果、「実効金利」は06年4月の5.58%から5.85%に0.27%あがったと言われる。もちろんこの程度の金利上昇であればほとんど引き締め効果は見られないであろう。

輸出超過による外貨の大量流入や外国資本の流入による通貨の供給増に対する対策も行われなければならない。

その②;外国資本や外国人が不動産に投資することを制限する。 実際に居住する目的で買うほかは認められないという。また、不動産売買にともなうキャピタル・ゲインについては06年8月1日より20%課税する。

これが厳格に実施されれば、不動産市場にはかなりの影響を与える可能性がある。中国の不動産はかなり、投機目的で変われており、買い手は東南アジアの華人が多いとみられる。

また、シンガポールなどの国営企業が不動産投資をおこなっている例もある。

しかし、今週の規制はどこかに「抜け道」があるものである。東南アジアの華人は中国に親類縁者がいるケースも多く、彼らに名義上の「買い手」になってもあるとかである。

その③;輸出レベートを削減する。これは今年になって貿易収支の黒字が急増し、06年1~6月で615億ドルに達したといわれている。これは前年同期比で55%増という急激な伸びである。その理由は輸出の伸びに比べ、輸入の伸びが低くなっているためである。

これは外貨が過剰に国内に流入し手来ることも意味し、また必要以上の外貨の「積み上がり」は、人民元の切り上げ要請や、貿易赤字国の米国のいっそうの反発を買うなどロクなことはない。

中国の商務部(商業省)は、従来輸出に与えられて来た、リベート(付加価値税の還付)を削減するというものである。対象は資源やエネルギー多消費型の産業で特に鉄鋼業が槍玉に上がっている。鉄鋼業は13%の還付から8%「へと大きく削減される。

これはほぼ4.5%のコスト増に相当する効果があり、中国の鉄鋼企業の安値輸出がいっそう困難になる。これは日本、韓国、東南アジア、米国などの鉄鋼企業にとっては朗報である。

また、輸出量が多いことで先進各国と摩擦を起こしている繊維製品について何らかの削減措置がおこなわれるという。

 

76-7.上海の不動産価格急落(06年8月1日)

SCMP(South China Morning Post=香港の英字新聞)のインターネット版(8月1日付け)によれば、上海の不動産価格は先週1週間で10%以上下落した。

これは中国政府が不動産バブルを抑制するために最近打ち出した政策によるものであると考えられる。特に不動産売買などによるキャピタル・ゲインに対し8月1日より20%課税するということが最も利いたようである。

不動産の売り手と買い手は「価格を登録」する義務も課せられている。これはキャピタル・ゲイン税を課す上では当然の措置であるが、実際の数字を隠したがる風習のある中国人社会においてはかなり効き目のある制度であろう。

今回の措置とは別に上海では不動産建設が既に過剰状態におちいり、06年上期には価格が前年同期比で5.2%下落したとのことである。上海市の06年上期の固定資本形成は前年同期比プラス0.4%と05年上期の15.5%増加に比べかなり沈静化してきている。

しかし、問題は上海以外の地域であり、ほとんどの主要都市で今なお不動投資が旺盛である。全国の主要70都市の平均で06年6月の住宅価格は平均で年間5.8%上昇した。しかし,深圳(シンセン)では14.6%、北京では11.2%上昇している。

上海は中国の中でも最も先行しており、いち早く「過剰状態」に到達したが、他の主要都市では今が盛りである。しかし、中国全土で「不動産投資狂躁曲」にいっせいにブレーキが掛かる時が必ずやって来る。それは案外近いかもしれない。

中国に「猫も杓子も」という言い方があるかどうかは知らないが、「いっせいに」何かが起こるのが中国である。

 

76-8.たまる一方の中国の貿易黒字(06年8月10日)

中国の貿易黒字は06年7月は146億ドルに達し、過去の最高を記録した6月の145億ドルを上回った。7月の輸出は前年同月比22.6%の803.4億ドルに達し、輸入は19.7%増の67.2億ドルであった。

このままいけば2006年の中国の貿易収支の黒字は1,500億ドルを超えるもしれない。2005年は1,020億ドルでそれ以前は200~300億ドル程度で安定していた。(下の表76-8を参照)

最近の特徴は、輸入の伸び率よりも輸出の伸び率がほぼ慢性的に高い状態が続いており、中国は貿易黒字体質から抜け出せないというジレンマに陥っている。こういうの状態をかつての日本人は「シアワセ」と感じていたが、実は大変厄介な問題の種であった。

中国に対して大幅な貿易赤字を出しているのは米国であるが、そのギャップをどう埋めていくのかという問題はかって日本も経験している。要するに資本収支で米国の赤字を埋めてやらないわけには行かなくなる。

日本は要りもしないビルや絵画などを買いまくってさんざ痛い目に会ったが、中国はどうする積りであろうか?これだけの貿易黒字を抱えながら、自動車部品に高関税をかけようなどという「過剰防衛」意識から早く脱却しなければ、世界不況の原因を作りかねないのである。

同時に、国際的にも孤立しかねない。

というのは、中国に外貨がたまる一方で、外貨不足の途上国が増えてくるからである。日本はODAでバラまいたが、中国はそんなことをやれる状態にはない。石油を買いあさったところ使える量には限りがある。

そもそも、なぜ中国の貿易黒字が急拡大したのかという理由は簡単である。いままで組立て加工貿易で輸出を伸ばし、部品は周辺諸国(日本、韓国、台湾、東南アジア)から買っていたが、部品産業への投資が急増し、輸入が相対的に必要でなくなったからである。

その辺のメカニズムを作り上げた原因は日本、台湾、韓国のエレクトロニクス産業、パソコン産業である。中国人の努力ももちろんあるが、主に外資のセイである。同じことを90年代には東南アジアで日本はさんざやってきた。だから東南アジアには部品メーカーがかなり多い。

いまさらこれを止めるわけにはいかない。どうするかは中国の政府当局者に考えてもらうほかはない。外貨がたまって「ウレシイ悲鳴」などあげている場合ではない。

下の表を見ると,貿易収支の黒字が急拡大したのは2005年になってからである。輸入の伸び率が輸出のそれを下回り始めたのも2005年からである。その間に中国の製造業に何らかの質的な変化があったことを意味している。その最大の原因は「部品産業」の拡大であると見ることができる。

(このような事情は私のホーム・ページ PartIIの中国の国別貿易編に詳しく書いておきました。ただし、06年上期については目下作業中です。)

 

76-9. 中国人民銀行、今年2度目の金利引き上げ6.12%に(06年8月18日)

中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は経済の過熱を抑制する措置の一環として8月19日から基準金利を0.27%引き上げ、1年ものの金利を5.85%から6.12%とし、また、1年ものの定期預金金利を2.25%から2.52%とすることを決定した。

前回は基準金利は06年4月にひきあげられ、今回の引き上げは今年2度目である。また、定期預金金利の引き上げは2004年10月以来のことである。

また、5年ものの定期預金金利は今回0.54%引き上げられ、4.14%となり、5年を超えるローンの金利は0.45%引き上げられ6.84%となった。

中国人民銀行は銀行の預金準備率の0.5%程度の引き上げを近々行うという観測が流れている。

このような措置では過剰な固定資産とりわけ不動産への投資が抑制されるかどうかは疑わしい。国内は輸出の大幅増加による過剰流動性があり、実際のところ今までの抑制策はほとんど効果らしい効果を挙げていない。

最近、投資がやや減ったとか工業生産が少し減ったというような発表が政府からおこなわれているが、減り方はゴクわずかであり、「誤差の範囲」という程度にとどまっている。

今回の措置によって、銀行から多額の融資を受けている不動産投資はある程度影響を受けることは間違いないが、不動産はすでに過剰感から販売価格が上海あたりから下がり始めている。そのため近い将来、今回の「引き上げ効果」があったように見えるかもしれない。

(WSJおよびsina.com、インターネット版、8月18日付参照)

 

76-10.銀行の預金準備率さらに0.5%引き上げ9.0%に(06年11月6日)

中国人民銀行は経済の過熱抑制措置の一環として11月15日から銀行の預金準備率を0.5%引き上げ9.0%にすることを明らかにした。

中国の輸出は好調を続ける一方、輸出は原油高の頭打ちや自動車や電機部品の自給率の向上によって輸入が伸び悩み、貿易収支の黒字は拡大している。

06年1-9月の貿易収支の黒字は早くも1,100億ドルを超え、05年全体の1,050億ドルを上回り、外貨準備も年末には1兆ドルを超える勢いである。これは日本を抜いて世界一である。

世界一が好きな中国も外貨準備の世界一は中性脂肪の世界一みたいなものであり、ロクなことはないという認識を中国政府は持っており、少なくとも貿易収支の黒字が国内の過剰流動性を引き起こし、銀行の過剰貸付⇒過剰投資に結びつかないような政策を採るべく必死になっている。

しかし、貿易収支の黒字対策については、いっそうの「元高」を進める以外に指し当たって妙案はなさそうである。元高にシフトすれば輸出企業は採算悪化という問題に直面する。さしあたり家電業界や繊維業界などが薄利多売で輸出しており、打撃が大きいと感えられる。

最近、元高が進んではいるが、年初に比べ11月3日は+2.5%にとどまっている。

06年における元相場(対米ドル)の推移

06年1月3日   7月3日   9月1日   10月3日   11月3日
8.0702 8.0027 7.9532 7.9040 7.8712

 

76-11. 中国の06年の貿易黒字76%増、とどまるところを知らず(07年1月11日)

06年の中国の貿易収支の黒字は1774億7000万ドルという天文学的数字に達した。これは2005年の1018億8000万ドル対比で実に74%である。これは「オメデタイ」話しの域をはるかに超えた大問題を起こしつつあると中国政府も認識し始めているようである。

いくら緑色の紙切れ(米ドル)を溜め込んだところで、所詮は紙切れに過ぎないのである。

なぜこういう事態が発生したかといえば、中国は輸出の好調な伸びを続ける一方で、輸入の伸びがスローダウンしてきたからである。それは2005年になってから急に顕著になってきた。(下表76-8参照)

06年の輸出額は9,691億ドル伸び率27.2%、輸入額は7,916億ドル伸び率は19.9%である。

2004年までは貿易収支の黒字額は年間200~300億ドル程度であったが、2005年から一気に1000億ドルを超える「革命的な変化」を遂げた。

なぜそうなったかといえばそれは「中国人民の絶えざる努力の成果」であるかもしれないが、はっきり言って、日本や台湾の企業を中心に「部品産業」が大量進出して、中国が部品の自給率を急速に高めたからである。

いわば、日本企業のおかげというか責任というか、いずれにせよ外資の影響である。

その結果、どういうことがこれから起こるかといえば、中国は部品の輸入が減ってくるから日本や東南アジア諸国から買うものがだんだんなくなり、輸出だけが増えるというイビツな経済になってくる。この傾向派今後ますます強化される。

有り余る外貨を使って、世界中から石油や天然ガスを買いまくっても、なおかつおつりが来すぎて困ってしまう。仕方がないから航空母艦や潜水艦を大量に作って周辺諸国を威圧する方針に出たようだ。

どこの国が中国に戦争を仕掛けるであろうか?要するに外敵の脅威などまるでない状態で、台湾が少しばかり自衛力を増強したというようなことを口実に、軍事大国を目指しているかのごとき観を呈している。

こういう動きに便乗しているのが自民党の右翼政権である。彼等は老人福祉予算を遠慮会釈なくカットして、その一方でミサイル迎撃網を整備すると称して、膨大な軍事費を使っている。北朝鮮も「脅威を与えている」からやむをえないのだそうだ。

お互いに、軍事費を削減していけば国民の福祉向上や環境整備に多くの予算を割けるのに、なんと言うことであろうか?「誰がためにカネ(軍事費)を使う」のかといいたい。ほんの一握りの軍事産業が潤うだけではないか?

小泉が靖国参拝などして中国との外交関係をいっそう悪化させたのも、軍備強化の口実を作るためであったとしか考えられない。いや、少なくとも結果的にそうなっている。少子化が進む日本としてはそんな財政的ユトリはないはずである。

別に、中国脅威論にくみする気はないが、お互いに無駄なことを止めて東アジアの平和に貢献すべきだということである。日本も早く平和的な外交路線に切り替えるべきである。「50年に一度は戦争をしないと国民が軟弱になる」などという愚かな政治学者のいうことなどに耳を傾ける必要はない。

現実には起こりえない「脅威」をお互いに増幅させていると、最後はそれが「現実」になり、不幸かつ悲惨な結果に終わるということは歴史の教えるところである。

中国は人民元など切り上げに向かうべきであるが、実にケチケチしている。下の表76-9を見れば分かるように、昨年1年間で人民元はわずかに3.3%しか切りあがっていない。それに比べ、インドネシアでさえ8.1%も切り上がっている。

タイにいたっては15.0%である。タイ政府がアセル気持ちは理解できる。日本円は異常としか言いようがない。小泉政権時代の経済失政でこうなったとしか言いようがない。それで日本の輸出企業が儲かっているというが、逆に輸入物価が高くなって庶民の生計に悪影響を及ぼしているのだ。

中国国内では日本製品などのコピー商品を勝手気ままに作らせている。たまには「取り締まりをやっていますよ」というゼスチャーを示すが、実を伴っていないことは明白である。そのくせ、日本製品に些細なことで難癖をつけ、すぐに販売禁止を強行する。

中国はこれからどうしようとしているのか?もう過去の「植民地主義の被害者」ではないのだから、為替問題でも環境問題でも人民に対する福祉政策でもはっきり政策転換すべきである。さもないと「緑の紙切れ」に埋没してしまうオソレがある。

 

表76-8.中国の貿易収支と対前年伸び率(単位;億ドル、%)

     輸出      輸入 貿易収支 輸出伸び率 輸入伸び率
2001年  2,661 2,436 225 6.8 8.2
2002年 3,256 2,952 304 22.4 21.2
2003年 4,382 4,128 254 34.6 39.8
2004年 5,933 5,612 321 35.4 36.0
2005年 7,619 6,600 1,020 28.4 17.6
'06年1月 651 555 97 28.4 25.3
'06年2月 541 516 26 22.2 29.2
'06年3月 780 669 112 28.2 21.1
'06年4月 769 664 105 23.9 15.1
'06年5月 731 601 130 25.1 21.6
'06年6月 813 669 144 23.3 18.9
'06年7月 803 658 145 22.5 19.8
'06年8月 907 719 188 32.7 24.5
'06年9月 916 763 153 30.6 22.0
'06年10月 881 643 238 29.6 14.7
2006年実見 9,691 7,916 1,775 27.2 19.9

(資料、中国海関統計より筆者が作成)

 

表76-9、アジア諸国の対米ドル・レート

06年年1月3日 06年12月29日 切上げ率(%)
中国・人民元 8.0702 7.8124 3.3
韓国・ウォン 1003.9 929.7 8.0
台湾・新台湾ドル 32.639 32.59 0.2
タイ・バーツ 40.86 35.35* 15.0
マレーシア・リンギ 3.779 3.530 7.1
フィリピン・ペソ 52.55 49.01 7.2
インドネシア・ルピア 9723 8995 8.1
シンガポール・ドル 1.655 1.533 8.0
日本円 117.25 118.90 -1.4

注)タイは06年12月28日の数字である。12月29日は1ドル=36.77バーツに急落した。

 

 

77.中国の銀行

77-1 中国銀行が香港で近く98億ドルの株式公開売却(IPO)計画(06年5月10日)

中国の4大銀行の1つである中国銀行(貸出額第2位)が、06年6月に香港で98億ドル(1兆900億円)の株式公開をおこなう予定であるとWSJとFTは報じている。また、中国最大の貸付額を有する中国工商銀行の06年内の株式公開を計画しているという。

既に、12の機関投資家(東京三菱銀行、長江実業など)が21.6億ドルの同行株式の購入に同意しているという。

先に、中国建設銀行(貸出額第3位)は昨年10月92億ドルの株式公開を実施している。

中国銀行は255億株(増資後株式の10.5%)を1株あたり2.5~3.0香港ドルで売り出す計画であるという。これは帳簿価格の1.9~2.2倍に相当する。

中国銀行は中国建設銀行にも負けず劣らずの「スキャンダルまみれ」の銀行という悪評が立っていたが、中国政府としてもこれら大手銀行のイメージ回復に躍起となり、2003年から600億ドル(約6兆7000億円)の資本注入を3大銀行に行ってきた。

外国の金融機関も中国市場参入のためにあえてリスクをおかしてこの時期に200億ドル相当の投資をおこなっている。

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループを中心とするコンソーシアムは既に31億ドルを投じ、中国銀行の株式10%を取得している。またシンガポール政府所有の投資会社テマセク(TEMASEK)も5%の株式を所有している。

TEMASEKはさらに5億ドル相当の追加購入に同意していると言われる。

一方、5月4日付けのFTのリチャード・マグレガー(Richard McGregor)記者の記事として、中国の金融機関の抱える不良債権の総額は9,000億ドル(約100兆円)に上るという推計値を紹介している。

会計監査法人のErnst & Youngは4大銀行の不良債権は3,580億ドル(約40兆円)に上るという推計を行っている。(このレポートに対し中国人民銀行は笑止千万な間違いだと酷評し、Ernst & Young社はこの5月15日レポートを撤回した。多分その必要はなかったということになろう。)

中国経済が高度成長を続けている間はこれらの数字が表面化する可能性は低いかもしれないが、最近の不動産価格の下落傾向や企業採算の悪化傾向が続けばいずれ深刻な事態に陥ることは自明である。

中国企業の損益動向からは目が離せない。

 

77-2.中国の金融機関は2,200億ドルの不良債権に直面か、Fintch社('06年5月31日)

格付け会社のFintch Ratingsは最近のレポートで中国の金融システムは2,200億ドル(約25兆円)の不良債権による損失に見舞われるかもしれないという報告を出した(WSJ 06年5月31日付け、インターネット版)。

これは最近の会計監査法人のErnst & Youngは4大銀行の不良債権は3,580億ドル(約40兆円)に及ぶというレポート(上記77-1、後にこの見方を撤回)より額は少ないが、中国の金融機関が多額の含み不良債権を持っている点を指摘した点では共通する。

さらに、不良債権と「問題債権」とをあわせれば、その額は4,760億ドル(53兆3000億円)に達するという見方をしている。

Fintch は中国の金融機関はひとたび不況に弱い体質を持っているとしんがらも、いざとなれば中国政府が何とか対処できるとみている。

鉄鋼産業などは過剰投資だとして内外から槍玉に上がっており、馬鞍山鋼鉄(香港で上場)は設備資金を手当てするために55億元(約770億円)の5年もの転換社債を7月にも発行する計画だという。

 

78. パソコン・メーカー聯想(Lenovo)の利益が90%も減る(06年8月3日)

中国のパソコン・メーカーとしてはトップの聯想(Lenovo)社はIBMから12億5千万ドルでパソコン部門を買収し販売を伸ばしてきたが、06年2Q(4~月)の純利益は500万ドル(5億7千万円)と前年同期の4590万ドルの11%にまで落ち込んだ。

聯想(Lenovo)は米国のデル(Dell)社やヒューレット・パッカード社との激しい競争に巻き込まれ、利益が落ち込んだ。 この3社とも中国でほとんどのパソコンを製造している。

ただし、売り上げは35億ドルと前年同期比で38%の伸びを示した。中国の国内市場では13億ドルと30%売り上げを伸ばし、トップのシャアを確保しているが、国際市場では他社の有力メーカーに遅れをとっている。

聯想(Lenovo)としてはIBMからソフト・ウエア面などでさらに支援を受け、国際市場で拡販していく方針であるという。

IBMとしてはデルやヒューレット・パッカードのような相手とマトモに競争していては儲からないと、パソコン市場に早々に見切りをつけたのは正解であったようだ。

 

79. 上海で年金汚職事件発生(06年8月30日)

上海市の年金保険基金で大規模な不正が発覚し、現在中央本部から100名以上の捜査官が上海に出向き、実態の解明に当たっていると伝えられている(新華社、WSJ,FT,新浪など各インターネット版)。 新華社によれば改革開放以来、上海市としては最大の腐敗事件であるという。

詳細は明らかになっていないが、8月11日に上海労働社会保障局長のZhu Junji(祝均一、55才)が「重大な規律違反」で解任された。

また、秦裕=Qin Yu(上海市宝山区区長)も解任された。彼は、前に上海市の市長を務め(2002年)同市の党書記兼、党中央の政治局委員である陳良宇(Chen Liangyu)氏の秘書を務めていた 。秦裕は秘書在任中にもしばしばワイロを貰っていたという嫌疑がかけられている。

江沢民前主席時代には同氏の出身地の上海市の人脈が中央政府の実権を握っていたといわれるが、陳良宇も上海閥の実力者として知られていた人物である。

上海市の年金の赤字額は2000年の7億元から2002年には40億元に膨らんでいると伝えられる。

年金基金は当然運用益を得るために各方面に投資(融資)されているが、その過程でかなり不正があったものと見られている。特に、投機的な不動産への融資があったともいわれている。

この件とは別に中国における発電設備メーカーの最大手である「上海電気」のトップも最近解任されており、党中央の胡錦濤体制強化のため、かって主導権を握っていた上海閥が攻撃されているという見方も出ている。

今回の事件は年金基金の赤字とは別に、「銀行業界」への影響という形で問題が表面化している。すなわち、年金基金からの資金を銀行が不動産業者に貸し付け、そこで焦げついているということが起こっているものと思われる。

今の段階では当局の調査が進行中であり、さらに、事態の推移を見守るしかないが、大きな事件に発展する可能性を秘めている。

 

80. 中国、農地保護のために不動産業者への土地料金を2倍に(06年11月21日)

中国国土資源部は農民の土地保護のために、不動産業者の新たな土地使用料金を来年から全国的に2倍にする方針を固めた。

これは国土資源部と中国人民銀行および財政部が協議して決めた方針である。

農民の土地を村の役人や共産党の地方幹部が不動産業者に売り渡し(使用権を)、農民が土地を奪われていくことに対する抵抗運動が各地で起こり、暴動が近年多発している。

また、不動産業者は投機的な投資をおこない、経済の過熱現象を招いている。これを止めようとして中国人民銀行は金利を上げたり、銀行の預金準備率を多少引き上げたりしているが、目立った効果は上がっていない。

過去10年間で4000万人の農民が土地を失ったともいわれ、さらに1500万人が2010年までに土地を失う可能性があるといわれている。  

これがどれだけの効果を生むかははなはだ疑問である。土地は国家の財産であり、農民などは「使用権」を有するに過ぎず、土地価格には「市場メカニズム」が働かないため、土地の管理権を有する役人と地方の共産党幹部の汚職の原因にもなっている。

これ以上農民層の不満が爆発すると中国共産党の支配自体に国民から疑問を投げかけられる可能性が多分衣にある。この辺で何とか手を打って国民が納得するような形を作っていく必要があることは自明である。

(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、11月21日、インターネっト版参照)

 

81.胡錦濤主席のザンビア訪問で物議(07年2月9日)

中国政府は東南アジア外交だけでなく最近アフリカ外交にもかなり熱が入っている。これはナイジェリアなど産油国に対し、石油確保の働きかけという点はつとに指摘させているが、それ以外の銅などの天然資源確保のための狙いもあるといわれている。 また、中国の工業製品の輸出相手としてのアフリカ諸国のウエイトも徐々に高まりつつある。

胡錦濤はさらに今回 ザンビアをはじめ8カ国を歴訪中である。中国政府の対アフリカ外交の熱心さには世界各国が改めて注目しているが、とりわけEUの主要国は元の植民地であった国々が多いだけに「神経を尖らしている」といっても過言ではない。

今回の胡錦濤の訪問の目玉とも言うべきザンビアでは思いもかけない反発が地元民から起こっている。中国は1970年代にザンビアに1770Kmの鉄道を敷設している。それは銅山からの鉱石を輸送する目的のものであった。

また、鉄道以外にも、ザンビアの綿花を利用した繊維産業の発展にも手を貸している。同じ頃、中国はZambia China Mulungushi Textiles社を設立し、中国人の技術者を派遣し、工場の運営に「協力」してきた。

この工場は有数の綿花の生産地でもあるザンビア北部のカブウェ(Kabwe)に位置し、年間1,700万メートルの生地を生産し、10万着の衣類を製造し、品質の高さでは国際的な評価も高かったのである。

ところが、その工場が07年1月に閉鎖に追い込まれ約1,000人の従業員が失職してしまったのである。中国の補助金付きの安い繊維製品が大量に輸入されたのが原因だという。

解雇された労働者は中国に責任があるとして胡錦濤訪問に対する抗議デモをおこなった。

また胡錦濤は2億ドルを投じて建設した銅精錬工場の開所式への出席をキャンセルせざるを得なくなった。

ザンンビアの国民からは中国は安い賃金の労働者を搾取し、天然資源を収奪しているという激しい抗議の声が上がっている。また、中国人が多数ザンビアで働いていることも現地の労働者を刺激している。

ザンビア政府の公式統計では中国人は2,300人ザンビアにいることになっているが実際は数万人が建設現場や小売市場などいたるところで働いているといわれている。彼らがザンビアの労働者の仕事を奪っているというのだ。

中国に対する警戒感はザンビアにとどまらず、南アフリカなどにも波及している。タボ・ムベキ(Thabo Mbeki)大統領は「中国の帝国主義的な動き」に対する警戒を怠ってはならないと語っているといわれる。

アフリカ諸国はEUの補助金付きの安い農産品の流入によって農民が市場を奪われているという。EUには植民地時代に搾取され、こんにちは「自由貿易主義」によって再び搾取されているという。そこにもう一枚中国が加わってきたというのだ。

胡錦濤はもちろん「中国は植民地主義者として進出してきたのではない」と弁明しているが、、最近の集中豪雨的な工業製品の輸出と中国人の進出が現地の人々に被害と脅威を与えているようである。

 

82.2007年の中国経済

82-1..中国株暴落、9%近い下げ、ミューヨーク株大暴落を誘発(7年2月27日)

旧正月(2月18日)の長い休みが明け、これからという時に2月27日(火)に中国の株式市場は10年振りといわれる1日9%近い暴落に見舞われた。 これは1997年2月以来の10年ぶりの大きな下げ幅である。上海コンポジットは前日初めて3000ポイントを越えたばかりであった。

大幅下落の理由はこのところ連日のように大幅上げを記録してきた株式市場に対し、中国当局が「過熱警戒感」を強め、一時的に「投機筋の動き」を抑制する必要があると認識しているという噂が市場に流れたためであるという見方がされている。

下落幅は異常に大きいが、水準としては1月の中頃のレベルであり、さほど驚くには当たらない。2月に入ってからの上げが急ピッチすぎたのである。

ブルーンバーグは下げのきつかった銘柄は不動産株と通信株(携帯電話)で不動産株の例としてChina Venke Co.、通信株の例としてChina United Telecom.が10%の限度一杯下げたという言い方をしている。

WSJは航空、鉄鋼、金融が下げを先導したと書いている。要するにこのところ急上昇している株が大きく下げたということであろう。日本の鉄鋼会社と比べて、失礼ながら「月とスッポン」のような中国の鉄鋼会社の株が急騰していたのには少なからず驚かされた。

今日の下げが明日も続くかどうかは予断を許さないが、中国政府は行き過ぎると、それを緩和する「中和剤」をばら撒くので、このままパニック的に暴落が続くとは考えにくい。

中国経済そのものも2008年のオリンピックまでは何とか持ちこたえさせる政策を採ると思うが、それより先に米国経済のほうがおかしくなる可能性はある。グリーン・スパン氏は下期警戒説を打ち出している。企業業績が下がってきているというのがその根拠である。

また国連のアジア太平洋経済社会委員会が東および東南アジアは10年前の経済危機の再来を忘れるべきではないという警告を発している。特に不動産投資で経済成長が保たれている国(インドネシアやフィリピン)は要警戒であろう。

タイやマレーシアは輸出産業が経済を引っ張っており、不動産投資も「過熱」というほどのレベルではないので前回のようなことはないであろう。

しかし、このところ一本調子に株価が上がってきたマレーシアは本日(2月27日)は1272.87⇒1237.08と-2.8%とやや下げがきつかった。

さらに、この「上海カゼ」は香港(-1.76%)はもちろん、ヨーロッパや米国に飛び火し、連日高値を更新してきたニューヨーク・ダウは2月27日午後3時(日本時間28日午前5時)ころ一挙に下げを加速し、一時500ドルを超える 大暴落になった。その後やや戻したが、終値は12,216.24ドルで-416.02ドル(-3.29%)という暴落に終わった。ハイテク株が多いNASDAQは2407.86、-96.66下げ率は-3.86%とこちらのほうが打撃は大きかった。

米国の場合は耐久消費財の 受注が07年1月に7.8%(季節調整後)と大きく落ち込んだことも影響している。 それ以外にもブッシュ政権のイランの核開発問題やイラク、アフガン侵攻政策の失敗なども心理的な影響を与えているかもしれない。

中国の株の下落が世界的に影響するとは、中国もたいした経済大国に成長したものである。 それにしてもニューヨーク市場の大暴落は、東京にも跳ね返ってくるであろうし(28日の終値17,604.12で-515.60)、さらに中国にも悪影響を及ぼしかねない。

表82-1、中国の株価と為替の推移

  上海コンポジット     上海A株 人民元/ドル
05年12月末 1161.06 1220.93 8.0702
06年6月30日 1672.21 1758.06 7.9943
06年12月末 2675.47 2815.15 7.8124
07年1月5日 2641.33 2778.46 7.8047
07年1月15日 2794.70 2935.54 7.7918
07年1月31日 2786.34 2927.82 7.7748
07年2月15日 2993.01 3142.94 7.7550
07年2月26日 3040.60 3193.20 7.7535
07年2月27日 2771.79 2910.76 7.7415
対前日終値 -8.8% -8.8%  

 

82-2.中国の07年1Qの成長率は11.1%、政府も警戒感、株は暴落(07年4月19日)

中国統計局は07年1Qの実質経済成長率を11.1%(速報)であると発表した。06年4Qの10.4%と比べさらに高くなっている。小売、投資などほとんどの経済指標が上向きであり、中国政府も警戒感をさらに強めている。

景気スローダウンのためにより強力な施策(公定歩合引き上げ、貸し出し規制など)がいっそう危機感をもって検討されていると思われる。

そのような引き締め強化を予想してか11.1%という数字が公表される以前から株式市場には警戒感が強まり、売り先行し、上海コンポシットで4.5%の大幅下落となった。下落の波は香港やシンガポールや日本にも波及した。

 

表82-2、中国の株価と為替の推移(前回の下げとの比較)

  上海コンポジット     上海A株 人民元/ドル
05年12月末 1161.06 1220.93 8.0702
06年6月30日 1672.21 1758.06 7.9943
06年12月末 2675.47 2815.15 7.8124
07年1月5日 2641.33 2778.46 7.8047
07年2月15日 2993.01 3142.94 7.7550
07年2月26日 3040.60 3193.20 7.7535
07年2月27日 2771.79 2910.76 7.7415
対前日終値 -8.8% -8.8%  
07年3月21日 3057.38 3212.42 7.7355
07年4月2日 3252.60 3418.73 7.7355
07年4月18日 3612.40 3796.68 7.7220
07年4月19日 3449.02 3624.90 7.7165
対前日終値 -4.5% -4.5%  

前回の暴落は2月27日に起こり、そのときは前日比8.8%の暴落となった。その後、暴落前の最高水準(2月26日)に戻すまで約3週間(3月20日まで)を要した。しかし、その後はほとんど一本調子の上げが続き連日高値更新で中国市場は株式ブームに沸きかえった。

中国政府の懸念は一般国民が株式市場に殺到し、新規に株取引を始めた人の多くは、余剰資金を株式に投入するというよりは「生活資金」を投入している点にあるといわれている。

一般庶民は日銭を稼ぐという狙いがあり、一旦株価が下げに転じれば生活が破綻をきたしかねない人が多いのである。これは社会不安に直結しかねない。

中国の株価バブルの問題は企業業績の裏づけなしに、人気で株価だけが先行・高騰している点である。これには外国の機関投資家にも大きな責任がある。特に国営銀行が香港でIPO(株式公開)をおこなった際の予想以上の成功から、雰囲気が一変したとい見方がある。

国際資本が中国経済の順調な発展にお墨付きを与えた形になったからである。高度成長下にあって、潜在的不良債権が増加しているというレポートも既に出ているのである(#84参照)。

また、人民元は高値を更新している。

4月19日の株価暴落はさらに20日以降に影響が続くものと考えられる。

 

82-3.07年1~4月の都市部の固定資産投資25.5%増(07年5月21日)

中国国家統計局の調べでは07年1~4月の都市部の固定資産投資(建物、機械設備など)の投資は前年同期比25.5%と、政府の予想を上回る拡大を続けていることが分かった。

中国政府はしばしば金利を引き上げ、銀行の預金準備率を引き上げるなどの方法で不動産投資などへの貸付を抑制する施策をとってきてが、たいして効果がないことが判明した。

その最大の理由は中国企業の輸出が依然として好調であり、過剰な資金が国内市場に充満しており、投資機会を見つけてはそこに資金が流れていくというメカニズムが出来上がっており、短期的には株式市場に向かい、中長期的には不動産投機に向かっている。

固定資産投資も金融機関からの借り入れによる増加は13.4%だが、自己資金による増加は26.4%と、こちらの伸びの方がはるかに大きく、中国政府としても規制することが困難になっていることが窺える。

こういう状況は1997年と東南アジアの通貨・経済危機前夜と似た様相を呈しており、ひとたび投資した資金の利益率が下がる(不動産価格の下落などにより)とパニック状態になることは間違いない。

中国政府は株式市場の暴走だけでも食い止めておかないと大変な問題が起こる可能性がある。(WSJ,インターネット版5月20日付け参照)

 

83.中国の石炭輸入が輸出を上回る(07年3月11日)

中国の07年1月の石炭輸入は470万トンと前年同期比81%増となった。一方輸出は329万トンと前年同期比約20%のマイナスになった。輸入石炭は鉄鋼業用の「高粘結炭」などが増加したものと見られる。

中国は2003年には世界第2位の石炭輸出国であったが、高度成長経済下で国内のエネルギー消費が増大し、輸出は2005年に-17%、2006年に-12%と減少を続けている。

中国政府はエネルギーの自給率は90%あるといっているが、石油だけでなく石炭も輸入国になった。しかも鉄鋼生産に使われる高品位炭を大量に輸入するようになった世界的な影響は大きい。

中国の石炭生産は2003年には10億トン、06年には23.3億トンと生産を急増させており、10年には26億トンにまで増産するという。しかし、石炭鉱山の事故が続発し、最近5000人以上の死者が出ており、炭鉱の労働条件も悪いため、労働者のヤマ離れが目立ってきているという。

エネルギー依存度の低い経済体質に転換することが第一である。

(WSJ, Internet版、3月8日付参照)

 

84. コゲ付きに悩まされる中国企業が増加(07年3月28日)

Coface Greater Chinaというクレジット保険会社がおこなったの06年10~12月の間の不良債権調査によれば、調査対象412社中約5分の1に当たる19%の会社が売り上げの0.5%~2%の回収遅延(12ヶ月以上の売上代金の回収遅れ=実質コゲ付き)があると回答したという。

この比率は05年の同時期は13%であった。

中国経済10%の高度成長の影に、企業ベースではひそかに不良債権が増加していることをうかがわせる数字である。

12ヶ月にも及ぶ回収遅れは「不良債権」に分類すべきだがそうすると企業のバランス・シートが悪化するので、そのままにしてあるモノと思われる。

国営企業は政府の支援を打ち切られているので、特に倒産の影響を受けやすいという。

2%にも及ぶコゲ付きは「低級品製造会社」の経営にとっては重大な問題であり、また、回収期間が限度一杯に伸びてきている傾向にあるとこの調査会社の幹部は語っている。

また、これらは当然ながら、金融機関にとっても潜在的な不良債権が増加していることを意味している。

国営企業についての年間調査では23%がデフォールト(支払不能=倒産)の危機にあるという。この数字は2005年には19%であった。

(SCMP, インターネット版、07年3月27日参照)

 

85.中国政府は過剰外貨を国際金融市場で運用開始(07年5月19日)

中国政府は溜まる一方の外貨準備を何とか有効に運用しようと日夜秘策を練っているが、手始めに米国の最大手の資産運用会社であるブラックストーン(Blackstone)社に30億ドルの資金の運用を委託するとFT(フィナンシャル・タイム)は5月18日付けのインターネット版で報じている。

中国政府は余剰の外貨を米国の国債(トレジャリー・ボンド)を買って運用しているが、金利が4%台だと人民元の切り上げを考えれば将来的には大してメリットがないということで、国際金融市場で運用してみようということにしたようである。

これがうまくいけば、さらに巨額のチャイナ・マネーが国際的に運用されていくことになる。もしかすると日本の株式市場にもなだれ込んでくるかもしれない。

これに反して日本政府は米国ベッタリでトレジャリー・ボンドをしこたま抱え込み、円安を何とか維持しつつ「時の流に身を任せ」ている風情である。

それどころか、自衛隊の国際貢献を口実に、米軍と一緒になってアチコチで戦争の片棒を担ぎかねない雰囲気が漂ってきた。米国と心中ですか?そんなことはイギリスにでもお任せしておけばよいではないですか?藤井元蔵相のご懸念は誠にゴモットモです。


86.バンク・オブ・アメリカが中国の銀行株を売却(09年1月9日

バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)はサブ・プライム問題で大揺れに揺れている米国の大手金融機関の中では比較的マシな銀行でメリル・リンチを買収するなど余裕をみせていたが、1月7日(水)に中国建設銀行の株を香港市場で一部売却したことで意外なパニック現象が起こっている。

バンカメは中国建設銀行(CCB=China Construction Bank)の持株19.1%⇒16.6%へと2.5%減らした。売却したのは香港市場で3.92HKドルの固定価格で56億HKドルを手に入れた。これは1月6日(火)の終値の12%引きの株価であった。これによってバンカメは11億米ドルの利益を得たという。

中国の銀行の株を売る動きは他にもあり、UBSは中国銀行の株を全て(1.33%)売り、8億80万ドル入手したが、そのうち3億3500万ドルが売却益であったという。

香港最大の富豪Li Ka-Shingも中国銀行の株を20億売却し、5億米ドル以上手に入れたといわれる。売値は1.98~2.03HKドルといわれ、前日の終値2.14HKドルをかなり下回った。

これにはRoyal Bank of Scotland(最近経営不振で国営化された)やシンガポールの国営持株会社テマセク(Temasek)も追随するのではないかといわれている。

このような動きによって中国銀行株は売りムードが一挙に高まり、中国工商銀行株なども下げに転じた。(FT,1月7日付け電子版参照)

それまで最近急回復を見せていた香港の株式市場は1月7日(水)と8日(木)に急落した。

香港ハンセン指数の動きと日経平均

12月31日 14367.48 日経平均
1月2日 15042.81 +4.7%
1月5日 15563.31 +3.46 9043.12 +2.01%
1月6日 15509.51 -0.35 9080.84 +0.42
1月7日 14987.46 -3.37 9239.34 +1.75
1月8日 14415.91 -3.81 8876.42 -3.93

1月8日のアジア株は7日のニューヨーク市場の大幅な下げに対応するものともみられるが、バンカメの中国建設銀行の売りに触発されて香港市場が動揺していることにも注目したい。

これから中国経済がどうなるかという問題が重要だが、中国政府はいままでの「どうにも止まらない」高度成長から2009年には8%成長にスロー・ダウンするといいうことである。

外需依存(輸出)から内需依存型経済に「軟着陸」するのだという言われ方もしている。しかし、そうウマクいくだろうか?

中国経済は市場経済に完全に移行してはいないので「パニック」に陥る前に政府が有効な政策をある程度打ち出せることは確かであるが、問題は不動産投資である。

これが売れなかったり、大幅な値崩れが起こると、中国の銀行は「見かけの」高利潤が一気に吹き飛ぶことになりかねない。過剰投資が明らかな「鉄鋼業」も時限爆弾をかかえている。

バンカメはそういう「危機感」を感じて、少しだけ動いたとみることができよう。

すでに「泰山は鳴動」し始めている。ネズミ一匹では到底済みそうもない。そうなれば、中国に過大な投資をしてきた日本や韓国や台湾もタダではすまない。

米国のオバマ新政権がうまく舵取りをやって、米国経済が危機を脱出する方向に動いてくれることを祈るばかりである。

他力本願で情けないが、日本の経済政策は2兆円バラマキ事件をみても「闇夜に鉄砲」(少しは当たるかも知れない?)というほか形容の仕様がない体たらくである。

政府・自公、霞ヶ関も「知的レベル」が低すぎる。小宮隆太郎先生の「私の履歴書」によれば、優秀な門下生が大勢役所や日銀に行ったり、学者になっておられるようだが、彼等は一体どういう経済学をお勉強してきたのであろうか?上級士官様に告ぐ、「今からでも遅くはない」から「お手並み」を拝見したいものだ。

Ch13-1. 中国がASEANを威嚇(13-7-24)

中国とASEANの外相級会談か6月30日にブルネイで開催されたが、中国の代表がASEANに対し「高飛車な態度」をとったことで反発を買っている。やり玉に挙がったのは南沙諸島で中国に対して「反抗的態度」をとっているフィリピンに対してであるが、当然領海権を巡って中国に対抗しているベトナム、マレーシアにもにらみを利かせている。

とりあえずは傍観者的立場にあるタイも珍しくバンコク・ポストが中国の態度を批判する論説を乗せている(7月10日Bangkok Post).。もちろんバンコク・ポストの論説はインラク政権のスタンスとは無関係であり、むしろタイ経済界の意見の反映とみるべきである。タイ経済は中国一辺倒では到底やっていけないことは自明である。

中国外相はASEANが結託して中国に対抗しようとしているのがけしからんといい、その中心はフィリピンだという。

従来、中国寄りのスタンスを明確にとっていたのはカンボジアであり、それを脇からサポートしていたのがラオスであり、陰でさせてきたのがタイのタクシン(インラク)政権である。特にタイはタクシン元首相が従来はドバイに居を構えていたが、最近は活動拠点を中国と香港に移したようである。タクシンの先祖の母国はあくまで中国(広東省の客家)であり、さほど遠くない故郷という意識が強い。

タイのプア・タイ党の幹部は香港でしきりにタクシンと会ってご支持を仰いでいる。しかし、タイ政府は中国寄りのスタンスを明確にしすぎるとASEAN内部で「中國寄り」として孤立する恐れがある。

とくに中国ーASEANの自由貿易協定を推進したのはタクシンとシンガポールのリー・シェン・ロン首相であることは広く知られている。ところがその後の貿易関係では中国が「工業製品を輸出し、原材料などの1次産品」を輸入するという形が定着してきた。(本HPの年別の中国の貿易をご参照ください)

しかし、遅ればせながら自国の工業生産を増加してきたインドネシアやフィリピンそしてベトナムにとっては、この「中国ーASEAN自由貿易協定」が邪魔になってきたのである。したがって「領海紛争」だけでなく「貿易問題」が顕在化しつつある。今後、中国とASEANの関係は様々な局面でかなりギクシャクしたものになることは避けられない。

中国が大昔の「宗主国」のような「大国意識」を表に出せば、ASEAN諸国は一層、中国から離反するであろう。

ところが日本政府はフィリピンに巡視艇を10隻ほど貸与することを申し出るらしい。これは実質的な「軍事援助」であり日中間の新たな紛争の火種っとなることは明白である。こういうのを「悪乗り」という。あくまで南沙紛争は当事国と国際機関に任せておけば済むことである。日本がこんなところでシャシャリでても事態の改善にはつながらず、かえって喧嘩を中国に売るだけの話である。それと「武器輸出3原則」や憲法にも違反しているのではないか?

もしこれが実現したら安倍政権の外交的失敗の第1歩である。困った政権ができたものである。こういうことをやっているとASEANも日本と距離を置かざるを得なくなってくる可能性がある。


Ch 13-2 破綻に突き進む中国経済の問題点、IMFも指摘(2013-7-29)


中国経済は不気味な鳴動を続けている。それは言うまでもなく、バブル経済の進行とその結果として起こる経済恐慌である。それは1997-8年にタイ・インドネシアで起こった事件と同様な様相を呈することは明らかである。

IMFの最近のレポートによれば「融資残は2008年にはGDPの128%だったものが現在は195%にまで急膨張しているという。すさまじい「信用膨張」である。

どうしてこうなったかというとレーマン・ショック後に2300万人の失業者が出て、社会不安が爆発しそうになり、中国政府は4兆元(約65兆円)の景気刺激政策を打ち出したのである。この結果は金融の大幅緩和につながり、投機資金が潤沢になりすぎたのである。換言すればバブル経済をあおった結果になった。

中国の経済構造は輸出依存型であるが、米国やECの不振のため、輸出を伸ばすことが困難な状況にある。個人消費を拡大せよといっても貧困層が大多数を占める中国においては急に消費を拡大することもできない。勢い、投資に資金が回らざるを得ない。しかし、投資といっても公共投資はすでに鉄道建設や道路などは飽和状態にあり、結局ビル、住宅などの不動産投資に向かわざるを得ない。驚くべきことに不況にあえぐ鉄鋼業への投資も膨張し続けているという。

結局、産業向け投資といっても「中国企業の技術的得意分野に限られる」から鉄鋼、造船、ソーラー・パネル、アルミといった分野への投資が突出してしまうのである。便利でやりやすいのが「不動産」ということになる。

不動産投資は民間の投機マネーと結びつきやすい。これは20年前の東南アジアと同じ構造でる。これらの不動産投資は「投機の好循環」が存在する間は「自転車操業」的に回転していく。しかし、それはいつかは突然ストップしてしまう。

IMFは近年2兆ドルの「富の蓄積」が出現したという。しかし、その源泉は明らかでない。もっと重要なことはこの「富の蓄積」が利益を生むものなのかどうかである。それが「建物」だったら、値上がりが続く限りは一見「利益」を生むかもしれないが、それは本質的に「生産的」ではない。

ホテルなどの商業ビルであっても過剰在庫が鮮明になればたちどころに値下がりに転じてしまう。宿泊客が増え続けるという保証は全くない。バンコクの場合は観光客の増加によって何とか現在は需給関係が維持されているようだが、少し観光客が減るとたちどころに過剰感が出てくる。

中国は住居事情については不足感が強かったが、高級住宅に入れる階層は限られている。結局のところ「富を生まない投資」は社会的な負担となって国民経済に跳ね返る。資本主義諸国ではそれが「経済恐慌」となって経済を破壊してきた。中国はどう考えてもその前夜である。鳴動はしているがまだ「噴火」には至っていない。

IMFによればGDPに占める投資の占める比率は48%(世界最高レベル)、消費は35%であるという。日本の場合は消費約60%、投資約20%である。(続く)


Ch.15-1中国の地下銀行(2015-11-20)
Bloomberg

China said it cracked the nation’s biggest “underground bank,” which handled 410 billion yuan ($64 billion) of illegal foreign-exchange transactions, as the nation tries to combat corruption and rein in capital outflows that have hit records this year.

More than 370 people have been arrested or face lawsuits or other punishment in the case centered in eastern Zhejiang province, the People’s Daily reported on Friday, citing police officials. The case brought the total for underground banking and money-laundering activities to 800 billion yuan since April, the newspaper said.

The probe began in September last year and the police took almost a year to sort through more than 1.3 million suspicious transactions, the state-run Xinhua News Agency reported separately. The authorities froze more than 3,000 bank accounts, Xinhua said.

The case highlights the nation’s struggle to control capital outflows that have helped to send real-estate prices soaring from Vancouver to Sydney -- even when Chinese citizens are officially limited to converting $50,000 of yuan per year. Some of the money may come from corrupt officials trying to protect their assets as the government clamps down.

A suspect identified as Zhao Mouyi set up more than 10 companies in Hong Kong from 2013 and transferred more than 100 billion yuan through so-called non-resident accounts, which are used by offshore companies in China when they are transferring money abroad, the newspaper said.

Account ‘Loophole’

Taking advantage of a “loophole” relating to non-resident accounts, which has since been filled by banks, Zhao circumvented the capital controls by directly transferring yuan overseas and then exchanged the money into foreign currencies at banks including HSBC Holdings Plc in Hong Kong, the People’s Daily said. Zhao then allegedly transferred it to his clients’ accounts, the report said, citing the local police.

HSBC declined to comment on the report.

“This is just an attempt to reduce the capital outflow pressure since this keeps the money in the country,” said Hou Wei, a banking analyst at Sanford C. Bernstein & Co. in Hong Kong. The government is “determined and very serious” about defending its currency reserves and the exchange rate, the analyst said. 

In another case highlighted by the People’s Daily on Friday, an investigation of an underground bank in Fujian this year uncovered a network spanning Hong Kong, Taiwan, Australia and Saudi Arabia -- and a senior executive at a state-owned enterprise who allegedly tried to move 18 million yuan abroad, the newspaper said.

China has been tightening control over capital flows even as it pledges to remove its currency controls and make the yuan fully convertible by 2020. An Aug. 11 devaluation of the yuan and the central bank’s introduction of a more market-driven fixing spurred the currency’s biggest monthly tumble in two decades




C15-2,中国の’One Belt, One Road'政策(2015-12-5)

これは中国の帝国主義的政策の基本理念である。「そこのけそこのけ中国が通る」といった政策である。もちろん南沙諸島の占有政策とも表裏一体である。単に米国の’Pivot'政策に対応するためではない。

One Belt, One Road: China’s response to the US “pivot”

By Peter Symonds
4 December 2015

At two top-level gatherings in Asia last month—the Asia Pacific Economic Cooperation (APEC) and the East Asia Summit—US President Barack Obama again exploited maritime disputes in the South China Sea to press his “pivot to Asia” agenda—consolidating an economic bloc through the Trans Pacific Partnership (TPP) and military ties and alliances throughout the region, all directed against China.

Even before the “pivot” was formally announced in 2011, the Obama administration, in response to the deepening global economic breakdown, began shifting focus to the Indo-Pacific region in a bid to counter the perceived threat posed by a growing China to American hegemony. Simply by virtue of its sheer economic size, China is cutting across the longstanding economic and strategic relationships established after the end of World War II based on US pre-eminence.

Confronted with the TPP, from which China is excluded, and an extensive US military build-up throughout the region, the Chinese regime has been forced to react. Its response is conditioned by the class interests it represents—the tiny super-wealthy oligopoly that enriched itself through the processes of capitalist restoration during the past three decades. Broadly, Beijing has sought to appease Washington while at the same time engaging in an arms race that can only end in one way.

In 2013, the new leadership of President Xi Jinjing and Premier Li Keqiang elaborated an extensive geo-political strategy that drew together and extended existing strands of foreign policy. Its aim is to extricate China from its strategic encirclement by the US and its allies, while opening up further trade and investment opportunities for Chinese capitalism. Known as the Silk Road Economic Belt and the 21st Century Silk Road, or One Belt One Road (OBOR), the scheme envisages massive infrastructure development to link the Eurasian landmass, as well as Africa, both by land and sea.

By offering substantial investment in infrastructure as well as burgeoning trade and economic benefits, Beijing is hoping to draw countries across Eurasia, the Middle East and Africa into its plans and thereby blunt the US “pivot.”

At the East Asia Summit in Kuala Lumpur, Chinese Premier Li made a definite appeal to the Association of South East Asian Nations (ASEAN) leaders, highlighting China’s commitment efforts to establish land transport links from southern China throughout South East Asia as well as the upgrading of port facilities in the region. He pledged $US10 billion for the next phase of the China-ASEAN special infrastructure loan.

As well as boosting economic relations between China and ASEAN, with two-way trade projected to reach $1 trillion by 2020, the land linkages have a strategic aim—to lessen China’s dependence on shipping lanes through South East Asia to import energy and raw materials from the Middle East and Africa. Beijing is well aware that US military strategists regard a naval blockade, including by control over the Malacca Strait, as a crucial element of their war plans against China.

Last week China hosted the fourth China-Central and Eastern European (CCE) summit at which Li highlighted the role of Eastern Europe, the Balkans and Baltic States as “the east gateway to Europe and along the routes of the Belt and Road initiative.” He said he wanted to work with all 16 countries represented “to build the China-Europe land-sea express line and promote connectivity in Europe.” China signed a deal with Hungary and Serbia to build a high-speed rail line between their capitals, as part of a broad plan for a rail link to the Greek port of Piraeus. Li also announced investments in port facilities in the Baltic, Adriatic and Black Seas but gave no specifics.

Beijing’s pitch is above all directed toward the major European powers—all of which are part of the formal NATO military alliance with the United States. While China’s European diplomacy has been developing for years, three key visits in late October and early November—President Xi’s trip to Britain, and the visits by French President Francois Hollande and German Chancellor Angela Merkel to China—highlight the economic and strategic issues, as much for Europe as for China.

Britain, France and Germany all have their own imperialist ambitions in Eurasia, which have been further fuelled by the worsening global economic breakdown and the slump in Europe, in particular. With the emergence of China as the world’s largest cheap labour platform and second largest economy, all the major powers—the US, Japan and European—are driven to maximise their economic engagement and investment, and thus their influence in Beijing.

In an article published on the Europesworld.org website in May, Wang Yiwei, director of the China-Europe Academic Network, openly spelt out China’s strategic aims, declaring: “With the rise of the United States, Europe entered into a decline which recent attempts at integration have been unable to reverse. Europe is now faced with a historic opportunity to return to the centre of the world through the revival of Eurasia.”

At this stage, the One Belt, One Road initiative remains largely in the realm of grandiose and general ideas. The Chinese government issued a document this March entitled “Visions and Actions on Jointly Building Silk Road Economic Belt and 21st Century Maritime Silk Road.” It was short on specifics and long on the rhetoric of “peaceful coexistence,” “win-win cooperation” and the advantages of closer economic integration.

Insofar as the broad outlines are known, the land-based Belt involves the construction of 80,000 kilometres of high-speed rail links, with a major route running from the Chinese city of Xian, historically the starting point of the Silk Road, to Europe, through Urumqi in China’s western Xinjiang province and Central Asia to Moscow and Europe. Other rail lines include one from southern China through South East Asia to Singapore and another from Xinjiang through Pakistan to the Chinese-built port of Gwadar on the Arabian Sea.

The plans include a major expansion of roads, oil and gas pipelines and digital cables, along with power production and energy grids. As well as providing an impetus for economic growth in China’s undeveloped inland regions, the infrastructure proposals are designed to provide an outlet for China’s production overcapacities and profitable opportunities for Chinese corporations.

The maritime Road focusses on the expansion of port facilities, particularly in South East Asia to develop sea transport from China to Europe, and in Kenya to integrate Africa.

Beijing has proposed to allocate up to $1.4 trillion to finance the huge array of infrastructure projects and is setting up financial institutions alongside the International Monetary Fund, World Bank and Asian Development Bank. Together with the provision of money, China is calling for measures and agreements to reduce or remove trade barriers, economic red tape and other obstacles to economic integration.

An initial $50 billion has been provided to the recently established Asia Infrastructure Investment Bank (AIIB), which is projected to have at least $100 billion in funds. Another $40 billion has gone into the Silk Road Fund for projects in Central Asia. China has announced $46 billion to finance the China-Pakistan economic corridor. China has also made an initial contribution of $10 billion to the BRICS-led New Development Bank, set up in August. The China Development Bank has declared that it will fund up to $1 trillion in One Belt, One Road projects.

The Chinese government proposes next year to begin a five-year period of planning projects with its OBOR partners with a view to starting the projects’ full-scale implementation from 2021 and completion in 2049.

The economic prospects of the One Belt, One Road scheme have already had an impact in Europe. In March, Britain broke ranks with the US and signed up to the Chinese-backed AIIB to take advantage of the financial opportunities that could open up. Other European powers rapidly followed suit. Chinese academic Wang Yiwei commented: “The New Silk Road Initiative could help redirect the centre of geopolitical gravity away from the US and back to Eurasia… The recent decision by France, Germany, Italy and the UK to join the Asian Infrastructure Investment Bank goes in this direction, and represents a major shift in European attitudes towards Asia, and China in particular, that clearly departs from the US position.”

US imperialism, however, is not going to stand by and allow moves to integrate Eurasia by China and the European powers, from which it is marginalised or excluded altogether. American strategists have long regarded Eurasia—a region with 70 percent of the world’s population and over half of global output—as central to its global hegemony.

In his 1997 book T he Grand Chessboard, former US National Security Advisor Zbigniew Brzezinski wrote: “For America, the chief geopolitical prize is Eurasia... Eurasia is the globe’s largest continent and is geopolitically axial. A power that dominates Eurasia would control two of the world’s three most advanced and economically productive regions... Eurasia is thus the chessboard on which the struggle for global primacy continues to be played.”

Since the collapse of the Soviet Union in 1991, the US has sought to bring the vast Eurasian landmass under its domination. Its own Silk Road Strategy, first outlined in 1999, has guided its interventions and intrigues in the former Soviet Republics of Central Asia and the Caucuses. The “war on terror” provided the pretext for the US-led invasion of Afghanistan and the installation of a puppet regime to provide Washington with a base of operations in neighbouring Central Asia.

While not an elaborated or necessarily coherent strategy, the Obama administration’s “pivot to Asia,” along with its provocations and interventions in Ukraine and Syria, implicitly drives toward the break up and subjugation of China and Russia, in order to bring the Eurasian landmass under US hegemony.

Speaking about the TPP in October, President Obama declared: “When more than 95 percent of our potential customers live outside our borders, we can’t let countries like China write the rules of the global economy. We should write those rules.” But if the US is unable to dictates terms to the world through the TPP, and its counterpart for Europe, the Transatlantic Trade and Investment Partnership, then as it has done over the past three decades, it will resort to military provocations, interventions and war.

The vision of a One Belt, One Road scheme peacefully integrating Eurasia is no more viable than a united capitalist Europe. Fuelled by the deepening global economic crisis, the divisions and rivalries among the major imperialist powers within Europe and with the United States and Japan, will only intensify as each scrambles to secure its interests. The chief destabilising factor remains US imperialism, which has repeatedly demonstrated its determination to offset its historic decline through the use of military force, even if that could plunge the world into a catastrophic war.



C16-1,中国の木材輸入、世界の森林を破壊(2016-3-23)


Is China Exporting Its Environmental Problems?

Adam Minter is an American writer based in Asia, where he covers politics, culture, business and junk. He is the author of "Junkyard Planet: Travels in the Billion Dollar Trash Trade," a bestselling and critically acclaimed account of his decade writing and reporting in the world's scrap yards.
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Bkoomberg: 2016-3-23

One of the best pieces of news in years is that China's finally getting serious about cleaning up its environment. Renewable energy use is growing rapidly while coal use is declining. Air pollution targets are being tightened. Contaminated farmland is finally getting high-level attention. Yet all that good could be undermined if China simply exports its environmental problems elsewhere.

A case in point is China's campaign to protect its forests. For years, logging ran rampant as the country transformed itself into the world’s biggest buyer of timber and wood products, including everything from furniture to paper. Denuded hillsides contributed to massive floods in 1998 that forced millions to evacuate their homes. Fortunately, according to a study published last week in Science, stricter enforcement of localized logging bans has reversed the trend: Between 2000 and 2010, tree cover increased over 1.6 percent of Chinese territory (and declined over .38 percent). This year, China plans to cut its commercial logging quota another 6.8 percent and will expand a ban on logging natural forests nationwide.

Here's the problem, though: As China has quieted its chainsaws, the country has become the world’s largest importer of timber; the government predicts that by 2020 it will rely on imports for 40 percent of its needs. And as buyers, Chinese companies aren't terribly discerning. According to the London-based think tank Chatham House, China’s purchases of illegally harvested timber nearly doubled between 2000 and 2013, growing to more than 1.1 billion cubic feet.

The damage extends across the developing world. China buys up 90 percent of Mozambique's timber exports, around half of which were harvested at rates too fast to sustain the forest over the long-term. In 2013, the World Wildlife Fund declared that illegal logging in the Russian Far East had reached “crisis proportions” after finding that oak was being logged for export to China at more than twice the authorized volumes. That same year, Myanmar tripled the volume of endangered rosewood exported to China (where it's particularly valued for its use in furniture). At those rates, some of Myanmar’s rosewood species could be extinct by 2017. Despite a total ban enacted in 2014, rosewood exports to China surged last year to levels reportedly not seen in a decade.

China has no law against importing timber that was harvested illegally; buyers and overseas Chinese loggers (they can range from small independents to large corporations) are meant to self-regulate. (By contrast, the U.S. has had a formal ban on illegal plant imports since 2008.) Indeed, when Myanmar sentenced 153 Chinese loggers for illegal logging within its borders last year, China protested vociferously. The loggers were eventually freed.

Contributing to deforestation elsewhere obviously weakens the impact of China's own reforestation efforts. It threatens the supply of timber. And it exposes Chinese companies to reputational risk and even boycotts. Last year, Virginia-based Lumber Liquidators agreed to pay $13.2 million to settle charges that it had imported flooring from China that had been illegally logged in Myanmar and the Russian Far East. Though the Chinese supplier (the Suifenhe Xingjia Group) hasn’t been prosecuted in China, its alleged connection to Russian organized crime has to give pause to potential customers.

China established a national timber tracking and inspection system last year that's meant to give buyers more certainty about the sources of their imports. But the system is voluntary, limited in scope and easily manipulated. Companies face no legal sanction if they falsify the information.

At a minimum, China needs to ban formally the import of illegal timber. That should encourage better compliance with the existing tracking system. A similar system has worked in the U.S., where illegal imports of forested wood have declined between 32 percent and 44 percent since 2008.

China should also strive to respect export controls placed on wood by their trading partners, especially in developing Southeast Asia and Africa, by vigorously supporting prosecutions of individuals and companies that violate them. At the same time, U.S. and EU companies should conduct independent audits of their suppliers to ensure that imports meet their own domestic legal requirements.

Softening the impact of China’s economy on the global environment will never be easy. But if China can operate abroad as it expects its companies to do at home, it’ll be doing the planet a world of good.