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インドネシア鉄鋼業界、中国ーASEANの自由貿易協定に再交渉要求(09年10月31日)

インドネシアに鋼材の不正輸入が急増(08年10月19日)

ミッタルがインドネシアで2ヵ所の新製鉄所建設計画(08年7月15日)

ミッタルがインドネシアに30億ドルの投資計画(08年4月13日)

68. 04年4月から鉄鋼製品の輸入関税をゼロに?(04年3月8日)


68. 04年4月から鉄鋼製品の輸入関税をゼロに?(04年3月8日)

インドネシア政府は国内の鉄鋼製品の品不足に業を煮やし、4月から鉄鋼製品の輸入関税をゼロにするという思い切った方針を打ち出した。

通商産業省のスバギオ金属、電機製品局長は「鉄鋼製品の品不足は1年以上あるいは5年ぐらい続くのではないか?今輸入促進政策を打ち出さなければインドネシアは世界の供給国からサプライを受けられなくなるのではないか?」と心配している。

インドネシア政府はポーランドやウクライナや他の旧ソ連邦の国々と鉄鋼製品の供給について話し合いを行っている。国内の鉄鋼業は製品を市場で十分に捌けるのだから別に心配は要らないというのがスバギオ局長の考え方である。

これについては国営のクラカトウ・スチールをはじめとして国内各社(ほとんどが華人資本)いっせいに反発しており、クラカトウは抗議の意味で減産するといきまいている。

リニ通産省は「減産すれば打撃を受けるのはクラカトウ・スチール自身ではないか。」と平然としているという。

中国のバブルに起因する鉄鋼製品の不足はあっという間に世界的に広がりを見せている観がある。世界中で1億5千万トンは過剰設備があるなどといって日本の新聞はOECDのお先棒を担いで触れ回っていたがとんでもない話だった。

日本の5,000万トン過剰説は一体どうなたのであろうか?いんちきな記事を書きまっくっていた新聞記者・アナリスト諸君がこれからどういう説明をするか乞うご期待といったところである。

下記の表は東南アジア鉄鋼協会のまとめたインドネシアの鉄鋼見掛消費(生産+輸入−輸出)の数字であるが確かに薄板類の輸入比率はかなり高い。

しかし、インドネシアの薄板の輸入品で絶対になくてはならないものは自動車や電機製品に使われる高級財であり、これはクラカトウ・スチールも生産できない品種であり、輸入関税は低いに越したことはないであろう。

薄板類といってもガス管や水道管などの溶接鋼管に使われるような一般用途の素材(クラカトウの主力製品)は需給にあわせて適当に輸入関税を調節しないと、不況時にはダンピング価格で輸入品が入ってくるので関税での調節は避けられないであろう。

表68 インドネシアの鉄鋼需給(単位;1,000トン)

2001

2002

消費

生産

輸入

輸出

消費

生産

輸入

輸出

軌条・付属品

7

n.a.

4

2

7

n.a.

5

1

鋼矢板

4

0

16

12

6

0

9

3

形鋼

318

300

45

27

268

246

46

24

棒鋼

1,175

1,128

68

21

1,000

913

89

3

線材

480

610

123

254

508

625

130

247

厚板

385

370

71

56

283

332

86

135

熱延薄板・帯鋼

1,221

922

557

258

1,047

768

564

285

冷延薄板・帯鋼

661

406

329

74

740

335

504

99

電磁鋼板

49

0

49

0

45

0

45

0

亜鉛メッキ鋼板

518

416

112

11

503

438

85

20

ブリキ

161

71

90

0

191

86

107

1

その他鋼板

108

53

62

7

130

75

68

14

薄板類小計

2,718

1,869

1,199

350

2,656

1,702

1,373

419

鋼管

516

368

225

78

560

405

268

113

鋼材合計

5,603

4,645

1,752

799

5,287

4,223

2,005

945


ミッタルがインドネシアに30億ドルの投資計画(08年4月13日)

アルセロール・ミッタルのラクシュミ・ミッタル(Lakhsmi Mittal)会長は4月10日、ユドヨノ大統領、ブディオノ(Boediono)経済調整相、ファーミ・イドリス(Fahmi Idris)工業相、BKPM(投資調整庁)のルフティ(Mohammad Lufti)長官と大統領府で面談し、PT. Aneka Tambang(国営鉱山会社)とPT.Krakatau Steel(国営クラカタウ製鉄所)と合弁で30億ドル以上の製鉄所の建設を計画しているとの意向を表明した。

ミッタルとしては@PT. Aneka Tambangからニッケル、マンガン、鉄鉱石を買いたい、Aクラカタウ・スチールとの提携、Bクラカタウ・スチールと合弁で新規一貫製鉄所を建設したいというものであった。

ユドヨノ大統領としては大変結構な話であると、一応の理解は示したと言う。

ミッタルは製鉄所は需要地のジャワ島内に建設したい意向のようであるが、工業省やBKPMとしては原料の所在地であるカリマンタン島での建設を望んでいるという。

また、かねてからクラカタウ・スチールの株式を30〜40%民間に売却したいとインドネシア政府としては考えているが、ミッタルが同社の株を買うこともありうる。株式公開の話しは10年来の課題であるが、クラカタウの業績が芳しくなく、一向に話しが前に進まない。

インドネシアでは年間600万トンの鉄鋼需要があるが、国産ではクラカトウが250万トン、その他が150万トン合計400万トン程度しか自給できず不足分約200万トンの輸入を行っている。

国民1人当たりの鉄鋼見かけ消費はインドネシアは29Kgに過ぎず、マレーシアは400Kgに比べても大きく水をあけられているという。
(www.tempointeraktif.com/ 08年4月10日付け)参照、インドネシア語版


ミッタルがインドネシアで2ヵ所の新製鉄所建設計画(08年7月15日)

インドネシア投資調整庁(BKPM)のルフティ(M. Lufti)長官によるとミッタル(ArcelorMittal)は総額60億ドルを投じてジャワ島に2ヵ所の新製鉄所を建設する計画を明らかにした。

1つは東ジャワのパスルアン(Pasuruan)地区で既に100ヘクタールの土地を確保し年産200万トン規模の一貫製鉄所を建設する。2つ目は西ジャワのバンテン(Banten)地区であるが、こちらは用地は未定であるという。

ミッタルは当初国営クラカタウ・スチール社の株式49%を100億ドルで買うという提案をおこなっていたが、国内に反対論が多いためとりあえず、新立地で製鉄所を建設する方針に切り替えた。

国営企業省や議会内部ではクラタタウはいずれ株式を公開(IPO)し民営化することを引き続き検討するという。

その場合ミッタルはクラカタウの株式取得に興味ありという。

クラカタウの株式取得についてはオーストラリアのブルー・スコープ(BlueScope=元BHP)製鉄とインドのタタ(Tata)製鉄も関心を寄せている。

ミッタル社の2007年の純利益は104億ドル、売り上げは1,052億ドル、鉄鋼生産は1億1600万トンと世界の生産高の10%を記録した。

(thejakartapost.com/ 08年7月15日付け参照)


インドネシアに鋼材の不正輸入が急増(08年10月19日)

インドネシアの税関の調査によれば08年1〜9月の間の鋼材の不正輸入は前年同期比で20%増加した。そのため、関税のロスが1兆2000億ルピア(≒124億円)に達したと関税局は試算している。


インドネシア中央統計局によれば08年1〜8月の鉄鋼輸入は、旺盛な鉄鋼需要と価格の上昇により81億3000万ドルと07年の同時期は36億5000万ドルの実に2.23倍に達した。

そのなかで、不正な輸入も増加したのだという。相手国は中国が最も多いが他にロシア、台湾、タイ、インド、シンガポールからのものがある。(日本については特に指摘は無い)

インドネシアの鋼材需要は発電、軽油⇒LPG転換装置、補助金付きの集合住宅などのプロジェクトにより増加した。

インドネシア鉄鋼協会のヒダヤット(Hidajat Triseputro)理事長によれば不正に輸入されたホット・ロールド・コイル(熱延広幅帯鋼)の07年全体の量は90万トンであったが、08年1〜9月ですでに120万トンに達したという。


インドネシアは鋼材に限らず、あらゆる輸入品で関税のゴマカシが多く、これが国内産業の育成を阻んできたことは間違いない。その最大の元凶は税関当局の汚職体質にあったと見られている。

(ジャカルト・ポスト、08年10月17日、インターネット版参照)

インドネシア鉄鋼業界、中国ーASEANの自由貿易協定に再交渉要求(09年10月31日)

インドネシア鉄鋼連盟は政府に対し、中国との「自由貿易協定」について再交渉を求めている。

これは2010年1月から発効する、「ASEAN−中国自由貿易協定」に対するインドネシア鉄鋼業界の不安の表明であり、過去にも中国との「再交渉」を政府に要求してきたが、政府が聞く耳を持たなかったために、土壇場になって再度の交渉を求めるものであるという。

中国政府は鉄鋼業界に対し9.3%の補助金を支出しているというのがインドネシア業界の言い分である。

インドネシア政府の交渉窓口は商業省であるがマリ・パンゲツ商業相は業界の要求に応じることはないであろう。しかし、工業省はこの業界の要望を取り上げるように強く求めることは間違いなく、政府部内での論議を呼ぶことは間違いない。

09年に入ってからの中国からインドネシアへの鉄鋼輸出は減少しているが、これは現在中国の内需が旺盛なためで、2010年以降はまた大量にインドネシア市場に中国鋼材が流入することを危惧したものであろう。

鋼材に限らず、中国製のあらゆる工業製品が東南アジア市場を席巻しつつあり、とりわけインドネシアやフィリピンといった工業化の遅れた国々の「被害」は今後いっそう拡大するであろう。

インドネシアもフィリピンも今回の世界経済危機の被害をあまり受けていないのは「経済力」が強いせいだなどと自画自賛しているが、両国とも工業化がタイやマレーシアに比べてもかなり遅れており、相対的に輸出減少の被害が少なかっただけの話である。

一方、両国とも国内で働き口がない人が大量に「海外出稼ぎ」に出ており、「海外送金」が内需をささえているので、内需の落ち込みが少ないのである。

これでインドネシアやフィリピンの経済状況が良好であるなどというアナウンスを日本のメディアまでがやっているのだからオソマツきわまりない。