ラピンド事件 (トップ・ページに戻る)
⇒ラピンド事件補償の大幅遅れ、被害者政庁に座り込む(2010-8-12)
⇒ようやくバクリーが被害者への補償にマジメに取り組む?(08年12月9日)
⇒ラピンド社(バクリー)に議会から応援?(08年2月21日)
⇒ユドヨノ大統領、ラピンド社に保証を督促(07年6月28日)
⇒ラピンド事件、日本が技術、資金援助に乗り出す(07年5月17日)
⇒補償問題がラピンド事件の争点にー国家予算の支出が議論の対象(07年4月15日)
⇒熱泥噴出孔にコンクリートの玉を投げ込む作戦実施中(07年3月23日)
144. 東ジャワ・シドアルジョで熱泥噴出事件、バクリーの企業が関与(06年9月6日)
東部ジャワのシドアルジョ市近郊のポロン(Porong)地区でインドネシアのプリブミ企業2社とオーストラリアの石油ガス開発会社1社との生産シェアリング会社「Brantas PSC=Production Shearing Company)が天然ガス田の試掘をおこなっていたところ、ガスの代わりに何と「熱い泥水」と「有毒ガス」が噴出してしまった。
これは、たちどころに周辺の160ヘクタール(210ヘクタールという記事もある)に及ぶ住宅地、工場、田園を覆い尽くし、近くの高速道路も通行止めの区間ができ、8,300人の住民が避難するという一大災害を引き起こしてしまった。数日前にはサイトの従業員1名が熱泥をかぶり死亡し、負傷者も複数出ている。
このBrantas PSCの出資者構成は福祉調整相のアブリザル・バクリのグループ企業のラピンド(Lapindo Brantas)社が50%、PT Medco Energi Internasional(アリフィン・パニゴロの会社)が32%、Santos Brantas(オーストラリアの石油会社)が18%、という形になっている。
Brantas PSCは自前の技術ではこの熱泥の噴出を止めることができず、被害は日に日に拡大している。福祉調整相のアブリザル・バクリのグループ企業のラピンド(Lapindo Brantas)社がとりしきっている形のPSCの起こした事件なので、 政府もあまり強いことを言えずに成り行きを見守っている感じである。
もちろん、中央政府もシドアルジョ県もBrantas PSCとともに事態の解決に努力をしているとはいえ、今のところ事態は改善されていない。
ユドヨノ大統領も「熱泥をパイプ・ラインで運んで海に捨ててしまってはどうか」などという「農学博士」とも思えぬ発言をしたとかで非難を浴びている。
さすがに、この案は熱泥が海域に及ぼす被害(海洋汚染)が新たに発生する可能性が大きく、撤回されたということだが、「金のかからない対策」として政府部内でマジメに取り上げられていたフシがある。
また、最近では半径2Kmにわたって地盤沈下が始まっているという。さらには、近い将来「大爆発」を誘発する可能性を指摘する地質学者もいる。何しろジャワ島は「火山列島」であり、マグマが比較的地表の近くに存在するので地下3キロ・メートル (実際は9,297フィート)も掘り下げるとナニが起こるかわからない。
この事件が始まったのは何と5月29日であり、その間約100日間も大した対策・手段がとられなかったというのは、インドネシア政府のダラシナサを物語って余りあるといわなければならない。
地元政府機関は住民の強制移住を計画しているが、住民は「先祖代々」ここに住み着いて農耕を営んできたわれわれがなぜLapindoのヘマのおかげで知らない土地に移住しなければならないのかと反発を強めている。
ようやくオーストラリアでこの種の事故を止める技術をもった会社がみつかり、応援に来てもらうことにしたという。 しかし、とき既に遅く、手の施しようがなかったといわれている。
Lapindo(PT Lapindo Brantas)という会社はPT Energi Mega PersadaはKalila Energy Ltd.とPan Asia Enterprises Ltd.というバクリー系の会社 が所有している。
Energi Mega Parsada社は今回の事故で既に2000万ドル(23億円)を使ったなどといっているが、一向に成果が上がっている様子は見られない。おまけに最近になって同社はLapindoの株を転売しようとしていると報じられている。
相手先はバクリー・グループのほかの会社だということであるが、責任回避に動き出したとのではないかと勘ぐる見方も出ている。
既に、この事故による周辺住民と環境への被害総額は33兆ルピア(36億ドル)に達しているという試算がGreenomics IndonesiaというNPOによってなされている。 この補償は関係した企業がおこなうべき問題で、政府は補償する考えはないという。
ユドヨノ大統領は10月8日(日)熱泥が噴出して、どうにも止まらないシドアルジョの現地に、国民福祉調整相のアブリザール・バクリーらの関係閣僚を伴ってようやく視察に出かけた。バクリー一家の所有するラピンド社のガス田開発が今回の事故の元凶である。
ユドヨノ大統領は被災者(8カ村、1万人)の苦難を1日も早く(!!)緩和するため、関係チームに努力を促した。事故が発生したのは5月29日である。
対策チームはこの硫酸分などの有害物質を含んだ泥水を1.5Kmのパイプラインを敷設し、近くを流れるポロン(Porong)川に流すことを検討し、ユドヨノはこの計画にゴー・サインを出すべく現地にやってきたと見られている。
彼はもちろん、現地住民の声など聞くつもりはない。聞けば住民への補償に政府がコミットさせられかねない。それよりも数日後の迫った「ノーベル平和賞」受賞がどうなるかが気がかりなのかも知れない。
バクリーにとっては何とか損害賠償額を減らせないかという算段が先である。環境問題はその次の話しであるといったところか。
1日、12万6千立方メートルの熱泥は今日も噴出を続けている。
⇒MEDCOが熱泥事件を国際調停裁判所に提訴(06年11月14日)
熱泥流出事件を起こし多額の損害賠償を請求されることが予想されるBrantas PSC=Production Shearing Company)への出資会社の1つであるPT. MEDCO RNERGI Tbk はこの事件を国際調停裁判所(International Arbitration )に提訴する意向であるとTempoは報じている。
MEDCO(インドネシア最大の民間石油開発会社でアリフィン・パニゴロが所有する)はパートナーのLapindo Brantas(アリザバル・バクリーが所有し50%出資)がいくつかの「契約違反」を犯したとして、この事件について国際裁判所に提訴する方針を固めた。
アリザバル・バクリーは熱泥流出事件にかかわる巨額賠償請求を恐れて、支払い能力に限界のあるバクリー系の別会社に所有権を移すなどして、いざとなれば所有している子会社を倒産させて、賠償責任を他のパートナに押し付ける方策を準備しているという疑惑が持ち上がっている。
他のパートナーとはMEDCO(32%出資)とオーストラリアのSANTOS社(18%出資)である。
MEDCOの言い分ではLAPINDO社は9-5/8インチというの直径の大きなケーシング・パイプを使い、8,500フィート掘削するという、いわば「ガス漏れを起こす可能性がある」やり方で、今回の事故を招いたとしている。これについてはMEDCO社は事前に危険を警告していたという。
また、LAPINDOは1,400万ドルのリスク積立金を積んでおくという、3社協定を無視していたということもMEDCOは指摘している。
MEDCOの狙いは国際調停裁判所に提訴すれば、インドネシアのBAPEPAM(資本市場監視委員会)はバクリーがLAPINDOの株式を他社に売却して「責任回避」をすることを禁止することにあるとTempoは報じている(06年11月13日)。
⇒熱泥現場付近のガス・パイプラインが爆発8名が死亡(06年11月23日)
06年11月23日(水)に東ジャワ、シドアルジョ近くの熱泥噴出現場付近に敷設されていたプルタミナ所有のガス・パイプラインが 大爆発を起こし、救援隊が確認しただけでも8人が死亡し、他に行方不明者がいるといわれ被害はさらに拡大する可能性がある。
犠牲者の大部分が立ち入り禁止現場の警戒に当たっていた兵士と警察官である。
爆発の原因は地下に埋設されていた既存のパイプラインが熱泥の重量で押し潰されたか、あるいは熱泥に含まれる化学物質(硫化水素など)の影響で腐食し、パイプが破壊され爆発を起こし たものと推測されている。
⇒ラピンド社は3.8兆ルピアの弁償義務ありーSBY大統領曰く(06年12月29日)
ユドヨノ(SBY)大統領はラピンド社がガス田開発によって引き起こした熱泥噴出事故で、周辺の住民や企業や公共施設(高速道路など)に与えた損害賠償として3.8兆ルピア(約500億円)の弁償義務があると、閣議後の記者会見で語った。
その内訳として、熱泥の清掃や後始末に1.3兆ルピアを要し、住民への補償などに2.5兆ルピアかかるとしている。
06年5月29日に起こった噴出事故ののちも、現在でも1日12万5000立法メートルの熱泥が吹き出ているという。住民の被害者は17万人に及んでおり、土地を失った農民や工場閉鎖のため失業した人などは会社が出した補償だけでは暮らしていけず大きな混乱を招いている。
この閣議には当然、当事者のアブリザル・バクリー社会福祉調整相も出席していたものと思われる。どれくらい誠意を持ってバクリーやアリフィン・パニゴロー他の責任者が弁済に応じるかが注目されている。
副大統領のユスフ・カラなどは国家予算で一部を負担すべきだなどという発言もしているといわれ、この問題は今後紆余曲折が予想される。
⇒熱泥噴出孔にコンクリートの玉を投げ込む作戦実施中(07年3月23日)
ラピンド社がガス田開発によって引き起こした熱泥噴出事故は、その2日前に起こった地震に起因する「自然災害である」などというバクリーにとってはきわめて好都合な「原因究明」をおこなう学者集団が現れた。
そのメンバーに日本からも某有名国立大学の教官も参加し、「世界に前例はないが自然災害であると思う」などという科学者とは思われない発言をして顰蹙を買っている。インドネシアでは日本人の学者はそれなりに丁重に扱われてきたが、雰囲気に酔って気が緩んでしまう輩が時々現れる。
ウソか本当か知らないがケーシング(太いパイプの鞘)を使わないでドリリングをやっていたという説がある。もしこれが事実であれば重大なチョンボである。ガス噴出事故などが起こってもおかしくない。
いずれにせよ、ラピンドがドリリングをやっていなければこんな事件は起こらなかったであろう。もしラピンドの掘削活動と関係なしに起こった事故ならば、「世界に前例がない」などということはありえない。シドアルジョの近くの他の場所でも何らかの兆候があってしかるべきであろう。
それはさておき、熱泥の大量噴出はコンスタントに起こっているが、その対策として割れた岩盤をふさぐためにコンクリートの大きな玉を鎖でつないで噴出現場に投下するという奇想天外な実験がおこなわれている。
観測者の話では多少の効果が見られ、35分間噴出が止まったことがあり、その後一時激しい噴出が見られたとのことである。今のところ熱泥の噴出孔はドリリングで穴が開いた辺りだけで他からは噴出していないという。
今まで、コンクリート玉を投下したコストが30億ルピア(≒325,000米ドル)かかったそうである。この実験はさらに続けるという。
一方、32%の出資をおこない、バクリーを訴えていたMEDCO(アリフィン・パニゴローの会社)はバクリーと和解が成立し、100ドルで持ち株を全てバクリー側に売却することでこのプロジェクトから手を引いた。
ちなみにユスフ・カラ、バクリー、アリフィン・パニゴローはスハルト政権末期の「民族資本」重視政策のおかげでプルタミナのプロジェクトで大もうけをさせてもらった、いわゆる「ギナンジャール・ボーイズ」の仲間である。
また、住居を失ったタングラギン・セジャハトラの住民は補償を求めて「血判状」を作成したという。バクリーも「御用学者集団の自然災害レポート」だけで責任を逃れるのは困難であろう。
(http://www.thejakartapost.com/ 3月23日版、参照)
⇒補償問題がラピンド事件の争点にー国家予算の支出が議論の対象(07年4月15日)
ラピンド社が天然ガス開発の途中で熱泥を噴出させた今回の事件は、いつ噴出事態が止まるとも予想がつかない中で被害は毎日のように拡大している。
被害の総額も当初は3億ドル程度と見られていたが、既に政府の試算では直接被害額が7.3兆ルピア(≒970億円)、間接被害額が16.5兆ルピア(≒2,190億円)という額に達している。
政府はユドヨノ大統領をはじめとして今回の補償は全てラピンド社(バクリ一族)がおこなうべしという建前論は再三述べている。
しかし、大統領府のアンディ報道官(Andi Mallarangeng)はポロン川に熱泥が直接流出しないようにダムを作る必要があるが、その建設費をラピンド社が負うには重荷であろう(政府のカネでやる)ということをいっている。
ユドヨノ大統領はラピンド事件の処理のための特別委員会を発足させ、委員長には元ディポネゴロ師団長を務めたスナルソ(Sunarso)退役少将を任命した。スナルソはアリザバール・バクリ国民福祉調整相の顧問を務めた経験があり、「適任」という皮肉交じりの批判が出ているのは当然かもしれない。
当然ながら、国会での第1党であるゴルカル(ユスフ・カラが党首でアブリザル・バクリは副党首)の動きは政府からカネを何とか引き出そうという動きが活発化している。
国会の予算委員会委員長のエミル・ムイス(Emil Moeis)は「この事件はラピンド社が引き起こした事件であり、自然災害などではない。したがって政府が国民の税金で保証などすべきでない」と主張している。
スリ・ムルヤニ財務相は既にインフラ予算は割り当て(2.5兆ルピア)は済ませているが、国会で審議してほしいと語っている。
また、ジョコ公共事業相(Djoko Kirmanto)はとりあえずの建設費は緊急性から見て政府のカネでやるとしても、その資金は後日ラピンド社(バクリ)が弁済すべきであるといっている。
一方、補償問題で一向にラチがあかない住民はひそかに収容施設を抜け出し、数百人がジャカルタにむかい、首都で抗議行動をおこなう予定であるという。
⇒ラピンド事件、日本が技術、資金援助に乗り出す(07年5月17日)
シドアルジョの熱泥噴射事件は一向に対策が進まないまま、毎日熱出井の大量噴射が続いている。政府は補償をバクリに指示しているが、これまた住民が納得の行くような形では進んでいない。
そういう中で日本の片平エンジニアリングが噴射地点を2重の小型ダムで囲って、熱泥の噴射をダムの中に溜まる熱泥の「自重」で噴射を押さえ込むという方案を提出したと伝えられる(詳細は不明)。
そのための資金をJBIC(日本国際協力銀行)とJICAがソフト・ローンという形でインドネシア政府に提供するという申し出をしたとジャカルタ・ポストは伝えている(5月16日、インターネット版)。
片平エンジニアリングは6000億ルピア(≒80億円)の工事見積もりを提示しているという。
先に報じた、コンクリート玉を投下する方法は余り効果がなかったという。
インドネシア政府としてはこの案を検討しているという。
⇒ユドヨノ大統領、ラピンド社に保証を督促(07年6月28日)
ユドヨノ大統領はシドアルジョの熱泥噴出事件で、バクリー国民福祉調整相のバクリー・グループに属するラピンド社が被災住民への補償をスムーズにおこなっていないという非難を重く見て、6月25日、26日の両日、現地視察に赴いた。これは事件発生以来公式には2度目の視察ではないかと思われる。
ユドヨノ大統領にはジョコ・キルマント(Joko Kirmanto)公共事業相、スリ・ムルヤニ・インドラワティ(Sri Mulyani Indrawati)財務相、バフティヤール・チャムシャ(Bachtiar
Chamsyah)社会サービス相、プルノモ・ユスギアントロ(Purnomo Yusugiantoro)鉱物資源相らが随行したが、肝心のアブリザール国民福祉調整相は行かなかった。
このラピンド事件はNHKの衛星第1放送で6月27日(水)午後7時から特殊番組で報道された。
その惨状はこの番組を見られた方はよくご理解いただけたと思う。
たった1本の「試掘井戸」を掘っただけでなぜこんな大事件に発展してしまったのか?
この地域で数日前に起こった地震で岩盤にキレツが入ったため自然に地下の水蒸気が噴出したのだと説明する、いわば「自然災害説」を主張する学者もいる。バクリーとしてはこの説はまことに「有難い」。
ところが、明らかになった事実は、この試掘井戸を掘るのに、何と「ケーシング」と呼ばれる「ドリルの鞘」ともいうべき保護パイプを使わないで、ドリルを裸で地下の岩盤に付き立てて掘っていったというのだからあきれるほかない。
というのはケーシング用鋼管の費用を浮かせ、安上がりで試掘をおこなったからに他ならない。ケチなことをやるとしばしばツケが後から回ってくる。
NHKの番組では例によって重要なポイントはボカサレたり、隠蔽されたりしている。
ラピンドは後からケーシングを使おうとしたが失敗したという「言い訳」にもならない現地の技術者の話を紹介している。これはきちんとした他の専門家の意見を放映すべきであった。
また、あきれたことにバクリーのバの字も出てこない。いったいこれはナンですか?バクリーはもちろんインタビューには応じなかったであろうが、バクリーの名前をださないことによってNHKはバクリーを擁護しているのでる。
これはインドネシア人に対してのみならず日本の視聴者をバカにしている態度といわざるを得ない。放映しただけでもマシだろうといいたいところであろうが、事実関係を隠蔽する報道ならやらないほうがマシかもしれない。
これがNHKの体質なのであろうか。真剣に真一文字にやっているなどというのは余りにも視聴者をコケにした、インチキなコマーシャルではないだろうか?「仏作って魂入れず」とはこのことか。一体NHKの誰がこういうことを指示したのであろうか?
ところで、ユドヨノ大統領は現地にいって、住民との対話は一切おこなわず、現地をヘリコプターで視察したという。
結論として、ラピンド社は被災住民の救済を速やかにおこなうべしという指示を出した。役所の土地所有確認が遅れているからということを口実にしてラピンド社は補償をろくにおこなっていないことはNHKの番組でも紹介されていた。
家を追われた住民は、市場の広い場所に難民として収容され、多数の住民がそこで寝起きして、ラピンド社が支給する弁当を毎食あてがわれている。養鶏場のニワトリ並みの生活を何ヶ月も強いられている住民の生活は惨めさを通り越した、重大な人権問題である。
せめて、カネを払ってくれて自由に調理させてくれという住民の声を、インドネシアの役人やラピンドの関係者は聞いたことがないのだろうか?こんなことを国民福祉の最高責任者が見てみぬフリをしているのである。
ユドヨノがやるべきことはバクリーに事故前の生活を住民に一日も早く返させることである。土地を所有していたものにだけ補償するというのは、「土地なし農業労働者」の多いインドネシアの実態を無視した考え方である。
ユスフ・カラ副大統領の自宅にも住民のデモが押しかけているという。ユスフ・カラとバクリーはスハルト時代からの盟友(ともにプリブミ資本家としてさんざ金儲けをさせてもらった)であり、ゴルカルの幹部である。何かにつけてユスフ・カラはバクリーをかばってきた。
ユドヨノ大統領が毅然としないからこんなことになっているというのは多くのインドネシアの気持ちであろう。ユドヨノ大統領は現地で被災住民の有様を「聞いて」涙を流したという。しかし、大統領のやるべきことは涙を流すことではないであろう。
⇒ラピンド社(バクリー)に議会から応援?(08年2月21日)
熱泥噴射事件が起こってから1年半が経過したが、2007年にユドヨノ大統領が出した救済命令によるとりあえずの3兆2000億ルピア(約380億円)の住民への補償は、家財産を失った住民に対し20%程度しか進んでいないという。
おりしもインドネシア議会は29名の国会議員からなる特別調査チームを組織し、「実態調査(?)」を実施し、このほどその報告書なるものが発表された。
その内容の骨子は「熱泥噴射事件は人為的なミスではなく自然災害によるものである」という。
調査チームにはもちろん地質学の知識があるメンバーは皆無であり、ナニを根拠にそのような結論を得たのかという反発の声が議会内部から起こり、騒然としているという。
かつて日本の某若手大学助教授が「今まで世界に類を見ないが、自然現象によるものであろう」などと無責任な発言をして物議をかもしたことがあるから素人集団ばかりを攻めるわけにはいかないだろうが、いかにも意図はミエミエであり、政府の実力者でいまやインドネシアでナンバー・ワンの金持といわれる国民福祉経済相(副大統領に次ぐ地位)のアブリザル・バクリー氏への迎合だと受け止められるのも無理もない。
絶望感に打ちひしがれた現地の被害者は道路や鉄道の封鎖などの実力行使に出ているという。
ユドヨノ大統領はいいっぱなしで何も実になることはやっていないではないかという声が上がっており、この件で大統領の出席を求めて議会で追求すると息巻く議員も多いとのことである。
2009年は大統領選挙と国会議員選挙がおこなわれる。こんなことをやっていては政治や国会に対する国民の不信感はますます強まることは間違いない。(イエ、これはあくまでインドネシアの話しである。)
それでもインドネシアは国会内で正論が出てくるし、メディアもサポートするからフィリピンよりは大分マシなのかもしれない。
⇒ようやくバクリーが被害者への補償にマジメに取り組む?(08年12月9日)
ラピンド社の天然ガスの試掘によって岩盤が破壊され、熱泥が大量に噴出して周辺の農地や家屋や工場を埋め尽くすという大惨事が2006年5月に起こってから2年半が経過した。熱泥の噴出は今も続いている。
被害者の多くは生活手段を奪われたまま、わずかな補償でその日の最低の食糧を与えられてようやく命だけはつないでいると惨状が続いている。
日本の学者で「前例は無いが、あれは掘削活動のセイとはいえず、自然災害である」などと無責任な発言をするものまで出てきて、バクリーを喜ばせたものがいた。
結論は「バクリーのラピンド社の責任」というのが政府の見解で、補償を義務付けた大統領命令も2007年に出ている。
被害者は所定の保証金額の20%を受け取ったのみで、事実上放置されてきた。
ユドヨノ大統領はようやくバクリーに「補償の速やかな実施」を改めて11月27日に命じた。
バクリーはようやく、残りの保証金を月賦で支払うことを約束した。1所帯当たり、月額3千万ルピア(≒24万円)である。
しかし、住民は以遠にバクリーはこの年末に一括で全額補償すると約束していたので住民の怒りは収まらない。コマ切れで保証金を貰っても生活費に多くが消えてしまい、彼らの生計を立て直すための資金に回す額が減ってしまうからである。
バクリーの補償額は総額で3.5〜4兆(≒320億円)ルピアと見積もられている。2007年の雑誌フォーブスの資産ではバクリーは54億ドルの資産がありインドネシアではナンバー・ワンの金持ちだということになっていた。昨年の早いうちに補償を済ませておけばもっと楽だったはずである。それをバクリーは払い渋った。
しかし、最近の経済危機の中で、バクリーの虎の子のブミ・リゾーシズの株価も暴落し、かつての7分の1近くになってしまった。
現在のバクリーの支払能力はガタ落ちになっていることは事実であろう。しかし、これを完済しないことにはバクリーの将来は危うい。
バクリーから政治資金を出してもらって大統領に当選したと取りざたされているユドヨノ大統領も来年の選挙がおぼつかなくなる。
もとはといえば責任はバクリーにある。払えるうちにスッキリさせておけばこんなことにならなかったはずである。今年のバクリーにはまるで天罰が下っているかのようだと陰口がたたかれているという。
⇒ラピンド事件補償の大幅遅れ、被害者政庁に座り込む(2010-8-12)
2006年に東ジャワのシドアルジョで天然ガスを試掘していたバクリー系BRANTAS社がケーシング(ドリル・パイプの鞘)を使用しないという乱暴なドリリングがたたって掘削口が破壊され有毒ガスと熱泥が噴出するという前代未聞の事件が発生した。
被害は10平方キロにおよび、1,800軒の家屋が破壊され、多くの工場や学校が熱泥に埋まり、被災者は3万人に及んだ。
被災者は公共の市場などに避難しており、補償についてもバクリー社と合意はしたものの、ここ半年ほど補償が実行されないとして、住民の代表がシドアルド県庁に乗り込み座り込みを始め5日間が経過した。8月11日からイスラム教徒の断食月(ラマダン)が始まり、住民は早期解決を目指してジャカルタの国会に抗議に出向くとしている。
これについてのバクリー側の釈明は聞かれない。(2010-8-12、Tempo英字紙電子版参照)