トップ・ページに戻る
熱帯雨林の不法伐採
47. 北スマトラの観光地で鉄砲水ー死者170名、原因は不法森林伐採(03年11月4日)
57-5. 中国が大量にインドネシアの盗伐材を輸入(05年5月19日)
57-1. EUへの木材製品の輸出にはECラベルが必要(04年1月29日)
今年4月からEUに輸出されるインドネシア産木材加工製品(合板など)にはEC(European Conformity)マーク が必要になる。ECマークは保健、安全、環境といった項目の基準を満たさないと発給されない。
生産者にとっても消費者にとってもコスト・アップにつながるが、この制度を適用すれば熱帯雨林の不法伐採の禁止にもかなりの効果が期待できる。
インドネシア側にとっては、これはEUの「非関税障壁」につながるとして警戒する声も上がっているが、熱帯雨林の破壊を食い止める手段として有効なものであることは間違いない。
日本政府も直ちに実行に踏み切るよう検討すべきであろう。
57-2. インドネシアの不法伐採木材が大量にマレーシア経由で輸出(04年2月4日)
環境保護グループでロンドンに本部を置くEIA(Environmental Investigation Agency)とマレーシアのNGOのTelapakはインドネシアの熱帯雨林の希少価値の樹木が大量に不法伐採されマレーシアに持ち込まれ(スマトラからジョホールへ)、それが中国などに輸出されていると語った。
マレーシアの輸出業者は絶滅の危機にあるとされるラミン・ウッド(ramin wood=raminとはインドネシア語辞典によればバスケット用とあるが 中国では額縁などに加工されている)に偽の原産地ラベルを貼り付け中国に再輸出しているという。
インドネシア政府はラミン・ウッドが絶滅の危険にあるとして2001年に取引を禁止し、国連機関にも登録している。
しかし、両国政府は目と鼻の先で違法行為が行われているにもかかわらず、見て見ぬふりをしているとTelapakのハプソロ氏は述べている。またハプソロ氏はこの問題はインドネシアの膨大な森林破壊の氷山の一角にしか過ぎないとも語った。
EIAのジュリアン・ニューマン氏はMerbauとよばれる樹木も東パプアで大量に伐採されており、ラミンは絶滅危険種のほんの一例でしかないと語った。
ニューマン氏は軍と警察と地元の大金持ちが不法伐採の張本人だと述べた。
World Resources Institute, Global Forest Watch, Forest Watch Indonesiaの2002年の共同調査報告書によればインドネシアでは毎年200万ヘクタール近い森林が失われているという。(http://www.malaysiakini.com 04年2月4日参照)
中国のみが不法伐採木材を輸入しているという槍玉にあがっているが、日本はそれほど善玉なのだろうか?下の表57−1を見ると、日本はインドネシアからは合板(ベニヤ板など)の形で輸入していて丸太(Rwd)はたいした数字ではない。
しかし、マレーシアからの輸入を見ると、なんと丸太材(Rwd)の輸入が2001年、アではベラボーに多かった。しかも1997年(スハルト大統領が健在だった年)も大きな数字である。
マレーシアからの丸太の輸入はインドネシアの不法伐採材も大量に含まれていると見るべきで、NHKが昨年放送していた、「スハルト政権崩壊(98年5月)以降に不法伐採が急増した」などという話はマユツバものである。
もちろん合板の輸入は問題ないとはいえない。ベニヤ板などは建設現場のコンクリートの型枠に使用され、一度使ったらゴミにされてしまうようなものである。こういう用途には鋼製型枠を使用するようにできないものだろうか?
鋼製型枠なら何度でも使えるし、最後はスクラップにして電気炉に入れれば鋼材として再度お役に立てる完全リサイクル材料である。難点は少し重いのと、メンテナンスに人手がかかるということだが、それくらいは我慢しなければ地球の環境保全などできないであろう。
表57−1インドネシアから日本への木材関連輸出(単位;立方米)
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
|
Chips & Partiles |
22,156 |
35,747 |
64,714 |
64,014 |
70,217 |
Fibreboard |
2,250 |
1,157 |
719 |
867 |
2,871 |
Ind Rwd Wir C |
35 |
533 |
47 |
26 |
4,522 |
Ind Rwd Wir Other |
0 |
113,881 |
923 |
335 |
7,451 |
Ind Rwd WIR Tropica |
270,507 |
27,853 |
56,165 |
46,330 |
156,274 |
丸太材計 |
270,542 |
142,267 |
57,135 |
46,691 |
168,247 |
Newsprint |
463 |
0 |
681 |
562 |
2 |
Paper+-Board Ex Np |
5,294 |
46,784 |
65,499 |
120,837 |
99,781 |
Paticle Board |
93,670 |
86,008 |
262,264 |
7,002 |
3,011 |
Plywood |
3,733,127 |
1,675,814 |
2,789,058 |
2,381,265 |
2,663,890 |
Sawnwood |
2,832 |
4,197 |
14,189 |
6,954 |
8,822 |
Sawnwood(NC) |
102,271 |
148,521 |
55,269 |
271,487 |
261,000 |
Veneer Sheets |
1,541 |
136 |
794 |
409 |
141 |
Wood Pulp |
51,112 |
110,256 |
59,217 |
94,086 |
111,638 |
表57−2マレーシアの日本向け木材関連輸出(単位;立方米)
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
|
Chips & Partiles |
155,011 |
97,474 |
336,903 |
444,608 |
346,621 |
Fibreboard |
235,750 |
152,813 |
166,881 |
94,783 |
138,465 |
Ind Rwd Wir C |
26,140 |
31,689 |
10,917 |
20,036 |
4,921 |
Ind Rwd Wir Other |
0 |
736,121 |
686,000 |
259,786 |
534,414 |
Ind Rwd WIR Tropica |
2,945,002 |
2,224,980 |
2,236,000 |
2,176,907 |
583,859 |
丸太材計 |
2,971,142 |
2,992,790 |
2,932,917 |
2,456,729 |
1,123,194 |
Newsprint |
499 |
0 |
0 |
0 |
0 |
Paper+-Board Ex Np |
569 |
162 |
434 |
2,894 |
4,705 |
Paticle Board |
95,656 |
11,427 |
5,200 |
15,194 |
8,032 |
Plywood |
1,572,000 |
1,247,157 |
1,662,203 |
1,437,970 |
1,851,242 |
Sawnwood |
39,920 |
15,354 |
24,020 |
23,787 |
14,948 |
Sawnwood(NC) |
500,674 |
236,512 |
315,643 |
207,394 |
236,222 |
Veneer Sheets |
198,327 |
68,113 |
69,281 |
219,434 |
37,844 |
Wood Pulp |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
資料出所;ともにFAO
これとは別に環境保護団体のグリーン・ピースは中央カリマンタンのタンジュン・プチン国立公園内で盛大に不法伐採が行われており、オラン・ウータンの生息数が減少していると報告している。
そこでは伐採された木材は現地の合板工場で下加工れ、主にオランダ、ベルギー、イギリスに輸出されているという。
これらの不法伐採木材を世界に流通させる悪徳業者としてマレーシアのサラワク州の華人実業家チオン・ヒュー・キン(Tiong Hiew King)の名前が挙げられている。彼はリンブナン・ヒジョウ(Rimbunan Hijau)という企業を所有し、世界的に木材製品の輸出を行っている。
チオンは出版業界のボスでもあり、星洲日報を所有し、またサラワク・統一人民党の党首としてマレーシア上院議員を務めてこともあり、政界とのつながりはきわめて強い人物である。
彼の行動についてはマレーシア政府も全て黙認しているかの観すらある。今回彼が国際的環境保護団体であるグリーン・ピースによって名指しで批判されたことによりマレーシア政府も看過できなくなってきたものと思われる。
⇒インドネシア政府がマレーシアに対し木材密輸取締りの協力要請(04年3月2日)
PHKA(森林保護・自然保全)の理事長であるクス・スパルジャディ(Koes Sapardjadi)氏は3月1日マレーシア政府にたいし、真剣に不法伐木材の密輸禁止に取り組むよう要求した。
マレーシア政府は密輸木材の取り扱いを半ば公認しており、マレーシアの港から出荷される密輸木材に「課税」をしているという。
森林省によれば2002年と03年の不法伐採は金額にして3,558億ルピアにたっした。インドネシアのNGOのTelapakとロンドンのEIAによれば毎月4,500立方メートル以上のラミン・ウッドがジャンビ(スマトラ島)からジョホール・バルに輸出されているという。
マレーシアはインドネシア政府が大量の不法伐採木材の密輸を黙認しているとして反論した。
また、ノルウェー政府はインドネシアにおける不法伐採をとめさせるために、インドネシア政府に対し300万ドルの資金援助を申し出たという。この援助は既に10年間続けられている。 (http://tempo.co.id/ 3月2日付けほか)
⇒木材製品の価格高騰(04年3月16日)
ビジネス・インドネシア(3月16日、インターネット版)の伝えるところによれば、このところ木材関連製品の国際価格が急騰しているという。
これは最近の熱帯雨林保護運動の国際的な高まりによりインドネシア、マレーシア両政府が急遽不法伐採対策に乗り出したためである。
インドネシア木製パネル協会(Apkindo=スハルトのクローニーのボブ・ハッサンが前会長)の調べによれば、木製パネルの価格は現在350ドル/㎥であり、先月は230ドル/㎥であった。
また、短繊維パルプの価格は前月が400ドル/トンであったものが現在500ドル/トンに上昇し、上の価格も600ドル/トンから800ドル/トンへと急騰している。
日本への合板の輸出価格も230ドル/㎥から250ドル/㎥へと上昇した。
インドネシア政府は木材の不法伐採の刑罰を重くすることを健闘しており、最高刑は死刑とすることを検討しているという。
57-3 不法伐採木材問題でマレーシアとシンガポールは話し合い拒否(04年8月22日)
ASEAN統合問題を話しあう予備会議(8月17−20日、ジャカルタ)でインドネシアが木材取引問題を提議したところマレーシアとシンガポールが議論を拒否し、インドネシア政府への協力を拒否する姿勢を見せた。
これは明らかに両国がインドネシアで盗伐された木材の取引に関与していることを示す何よりの証拠であるとインドネシアの当局者(産業貿易省、通商産業協力局局長M.HUtabaart)は述べている。
両国の基本姿勢は「木材」についての議論には応じるが「不法伐採木材」の話には全く応じる姿勢がないという。事実インドネシアのカリマンタンで盗伐された木材はトラック200台分が毎日マレーシア側に陸送されているという。
それはマレーシア産の合法木材として中国や日本に再輸出され、マレーシアの特定業者が巨利を得ている。彼らはマレーシア政府に対して大きな影響力を持っているといわれている。
ASEAN統合予備会議では農業、漁業、ゴム、木材、繊維製品、自動車、観光、エレクトロニクス、健康サービス、航空業、電子取引などが基本問題として論議されている。(http://www.tempointeractive.com/ 2004/08/21参照)
57-4. スシロ大統領、不法伐採の取りしまりを宣言(04年11月12日)
深刻化の様相を深めているインドネシアの熱帯雨林の急速な消滅傾向を阻止すべく新任のSBY(スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領)は不法伐採撲滅宣言を行った。
SBYは11月11日に不法伐採を阻止するために、従来華人資本家とグルになって不法な利益を上げてきたとされる役人、軍人、警察官を含め徹底的に取締りを強化しすると宣言した。
通貨・経済危機以降、資金源を失った軍・警察が不法伐採に関与していることはいわば公然の秘密であり、これを取り締まるということはそれに見合う財源を軍・警察に与える必要がある。
前のメガワティ政権は軍の事情に弱い(同情的)な面が多分にあったが、SBYは軍人出身者であり、軍の違法行為を許すことは国民の信頼を失うことにつながるだけに、真剣に取り組まなければならないであろう。
日本は、いわば合法な木材のみを輸入していると称しているが、実態はインドネシアからマレーシアに密輸され、そこで「合法ラベル」を貼り付けたものを輸入していることは間違いないといわれている。
安い「南洋材」が日本国内の森林業を破滅に追い込み、それが日本の国土破壊につながっている現状を思えば、日本は率先して南洋丸太材の輸入を全面禁止してもおかしくない。
日本の林業を再生させることにもつながるのではないか。
57-5. 中国が大量にインドネシアの盗伐材を輸入(05年5月19日)
ジャカルタ・ポスト(5月18日付け、Internet版)によると、インドネシアの森林情報センター長トランストト・ハンダハリ氏は「中国はインドネシアの森林から不法に伐採された木材を輸入した強い指標がある」と語った。
ハンダハリ氏は「強い指標」とは中国の税関当局の統計から読み取れるものであり、昨年中国は89万4千立方メートルの木材を輸入している。その多くはマレーシアとパプア・ニューギニアからのものである。
しかし、パプア・ニューギニアは実際は木材輸出を減少させているのである。この事実により、中国はインドネシアで盗伐された木材を(パプア・ニューギニア材として)輸入しているのである。
SGS(ソシエテ・ジェネラル・サーベイランス=関税業務の請負などをやる世界的に有名な会社)が出している公式統計によるとパプア・ニューギニアは過去9年間木材輸出を減少させてきている。
パプア・ニューギニア政府の方針として丸太材輸出から製材輸出に切り替えていることも木材輸出の減少につながっているとSGSでは説明しているという。
ハンダハリ氏は毎月30万立方メートルの木材がパプアから中国に密輸出されているという。
また、同日付のジャカルタ・ポストの記事でカバン(Malam Sambat Kaban)森林相の談話として、過去5年間でインドネシア政府は「木材の不法伐採により180兆ルピア(191億ドル)」の損害を受けたとされている。
今回はSBY大統領の強力な指導で盗伐材撲滅が進められており、137名が逮捕され、南と西カリマンタン州だけで27名の公務員が解雇されたと述べている。
インドネシアの盗伐は軍・警察・役人とそれをうまく利用する華僑(インドネシアとマレーシアの)と各国の輸入業者が国際的な「官民一体体勢」で行われているのである。それがインドネシアの経済と自然環境に重大な損害を及ぼしているのである。
そして、安い中国製の木製家具が米国(日本にも)に輸出され、米国の家具メーカーとそこで働く従業員の雇用に打撃を与えるという仕組みになっている。もちろん、安い家具があければそれでいいという考えも存在する。
しかし、それによって失われるものの方が地球規模で見たら大きいことはいうまでもない。
47. 北スマトラの観光地で鉄砲水ー死者170名、原因は不法森林伐採(03年11月4日)
スマトラ島北部のブキット・ラワン保養地(メダン市の北方100km)で11月2日(日)豪雨ののち鉄砲水が押し寄せ、死者200名以上を上回るう大惨事が起こった。 最終的にはバリ島爆破事件の死者202名を上回ることは間違いない。
死者の中には、オーストリア人、ドイツ人、シンガポール人などの外国人観光客も含まれている。
鉄砲水の原因は、隣接するグヌン・レウセル国立公園の「不法伐採」によるものであると見られている。環境監視団体は不法伐採の犯人を非難し、死罪に値するとという声明を発表している。
不法伐採の主犯は国軍であるというのが、いわば公然の秘密となっている。1998年の経済危機以降、国軍の資金源が枯渇したため、軍をバックにした不法伐採業者がインドネシア全土で暗躍している。
警察もその仲間に参加しており、肝心の森林省や森林警察もそのおこぼれにあずかっていたといわれ、誰も本気で取り締まるものがいないというのが実情である。
1999年にはこのグヌン・レウセル国立公園の森林監視官が3名射殺され、2箇所の監視所が放火で焼失した。
このような目に余る不法行為に対し、インドネシア政府は有効な手段を取ってこなかった。特に、軍にたいして融和的なメガワティ政権は全くといってよいほど無策であった。
また、IMFの肝いりで強引に推進してきた「地方分権」も、地方行政府役人が勝手に資金稼ぎを行い、盗伐や砂の不法販売を行い私腹を肥やしているという。
インドネシアは収拾のつかない状態になっている感すら免れない。そのおおもとは政権を担当しているメガワティが夫タウフィクやその身内に勝手なことをさせておくことに求められる。
スハルト時代にも、トップの腐敗が全国的に汚職天国を展開させたが、メガワティ政権も一握りの有識者の頑張りにもかかわらず、ズルズルと悪い方向に流されていっている。
メガワティの最初の夫との間にできた長男ムハマド・リズキ・プラタマ(34歳)もジャカルタ市内の国有地払い下げで、不正疑惑がもたれ議会で追求されているという。
(03年11月9日追加)
今回の悲劇に、さすがのメガワティも重い腰を上げ、「自然はわれわれを怒っている。不法伐採者はテロリストに等しい」と怒りの言葉を発した。
ナビエル・マカリム環境相は、「われわれがいくら証拠を突きつけても不法伐採者が法廷で有罪になるとは限らない」と裁判官が容易に買収されやすいインドネシアの司法の現状を嘆いている。
何か、具体的な対策が出てくるのか?何も決めてはなさそうである。もちろん大統領が本気になってやれば多少の効果は上がる。
113. 押収された不法伐採木材を競売、2兆ルピアに達する(05年5月10日)
カバン(M.S.Kaban)森林相によれば、パプアの森林保護作戦IIで押収された不法伐採木材などの競売によって少なくとも2兆ルピア(約220億円)が国庫に入るということである。
05年の3月5日から5月5日に行われた捜査で80,768本の木材(429,820立方メートル)が押収された。そのうち、8,450本が合法的な所有者に返還され、3,520本が検察庁に送られ、残り68,190本が競売にかけられる。(残りの608本については不明)
72名が被疑者として裁判にかけられるという。パプアの作戦は比較的うまく言ったように思えるが、全国規模で不法伐採が続いており、これらの「疑惑木材」の輸入禁止に各国の協力が無ければ根絶しがたい。
しかし、中国などの大量輸入国は不法伐採木材の輸入禁止については明言を避けているという。
日本も安いからといって南洋丸太材の輸入を何時までも続けるべきではない。国内の森林が荒れるばかりである。