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KKN(汚職・不正)
12-1 インドネシアの判事、給与引き上げを要求(2012-4-29)
141最も汚職の激しい役人は警察官ー企業家へのアンケート結果(09年1月22日)
140.BLBI資金を踏み倒した人物が香港で捕まるがすぐに釈放(08年7月11日)
139.インドネシア司法の汚職に全面的にメス(08年6月19日)
138.
汚職容疑の最高裁長官バギル・マナンが再任(06年5月9日)
129.最高裁長官がワイロを受け取る?(05年10月12日)
127.近く130名の裁判官について取調べを実施(05年9月28日)
125.石油密輸事件
125-1.
石油密輸でプルタミナの職員18名他逮捕(05年9月10日)
126. 為替取引で外銀5社の脱税発覚(05年9月12日)
111.15,000トンの砂糖密輸船を拿捕(05年4月27日)
112. 役人による違法な課金請求が輸出コストを倍加(05年5月10日)
114.
ハミド司法相、選挙管理委員会から報酬受け取る(05年5月14日)
115.インドネシア政府が 汚染疑惑国営企業の16社を公表(05年5月22日)
120.
メッカ巡礼基金を歴代宗教相がつまみ食い?(05年6月22日)
119.
南ジャカルタ地裁判事が取り調べを受ける(05年6月21日)
118.
アディグナ・ストオの殺人罪に7年の禁固刑判決(05年6月16日)
102. 2004年下期だけで7兆ルピアの公金が不正に消える(05年3月17日)
108.マンディリ銀行の不正融資
108-3. Mandiri銀行とBNIは不良債権が 急増している(06年2月24日)
11. 検事総長の汚職騒動(02年10月9日)
別に驚くにはあたらないが、検事総長のラフマン(M.A. Rachman)が公務員財産監査委員会(KPKPN)に10月2日に彼の財産報告に記載されている以外の「隠し財産」があるのではないかという容疑で取調べを受けた。 ラフマンについては次長時代から悪評が絶えず、周囲の猛反対を押し切る形でメガワティが検事総長に任命した。
果たせるかなインドネシア検察庁は「汚職の巣窟」といわれるほどの発展を遂げてしまった。ラフマン自身の今回の直接の疑惑は彼が99年11月に購入した「豪邸」についてである。
時価50億ルピア(56万ドル)といわれる邸宅を長女チャイルニサ(Chairunnisa)に2000年10月に譲渡し、彼女は2001年1月に 自分が経営する歯科クリニックの設備資金をえるために、実業家フセイン・タノト(Hussein Tanoto)に9億6000万ルピア(10万6600ドル)で売却したというものである。
しかし、家の名義人はチャイルニサのままであるという。実態はラフマンの家を娘に名義を書き換えただけであり、こういうことは極東の某経済大国の政治家にも時折みられることである。
ラフマンはこの家は娘 (次女ムティワ)の結婚祝いに知り合いの実業家から貰った祝い金で買ったものだという。
チャイルニサも取り調べを受けたが、元国軍司令官、国防相のウィラント(Wiranto)が経営する弁護士事務所の弁護士が同行した。
また、ラフマンはこれ以外にも5箇所に家屋を保有しており、さらに銀行口座の5.456億ルピア(約6万ドル)と29,600米ドルがあり、これらについても取調べを受けた。ちなみに、彼の検察庁次長時代の給料は月額580万ルピア(約630ドル)にしか過ぎなかった。
また、実業家フセインは裁判官や検察庁と被告人、原告など裁判当事者間を取り持つブローカーとして有名な人物であるという。(ジャカルタ・ポスト 10月3日号 、10日号などの記事による)
メガワティはラフマンに辞任を求めたが拒否されたいわれている。表向きの理由は仮に起訴されても有罪が確定するまではその地位にとどまって差し支えないはずだということのようだ。
その前例として最近ではアクバル・タンジュン国会議長が、一審3年の実刑判決にもかかわらず、控訴中ということで現職にとどまっている。
検察庁が巨額の汚職をできるようになったのは、1997年の通貨・経済危機以降IBRA(インドネシア銀行再建庁)に資産を差し押さえられたり、BLBI(中央銀行流動性支援)のからむ経済犯(主に華人資本家の借金踏み倒しや、公的資金の不正流用など)が急増したためである。
スハルトの3男トミーの判事殺害事件の裁判でも巨額の資金が動いたという話である。実行犯の殺し屋2名が無期刑であるのにたいし、主犯のトミーが求刑・判決とも15年の実刑であり、公判担当の検事の投げやりな態度が批判された。
今日インドネシアでメガワティ政権が目指したKKN(汚職、癒着、ネポティズム)撲滅運動が最近たいした成果を上げていないのは検察庁のせいだという声が強くなっている。そういうなかで今回の検事総長の汚職スキャンダルは重大な意味を持つことはいうまでもない。
ラフマンが辞任する可能性は現在のところ極めて低いと考えられている。というのは現職の検事総長を起訴すること自体困難であると同時に「罷免権」をもつメガワティ側にも弱みがあるからである。 ラフマンはメガワティの夫タウフィク・キエマスの汚職にまつわる弱点を多く握っていると考えられるからである。
ラフマンをクビにできないとすれば、ジャカルタ知事スティヨソの再任事件とあわせ、再度メガワティは国民を公然と裏切る形になる。このままではメガワティの2004年の大統領再選はかなりピンチとなろう。唯一の救いは有力な対抗馬が今のところ現れていないことである。(青字部分は10月10日追加)
25. BLBI事件で元インドネシア銀行理事に実刑判決(03年4月3日)
1997−98年の通貨危機・経済危機のときに、スハルト大統領の指示により、インドネシア銀行は48の銀行に対して、「取り付け」騒動を防ぐことを目的に144.5兆ルピアの資金援助をやらせた。
これはBLBI(Bank Indonesia Liquidity Assistance=インドネシア銀行流動性支援)計画と言われるものである。後の会計検査院の調査では、この資金資金の95%は民間銀行(大半が華人系)によって、ドル買いなどの投機にまわされたという。
しかも、その多くが焦げ付きとなり、一部しか回収できないことが明らかになった。ただし、個々の貸付にはインドネシア銀行の事務局が関与しており、そこに大きな疑惑が残されていて、現在でも幹部がしばしば検察庁に呼ばれて取調べを受けている。
今回の事件は、インドネシア銀行の元理事のヘンドロ・ブディアント(Hendoro Budianto73才)が担当した9.793兆ルピア(11億ドル)の融資に関して、注意義務を怠ったとして、中央ジャカルタ地裁から禁固3年の実刑判決を受けた (求刑は6年)。
ヘンドロは健全な銀行にのみ特別融資をおこなうようにという大統領令に反して、倒産してしまったBDNIやBank Modernなどの不健全な18の銀行に融資をしてしまったというのが、主な罪状である。
しかし、考えてみれば当時まともな銀行などほとんど実在しなかったのである。
ヘンドロはこれらの怪しい融資に対してワイロをとっていたのではないかという疑惑は、証拠不十分で不問に付された。しかし、彼が所有している3台の自動車は没収された。
ヘンドロ以外にもHeru Suprapyomo とPaul Sutopoの2人の元理事も裁判にかけられている。
また、当時インドネシア銀行の総裁であったスドラジャド・ジワンドノもBLBI資金9兆ルピアを不適正融資した罪により、近く送検されるという。
31. ロシアの戦闘機購入問題でメガワティ窮地に(03年6月28日)
メガワティは今年4月にロシアを訪問の際、スホイ戦闘機4機と2機の攻撃ヘリコプター(Mi-35)を1億9260万ドルで買い付ける契約をしてきたが、この取引について国会で疑惑が追及されている。
国会内に特別調査チームを設置することは何とか回避できたが、取引の仲介に当たったビジネス・マンは国会に呼ばれ、国防委員会において質疑を受けることになった。
仲介の主役を果たしたのはアントン・スレイマン(Anton Slaiman, Djarum Groupのオーナーであり、石油会社Medcoの会長)であると見られているが、テクサムコのマ ニムレン・シニバサンの名前やメガワティの娘婿のハッピー・ハプソロの名前も挙がっている。
Happy Papsoroはメガワティの娘、Puan Maharaniの夫である。
さらに、スカルノ時代から一家と付き合いのあったシンガポール在住の華人の大物で海運業などを手広く営む、トン・ジョー(Tong Joe)も登場する。
これらの人物の背後にはマガワティの夫、タウフィク・キエマスが存在する。タウフィクとマニムレン(マリムツ・シニバサンの弟)の関係は特に強い。
マリムツ・シニバサンはタミール族で1937年にメダンで生まれ、テクサムコの創業者である。彼はスハルトのクローニーであったが、アブドゥラマン・ワヒド大統領にもうまく取り入り、さらに今回、タウフィク・キエマスの支持をえている。
ことの起こりは財務相のブディオノが2003年度予算にこの購入分は計上されておらず、国会の承認もえていないということで、前渡し金の支出を拒否したことにある。
また、国防相のマトリも武器購入の権限を持つ国防省には何の事前の協議がなかったと説明している。
また、国軍司令官のエンドリアルトノは国防相にはこの話しはしていたが、正規の手続きを踏んでいたか否かは定かでないとしている。
彼によれば、スホイ購入の計画は1994年に一度契約をし、97年にキャンセルした話しを復活したものであり、国防省が知らないはずはなく、今回の計画はカウンター・トレイド(物々交換)によるもので価格もリーゾナブルなものであると説明している。
しかし、この取引にかかわっている人物がかなり「いわくつき」であることと、正式の国内手続きを踏んでいないという致命的な欠陥ががり、早くもバンドン工科大学の学生はメガワティ糾弾の動きを見せている。
このての話しにはメガワティの夫、タウフィク・キエマスが絡み、金銭疑惑を生んでおり、今回の騒動はメガワティの政治生命にかかわる可能性を秘めている。あきらかに、メガワティは不用心であった。
46. BNI銀行の大スキャンダル発覚(03年10月30日)
国営銀行のバンク・ネガラ・インドネシア(BNI=Bank Negara Indonesia)はニセの信用状(L/C)の発給により1.7兆ルピア(約2億米ドル)の不正が発覚した。警察はBNI幹部を2名逮捕し、10名ほどのビジネス・マンが取調べを受けている。
逮捕されたのは同行ケバヨラン・バル(南ジャカルタ)支店長のクサディヨノ支店長と外国人顧客サービス係りのエディ・サントソである。
アフリカのコンゴとケニヤ向けの大理石、砂および石油残存物の輸出にかかわるもので、実際に輸出されていなかったにもかかわらず、ニセのB/L(Bills of Loading)でケニヤとスイスとクック・アイランドの銀行から振り出されたL/CをBNIで現金化してネコババしたということのようである。
この事件によって、ジャカルタ証券取引所は投資家がパニック状態に陥り、株価指数も640ポイント台から10月29日には626ポイントまで下げた。また通貨ルピアも表3に見るとおり、8,538ルピア/ドルまで下げている。
本件は取り調べが進行中であり、詳細は不明だがインドネシア銀行(中央銀行)や政治家にも波及する可能性があるという。(10月30日、ジャカルタ・ポスト)
BNIはもともと国立銀行であるが、株式が公開されている。
(03年11月7日、12日追加)ゴルカルの名前浮上
この事件が明るみに出たきっかけは、「内部告発」であったという。さらに、ゴルカルの大統領選挙候補者の1人が、本件の容疑者の1人にに最近、自宅を230億ルピアで売却した事実も発覚している。
汚職の道にかけてはスハルト政権時代からの「練達の士」に事欠かないゴルカルが今回事件の背景にいるという噂か飛び交っているという。事件の伸展を待ちたい。
ゴルカルのアクバル・タンジュン党首は容疑を否定しているが、地元の新聞には国民福祉調整相のユスフ・カラやウイラント元国軍司令官やビジネスマンのファデル・モハマッドといったゴルカルの大統領候補者や大物党員の名前が取りざたされているという。
特にユスフ・カラが以前所有し、現在はファデルがオーナーになっているというブカカ社(高速道路建設業者)の名前が出てきている。
警察庁長官のダイ・バフティアルは警察は本件について、今まで23万8千ドルを押収したと発表している。また、容疑者12名を逮捕した。
⇒BNIの一括売却はやめ6月に30%国内で売りに出す(04年2月29日)
インドネシア政府はBNIの過半数の株式を外国資本家に売却したい意向を持っていたが、上記のようなスキャンダルがあり、買い手もつかないまま、6月に30%の株式を 国内市場で売りに出す方針に変更した。
BNIはインドネシアでは2番目に大きい銀行であり、株式の99%を国が保有し、資産残高は124兆ルピア(約1600億円)である。外国企業に安値で売却することに、国民的な反発が強いため、当初方針をあきらめたと、同行のシギット・プラノモ頭取は語った。
インドネシアの最大の銀行である、バンク・マンディリ(Bank Mandiri)は昨年20%の株式をジャカルタ証券取引所で売り出し、今年も10%売りに出すという。同行の株式はジャカルタ市場できちんと消化され、インドネシア株式市場の活性化にもつながっている。
シンガポールを中心とする特定グループにインドネシアの銀行の所有権が次々うつって行く反面、日本の銀行はすっかり萎縮しており、日本の銀行もチャンスが将来与えられることになる。
インドネシア経済にとっても素性のはっきりしないオーナーやブローカーに銀行の所有権が移っていくことは将来大きな禍根を残すことは間違いない。
近い将来、日本の銀行もプレーヤーとして参加していかなければ、良いところを全てシンガポールなどに撮られてしまい、後塵を拝することになりかねない。
50. バンク・ラクヤットでも不正発覚(03年12月4日)
インドネシアの4番目の銀行のBANK RAKYAT INDONESIA(インドネシア人民銀行=国営銀行)は1ヶ月ほど前に株式の40.5%を公開販売し4億9000万ドルの資金を国庫に入れたばかりである。
ところが、同行の3ヵ所の支店で、不正が行われたのが9月に発覚し、2,940億ルピア(3,460万ドル(の特別損失準備金を3Qに積んでいたことを明らかにした。先のBNIに次ぐ、国営銀行の大不祥事である。
目下、調査中ということで詳細は明らかにされていないが、BRIでは株式公開売り出しのときは、不正事件があることを明らかにしていたと釈明している。 しかし、それは嘘八であった。
今回のBRI事件は、上述のBNI事件と根は同じであり、犯人も一部は共通している。しかも、この資金一部はゴルカルの政治資金に流れているというのは公然の秘密とされている。
スハルト時代は国営銀行からゴルカルが資金調達(横領)するのは当たり前のことであったといわれている。いまでも、その癖がぬけないのであろうか?
疑惑の渦中に立たされているのは元国軍司令官ウィラントである。彼はゴルカルの大統領候補者に選ばれるべく、党内で画策中である。もちろん、彼は疑惑を否定している。
なお、BRIは03年1〜9月の間の純利益は1兆8,200億ルピアと前年の同じ時期(1兆4,500億ルピア)に比べ26%増であったと発表している。
75. 過去2年間の不正支出による国家の損失は22兆ルピア(04年6月18日)
インドネシア会計検査院の報告によると、2002年1月から2004年4月までの調査で判明した範囲では1,198件の不正支出が発見され、金額としては22兆ルピア(23.5億ドルー約2,600億円)の損害が国家財政にもたらされたという。
もちろん、この金額は会計検査院が調査し、明らかになった分だけであり、実体ははるかにこの金額を上回っていることは言うまでもない。会計検査院が回収できた金額はこのうち12億ルピアに過ぎなかった。
メガワティ政権下でこれらの汚職・不正支出は一向に減る気配を見せず、そちらの方面で評判のよくない検事総長(ラフマン)やジャカルタ知事(スティヨソ)を世論の反対を押し切る形で任命したメガワティ自身の責任が今回の選挙で厳しく問われている。
102. 2004年下期だけで7兆ルピアの公金が不正に消える(05年3月17日)
インドネシア会計検査院(BPK)の会計検査報告によると、04年下半期(7-12月)だけで、公金が7.12兆ルピア(中央政府予算規模約60兆ルピア)が不正に使用され、消えてしまった。不正使用の件数は2,128件あったとのことである。(1ドル=9350ルピア)
BPK(委員長アヌワール・ナスチオン前インドネシア銀行副総裁、現インドネシア大学経済学部教授)が行った04年後半の会計監査は586会計単位で総額282.89兆ルピアに及ぶものであった。これは中央政府、地方政府、国営企業の子か総予算の64.84%をカバーするものであった。
具体的なケースとしては軍が購入した324万ドルのヘリコプターなどが指摘されている。
また、アヌワール委員長は2004年の総選挙と燃料補助金の支出についてはこれから会計検査を実施すると述べている。特に、公社については学も大きく、従来からかなりの不正の存在が取りざたされていた。
108-1.1兆ルピアの不正融資容疑(05年4月21日)
インドネシア検察庁はインドネシア最大のマンディリ(Mandiri)銀行(1998年に4つの国営銀行が合併され作られた)から不正に融資を引き出したとしてスマトラの建設会社の幹部3名を逮捕した。
同時にマンディリ銀行は会計検査院(院長アヌワール・ナスチオン元インドネシア銀行副総裁、インドネシア大学経済学部教授)からも検査を受けており、約1兆ルピア(112億円相当)の不正融資を28の会社に対して行っていると指摘されている。
今回逮捕されたのはスマトラ島メダンにある建設会社チプタ・グラファ・ヌサンタラ(Cipta Graha Nusantara)の幹部社員3名で、1,600億ルピア(約18億円)の不正融資を受けたとされ、この件に関して4名のマンディリ銀行取締役が取調べを受けているという。
マンディリ銀行のネル(ECW Neloe)総裁は本件の有罪が証明されれば辞任すると表明している。
2004年末のマンディリ銀行の総資産は248兆ルピアで94兆4千億ルピアの貸し出し残額があり、全国に793の支店を有している。
この件とは別に元マンディリ銀行のマゲラン支店長と貸付課長だった人物が240億ルピアをネコババしたとして逮捕され、裁判にかけられていたが4月18日にマゲラン地裁で判決が下され、おのおの4年の禁固刑が言い渡された。
また、別の国営銀行BNIから1.2兆ルピアの融資を不正に引き出したとして裁判にかけられていたビジネス・マンのアドリアン・ワオルント(Adraian Waworuntu)は3月に終身刑を言い渡されている。
SBY大統領は汚職撲滅を公約しており、特に銀行融資にかかわる不正は額も大きいことから会計検査院長に実力者ナスチオンを配して,国営銀行のの取り締まりに当たらせている。
⇒不正の規模は13億ドルか(05年4月22日)
この件はフィナンシャル・タイムズ紙のスクープであった。FTの4月21日付けのInternet版によれば、不正疑惑融資の額は13億ドルで対象は33社に登っているという。
マンディリ銀行の副総裁であるイ・ワヤン・プゲグ(I Wayan Pugeg)が4月21日に4人の弁護士とともに検察庁に出頭し、長時間の取調べを受けた。容疑の対象は@テレビ放映会社のPT Lativi Media Karya, APT. Cipta Graha Nusantara BPT Siak Zamrud Pusaka CPTArutimであるという。
⇒バクリー経済調整相の奇妙な発言ー「先入観を持つな」(05年4月23日)
SBY政権発足後の最大の汚職事件に発展する可能性を秘めたマンディリ銀行事件について、「公衆は偏見を持ってこの事件を見てはならない。結論が出るまでは汚職事件とはいえない」という趣旨の異例とも言える発言をした(4月21日)とジャカルタポストは報じている。
ユスフ・カラ副大統領は4月20日にマンディリ銀行総裁のE. C. W Neloe と面談しているが、話し合いの内容は公表されていない。
不正融資の規模が12兆ルピアに拡大し、33社がその対象になっていることは、政治がらみの容疑者が出てくる公算もあり、経済界にも緊張感が走っている。
比較的好調を維持してきた株価も4月21日(木)には-23.47の下げとなり、1047.8にまでになった。これは05年2月11日以来の低い水準である。
バクリーは自分のグループにPT. Bakrie Telecomという通信会社を持っており、それがマンディリ銀行から5,482億ルピア(約65億円)の長期負債を負っている。もともとの貸付は2003年4月に行われたが、2004年9月には大幅な債権放棄がマンディリ銀行からなされているという。
検察庁は目下のところ上記4社の調査しかやっていないが、これから急速に不正融資事件が広がる可能性がある。不正・汚職追放を公約に掲げて当選を果たしたSBY大統領は真価を問われかねない事態になりそうである。
⇒ネル前頭取逮捕(05年5月22日)
5月16日(月)に臨時株主総会(政府が70%の株式保有)でネル頭取は罷免され、替わりにアグス・マルトワルドヨ(Agus Martowardojo)ペルタマ銀行(民間)頭取が後任に指名された。
アグス氏は以前にマンディリ銀行に勤務していた経験があり、ペルタマ銀行に移ってから経営面での実績が評価されたものと思われる。
その後ネル氏は逮捕され収監されている。
一方、疑惑が指摘されていたユスフ・カラ副大統領の親族が経営する会社とバクリー経済調整相の関連企業は「国家に潜在的に損害は与えず、疑惑は晴れた」として、検察庁は無罪放免を発表した(5月20日)。
これらとは別に、石油公社プルタミナや社会保険公社ジャムソステク(Jamsostek)などへの調査を進めていることを明らかにした。
⇒ネル前頭取に1審無罪判決(06年2月21日)
マンディリ銀行の前の総裁のネルら3名の汚職容疑の裁判が南ジャカルタ地k歳でおこなわれていたが、3人の被告に対する検察側の求刑は20年の禁固刑であった。
ところが、2月20日(月)に下された判決は3名とも「無罪」という意外なものであった。インドネシアの裁判所は「汚職追放の墓場」といわれてきたが、これほどひどい判決も珍しいと国民の怒りを買っている。
ユドヨノ大統領は、裁判所は国民に対し判決理由を全てわかりやすく説明すべきだと、不満をあらわにしている。検察側は直ちに控訴する方針であるという。
この裁判の争点は上記の4件のうちの1つであるPT Chitra Graha Nusantaraに対してなされた1,600億ルピアの不正融資にかかわる汚職事件であった。マンディリ銀行は他にも不正融資が多く、不良債権が急増している。
108-3. Mandiri銀行とBNIは不良債権が 急増している(06年2月24日)
国営の2大銀行であるマンディリ銀行とBNI(バンク・ネガラ・インドネシア)の不良債権が最近急増し、政府は対策を急がされている。
マンディリ(Mandiri)銀行は05年9月末の不良債権比率が24.57%と04年9月末の7.49%から急増している。これは汚職容疑で先に逮捕・起訴され、2月20日(月)に南ジャカルタ地裁から「無罪判決」を受けたばかりのネル前総裁時代の「放漫融資」の産物である。(#108-1の末尾参照)
また、BNIも05年9月末の不良債権が14.44%に達し、04年9月末の6.12%から倍以上に増加している。この2行のマーケット・シェアは合わせて27%ときわめて高い。
このように両行の不良債権が急増したように見えるのは、最近に起こった事件とは限らない。いままで隠されていた「不良債権」がアヌワール会計検査院長(前のインドネシア銀行副総裁・インドネシア大学教授)の就任以来、精力的に検査がおこなわれた結果でもある。
インドネシア銀行(中央銀行)副総裁のシティ・ファジュリジャ(Siti C. Fadjrijah)女史はイ「ンドネシアの銀行全体の不良債権比率は8.3%にも達している。もし、マンディリ銀行とBNIの不良債権がなければ、その比率は4.8%となる」として、この2行の状態が極めて問題であることを指摘している。
このまま放置しておけば、インドネシアの経済全体に波及しかねない大問題に発展する恐れがあり、不良資産の「処理機構」の創設と政府による資本注入を含む「救済策」が必要な段階にきているとと という声が 国会議員や金融アナリストからあがっている。
(ジャカルタ・ポスト、インターネット版、 06年2月23日 参照)
118.
アディグナ・ストオの殺人罪に7年の禁固刑判決(05年6月16日)
インドネシアの司法(今回は裁判官)の歴史に、輝かしい(?)1ページを付け加える問題判決が今日(6月16日)ジャカルタ中央地裁で下された。
インドネシア汚職史上最大の汚点を残したプルタミナ元総裁のイブヌ・ストオ(故人)の次男のアディグナ・ストオ(47歳)がジャカルト・ヒルトン・ホテルでボーイを05年1月1日未明、拳銃で射殺した事件に対する判決が今日 下された。
検察側の無期懲役の求刑に対し、たった7年の禁固刑という驚くべき(異例ではない)軽い判決が下された。
通常インドネシアにおいては殺人罪は最高刑が無期懲役で、銃器の不法所持が最高刑が死刑ということになっているが、アヂグナはその両方の罪に該当し、インドネシア検察庁は無期懲役を求刑していた。
判事は「刑期を軽減(mitigate)すべき要因があった」と述べている。 その内容がいかなるものかは明らかではない。推察するに、被害者の遺族がしかるべき「賠償金」をうけとり、刑期軽減の「嘆願書」を裁判所に提出したことが考えられる。
それ以外の、理由としては、ストオ一家が政治力を行使し、またしかるべきカネを関係筋にバラ撒いたということであろう。おそらく多くのインドネシア人はこちらが正解だと思っているはずである。
殺されたボーイのルディ(Rudy=当時25歳の大学生)はアディグナのガール・フレンドがホテルのバーの支払い(15万ルピア=17ドル)にクレジット・カードを渡したが、そのカードは 銀行が受け入れなかったので、現金で支払ってほしいと申し出たところ、傍らにいたアヂグナが生意気だといって所持していたピストルでルディを撃ち殺してしまった。
当時アディグナは酔っ払っており、しかも麻薬(覚せい剤とコカイン)の常習者だったという。こんなことが、刑期軽減の理由にはならな いであろう。また、麻薬使用については何の罪も問われていない。
ちなみに、ヒルトン・ホテルのオーナーはアディグナの兄のポンチョ・ストオでゴルカルの幹部であり、政財界に顔を利かしている。
ルディの遺族の弁護士は「司法制度をあまりに侮辱した判決であり、遺族は納得していないので検察庁に控訴してもらうよう働きかける」と言っている。
このような、有力者の子女に対する判決は、しばしば、世間を驚かすようなものがあり、最近ではスハルトの3男のトミーが、自分に対し有罪判決を下した最高裁判事 (カツタサスミタ)を殺し屋を使って殺害したが、15年の実刑判決ですんでいる。殺し屋の2名は無期懲役である。
なぜ、このような判決が出たかは、インドネシア人なら誰でも知っているが、カネの力である。
このような判決は民事裁判でもしばしばお目にかかる。被害にあうのはほとんどのケース、外国人(企業)である。だから、うっかりインドネシア人にカネを貸したり、掛売りするととんでもないことになる。
こういう判決を下す判事(場合によっては検事がサボることもある)の追放がインドネシアの司法を改革する第1の方法であることは誰もが口にすることである。SBY大統領も「投資環境の改善」に 汚職追放と司法改革を第1に取り上げている。SBY大統領の腕の見せ所である。
別の事件で、50g弱の覚せい剤(インドネシアではシャブ・シャブという)の所持で逮捕・起訴された51歳の女性は6月16日スラバヤ地裁で禁固15年の判決が言い渡されている。女は覚せい剤の密売人で前科もあるらしい。これがインドネシアでは普通の常識的量刑かもしれない。
一方、不法所持のピストルで些細な理由で前途有為の青年の命を奪った金持ちのドラ息子が7年の刑である。法の下での平等などという考え方はインドネシアの一部の裁判官にはないらしい。
114.
ハミド司法相、選挙管理委員会から報酬受け取る(05年5月14日)
ハミド(Hamid Awaluddin)司法・人権相はSBY政権発足以前は中央選挙管理委員会(KPU)の幹部であったが、正規の給与以外にKPU関連企業から多額の給与を受け取っていた事実を認めた。汚職追放を看板にしているSBY政権にとっては誠に困った問題が起こってしまった。
現在KPUは昨年の選挙実施時に選挙用資材(投票用紙など)の購買に関し、多額のキック・バック(割戻し)を納入業者から受け取り、それをスタッフが分配していたという汚職疑惑が表面化し、司直の取調べを受けている。
そのなかでハミド司法相への疑惑が浮かび上がった。ハミド司法相もその事実を認めているという。
そもそも選挙管理委員会の幹部がなぜSBY政権の閣僚となるのかということ自体、昨年の大統領選挙の公正さそのものに疑念を投げかけていた。
KPU の財務部長ハムダニ・アミン氏によればKPUの幹部は資材納入会社(複数の)からそれぞれ10万5000ドル相当の「特別給与」を貰っていたという。
KPUには人権活動家や学者なも参加し、インドネシア国民にはその公正さをアピールしていたが、その人権活動家の1人であるムルヤナ(Mulyana W. Kusumah)氏が会計検査院のスタッフに現金を渡そうとして現行犯逮捕されたのが今回の「KPU事件」の発端である。
KPUとしては調査に来た会計検査院のスタッフに現金を手渡したのはムルヤナしが個人の責任で自分のポケット・マネーを使ってやったことだとしているが、そんなことはありえない。
いずれにせよ本件はKPU(委員長Nuzaruddin Sjamsuddin)全体を揺るがす一大汚職事件に発展しつつある。その中でSBYが公約に掲げた「汚職追放」は自分の足元に火がついた形となった。SBYはどこまでやれるかが見ものである。
(ジャカルタ・ポスト インターネット版、05年5月14日参照)
115.インドネシア政府が 汚染疑惑国営企業の16社を公表(05年5月22日)
スギハルト(Sugiharto)国営企業担当相は5月19日(木)に汚職の疑惑を持たれている国営企業16社の名前を国会の求めに応じて公表した。こういうことはインドネシアの歴史上も前例が無く、SBY政権が汚職退治に如何にマジメに取り組んでいるかという宣伝効果ヲねらったものであろう。
汚職疑惑の内容としては@キック・バック、A不公正かつ不透明な入札、B財務報告の操作、C不法な手数料請求といたものである。これはSBY大統領の了解を得た後に、国会に報告されたものである。ただし、個別企業の疑惑の詳細は明らかにされていない。
| 1.Bank Rakyat Indonesia、銀行 | 9.Pupuk Kalimantan Timur、肥料会社 |
| 2.Bank Mandiri、銀行 | 10.Augkasa Pura I 、飛行場運営会社 |
| 3.Bank Negara Indonesia、銀行 | 11.Pelabuhan Indonesia II、港湾運営会社 |
| 4.Persahaan Listrik Negara、電力会社 | 12.Pelabuhan Indonesia III、港湾運営会社 |
| 5.Asuransi Jiwasraya、保険会社 | 13.ASDP、運輸会社 |
| 6.Persahaan Gas Negara、ガス会社 | 14.Djakarta Lloyd、海運会社 |
| 7.Indofarma、製薬会社 | 15.Televisi Republik Indonesia、テレビ局 |
| 8.Rajawali Nusantara Indonesia、貿易会社 | 16. Radio Pepublik Indonesia、ラジオ局 |
資料出所;(http://www.thejakartapost.com/ 05年5月20日)
なお石油公社プルタミナ(Pertamina)は汚職・汚染企業としては桁外れの実績があり、いわば横綱クラスの別格であり、このなかには入っていない。これら企業は現在何らかの形で検察庁などの取調べが行われている企業という意味であろう。
スギハルト国務相は「これらの問題の根源がマネージメントにあるとするなら、リストラクチュアリング(経営者のクビのすげ替え)が必要である。それでもダメなら民営化するほかない」という趣旨のコメントをしている。
119. 南ジャカルタ地裁判事が取り調べを受ける(05年6月21日)
ジャカルタ地方裁判所は6月16日(木)にインドネシア協同組合連合(KDI=生協の全国組織)委員長で、現在はゴルカルの国会議員(ユスフ・カラ副大統領の地盤の南スラウェシ選出)を務めるヌルディン・ハリド(Nurdin Halid)氏の1,697億ルピア(19億3千万円)横領事件に無罪判決をいいわたした。
多くの国民が有罪は間違いないであろうと信じていたこの事件の無罪判決には地元では「ああまたか」という声が上がっている。というのは南ジャカルタ地裁は「汚職事件の墓場」として悪名をとどろかせているからであるという。
要するに、裁判官にワイロヲ渡せば判決などはどうにでもなるという、司法に対する不信感が地元では強いし、国際的にも知られているのである。これは別に、南ジャカルタ地裁にかぎられたことではない。
この事件は、1998年の通貨・経済危機の時に、貧困者用に食糧油を安値で配給する目的でインドネシア銀行が1,697億ルピアをBULOG(食糧庁調達庁)経由でインドネシア協同組合連合(KDI=生協の全国組織)を資金を特別融資するということが発端であった。
その資金はいずれインドネシア銀行に返還されるものであるが、ハミドはその資金を銀行の定期預金口座に置いておき、返還を故意に遅らせ金利をネコババしようというセコい話である。
この金利というのが1998年当時は年率20〜30%の時代であるから、可なりの額が関係者の懐に入ったことになる。
検察庁は20年の実刑と3,000万ルピアの求刑をしていたが、本件を控訴するといわれている。
この判決を問題にしたインドネシア最高裁は担当判事に対して事情説明を求めるという異例の決定をおこなったと6月21日のTempo(インターネット版)は報じている。
120. メッカ巡礼基金を歴代宗教相がつまみ食い?(05年6月22日)
インドネシアのイスラム教徒は一生に一度はイスラムの聖地メッカに巡礼すれば、「ハジ」の称号を得られ、極楽往生できると信じて、日ごろ貧しい生活のなかからコツコツとお金をため、年老いてからメッカの巡礼団に参加することを夢見て暮らしている。
その集団巡礼を援助するため、国家財政からの補助金などを集めて創設された基金が不正に使用されているのではないかという疑惑が持ち上がっている。それらの基金のなかには一般庶民から集めたの多額の積立金も含まれていることがさらに問題を大きくしている。
事の発端は、BKPK(the Development Finance Controller=開発財政監理官)が最近の査察で発見したところによれば、基金の使用が不透明であることが判明したという。
BKPKは関連する組織の銀行口座を直ちに凍結し、さらに詳しい調査をおこなっており、国会にも経過報告がなされているという。
その過程で、メガワティ政権時代の宗教担当相のサイド(Said Aguil Al-Munawar)が政府の汚職撲滅チームから基金の不正使用の重要参考人として取調べを受けていたことが明らかになった。
ところが、疑惑はサイド前宗教担当相にとどまらず、過去の歴代宗教担当相にも疑惑が及び、タルミジ(Tarmidzi Taher=1993年〜98年のスハルト政権時代)元宗教相でこの基金のカネ集めを始めた当事者や彼の後任のトルファ(Tolchah Hasan)、その後任のサイド(2004年10月まで在任)が取調べを受けている。
被疑者はきわめて多数に上り、その最高責任者がこれらの宗教担当相である。彼らは全てイスラム教世界での指導的人物であることはいうまでもない。それだけに、インドネシア国民に与えた衝撃の大きさはただ事ではない。今後更なる事実関係の究明が待たれている。
SBY大統領の音頭とりで始まった「汚職撲滅運動」は政府の予想をはるかに超えて進みつつあるように思える。
メガワティ政権時代の宗教相のサイド(Said Aguil Al-Munawar)がメッカ巡礼基金のうちから「余剰の」7,090億ルピア(約7,700万ドル)を横領したとされる事件に関与した罪で起訴されていたが、 中央ジャカルタ地裁によってこのほど5年の禁固刑を言い渡された。検察側の求刑は10年間の禁固刑であった。
サイドは8つの銀行口座に3,000億ルピア(約3,260万ドル≒38億円)を隠し持っていたとされている。 これはサイドが全てを自分のものにするつもりはなく、宗教省の職員の福祉に使うための金であったと説明されている。しかし、仮にそうだとしても資金の不当流用であることには変わりない。
ユドヨノ大統領は汚職追放キャンペーンを最近一段と強化しており、元労働相のアブドゥル・ラティフ(Abdul Latif)についても国有銀行であるマンディリ銀行(Mandiri Bank)から自分の所有する放送会社(Lativi Media Karya)への融資を不正に引き出し、焦げ付かせたとして取調べを受けている。
マンディリ銀行は28社に対してロクな審査もしないで融資をおこない、12兆ルピア(≒1,550億円)を貸し出し、それが不良債権化しているという。そのため同行の頭取であったネル(E.C.W. Neloe)は現在起訴されており、20年の禁固刑と10億ルピアの罰金を求刑されている。
また、国営企業庁の職員200名が最近、汚職の容疑で取調べを受けている。組織ぐるみで国民の金を食い物にしているのである。これと似たようなことは極東の某経済大国にもみられることである。その国では有能な首相が「改革を5年間必死でやってきた」ということで国民の圧倒的支持を受けているらしい。
インドネシア警察は石油製品の密輸出の容疑で石油公社プルタミナ(Pertamina)の職員7名とシンガポール人1名の計8名を新たに逮捕したと発表した。
インドネシア政府は膨大な石油製品に対する補助金(2005年度で136兆8千億円=約1兆4千億円)を支出し、そのため、上の表(参考)に見られるように、東南アジアでは最も安い石油製品が国内に出回っている。
そこに目をつけた[悪徳業者(華人がほとんどでプルタミナの職員はその手先)」がインドネシアから「補助金付き石油」を密輸出して巨額の利益を得てきた。インドネシア国内では石油製品が不足しているなどという騒ぎになっているが、密輸出があればいくら供給しても足りるはずがない。
しかも、製造の元締めのプルタミナ職員が関与していてはたまったものではない。こんなことは今に始まった事ではなく、特にスハルト32年の独裁体制下で綿綿と築かれてきた汚職体質の一環なのである。
今回捕まったのはスラバヤおよび南スラウェシに本部を置く、2つの密輸組織であるといわれているが、バタム島(先ごろ3名逮捕)やスマトラ島やリアウ地区など多くの密輸場所があり、今回の逮捕も氷山の一角に過ぎない。
これを根絶するには、補助金制度をなくすか、ゴクわずかな水準に引き下げる以外に抜本策は見当たらない。石油製品以外に「補助金つきの米」や砂糖も密輸の対象になっている。
補助金なるものが諸悪の根源になっているのは極東の某経済大国も同じである。こちら食肉輸入などがが問題になったようである。補助金の目的は貧困者救済や産業活性化であるが、後者については「競争条件が他国と同じ」レベルであっても特に問題はないはずである。
貧困者対策については別途、社会保障でまとめて「特別給付」をしたほうが効果は確実であろう。石油補助金廃止については「産業界」からの不満の声が強いといわれるが、それを断行しない限り、インドネシア経済の「構造改革」は進まない。日本も同じことで、不必要な補助金はないだろうか?
異常な高関税も一種の補助金である。そのコストは最終的に国民が負担させられる。
125-1. 石油密輸でプルタミナの職員18名他逮捕(05年9月10日)
インドネシア警察は石油の蜜輸出(原油と製品)のかどで58名を逮捕した。そのなかには石油公社プルタミナの職員18名が含まれている。また、密輸に使われていた17隻の船舶もと6,000トンのディーゼル油とケロシン(軽油)押収した。
彼らは毎月105トンの密輸を行い、国家に8.8兆ルピア(約900億円)の損害を与えたという。数量と金額とのバランスが合っていないが、どちらも実際よりは可なり低い数字であろう。
警察はプルタミナ職員をさらに11名取り調べているという。おそらく組織ぐるみの大規模な密輸が長年にわたりおこなわれてきたことは間違いないであろう。
密輸の目的はインドネシアの国内価格(下表参照)と国際価格の差を懐に入れるというものであるが、インドネシア政府の出している年間約119.4兆ルピア(約1兆2千億円=05年の実績見込み、)にのぼるといわれる多額の補助金が結果として密輸を生んできたことになる。
この密輸はプルタミナの下級職員がコソコソやっていたものとは考えられない。歴史的に大掛かりな密輸体制がとられてきたことは間違いない。今回これがトカゲの尻尾きりで終わらないことが望まれるが、それができたためしがないのがインドネシアの悲しいところである。
プルタミナのウィダヤ(Widya Purnama)総裁は事件の全容を解明してから辞任したいと語っている。
(参考)
アジア諸国の石油燃料価格(1ドル/リッター)
| ガソリン | ディーゼル | |
| インドネシア | 0.24 | 0.22 |
| シンガポール | 1.00 | 0.70 |
| マレーシア | 0.43 | 0.34 |
| タイ | 0.62 | 0.55 |
| 中国 | 0.51 | 0.50 |
資料出所;WSJインターネット版05年8月31日
⇒リアウ諸島が石油密輸の中心地(05年9月11日)
船舶用燃料のディーゼル油はシンガポールに近いリアウ諸島が密輸の中心地となっている。
最近の例では海上でシンガポールの会社が保有する(Aiwa Maru)がインドネシア船籍のJaya Success丸とともに、インドネシアの港に入り、ディーゼル油の注油を受け、Aiwa Maruの燃料タンクが一杯ないなったところでインドネシア海軍のパトロール船に捕まるという事件が起こった。
これはディーゼル油密輸の典型的な手口で、あたかもインドネシア船に給油するフリをして隣にいる外国船に給油するというやり方である。ちなみにディーゼル油の価格はインドネシアでは1リッター2,000ルピア(21円弱)であるが、シンガポールでは6,000ルピア(61円)と3倍もする。
また、これとは別にプルタミナから石油製品を仕入れた指定販売業者は自分のところに割り当てられた製品を一部しか市場に出荷せず、残りはヤミ価格で売るとか密輸するとかというのはゴク一般的におこなわれてきたことである。
(ジャカルタ・ポスト 05年9月10日記事参照)
これ以外にも原油を石油掘削現場から海中にパイプラインを敷いて、直接小型タンカーに積み込み、密輸するという、もっと大胆なケースも東カリマンタンで発見された。密輸にかかわっているのはシンガポール華僑が多いという。(05年9月13日付け、ジャカルタ・ポスト参照)
インドネシア国税庁は外銀5行(名前は公表されていない)が為替取引(ルピア投機を含む)について、実態の3%程度しか報告しておらず、判明しているだけで合計7,780億ルピア (約84億円)の脱税をおこなったと発表した。シンガポールとマレーシアの銀行が関与しているとのこと。
事件が発覚したのは8月末で、公けにされたのは9月8日(木)のことだが、それ以降ルピアは心なしか回復に向かっているように思われる。9月12日(月)の終値は1ドル=10,105ルピアであった。 株価も1105.66ポイントを回復した。
従来この種の不正が明らかにされるのは極めてまれであり、バレると役人にワイロを渡して口止めするなどのことがおこなわれてきたものと思われる。重大事件にもかかわらず、現地の新聞報道も及び腰で、この記事を載せてないところもある。
スシロ政権になってから汚職や不正が少しずつ表面に出るようになってきたように思える。もちろんこの先どうなるかはわからない。しかし、ながら寄ってたかってこの国はワルの食い物にされてきたことは明らかである。
かわいそうな国である。いやお互い様(サマサマ)か? (Tempo 9月8日版参照)
表、126 最近のルピアと株価
| ルピア/米$ |
株価指数 |
|
| 05年8月18日 | 9,963 | 1100.30 |
| 05年8月22日 | 10,004 | 1076.35 |
| 05年8月26日 | 10,390 | 1048.47 |
| 05年8月29日 | 10,840 | 994.77 |
| 05年8月30日 | 10,525 | 1039.82 |
| 05年8月31日 | 10,250 | 1050.09 |
| 05年9月2日 | 10,350 | 1039.23 |
| 05年9月7日 | 10,327 | 1059.38 |
| 05年9月9日 | 10,215 | 1098.61 |
| 05年9月12日 | 10,105 | 1105.66 |
111.15,000トンの砂糖密輸船を拿捕(05年4月27日)
インドネシア海軍は4月23日(土)にシンガポール船籍の貨物船Asian Premier号を取り調べたところ、15,000トンの砂糖を密輸入しようとしていたことが判明し拿捕した。拿捕はインドネシア海軍にもたらされた密告によって行われたという。
砂糖はタイからスラバヤに運ばれる途中のもので、砂糖輸入の許可証も無く、インドネシアの水域に入る許可証も所持していなかったという。
これは1回の密輸事件としては過去最大の数量であり、規模から見てもインドネシアの華人だけでなく、政府関係者も関与している公算の大きい事件である。(ジャカルタ・ポスト 4月27日付け インターネット版参照)
112. 役人による違法な課金請求が輸出コストを倍加(05年5月10日)
インドネシア運輸省の報告によれば、ある輸出業者は法定の100%にも及ぶ輸出コストを負担させられているという。
運輸省の調査によれば、コンテナーで輸出する際には法定の112%もの余計な経費がかかり、輸入する際には正規のチャージの56〜8%の費用がかかることが明らかになった。
調査チームと輸出業者組合(GPEI)の事務局長のトト・ディルガントロ(Toto Dirgantoro)氏によればこれら「不正課金」は結局国内では消費者の負担になり、海外市場ではインドネシア製品の国際競争力の劣化につながっているとしている。
インドネシアの年間のコンテナーの輸出入は550万個(TEU=20フィート・コンテナー換算)に達するといわれている。「余計な費用」は@国営のコンテナー取扱い業者、PT Pelindo(Pelbuhan Indonesia)II、A税関、入国検査、検疫所、港湾当局、乙仲業者などから取られる。
その金額は輸出輸入とも1個当たり559万ルピア(約588ドル)にかかり、さらに輸出の場合は20フィート・コンテナーは244,500ルピア(26ドル)、40フィート・コンテナーでは407,500ルピア(43ドル)要するという。
輸入の場合は20フィート・コンテナーで176,500ルピア、40フィート・コンテナーで201,000ルピアを要する。これらには、「燃料調整要因(Fuel Adjustment Factor)」、フォークリフト運転手やコンテナー検査官へのチップ、本来費用がかからない書類の費用なども含まれる。
別な調査で、インドネシア繊維製品輸出組合は「不正課金」は6.8兆ルピア(7億1579万ドル)に達するという報告を出している。インドネシアの汚職問題は税関のみならず、国税庁の役員や軍・警察官など多方面にわたっている。
また、国際機関のTransparency Internationalは世界146か国中インドネシアはワースト5であるという。
国際競争力が無ければインドネシアには外資が入ってこないことになる。私は一貫してインドネシア経済の最大の弱点は「ハイコスト・エコノミー」体質にあり、それは32年間のスハルト独裁政権下で培われてきたインドネシアのビョウキであると論じてきた。
SBY大統領はこれを治さないことにはインドネシアの将来の発展は望めないとして腐敗・汚職撲滅作戦に取り組んでいる。しかし、政権内の閣僚で何人がSBY に本気で協力するであろうか?
こういう場合は貧乏馴れしているイスラム教の原理主義者や学者が比較的頼りになりそうなのだが、「善人が悪人」に転化するのは早いが、その逆はおよそありえない。
メガワティ大統領は夫キエマスにそもそも問題があり、足元から崩れてしまった。SBYも閣僚をある時期に入れ替えないと同じ運命をたどる可能性がある。
(http://www.thejakartapost..com/ 05年5月9日参照)
127.近く130名の裁判官について取調べを実施(05年9月28日)
インドネシアの「司法委員会(Judical Commission)」は近く130名の裁判官について、疑惑をもたれる判決を出したなどの理由で、取調べをおこなうことを決定した。
かねてから、インドネシアに進出している外国企業はインドネシアの裁判についての不信感が強く、不良債権の取立てにおいても裁判所にもちこんでも勝てないという「常識」がなかばいきわたっている。
最近では地方の市長選挙で選挙結果をひっくり返したりするケースも見られ、汚職裁判でも意外に軽い判決が出ることなどしばしばある。また、有力者の犯罪には量刑が一般的に軽いなどの批判も出ている。
例えば、トミー・スハルトの裁判官殺害事件なども、殺し屋2名は無期懲役で、殺害を依頼したトミーは15年の刑ですんでおり、しかも手厚い「減刑」措置が裁判所からしばしば出され、近々出所するのではないかとも噂されている。
最近ではプルタミナの汚職体質を作り上げた故ストウ総裁のドラ息子、アディグナ・ストウがホテルでボーイを拳銃で撃ち殺した事件でも、禁固7年という異例の軽い量刑の判決が出された(#118参照)。
これらの事件を手がけた判事が今回対象になっているかどうかは不明だが、裁判官を裁判にかける必要があるほど「司法の腐敗」はインドネシアでは進んでいる。
裁判官はワイロをもらえばいくらでも判決を変えてくれるという「便利である反面、恐ろしい」存在である。これが、インドネシアの「投資環境」を著しく損なってきた。
司法委員会としては既に行動を起こしており、西ジャワ高等裁判所のナナ・ジュワナ(Nana Juwana)判事を1年間の職務停止処分にすべきことを最高裁に勧告し(実施するかどうかは最高裁の判断)、4人の判事に対しても「職務違反」の疑いがあるとして「警告書」を出している。
委員会としては現在までに収集した情報に基づき130名をリストに載せただけで、今後新たな情報が寄せられれば、いくらでも調査を開始するということを述べている。全国で約6,000人いる判事のなかで灰色判事は130名というのはいかにも少ないような気がする。
SBY大統領が本気で改革に取り組むのかどうかが試される。インドネシアは「改革の掛け声」だけで済まされるような余裕のあるお国柄ではない。
129.最高裁長官がワイロを受け取る?(05年10月12日)
インドネシア汚職撲滅委員会(KPK=Corruption Eradiation Commission)は被疑者が最高裁に贈賄したという本人からの報告を受け、最高裁判所を捜索し、多額の現金を押収し、具体的な容疑の裏づけにはいった。
その中でバギル・マナン(Bagir Manan)最高裁判所長官がワイロを受け取ったという疑惑が持ち上がっている。
贈賄した人物(被疑者)は何と元スハルト大統領の異母弟にあたるプロボステジョ(Probostedjo=1932年生まれ75歳)である。
彼は「植林基金(Reforestation Fund)」をネコババし、国家に1千億ルピア(約11.3億円)の損害をかけたとして起訴され、1審で4年、2審で2年の実刑判決を受け、最高裁まで上告していた。
有罪になれば実刑が予想されるとしてプロボステジョは弁護士のハリニ・ウィソヨ(Harini Wisoyo=女性)に60万ドルを渡し、最高裁判事へ工作するように依頼した。 贈賄工作を勧めたのはハリニ弁護士であったと本人は供述した。
さらに、プロボステジョはハリニが金の使い道として「10億ルピアを裁判所の役人に、残り50億ルピアをバギル長官に渡すといっていた」と話したという。
ハリニ弁護士は元ジョクジャカルタ高等裁判所の判事をしていたことがあり、裁判所には顔が利くことでよく知られており、彼女の自宅をKPKの係官が捜索したところ、本棚の中から5万ドルの現金が出てきたという。
また、最高裁から40万ドルと8億ルピアの現金を押収した。
プロボステジョは友人のスリ・エディ・スワソノ(Sri Edi Swasono)なる人物とともにKPKに出頭し、洗いざらいぶちまけたという。スリ・エディは現在のSBY政権の女性問題担当相(Women's Empowerment Minister)を務めるムティア・ハッタ(Meutia Hatta)の夫である。
バギル長官はワイロの受け取りについてはきっぱりと否定している。ただし、ハリニに一度だけ会ったことは認めたが、ハリニがプロボステジョの件の話しを始めたので、答えることを拒否したという。
いずれにせよ、これはきわめて奇妙な事件で、プロボステジョはなぜ自分からワイロを出しながら、KPKにいって告白したのかという記者の質問には答えなかったという。
裁判所や検察庁にワイロが利くというのは元を正せば彼らはあまりに薄給だからだという。他の役所も同じことだが、それなりの地位にいれば「給料以外の金」がどこからともなく流れてくるようになっているらしい。それは役所全体の中で国家予算以外のカネが流れているのである。
裁判所のなかにも買収ブロー・カーが存在する。それが時には弁護士であったり、事務官であったりする。
(ジャカルタポスト、Tempo インターネット版、10月12日付け参照)
最高裁判所は11月29日(火)プロボステジョに対し、罰金1,000万ドルと禁固4年の実刑判決を申し渡した。これは5人に判事の一致した表決であった。これとは別に、上記の贈賄事件は最高裁判所長官自身が取調べを受けており、決着はまだついていない。
スハルト一族が実刑判決を受けるのは3男トミー・スハルトについで2人目である。
138.
汚職容疑の最高裁長官バギル・マナンが再任(06年5月9日)
プロボステジョからワイロを受け取ったという容疑で話題になったバギル・マナン(Bagir Manan)最高裁判所長官が 最高裁判所長官に再任されることが決定した。最高裁長官は判事の互選によって決められるが、48票中44票を獲得した。(#129参照)
最高裁長官はの任期は5年間であり、任期は2011年までの5年間であるが、最高裁長官の定年は65歳までで、彼は本来であれば今年の10月に定年退職すべきところであった。
しかし、再任を見越して事前に、彼は定年を67歳にまで延長していた。それにより、彼は実際は2008年10月まで任期が伸びたことになる。さらに、定年を延期するのではないかという疑惑すら出ている。
汚職容疑以外にも数々の疑惑判決で知られるインドネシアの裁判所の浄化はこれで当分、遠のいたという失望の声が各方面から上がっている。
インドネシア大学の法学部の学生(人数不明)は最高裁判所に対し抗議のデモをかけた。
議会の法務委員会(第3委員会)のベニー・ハルマン(Benny K. Harman)議員は「バギール長官は悪徳裁判官の中では最もマシな裁判官なのだ。彼より若い判事にロクな人材がいないのだ」と一部の新聞記者(detik誌)に語ったという。
いずれにせよ、インドネシアの司法改革は裁判所にまかせていては進まない公算が大きいことは確かなようである。ここでもまた、ユドヨノ大統領の手腕が試されることになる。
139.インドネシア司法の汚職に全面的にメス(08年6月19日)
インドネシアの汚職撲滅委員会KKP(Corruption Eradication Commission)は最近活発に汚職退治に乗り出し、検察庁のトップを槍玉に上げ、また汚職のメッカともいうべきタンジョン・プリオク港の税関にも捜査のメスをいれそれぞれかつてない実績をあげている。
最近、KPKは最高裁事務局にも捜査の手を伸ばし、押収書類のなかから事務局が「経費の横領」をおこなっていた証拠を手に入れた。
KPKは会計検査院(BPK)からの情報によって捜査を行ったと言う。
これに先立つ検察庁の捜査では「汚職のネット・ワーク」を発見したという。
KPKは前の刑事局長アンタサリ・アズハール(Antasari Azhar)が07年12月にトップに就任してから積極的に汚職取締りに乗りだし、従来「聖域」視されていた検察庁のトップを逮捕するに至った。
最近のケースはスハルト時代に34億ドルものBLBI(通貨危機時にインドネシア銀行による緊急融資)を懐に入れシンガポールにトンズラした華人財閥スジャムスル・ヌルサリム(Sajmusul Nursalim)にかかわる事件を検察庁は「証拠不十分」で不起訴処分にした。
ヌルサリムが所有していた銀行はBank Dagan Nasional Indonesia(BDNI)であった。借り入れ金額は1998年に28.4兆ルピアであり、当時のインドネシア銀行総裁はバークレー・マフィアといわれるスハルト体制に協力した「改革派」の一人のマルイエであった。
ところがその10日後にウリップ・トリ・グナワン(Urip Tri Gunawan)が実は66万ドルの現金を貰っていたことが判明し、現金は差し押さえられ、グナワン検事はブタ箱にぶち込まれた(08年3月)。
ヌルサリムとグナワン検事の間で仲介役を果たしたのはアルタリタ・スルヤニ(Artalyta Suryani)という女実業家であった。検事はアルタリタに「ボーナス」を要求したという。
検察庁から裁判所までカネで白黒が自在に変わるインドネシアの司法はインドネシア共和国の最大の問題である。検察庁は11人の検事について調査を始めたなどといっているが、おそらく11人ぐらいではすまないはずである。
ヘンダルマン(Hendarman Supanji)検事総長にたいしては辞任要求の声が高まっている。
2009年の大統領選挙対策としてSBY大統領はなんとか汚職退治の実績を選挙民に誇示する必要もあり、今回かなり本格的に動いている印象がある。
これに対し、ユスフ・カラ副大統領はマユをひそめて「KPKがあまりやりすぎると官僚がヤル気をなくす」などというゴモットモな発言をおこなって牽制したこともあった。
140.BLBI資金を踏み倒した人物が香港で捕まるがすぐに釈放(08年7月11日)
インドネシアの通貨・経済危機時(1998年)にスハルト大統領の指令で大量の救済融資資金(BLBI)が民間銀行に貸し出されたが、その返済が極めてイイカゲンに処理され、中には踏み倒して逃亡するものが少なからずいたことは既に見たとおりである。
インドネシア政府は悪質なケースについて追求の手を緩めず資金の回収に当たるとしている。
そのうちの一人である、元セルビチア銀行(Servitia Bank)の会長のデーヴィド・ヌサ・ウィジャヤ(David Nusa Wijaya)が1兆2900億ルピア(≒150億円)踏み倒し、2002年3月に西ジャカルタ裁判所で、3年間の禁固刑の判決を受けた。
その後、2002年5月21日にジャカルタ高裁に控訴したところ、禁錮4年プラス罰金とかえって重い判決を下された。
ウィジャヤはさらに2003年7月23日に最高裁に控訴したが、判決はさらに重くなり、禁錮8年の刑が確定した。
ウィジャヤは収監されるまえに行方をくらまし、12人のBLBI関係重要犯人の1人として指名手配を受けていた。
ウィジャヤは2006年1月13日にサンフランシスコで捕まりインドネシアに送還され投獄されたが、最高裁に「再審請求」を出し、法廷費用の全てを負担することとし4年の刑に減刑された。
しかし、彼はいつのまにか出獄し行方不明になっていたが、今回香港空港で再び捕まった。彼は何と「出獄証明書」なるものを所持しており、インドネシアの空港から出国していたという。
というのは彼はインドネシアの出入国管理の「出国禁止者リスト」に名前が載っていなかったのである。
インドネシアの刑務所所長は彼に「仮出獄の証明書」を発給しており、彼はそれを行使したまでだと述べている。これではいくらユドヨノ大統領が躍起になってもいかんともしがたい。
(Tempo,08年7月10日)
141最も汚職の激しい役人は警察官ー企業家へのアンケート結果(09年1月22日)
インドネシアの調査機関であるTII(Transparency International Indonesia=国際インドネシア透明性)が08年9月から12月にかけて主に企業トップ・クラスを対象としたアンケート調査結果(回答者3,841人)によると;
役所の手続きの便宜(スピード・アップが主体)、許可証取得、契約の取得、裁判所での有利な判決を得るためにワイロを送ったとしている。
その中でも件数が最も多い48%が警察官への「支払い」、1件当たり220万ルピア(≒1万8000円)とのことであった。これは2007年のアンケートも同様な結果であったという。
警察庁としては「調査方法に疑念がある」という言い訳をしつつも、型どおり「結果を尊重し、今後改善に努力する」とアブバカール広報担当官は語った。
確かに、件数は多いが、額は大したことないのが警察官の汚職である。交通違反などはもっと小額の「お小遣い」程度で放免してもらうケースが多いようである。
次に多いのが悪名高き「税関」である。これが直接的にインドネシアの製造業の競争力を弱めている。その次が、「入国管理官」で次が「ジャカルタ都庁の役人」という順番であった。
しかし、最も悪質なのは「裁判所」であり、件数はさほど多くはないが1回あたりの金額が1億1240億ルピアだという。これはほぼ1万米ドル(≒90万円)に相当する。
金額も問題だが、裁判所が公正な判断を下さないとするとインドネシア社会全体にとって由々しき問題である。
ユドヨノ大統領の時代になって、少しは改善されたかどうかという設問はなかったようであるが、最近のユドヨノ大統領の支持率がやや持ち直して来ており、40%位になっているというので改善の方向には向かっているものとみてよいであろう。
(ジャカルタ・ポスト、09年1月22日、電子版参照)
12-1 インドネシアの判事、給与引き上げを要求(2012-4-29)
インドネシアでは裁判官がワイロによって判決を捻じ曲げるケースがかなりあることは知られているが、真面目な判事が実は大部分である。しかしながら、彼らの給与水準は驚くべき低さで、大学を出て国家試験を受けて判事に任命されても警察官と大差ないこといわれている。
たとえば、アチェのタミアン(Tamiang)地裁のスント・アーマド(Sunto Ahmad)hannji31歳は判事経験6年になるが妻と3人の子供の5人家族で月給は330万ルピア(356ドル=29,000円)にしか過ぎない。そのうち食費は200万ルピア、メイドの給料が60万ルピア、一般の支出が50万ルピア、2人の子供のミルク代が20万ルピアですべてが終わりである。これでは住宅は政府から無料で貸与されていても生活が苦しすぎるというのがスント判事の説明である。
ほかの判事も大同小異である。汚職に手を染める判事が少なくないのもうなづける。裁判になると、汚職の誘いがしばしばあるという。