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77. ニセ札問題

77-1.偽札が急増ー選挙戦と関連か(04年7月2日)

インドネシアの偽札事件は昨日今日始まった話ではないが、このところ急増しているという。ニセ札の種類は2万ルピア(1万ルピア=115円)、5万ルピア、10万ルピアの3種類である。

インドネシアの偽札はかなり精巧にできているといわれ、紙は本物が使われているという。これはインドネシア銀行から横流しされたものである可能性が大である。

数年前にも偽札事件が起こり、犯人は逮捕され服役中であるが、依頼人は軍幹部であるとの疑惑が持たれながら、軍人の逮捕者は出ていない。また、スハルト一族の中でかつて麻薬所持の疑いで逮捕されたものが出ているが、彼女も偽札を所持していた。

どちらにしても、偽札に派軍が関与していた容疑は濃厚で、今回の選挙選でもウィラント候補の支持者はお手当てとして2万ルピア札を頂戴したものがかなりいるという。

インドネシア銀行は発行紙幣の番号を管理していないとも言われ、その辺が偽札事件の解明を遅らせている原因にもなっている。

 

77-2.ニセ札容疑で情報部関係者逮捕、取調べ中(05年1月14日)

インドネシア警察はかねて国内で出回っていたニセ札の製造と使用に関与した容疑で、国軍情報部の7人の身柄を拘束し、取り調べを行っていると発表した。

容疑者の1人は何と、退役警察准将のジャエリ(Zyaeri)という人物であり、彼は「ニセ札撲滅調整委員会(Botasupal)」の委員であるというからあいた口がふさがらない。

Botasupalは泣く子も黙る国家情報調整部(BAKIN)に所属する機関である。Botasupalは通貨の発行許可のほか、パスポート、収入印紙、郵便切手、インドネシア銀行債券などの発行許可権を持つ行政機関でもある。

警察は10万ルピア(約1,100円)紙幣230シートや印刷機を押収したと発表している。また、警察によればインドネシア銀行内部にもニセ札事件に関与しているものがいるのではと疑っている。

インドネシア銀行が04年1−9月の間に回収したニセ札の数は5万ルピア札15,940枚、10万ルピア札12,309枚、5万ルピア札15,940枚、2万ルピア札4,258枚、1万ルピア札3,863枚、5,000ルピア札190枚の計36,550枚であったという。03年に回収した枚数は24,656枚であった。

インドネシアのニセ札は1997年の通貨危機以降急激に出始め、98年の経済危機、99年の東チモール事件のときにも急増した。04年の選挙時にも再び、ニセ札が横行し始めた(上記記事参照)。

ニセ札はインドネシア銀行券と同じ用紙が使われており、国軍の最高幹部が関与していたという噂は絶えなかった。最近の日本のニセ札事件などとは比較にならない規模で行われていたのである。

SBY大統領はニセ札の横行に業を煮やし、新しい10万ルピアと2万ルピアの紙幣を急遽発行すると言っている。

 

77-3 ニセ札作りの元情報部幹部に4年の実刑判決(05年7月26日)

中央ジャカルタ地裁はニセ札作りの容疑で起訴され、8年の禁固刑を求刑されていた情報部の退役准将のジャエリ(Zyaeri)に対し、きわめて寛大ともいえる4年間の実刑判決を言い渡した。ジャエリは心臓バイパス手術後ということで留置所に収監もされず、自宅軟禁の状態であった。

ジャエリは「ニセ札撲滅調整委員会(Botasupal)」の委員をしていたというのだから何ともあきれ果てた話しである。

ジャエリは判決を不服として直ちに控訴し、引き続き自宅で「静養」しながら裁判を受けるという。

ジャエリはニセ札の製造そのものは認めている。彼の言い分は「ニセ札がどのように流通するかを調べるために作ったものであり、それは職務の一環である」とのことである。

裁判所は他の4名の情報部員に対しても4年の実刑、その他の2名に対しては5年の実刑判決を言い渡し、彼ら控訴せずに刑に服するこという。控訴すれば、さらにまずいことが次々に明るみに出る可能性がある。

判決によると一味は10万ルピア札2,267枚を印刷し、またタバコの印紙1,000枚(3,300ルピアのものと3,900ルピアのもの)を印刷したという。しかし、まだ現物は実際には使われておらず(押収されたのだから、当たり前)、比較的軽い刑になったとのことである。

他に、どれくらい印刷して、流通させたかについては「確証」がないということで不問に付された。どこかの国の放送局の「政治圧力による番組改編」の物語とよく似ている。

ジャエリ一味の犯行は他のジャエリの部下数名の内部告発により露見したものであるという。

インドネシアには膨大な数のニセ札が出回っていることは確かであり、それらはジャエリ一味以外のグループが印刷したものなのであろうか?ジャエリの刑が比較的軽かったのは、ジャエリはおそらく軍もしくは情報部の命令でニセ札を作り、それを軍の資金源にしていたためではあるまいか?

こういう組織犯罪は実態が国民に知らされないまま、闇から闇に葬り去られてしまいがちである。