鞏俐不在の“豪門夜宴”台湾版 ~第一章~

広東省で起きた水害事故の救済のためのチャリティー映画「豪門夜宴」。本作でも周星馳は鞏俐と共演していますが、「賭俠II之上海灘賭聖」に方季惟が出演する台湾版がある事と同じく、当時の台湾では大陸の女優が出演する映画は政治的な理由により、公開する事ができませんでした。

そこで製作側は本作を台湾に輸出するため、「賭俠II之上海灘賭聖」と同じ手法を取る事で鞏俐の出演シーンを差し替えたバージョンを作りました。本作の鞏俐が出演するシーンは周星馳が出演するシーンでもあるため、今回は香港版とは内容が異なる台湾版を見ていきたいと思います。

先に香港版の再確認

夢の中の曾小智(曾志偉)は妻・Mimi(鄭裕玲)が急死し、悲しみますがクウェートの王子・阿里巴巴(譚詠麟)は家来の四十(黃百鳴)と大盜(黃光亮)に死んだ彼女を生き返らせる事を提案します。



阿里巴巴: 私は思うんだ。私たちは彼女を救おうと。

大盜: ええ!

(四十は大盜に言う。)

四十: 早くお前の爺さんを呼ぶんだ!

曾小智: えっ!?あなたのお爺さんは誰なんです?そんなにすごいんですか?
僕の妻を生き返らせる事ができるんですか?

大盜: ふふふふ!

四十: まったく!私たちは「阿星」(南アジア系人)だろう?
だったら、私たちの爺さんは星爺じゃないか?

大盜: 星爺!

(「賭聖」のテーマに似た曲と共に周星馳が演じる星爺が登場する。)



星爺: 誰が大声で泣き喚いているんだ?

曾小智: うわぁ…、周星馳?!

星爺: 星爺!



曾小智: なるほど、周星馳が星爺か。

阿里巴巴: 星爺!早く力を発揮し、このチビの妻を助けてやってくれ!

星爺: 大丈夫。どうすれば良いのか、わかっている。全員、男は左、女は右の端に立つんだ。

(星爺が超能力を使うためのポーズを取ると、賓客たちが移動を始める。なお、香港版では、
(賓客たちの「あっちだ!あっちだ!」と言う台詞に音声はないが、中文字幕が表示される。)



四十: 王子、すでに星爺は力を発揮しています!見た所、私たちは席を、
外すべきなようですね。サウナに行ってマッサージを受けましょうよ!

阿里巴巴: 良い考えだ。行こう!

大盜: はい!

(阿里巴巴たちは退室する。)



曾小智: また、このポーズかい。変える事はできないの?

(星爺は両手の人差し指と中指だけを立てて、こめかみに当てるポーズを指摘される。)

星爺: あんたは嫌なの?

曾小智: 違うよ。

星爺: 見飽きたの?



曾小智: 僕の意見じゃない。皆の意見だよ!

(曾小智は観客に向かって同調を求めると言うギャグを使っているが、
(世間が彼のギャンブル映画に少々、飽きている事を暗示している。)

星爺: でも、言ってしまえばさ、僕自身も少し飽きたと思っているんだ。

曾小智: それは良かった。はははっ!



星爺: じゃあ、僕は簡単なのを使うよ。

(星爺は右手で自分の右の眉をこする。)

曾小智: 良いよ、良いよ。さあ!

星爺: やったさ。もっと、たくさん力を送ってみようか?

曾小智: この、ちょっとしたので?

(曾小智は星爺を真似て自分の眉毛をこする。)

星爺: そうさ!

曾小智: そんなのでも、OKなの?

星爺: 同じくOKさ!でも、簡単なのをやったから、恐らく、ちょっとした間違いがあるかもね。

曾小智: ちょっとした間違いは避けられないけど、失敗したようには見えないよ。

星爺: でも、まあ、ちょっとだから問題はないだろうね!



曾小智: ああっ!

(曾小智は棺桶を見て驚く。なお、台湾版は、ここからシーンが差し替えられている。)



(棺桶のふちに手がかかり、本人役を演じる鞏俐が起き上がる。)



曾小智: アイヤー!あなたは鞏…鞏…鞏…鞏俐さんじゃないですか?

(曾小智は広東語、鞏俐は國語で会話をするが、なぜか互いに通じている。)

鞏俐: そうです。私は鞏俐です。あなたの妻でもあります。

曾小智: 君が僕の妻だって?!

(曾小智は星爺に向かって言う。)

曾小智: やっぱり、君が彼女に変えたのかい?

星爺: ちょっと間違ったって言っただろう。

曾小智: アイヤー!こいつめ!

(曾小智は喜び、星爺の胸をつねるが、同性に触られた星爺は嫌そうな表情をする。)

鞏俐: 私は本当にあなたの事がすごく好きです。

曾小智: 君が僕の事を好きだって?!

鞏俐: ええ。

曾小智: そんな事ないでしょう!僕は男前じゃない。
顔は大した事ないし、どうして君が僕を好きになるって言うんだよ。



鞏俐: ふふっ。あなたが飄々としたお人柄の張さんだと誰が知らないでしょうか?

曾小智: あはははっ!僕の苗字は張じゃない。苗字は曾なんだ。

鞏俐: ああっ…。

曾小智: ああ!なるほど。君は僕を張藝謀だと思い込んでいるんだね。

(鞏俐は当時、映画監督の張藝謀と付き合っていたと言われているため、
(このシーンで彼女の言う「張」は曾小智が言うように張藝謀を暗示している。)

星爺: あんたの本当の苗字は張だろう?

曾小智: 僕の苗字が張だって?

星爺: 信じないのなら、鏡を見て来なよ。…早く行きなよ!

曾小智: 鏡を見るのと苗字が張なのと何の関係があるんだ?

(星爺は曾小智の背中を押して鏡のある所へ行かせると、棺桶に座って鞏俐に話しかける。)



星爺: 鞏さん、私の苗字は星です。星爺と呼んでもOKですよ。

(星爺は嬉しそうに鞏俐と握手をする。)

鞏俐: ええっと…。

(なお、台湾版は、ここまでが差し替えシーンとなる。)


曾小智: 張さんだって?

(曾小智が鏡を見ると張國榮の顔が映る。)



曾小智: うわっ!どうして張國榮に変わっているんだ?

(この後、曾小智は夢から覚める。)

鞏俐がいない台湾版

台湾版は上でも書いたように、曾小智が棺桶を見て驚いた後から鏡を見るまでのシーンが香港版と違っているのですが、こちらは「鏡を見たら張國榮になっていた」と言うシーンに無理に繋げた感じが否めません。しかし、もう一つの周星馳の演技が確認できると言う点では非常に貴重です。



曾小智: ああっ!

(曾小智は棺桶を見て驚く。)



(棺桶にはMimiがいたはずなのに空になっている。)



曾小智: ああっ!君の間違いは、ちょっとなんだろう?僕の妻が消えてしまったじゃないか!



星爺: ただの、ちょっとした間違いに過ぎないよ。あんたは簡単にやれって言っただろう。

曾小智: 間違って、こんな風にしないでくれよ。君は僕に弁解するべきだ。

星爺: 弁解なんてないよ。最も多いのは「ごめん」を声に出して言う事だろうけど、
へつらったりするまでには至らないだろうね、張さん!

曾小智: はっきりさせとくけど、僕の苗字は張じゃない。林さん!

星爺: 僕の苗字は星だよ、張さん!

曾小智: 君が僕を張さんと呼ぶのなら、僕が君を林さんと呼んでも良いじゃないか。



星爺: あんたは自分の苗字が張だって信じていないの?鏡を見て来なよ。

曾小智: えっ…?



星爺: 行きなよ!

(星爺は曾小智の背中を押して鏡のある所へ行かせる。)



(鏡の所へ行った曾小智を見ている星爺。)


(香港版と同じく曾小智は張國榮に変わった自分を見て驚く。)

鶏肉を運ぶシーンも削除

香港版のみのシーン
鶏肉を運んで来る鞏俐。 立ち去る前も周星馳と同じ画面に。

終盤の鞏俐が鶏肉を運び、皿を置いて行くシーンも台湾版では削除されているため、六合彩の当選騒ぎが終わった後、賓客を演じている周星馳と許冠文が箸で鶏の頭を掴むシーンになります。

2人の喜劇王の対決

上のシーンの関連として、以下に周星馳と許冠文の会話を翻訳しました。彼らが争っている物は、どう見ても「鶏の尻」ではなく「鶏の頭」なのですが、最後に周星馳の隣に座っている黃炳耀が言う「彼の言っている事は正しい。」は年長者を立てろと言う意味にも取れます。

VS

許冠文:なあ、友よ。奇遇だな、お前も鶏の尻を食べるのが好きなのか?

周星馳:違う。僕は鶏の尻を食べるのは好きじゃない。

許冠文:じゃあ、なぜ俺の鶏の尻を掴む?友よ!

周星馳:これは鶏の頭じゃないかな?友よ!

許冠文:これが鶏の頭だって?

周星馳:これが鶏の頭じゃないだって?

許冠文:「とさか」はどこにある?えっ?

周星馳:あなたには、この大きな「とさか」が見えないの?えっ?

許冠文:この大きな白い物が「とさか」だって?お前には見えないのか?
     1(ド)、2(レ)、3(ミ)、4(ファ)、5(ソ)。お前はバカなのか?

周星馳:頭の頂点にある長い物、これが「とさか」じゃなければ、何なんだ?
     教えてくれ、あなたが言っている、これは何なんだ?

許冠文:これは痔による吹き出物だ。

(周星馳は食欲をなくす。)

周星馳:…すまなかった、あなたが食べてくれ。

エンドロールからも消えた名前

香港版 台湾版
黎明の下に鞏俐の名前が。 不自然な空白が登場。

台湾版では不自然な感じに鞏俐の名前も消されています。ちなみに本作の興行収入は香港が21,921,687HKドル(約3億円)だったのに対し、台湾は507万TWドル(約1,700万円)と惨敗です。

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