カンフーハッスル 大陸版 ~第一章~

周星馳の往年の武打星たちへの尊敬の念が込められた映画「功夫」。しかし、大陸やアメリカでは残酷描写の規制により、一部の流血シーンが削除されました。今回は香港の劇場公開時と同じプリントの香港版VCDと大陸版を比較し、後半は未使用シーンの推測をしていきたいと思います。

蝶の登場が非常に遅い

香港版 大陸版
蝶が登場。文字は繁体字。 黒い背景に重なる簡体字。

映画が始まると、香港版は阿星(周星馳)の後の覚醒を象徴する蝶が飛ぶ中、出資会社のクレジットが登場しますが、大陸版は表記を簡体字に変え、黒い背景にクレジットされる形を取っているため、蝶が出ません。その後、蝶は岩山が巨大な「功夫」の文字になっている事を知る辺りで5秒のみ登場していました。オープニングは細かい違いも多いため、以下にシーンの順番をまとめます。

香港版 大陸版
1 トーチをかざす女性でお馴染みの、
「コロンビア映画」のロゴが登場する。
1 「國家廣播電影電視總局電影事業管理局」
の公映許可証の番号が表示される。
2 「星輝海外有限公司」のロゴが登場する。 - -
3 蝶が飛ぶ中、上から次の順で、
出資会社がクレジットされる。

・哥倫比亞電影製作(亞洲)有限公司
・華誼兄弟太合影視投資有限公司
・中國電影集團公司北京電影製片廠
2 黒い背景に上から次の順で、
出資会社がクレジットされる。

中國電影集團公司北京電影製片廠
・華誼兄弟太合影視投資有限公司
・哥倫比亞電影製作(亞洲)有限公司
4 撮影・製作として「星輝海外有限公司」が
クレジットされる。
- -
5 「周星馳 作品」と表示される。 3 監督 周星馳」と表示される。
6 カメラは岩山を映しながら、進む蝶を追う。 4 ここで突然、画面に岩山が現れる
カメラは岩を映しながら進むも蝶はいない
7 「功夫」のタイトルが登場する。 5 「功夫」のタイトルが登場する。

出資会社のクレジットで自国の会社を上にするのは良いとしても、「星輝海外有限公司の名称を出さなかった事が残念でなりません。また、岩山が現れた後に右側を飛ぶ蝶はCGを追加する前の映像を使っています。ちなみにエンドロールでも「コロンビア映画」のロゴは削除されていました。

文字に関して言うと、斧頭幫の琛哥(陳國坤)たちのダンスが終わった後に画面に表示される、
これは社会が不安な反社会的勢力が横行していた時代だ。
その中でも“斧頭幫”は噂を聞いただけで最も人の肝を潰す存在だった。
それら反社会的勢力さえも興味がない貧困地域のみ、一時的な安らぎを享受していた。
…と言う解説やエンドロールも当然と言えば当然ですが、簡体字になっています。

植木鉢が直撃しても流血せず

香港版 大陸版
地面に広がる血。 流血していない。

六嬸の風呂を覗いていた事を知られ、包租婆(元秋)に殴られて4階の窓から地面に落下した包租公(元華)。香港版では倒れている彼の頭に、落ちて来た植木鉢が命中した後、地面に血が流れて広がるのですが、大陸版では静止した画面を数秒間、映し続けているため、血が流れません。

香港版 大陸版
結構な出血量…。 トリミングで血を外す。

…この直後、理髪師(何文輝)が棒で包租公の腰をつつき、生存を確認するシーンがありますが、大陸版も日本版も画面をトリミングする事で、左に見える血だまりを画面から外しているのでした。

殴られた阿星も吐血せず

香港版 大陸版
血を吐く阿星。 血を吐かない阿星。

ネギを持った大嬸に勝負を挑んだ阿星。香港版では腹への一撃を喰らった阿星が血を吐き出しましたが、大陸版ではCG処理をする前の映像が使われているため、口から出た血がありません。

香港版 大陸版
返り血を顔に浴びた大嬸。 大嬸の顔は汚れていない。

「大嬸、あんた何の仕事をしている?」と聞く阿星に「オラは田んぼを耕している者だ。」(原語では「俺是耕田的」。)と答える大嬸。香港版は阿星の返り血を浴びたため、大嬸の顔に生々しい血の跡が見えますが、大陸版は血のメイクを落とした後に再度、撮り直したシーンが使われています。

香港版 大陸版
カメラは固定したまま。 大嬸のカットが挿入。

「田んぼを耕しているなら、人の真似して一対一なんかしてるんじゃねえ。失せろ!」と言う阿星。この後、香港版はカメラが固定されたまま、大嬸が「頭がイカれてる。」と言いながら立ち去りますが、大陸版は別の位置にあるカメラから撮った大嬸が立ち去るカットを挿入しています。ちなみに不思議な事に、ここのシーンは香港版も大陸版も大嬸の顔から血の跡が消えているのでした。

理髪師の大便が規制

香港版 大陸版
紙の上に大便がある。 紙と大便をCG処理で消去。

日も暮れた豬籠城寨の住民共同スペースで堂々と大便をする理髪師。香港版は彼のお尻の下に紙が敷いてあり、その上に排泄された大便が乗っているのですが、大陸版ではギャグと言えども、映像的に問題だと判断されたのか、床に敷かれた紙と大便はCG処理によって消されています。

火雲邪神が阿星を殴るシーンを削除

火雲邪神(梁小龍)の頭を壊れたテーブルの脚で叩いた阿星。香港版の怒り心頭に達した火雲邪神が阿星の胸を殴り、かかと落としを喰らわせ、拳で頭を床にめり込ませるシーンのうち、血の描写が顕著な3カットと火雲邪神が阿星の体を浮かせる1カットが大陸版では削除されています。

大陸版から削除されたシーン
阿星の吐いた血が、
火雲邪神の顔にかかる。
血を吐きながら、
のけ反る阿星。
かかと落としを繰り出す前に
阿星の体を浮かせる火雲邪神。
阿星の頭を床にめり込ませた、
血まみれの火雲邪神の拳。

香港版のみにある手話の字幕

強盗をしに来た阿星に手話で自分の事を必死に訴える阿芳(黃聖依)。日本版は手話のシーンに字幕がありませんが、実は香港版には中英文字幕が残っています。元々、日本語字幕の翻訳担当者も該当部分の字幕を作っていたのですが、配給会社と相談した結果、なしにしたとの事です。



阿芳:あなたは私の事を、まだ覚えていますか?



阿芳:以前、あなたは私を助けてくれました。覚えていますか?



阿芳:ありがとう!

(回想シーンの王仕穎が演じる阿芳の手話にも字幕がつく。手話では、
(英語字幕と同じく、「私を助けてくれて、ありがとう。」となるようである。)
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