勇士製“喜劇王”台湾版 ~第一章~

周星馳の自伝的な内容を含む「喜劇之王」。台湾での総輸入元である「勇士股份有限公司」が発売した本作の台湾版は時間にして54秒ですが、香港版から削除されたシーンが存在するのです。

Pierreの飼うゴキブリと戯れるLulu

ナイトクラブの客・Pierre(八兩金)の相手ができずに逃げた柳飄飄(張栢芝)。台湾版では柳飄飄がママ・Debraに言い訳をしてから、Pierreの相手をするLuluを見て、「負けたわ。」とつぶやくまでに、ゴキブリの種類に関する台詞やPierreとLuluの会話があるため、香港版より6秒ほど長いのです。(流れを考慮して、香港版のシーンも入れていますが、台湾版のみの台詞はを変えています。)



Debra: このバカ娘ったら、いつもは思い上がって勢いを増しているくせに、
今は術策にハマっちゃってるじゃないのさ!

柳飄飄: これは私を責められないわよ、ママ。あれは「極上」よ!
頭の中にゴキブリがいるのを見たでしょう?

この後、香港版はPierreの相手をするLuluを映し、Debraの「それに何の問題があるって言うの?」と言う台詞は音声のみで聞こえるのですが、台湾版は画面が切り替わらず、Debraは喚く柳飄飄に平然とした態度を保ったまま次の質問をし、柳飄飄はPierreのあまりの気持ち悪さに吐いた直後だったため、近くにある青い箱からテーブルナプキンを取り出して口元を拭くシーンが存在します。



Debra: 這う種類なの?それとも飛ぶ奴なの?

柳飄飄: 這う種類よ!



Debra: それに何の問題があるって言うの?Luluを見なさい。
あのゴキブリと楽しそうに遊んでいるわよ。

台湾版では上のDebraの台詞は音声のみではないため、Luluの方を見る柳飄飄のシーンも存在します。そして、次のゴキブリと戯れるLuluのシーンにも香港版にはない台詞があるのです。



Pierre: へへへへへっ!

Lulu: あなたが飼っているの?

Pierre: 面白いかい?…おおっ!当然だよ!

Lulu: こんなにも可愛いのね!

Pierre: 掘り進むんだ!

Lulu: キャーッ!放してよ!

Pierre: 待った!君の顔に放とう!…うわぁ!へへへへ!

Lulu: ウフフ!アハハハ!



柳飄飄: 負けたわ…。

つまり台湾版を見た後では、香港版はゴキブリの種類に関する台詞を削除し、PierreとLuluの会話の音量を低くした所にDebraの台詞を重ねる事で6秒の時間の短縮を図った事がわかります。

つられて歌う「おどるポンポコリン」

洪爺(林子善)の手下(鄭文輝)にショバ代を取り立てる方法を指導する尹天仇(周星馳)。香港版は手下が撮影中の導演を前にして台詞を忘れたため、尹天仇が威張って話しかける指示を出すのですが、台湾版は手下が失敗を繰り返すシーンがあるため、香港版より30秒ほど長いのです。



導演: 阿堂、こっちへ来て。そうだ。楽しそうに!楽しそうに!

手下: 映画の撮影ですか?

導演: 何か用でも?

手下: えーっと…。忘れちゃった。

この後、香港版は尹天仇の顔を映し、すぐに手下が尹天仇の方を見るので、尹天仇が自ら威張って話しかける指示を出すシーンになります。しかし、台湾版は手下が一度、左の方へ歩いて行き、それから尹天仇の方を見るのですが、尹天仇の指示は威張って話しかける演技ではないのです。


覚えていたはずの台詞を忘れた手下が左へ行くと、それを見ていた尹天仇は異変に気付きます。



尹天仇の方を見て、指示を仰ぐ手下。相変わらず、表情に緊張感がありません。



尹天仇は指で導演の顎をくすぐるように指示します。これは「相手を可愛がる=子供や動物のような弱者と見る」と言う事で、逆に言えば「自分の方が立場が上にある」と言う事を示しています。なお、鄭文輝は「食神」でEric(吳孟達)の甥を演じ、史提芬周(周星馳)に顎をくすぐられていました。



無言で頷き、指示を理解した事を尹天仇に伝える手下。

導演: 楽しそうに!楽しそうに!そう!回って!

導演が子供たちに指示を出し続ける声が聞こえる中、もう一度、手下は導演の所へ向かいます。



導演: くるっと回って!

手下: 映画の撮影ですか?

さっそく右手を出して、相手の顎をくすぐる仕草をする手下。しかし、単に尹天仇のポーズを真似ただけでは効果があるはずもなく、特に気にする様子もない導演は彼の質問に普通に返答します。

導演: 違うよ。子供のカラオケのビデオだ。(中文字幕では「アニメのカラオケだ。」。)

手下: 子供が歌う物ですか?

導演: ほらっ?♪ピーヒャラ!ピーヒャラ!

何度も来る手下がカラオケに興味があると思ったのか、導演は急に体でリズムを取りつつ、アニメ「ちびまる子ちゃん」(香港題:櫻桃小丸子)の主題歌「おどるポンポコリン」のフレーズを歌います。



導演: ♪パッパパラパ!ピーヒャラ!ピーヒャラ!

手下: ♪パッパパラパ!ピーヒャラ!ピーヒャラ!

導演の動きにつられ、笑顔で合唱する手下。わかりやすさを優先し、上記のようにオリジナル版と同じ歌詞を引用表記しましたが、歌を聞き取ると「ビリバラ!ビリバラ!ダッタリダダ!」(中文字幕は「Belibara,Belibara...」のみ。)と、ぼかして歌っており、カバーした物が歐倩怡の広東語版「問題天天都多」なのか、范曉萱の國語版「稍息立正站好」なのかの判別は不可能だったりします。



そんな、のん気な手下が踊りながら、何気なく尹天仇の方を見ると…。


尹天仇は「顔をしかめ、怒りに火を付けろ!」と言う指示をジェスチャーで伝えます。

導演: 楽しそうに!楽しそうに!そっちまで行って!

尹天仇の指示を見ている内に、すでに導演は撮影に戻っていました。さっそく、手下は尹天仇の真似をして顔をしかめ、怒りの感情を出して、もう一度、導演に話しかけようとします。しかし…。



手下: ♪ピーヒャラ!ピーヒャラ!パッパパラパ!
♪ピーヒャラ!ピーヒャラ!パッパパラパ!♪ピーヒャラ!ピー…。
(歌を聞き取ると「ビリバラ!ビリバラ!ダッダダダダ!」。)


導演: …君、何をやってるの?

…なぜか先ほどと同じく手でリズムを取りながら、「おどるポンポコリン」のフレーズに怒りの感情を込めた歌い方をしてしまったため、導演に不思議がられてしまうのです。その後は香港版と同じく、ポカンとした表情になった手下に尹天仇が威張って話しかける指示を出すシーンへと繋がります。

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