ファイト・バック・トゥ・スクール2 台湾版 ~第一章~
大ヒットを記録した映画の続編「逃學威龍2」。本作の香港版は収録時間が98分ですが、台湾版は128分もあるのです。今回は香港版で削除された30分の内容を細かく見ていきたいと思います。

前作のダイジェスト

台湾版は本編開始前、男性ナレーターの解説と共にパート1の映像が11分6秒、流れます。すでに削除シーンの3分の1以上を占めてしまいましたが、この解説には映画と同じ楽しい雰囲気があり、何よりも周星星(周星馳)を「我らが星仔」と親しげに呼ぶ所に好感が持てます。映像は台湾で配給を行った「學者有限公司」が追加した物なのでしょう。以下に國語のナレーションを翻訳しました。



旁白:ひどく恨みながら登校する香港皇家警察の阿諾は…、あっ!違いました。星仔でした。
    学校への潜入捜査を迫られ、密かに調査を進めていました。彼の心は学校の何もかもと、
    馴染めません。それこそ、登校初日は、まるで監獄に入ったかのようだったのです。

(「阿諾」とは台湾で「阿諾·史瓦辛格」と表記されるアーノルド・シュワルツェネッガーの事であろう。
(台湾で「幼兒園警探」のタイトルで公開された「キンダガートン・コップ」はアーノルド演じる刑事が、
(保育士として幼稚園に潜入する話なため、本作と関連させ、ギャグとして盛り込んだと思われる。)



旁白:授業中は不真面目だったため、嫌と言うほど先生の必殺「黒板消し投げ」の攻撃を受けます。
    あちこちを飛び回った黒板消しは我らが可哀想な星仔の頭や顔を埃だらけにしただけでなく、
    黒板に書かれた数学の問題は天文学的数字のようだったため、我らが可哀想な星仔は驚き、
    慌ただしくドアから出て行ってしまったのでした。



旁白:さらにひどい事がありました。我らが星仔は宿題を提出しなかったため、プレートを付けられ、
    罰として立たされたのです。 その上、我らが美しい女教師の前で見苦しい所を見せ尽くします。
    見てください。色々なプレートが彼の体に掛かっています。先生は一回、また一回と、
    我らが星仔がプレートを付けて立たされているのを見るのでありました。ああ…、可哀想!

(女教師・何敏を演じているのは張敏。)



旁白:我らが星仔は一回、また一回とミスを犯してしまいます。
    罰として立たされるだけでなく、校内で皆に公開されました。依然として毎日、一新しています。



旁白:当然、試験を難しいと思わない我らが星仔です。最新のカンニング方法を持っていました。
    ほら!彼のカンニング方法は、こんなにも巧妙だったのです!



旁白:あれ?見てください。我らが星仔は、さらに新しい技に変えましたね。
    ああ…、やっぱり最後は先生に見つかってしまいました!



旁白:アイヤー!アイヤー!星仔は我らが「偽者のお父さん」によって殴られ、
    散々な目に遭います。見るに耐えません!

(「偽者のお父さん」に扮する曹達華を演じているのは吳孟達。)



旁白:我らが星仔は先生の専門的な指導により、成績は凄まじい勢いで前進しました。
    先生さえも思わず親指を立ててしまうのです。さらに彼は練習して絶技を身に付けました。
    ことわざにも「兵士が来れば将軍が防ぎ、水が来れば土で塞ぐ」とあります。
    黒板消しは二度と彼の体に触れる事はありませんでした。

(ことわざの原文は「兵來將擋、水來土掩」。「何かが起きれば適切な方法で対処する」の意味。)



旁白:見て!見て!我らが星仔の本性が明らかになりました!
    残念な事に不注意で先生に身分が見破られてしまったのです。
    こうなると、すごく悲惨です!彼は恋敵に捕まり、酷刑の拷問を受けるのでした。



旁白:しかし、我らが星仔は大変に勇敢なのです!彼は断固として白状しません。
    …さらに唯一の証人を消す方法は何でしょう?…アイヤー!見てみましょう。
    どうやって彼は証人の供述を消すのでしょう?彼は絶対に白状しません。
    …アイヤー!こんな避け方があったのですね。どうりで殴られる訳です。惨い!惨い!



旁白:星仔の表現は、こんなにも英明で武勇に優れています。
    さすがは「飛虎隊」の出身に恥じない無厘頭です。

(「飛虎隊」とは香港警察の「特殊任務部隊」の事。)



旁白:おおっ!この役は誰ですか?格好良い!当然です。彼は映画の脚本家なのですから!

(この黃局長を演じているのは本作の脚本を担当した黃炳耀。)



旁白:この世に別れなき出会いはありません。まずは犯人を九龍内で抑えた男について語りましょう。
    星仔は、ついに学校を離れる事になりました。さらに彼は美人の心を勝ち取ったのです。
    今年、我らが星仔は帰って来ました。今回、また彼は、どんな面白い事件を起こすのでしょう?
    皆さん!どうぞ、ごゆっくりと「逃學威龍」パート2をご鑑賞ください!

タイトルの登場

香港版 台湾版
タイトルの文字は黄色。 タイトルの文字は白色。

タイトルの意味は香港版も台湾版も「授業をサボる威張った龍」です。…以前、「逃學威龍 續集」と表示されるバージョンが存在する噂も聞いた事がありましたが、これまでに見た事はありません。

韓国版
「喋血威龍 첩혈위룡」

ちなみに韓国版の意味は「血の海を踏む威張った龍」で、パート1よりも銃撃アクションが多い本作の内容に合っていますが、「狼 男たちの挽歌 最終章」(原題:喋血雙雄)にあやかった可能性が高いです。なお、これは初版のタイトルで再販版は同じく「逃學威龍2 도학위룡2」と呼ばれています。

人質救出のオープニング

タイトル~女児型ボードが撃たれるまでを計った所、台湾版は香港版よりも1分ほどシーンが長いのですが、ほとんどは「飛虎隊」の隊員が通用口を作る際に散る火花の映像に割かれています。

香港版 台湾版
脚本は陳嘉上、陳健忠、阮繼志。 脚本は陳健忠のみ。

出演者などのクレジットが登場するタイミングも異なっています。そして、本作は陳嘉上、陳健忠、阮繼志の3人が脚本を担当していますが、台湾版では陳嘉上、阮繼志のクレジットがないのです。

香港版 台湾版
葉德嫻は「特別出演」表記。 葉德嫻は「友情出演」表記。

葉德嫻の出演表記が異なっています。実際は友情出演だったのであれば、向華強の顔を立てて、無報酬だった可能性も考えられます。さらに台湾版は黃霑と柯受良のクレジットもありません。

台湾版

台湾版には周星星が腕時計を見た後、一度、右を見てからカップヌードルに目を戻すシーンや、扉の前で一時停止した「飛虎隊」の隊員に続き、別の隊員が同じ位置で止まるシーンがあります。

台湾版

他にも男型ボードを押しのけた隊員が先へ進むシーン、人質がいる部屋の扉の下部をショットガンで撃つ前に上部を撃ち、リロードするシーンがあります。各シーンは非常に短く、1~3秒ほどです。

行き過ぎた尋問でプロレス

香港版

曹達華が原告(柯受良)にかけられた水を指で拭うまでの5秒間は逆に台湾版では削除されているため、香港版でしか見る事ができません。また、前述のように柯受良のクレジットはありませんが、好意的に捉えると、これは彼の地元・台湾の観客へのサプライズ感を狙っての事なのでしょうか?

台湾版
狂喜乱舞する曹達華。 原告を見てから答える曹達華。

台湾版はタバコを吸いながら原告に関節技をかける周星星と交代した曹達華が狂ったように喜ぶシーンが3秒ほど長いです。そして、尋問室に入って来た上司・黃蓮如(葉德嫻)の質問に曹達華が「背が高く屈強な男が女性をいじめました。殴られるべきです!女性を尊重しない男を私は最も軽蔑しています。」と答える前に内ポケットから手を出し、原告の方を向くシーンが3秒ほどあります。

この他、香港版は曹達華が原告と取っ組み合いを始めるあたりからコミカルな曲が流れますが、台湾版は無音のままです。本作の國語音声は台湾版の他、初期の香港版VCDの音声切替で聞く事ができる物がありますが、こちらでは尋問シーンの音楽も別の物が使用されているのでした。

…ちなみに台湾版はお馴染みの石班瑜が周星馳を吹き替えていますが、音声切替版で周星馳を吹き替えている人物は不明です。香港側が手配した大陸の配音員だと言う噂があるようですね。

交通課へ異動した周星星

台湾版
まだ、周星星の頭は見えず…。 かなり迫って来る周星星。

街中で佇む周星星の後ろを車が通り過ぎるシーンは、なぜか香港版の方が2秒ほど長くなっています。しかし、直後にあるバイクに乗った周星星が向かって来るシーンは台湾版の方が10秒ほど長く、映される無人の建物から迫る周星星がアップになるまでをノーカットで見る事ができます。

台湾版
女性警察官の足つきを確認。 意識して背筋を伸ばす周星星。

台湾版は隣で停止した女性警察官が周星星の方を見る前に、周星星が彼女の足つきを確認するシーンが約1秒、さらに周星星がサングラスを取り出す前に背筋を伸ばすシーンが5秒あります。

台湾版
アップで左手に軍手を装着。 遠くの周星星を映し続けるカメラ。

台湾版は周星星が軍手を着けるシーンも2秒ほど長いです。周星星がバイクで先に進むシーンも台湾版は香港版より10秒も長く、カメラは遠くに行った周星星を延々と映し続けているのでした。

ちなみに香港版は「街中で佇む周星星」が映し出された時点で羅大佑の「大家免著驚」が流れるのですが、台湾版は最初に別の曲が流れ、女性警察官が去った後に「大家免著驚」が流れます。(香港版は曲のテンポが少し速く加工されているため、オリジナルは台湾版で聞く事ができます。)

香港版 台湾版
姉弟が周星星を見る。 姉弟は登場せず。

香港版は周星星が「和記天地綫」の看板の前を通り過ぎるシーンで帰宅途中の学生姉弟が振り返りますが、台湾版は姉弟が登場しない別テイクが使われています。看板の位置も異なっており、台湾版は石垣に掛かっていないように見えるのです。香港版は台湾版より3秒ほど長いですね。

台湾版
独り言の前。 独り言の後。

台湾版は周星星が「俺は結局、何を間違ったのだろう?」と言う前に3秒、言った後で5秒、交通整理のシーンが長いです。駐車違反の取り締まりも4秒ほど長く、切符を掲げて歩き回っていました。

スクールバスを押す周星星

周星星がエンストしたスクールバスを押すも、太った小学生に馬鹿にされて涙ぐむまでのシーンは台湾版の方が26秒も長いです。…蝶ネクタイの児童も厳しいですね。以下に台詞を翻訳しました。

★台湾版

(スクールバスを押し続ける周星星の横を3台の車が通り過ぎる。)



小學生:頑張れ!立ち上がれ!這い上がって押すんだ!起きろ!

(小學生たちの応援も虚しく周星星は疲労で倒れる。)



領結仔:…うん。

(小學生たちは顔を見合わせた後、周星星に近づく。)



周星星:プハァ…、ハァ…。

肥  仔:結局、できるの?それとも、できないの?

周星星:ハァ…、まだ、できるよ!

(周星星は反射ベストで顔の汗を拭う。)

肥  仔:本当?それとも、ウソ?



領結仔:恥ずかしいって事を認めなよ!



肥  仔:ハァ…、将来性ないね。



(涙ぐむ周星星。)

…余談ですが、領結仔と肥仔を演じた2人は「逃學英雄傳」の冒頭に登場する児童役ではないでしょうか?領結仔は「どんなお兄さんやお姉さんが演じているのかな?」と聞かれて考え始める役で肥仔は「動作指導:黃靖華」と書かれた黒板の前で友人と玩具の剣で戦いごっこをしていました。

女性警察官を演じたのは誰?



…ところで、女性警察官を演じている人物は当時から謎でしたが、2019年6月22日に突然、大陸で「羅美薇か江美儀では?」と言う見出しの新聞記事が出ました。結果的に2人は違うのですが、「與龍共舞」の葉德嫻が本作に特別出演している事から、それに出演する羅美薇も同じ流れになったと思われたようです。江美儀は本作で金校長を演じた史美儀の名前に似ていた事が原因でした。

監督の陳嘉上は自分の微博で「女性警察官役は大型バイクを運転できるドライバーで、役者ではない。当時の香港にはバイクに乗れる女性は少なかった。」と書いたようですが、その元記事が見当たらず、「すでに削除された」「実はデマ?」と言う話も出回っているため、真相は謎のままです。

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