コイサンマン キョンシー、アフリカへ行く インド版 ~第三章~
ここからは「INDO OVERSEAS FILMS」が「嘉禾電影有限公司」の配給で1994年2月頃(※)に公開した本作のインド版の紹介です。インド版は英語音声なため、残念ながら周星馳によるナレーションはありませんが、一部のシーンが異なるため、以下に香港版と違う所を比較したいと思います。
(※インドの「中央映画認証委員会」発行の証明書では検閲日が1994年2月14日なため、直後に公開されたと思います。)

タイトルの登場

香港版 インド版
「非洲和尚」 「CRAZY SAFARI」

タイトルの意味は香港版が「アフリカの和尚」です。これは歷蘇が劇中で「道士」(道教を修めた者。仏教における僧=和尚に相当)になる描写から来ています。ただ、「非洲和尚」は転じて「黑人僧」(hak1 yan4 zang1。黒人の僧)、そこから同音の「乞人憎」(憎たらしい奴)を意味する言葉でもあるのです。冒頭でMimiが星仔とのデートを断ったのは、最初は見に行く映画のタイトルを前者の意味で捉えて約束するも、直前で後者の意味に気付き、「皮肉」だと怒った可能性が考えられますね。

インド版も香港版の英語題が使われています。意味は「狂ったアフリカでの探検旅行」と言う事で、慣れない地で苦労する事になる大師(林正英)と阿森(陳山河)を中心に考えた物になっています。

韓国版
「강시와부시맨」

ついでに韓国版の意味はシンプルにしてインパクトがある「キョンシーとブッシュマン」です。現在は正統なシリーズとして、「ブッシュマン3 キョンシーとブッシュマン」と呼ばれる事が多いようですね。

中国の殭屍に関する説明

インド版は本編が始まる前に英語の説明文が流れます。以下に内容を翻訳しました。

インド版

説明の翻訳
古来の中国民俗学では人が死んだ時、死体が故郷の地に埋葬されるまで死者の魂は安心しないと言われている。もし、人が故郷よりも遠い場所で死んだ場合、死者の身内は道士に依頼し、その特別な力で死体を故郷に"歩かせる"事ができる。しかし、次の物語のように死体が大陸全体ほど故郷から遠い場合、帰郷の旅は予想外の出来事でいっぱいである…。

中華圏以外の観客に向けて湘西地方の殭屍の伝説を説明しつつ、始まる物語に期待を持たせています。冒頭に武俠小説の説明を加えた日本版「楽園の瑕」(原題:東邪西毒)のように親切です。

競売会場では息を止めず

香港版 インド版

インド版は競売会場が広く、オークショニアも髭がない別の俳優が演じています。鮑德熹が演じるMr.司徒が登場しないため、髭のないオークショニアが続けて殭屍に関する説明も行っています。

香港版 インド版

殭屍の映像はトリミングされていないため、フルスクリーンで見る事ができます。ところで映像に登場する十字架を持った人物は許冠英に似ていますが、ノンクレジットの友情出演なのでしょうか?

香港版 インド版

殭屍の運搬は撮り直されています。この後、インド版も大師が道袍を着るシーンになるのですが、広い画の中心をよく見ると、なぜか道袍を着た大師がいます…。おそらく、度重なる脚本の変更と撮り直しの結果、前後の辻褄が合わなくなるも、このシーンを使わざるを得なくなったのでしょう。

インド版

大師が赤い粉を指に塗ったり、殭屍に線香を嗅がせるシーンがあり、殭屍を起こすと言う流れは同じですが、別アングルから撮られたシーンも使われています。その後、大師は鈴で殭屍を引率して会場を出るため、香港版の息を止めたり、殭屍が外国人を襲いかけるシーンはありません。

チンピラに治療費を払う大師

インド版

インド版には自転車のベルや殭屍の耳が動くシーンのアップがありません。大師が藁人形を使わないため、チンピラがお札をはがす流れも異なり、殭屍が暴走するシーンも撮り直されています。

インド版

大師がお札で殭屍を止めるシーンも撮り直されています。その後、ナイフで金を要求するチンピラを大師が功夫で撃退するも、彼らに治療費としてお金を投げつけてから去るシーンがあります。

歷蘇が女の子を助ける

インド版

インド版には歷蘇が手を縛られた女の子たちを助けるシーンが少し長く、自由になった彼女たちが立ち上がるシーンや外人女ことSusanと通訳のPeterが逃げ出した事を知るシーンがあります。

軽飛行機からの脱出

インド版

操縦士が軽飛行機を脱出する前に不安げな阿森のアップがあり、殭屍のパラシュートが開くシーンも撮り直されています。ちなみに粵語と英語を使い分けて話す陳山河はアメリカへの留学経験があり、語学に長けているため、台湾版の國語もインド版の英語も自分で吹き替えていました。

お札をはがされた殭屍が暴走

インド版は落下中の大師たちの会話、女の子を連行するJohnsonとPeterの会話の一部、倒れた部族のシーン、Peterの帽子が飛ぶシーン、殭屍に踏まれたJohnsonのアップなどがありません。

インド版

「殭屍の暴走は、これをはがしたせいか?」と歷蘇がお札を見ながら考えるシーンがあります。

香港版 インド版

息を荒くして人を探す殭屍のアップがない代わり、殭屍が静かに周りを見渡すシーンがあります。ちなみにインド版は歷蘇と大師が邂逅するまで2人のパートを香港版よりも細かく区切り、交互に挟んで見せていますが、このような順番変更とシーンの左右反転に関する部分は割愛しました。

村に祭られた殭屍

インド版

インド版は村に祭られた殭屍の前に鈴を飾るシーンがある代わり、殭屍の前から歷蘇たちが立ち去るシーンがありません。…以前、「低級の殭屍は鈴の音を聞くと術者の命令に従う」と言う趕屍術の話を聞いた事があるのですが、この殭屍が大師の鈴以外にも反応するのは「李鴻章の影武者で本人は九品官だった」と説明されるように「九品官」(役人の最低ランク)なためなのでしょう。

インド版

治療を受けるSusanが石づちの先で輝きを放つダイヤモンドを発見するシーンの前にインド版では長老が壺を受け取り、Susanが目を覚ますシーンサン人の女性が作業をするシーンがあります。

一方、インド版の大師の缶詰騒動では一部の猿が未登場で蟻がたかるシーンもありません。

ダチョウに乗った大師

香港版ではサイの突進を知った大師が他に打つ手がなかったため、ダチョウの視界を遮って振り落とされていましたが、インド版ではダチョウが急に暴れたため、大師が振り落とされています

香港版 インド版
阿森が前方にサイを発見。 ダチョウが急に暴れだす。
突進して来るサイ。 振り落とされる大師。
冠巾でダチョウの視界を遮る。 パラシュートで下降して来る阿森。
振り落とされる大師。 着地が上手く行かず、大師に衝突。
サイをやり過ごした2人。 大師に悪態をつく阿森。

空から降りて大師に衝突した阿森は怒って悪態をつきますが、時間差でパラシュートが阿森に被さった隙に大師がその場から逃げるシーンもあります。…林正英は2回も振り落とされたのですね。

ついに出会う歷蘇と大師

インド版

インド版は大師と蛇を捕獲中の歷蘇が互いに気付くシーンや大師の足から離れた蛇が動くシーンなどがあります。大師が歷蘇の挨拶を攻撃と間違うまでのシーンが短く、カメラが歷蘇からサン人にパンするシーンなどがありません。インド版を見た事で、香港版では捕獲した蛇をサン人が広い場所に移動させるシーンに編集段階でズームするエフェクトが追加されている事も判明しました。

この他に水を飲んだ大師が息を吐くシーン、阿森が「人間の本性」を英語以外で言い直すシーン、サン人の女性が来客と一夜を共にする風習について阿森が本で調べるシーンなどがありません。

トイレ問題で大騒動

インド版

インド版は大師が葉を持ち出す際にトリックで隠すシーンがないため、術で手の中から消したように編集されています。この他に大師を探すサン人が周囲を見回した後に割れた卵に気付いたり大師とコブラの対峙が少し長かったり、囲いが壊れる前に大師がズボンを押さえて後退りするなどのシーンがあります。しかし、大師が落とし穴の罠を覆う動物の皮をめくるシーンはありません。

アフリカで教える中国功夫

インド版

演武の最後で大師は靴を飛ばしてしまいますが、インド版では飛んで行った靴を見た後に笑い声の方向を振り返るシーンがあります。他に大師が歷蘇に功夫を教えるシーンが長く、詠春拳の構えを取ったり、2回目の蹴りの手本を見せたり真似するようにジェスチャーしたりしていました。

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