ラッキー・ファミリー 小説版 ~第四章~
大嫂を応援する老恭

ロビーカード 挿絵⑧(199ページ)

挿絵の説明:阿良と阿恭の兄弟の気持ち。(※イメージとして、朝食時の画像が使われています。)

賢淑が例のセクシーな服を着ない事から出て行った老良。小説では賢淑が「夫の感情が別の恋愛に移ったのでは?」と不安になり、考えれば考えるほど悲しくなった事から思わず、「ううっ」と声を出して泣いてしまうのですが、老恭が賢淑を応援する気持ちになり、声をかける描写があります。

映画では老良が離婚をしたがっている事を知るシーンで賢淑が泣きました。そして、応援の代わりに老恭が植木鉢を頭に乗せ、「何を見ているんだ?老坑!大根を見た事がないのか?」と言うギャグが入ります。 「老坑」は父親を悪く言いたがる老恭が使う蔑称で、直訳では「古い穴」の意味です。日本語的には「年を重ねてズルくなった親父」を意味する「古狸」「狸親父」に近い物でしょう。

小説
阿恭は大嫂が傷ついたのを見て、同情の気持ちに満ち溢れた。小さな阿恭だが不正を目撃し、助太刀を買って出る事を決めた。胸を叩いて言う。「大嫂、悲しまないで。僕がいるじゃない!」

そして、バーで老良と郎夢が会った後、離婚の話が進むと老恭はショックで食欲もなくなります

小説
阿恭は庭で大哥と大嫂が離婚する話を聞き、急に大事件が起きたような気持ちを覚えた。顔一面に悲しさが広がる。ダイニングルームに行くと、また大嫂が泣きながら二階に行くのが見えた。心の中はさらに辛くなった。苦虫を噛つぶした様な表情を引きずり、食卓の前に座る。朝食も喉を通らない。喬老伯は阿恭を見て「3人ともどうしたんだ?本当に家族が不幸になる!」と言った。

余談ですが、クローゼットを見ている老良の頭に降って来る「綠帽子」は「妻を寝取られた男」を意味します。そのため、中華圏に進出したクロネコヤマトの配達員は緑色の帽子を被っていません。

「マディソン郡の橋」からの想像

本編

小説では郎夢の友人が「マディソン郡の橋」の本を「きっとエロ本だ!」と言っていましたが、映画では本の香港題「廊橋遺夢」(屋根付き橋に残した夢)の「遺」と「夢」の2文字だけに目が行ったのか、「何々…夢遺(夢精)だって?これはエロ本じゃないのか?」と、より直接的な想像をしていました。

また、映画では老良が郎夢に「メリル・ストリープがあんたの妻?」と言われます。これは映画「マディソン郡の橋」の女優名ですが、小説では「ははは!あんたがフランチェスカの夫ですか。光栄ですね。私、ロバート・キンケイドがお詫びいたしますよ!」と本の登場人物の名前を出しています。

ちなみに映画で郎夢の友人は「じゃあ、シャロン・ストーンは俺の妻だ!」と言っていました。なぜ、彼女の名前が登場するかは不明です。周星馳の「逃學威龍3」と「氷の微笑」の繋がりでしょうか?

小萱と再会した老恭

本編

小説では小萱が母親に自分が知能障害のふりをしていた理由を明らかにし、母親と老恭の父親の良い関係を壊さないために二度とバカなふりをしない事を伝えます。そして、老恭の父親との関係を言われた母親が頬を赤く染めるのでした。その後、小萱は昼は学校で授業を受け、夜は武館で北派少林拳の練習をするようになります。…そして、中学生の老恭は夜に店でやけ酒をします。

なお、老恭が吟じる詩の原文は「何以解憂?唯有杜康」です。杜康は酒造りの神ですが、転じて酒自体を意味します。また、映画では「家族愛とは可愛い物だと知った」(おそらく「可貴 ho2 gwai3」と「可愛 ho2 ngoi3」の入力ミス)という間違った中文字幕と、小萱が言う「どのくらい貴いの?」に老恭が「2000数万」と金額を言うギャグが入るせいで、個人的には小説の流れの方が心に響きました。

小説
ある夜、練習から戻った小萱は、車の中から明かりが光り輝くビリヤード場で一人の男が孤独にビールを飲んでいるのが見えた。「あれは喬老伯の家の息子じゃないの?どうして、ここに一人でいるの?具合が良いとは言えない表情ね。」小萱は車を降りて、ビリヤード場に入って行った。

まさに阿恭は一人でやけ酒を飲んでいた。家の事で彼は混乱していたのだ。一言、詩を吟じた。「何を以って不快な気分を紛らわす?唯一、杜康だけがいる」

ビールを一口、啜る。浮かない顔でクヨクヨと思い煩う。誰かが彼の腕を叩いた。「どうして一人でやけ酒を飲んでいるの?」阿恭が振り向いて見ると小萱だった。心の中が少しだけ嬉しくなる。

「はぁ…。家の2人の兄さんの気持ちが変わってしまったんだ!」阿恭は大声で言った。「あんたには関係ない事でしょう!」小萱は彼をなだめる。「以前の僕は彼らには無関心だった。彼らを見つけては金を要求するだけだったんだ。だけど、バカなふりをしてから、僕の悪友は皆、離れて行った。唯一、僕を気遣ってくれたのは彼らだった。僕はやっと家族愛とは貴い物だと知ったんだ!」

阿恭が話し終えると小萱は心の中で笑い、「そんな風なのは、あんたが救いようがないほど悪いって事じゃない証明よ。今になっても、わからないんだけど、あんたを何て呼んだら良いの?」と言った。阿恭は「部外者は皆、老恭と呼ぶよ。家族は、それぞれ僕を阿恭と呼ぶんだ。気にしなくて良いから君も僕を老恭と呼んで良いよ!」と言った。小萱はニッコリと笑い、阿恭を叩いて言った。「ねえ、私はそんなに間抜けじゃないの。私も恭仔哥と呼ぶね!」2人は言うと笑っていた。

瀟灑とビリヤードで勝負

本編

小説では小萱と談笑する老恭の前に現れた瀟灑がビリヤードの勝負を持ち掛けて来たため、応じます。映画では「一回のジャンケンで100万」と言って方法を変更していました。わざわざ、ビリヤード場で撮影しているのに予想外の流れになるのは無厘頭さの演出による物なのかもしれません。小説のビー玉で遊ぶ描写を映画は先にビリヤードに変えていましたし、ここは鍾麗緹の格闘に時間を割いた方が見せ場になると思ったのでしょう。ちなみにアクション指導をしたのは錢嘉樂です。

小説
「バカもナンパするのか!」と瀟灑が言う。阿恭は急いで財布を取り出し、勘定をする。わざと多くの金を出した。瀟灑は追いかけて来て言った。「慌てるな。1000香港ドル:1ゲームで遊ぼうぜ」

阿恭は意外にも止まり、体の向きを変えて言った。「遊ぶなら1万香港ドル:1点でだ。言った事は守る。」瀟灑は初めは驚いたが、続けて大喜びした。向きを変えてチンピラに言いつけた。「このバカは俺を勝負の相手として恐れるに足りないと思っている。やはり、あいつの病気はこんなにも酷いんだ。始めよう。お前はカメラを買いに行って、あいつの写真を撮るのを手伝え!」

ビリヤード台の上では白いボールが赤いボールにぶつかり、赤いボールがポケットに入った。瀟灑が先にボールを打ち始めた。赤いボールが入り、黒いボールが入る。そして、また赤いボールが入り、また黒いボールが入った。阿恭は気楽に見ている。小萱はかなり緊張している。

瀟灑がまた赤いボールを打った。穴にぶつかり、入らなかった。この時、ビリヤード台の辺りにはすでに多くの人が野次馬に来ていた。阿恭はキュースティックを手にぶら下げ、大勢の客に向かって言った。「皆、証人になってくれ。1万香港ドル:1点だ。」阿恭は身をかがめ、ボールを打つ準備をした。格好良いポーズをしようとしていたのだが、ぐずぐずしてできなかった。

瀟灑はハハッと大笑いして言った。「俺を驚かせたな。やはり、ただの見かけ倒しか!」阿恭は、もう一度、体を少しかがめると、「パン」という音と共にボールをポケットに入れた。彼はできるだけ狙いをつけると、ボールは続けてポケットに入った。瀟灑の口が、ますます大げさになっていくのが見える。かなり驚いているのだ。ついに阿恭が台の最後のボールもきれいさっぱり打つと大勢の見ていた客は拍手して祝った。

阿恭は大声で一気に言った。「あんたは合計16点。僕が打ったのは全部で131点。あんたの点を差し引いて合計115万だな。あんたのご厚意に感謝するよ!」言いながら、瀟灑に手のひらを開いた。「おい。金を寄こせよ!」

瀟灑の醜態をカメラで撮影

本編

小説ではビリヤード勝負の後、言い逃れをした瀟灑がチンピラたちを向けた時、老恭が「おい!おい!忠告する。無茶な事はするなよ!」と言った事で瀟灑は老恭が頭がおかしいふりをしていると気付き、争いが始まります。そして、我慢できなくなった小萱が参戦し、瀟灑は「金をやるから」と許しを請うも信じない老恭は瀟灑の写真を撮る事にします。なお、老恭は夜食を買いに行きません。

小説
あのチンピラが手にカメラを持って、慌ただしくやって来た。「兄貴、カメラです!」阿恭は前に一歩出るとカメラを奪い、もう一方の手で彼の手を捻った。このチンピラは瀟灑が命乞いをしているのを見て、跪いて「大俠、命ばかりはお助けください!」と言った。阿恭は勝利を確信していた。今までに受けた家族への色々な不幸を思い出し、怒りの炎の中で燃えていた。

阿恭は「ようし!お前は、お前の兄貴を丸裸にするのを手伝え。その後、自分も丸裸になれ。お前らが抱き合う美しい光景の写真を僕が撮り終わってから、また話そう!」と言った。瀟灑とチンピラは一緒に「できませんよ!」と叫んだ。阿恭は「これができないのか。なら、殴るぞ?」と言う。

阿恭は叫びながら拳をあげた。小萱も足払いのために足を持ち上げる。蹴り続けられたチンピラは痛さに涙でいっぱいになった。目に涙を浮かべ、瀟灑に向かって這って行くしかない。この時、瀟灑は名前のような瀟洒な姿ではなかった。しおらしくチンピラと互いに衣服を脱いでおり、残すはシャツとパンツだけだったのだ。阿恭は2人の悪人が抱き合う醜態を一つ一つ、撮っていった。心の中で押さえつけられた長い間の怒りの気持ちは、ついに広がって行ったのだった。

阿恭は気分が良くなり、小萱の手を引っ張ってビリヤード場を離れた。小萱は力を入れていたので顔の血色の良さが目立ち、颯爽として勇ましい。阿恭は心の中で急に愛慕の心が生まれ、小萱が自分の力になってくれた事もすごく感謝していた。

そして、2人の会話があります。映画と違い、小説にはジムとエレベーターでの描写がないため、老恭の浮気性が暴露されるシーンはありません。ちなみにジムのMuscleを演じたのは林偉亮です。

小説
阿恭:小萱、今日は幸いにも君の助けがあった。
    そうじゃなけりゃ、僕は本当に瀟灑の一味によって、くたばっていたよ。

小萱:今日はあんたに損をさせちゃったみたいだからこそ、命がけで助けたのよ。
    今後、あんたはあんな面倒な一味と付き合わない事ね。
    次、私は見ても決して、あんたには関わらないわ。

阿恭:もちろん!もちろん!今から僕は悪事から足を洗って、しっかりと勉強するよ。でも、
    君が僕を恭仔哥と呼んだからには、僕のピンチを見て救わない訳にはいかないね。
    そうじゃなけりゃ、僕は死ぬんだから。君もお兄さんがいなくなっちゃうよ!

(阿恭は厚かましく言った。)

小萱:何が死ぬだの、生きるだのよ。しっかりと生きなさい。不吉な話は言わないの。

(小萱の顔が赤くなった。)

阿恭:ようし!恭哥、かしこまりました!

(阿恭は両手で抱拳すると、小萱がくすくすとしきりに笑った。
(2人は「今後は常に連絡しよう」と約束し、名残惜しみながら別れた。)

…余談ですが、映画でエレベーターに乗って来る老恭と関係のある人物は次の通りです。

黎姿 鄭艷麗 楊玉梅 施綺蓮 何超儀 陳綺明
老恭の彼女 甘やかす彼女 一夜の彼女 老恭の初恋 老恭が片思い 妊婦

日本語字幕ではエレベーターに乗ろうとしたアラブ系の男性を老恭は「カレー教室の彼女だ」と言いましたが、原語では「僕に咖喱鷄の作り方を教えてくれた人だ」と言っています。「咖喱鷄」は「チキンカレー」以外に、カレーが服に付着すると簡単には落ちない事から転じて「キスマーク」の意味があるため、老恭は前者のつもりなのに小萱からはバイセクシャルだと勘違いされるのでした…。

勝敗をうやむやにした本当の理由

挿絵⑨(225ページ)

挿絵の説明:父子2人はゲーム機で対戦し、優劣を決める。

映画の老恭は父親とテレビゲームで遊んでいる最中、単に負けそうになったため、テレビを消して勝負をうやむやにしたように見えますが、小説では多くの心配事が重なった事がプレイの劣勢に現れ、加えて悪気のない父親に病気を話題にされた事を嫌がって怒り、電源を抜いていたのでした。

さらに小説は父親が涙を流しながら老恭の状況を自分のせいだと謝り、それを聞いた老恭も自分の行いを反省して号泣する描写が非常に細かいです。読んでいるだけで胸が締め付けられます。

小説
阿恭は瀟灑から金を取りたて、また仇を討った。もうバカなふりをしたくないが、苦しみに逃げ道がない。父さんも大嫂も自分を知能障害児と見ている。毎日、抜かりなく保護されていて、至れり尽くせりだ。それは阿恭の心を本当に苦しくさせていた。抜け出してはならないのである。毎日、顔にはこの上なく悩み、苦しむ愚かさが現れている。それは家族をたまらなく心配させていた。

喬老伯は自然と花の世話をする時間が減った。毎日、多くの時間を割いて、自分の小さな息子の世話をしている。ある日、2人はまたテレビゲームをしていた。テレビ画面には市街戦が映り、一人が別の一人を追って殴っていた。喬老伯と阿恭はそれぞれ自分の力を出していた。喬老伯は上機嫌でプレイし、阿恭は汗だくになってプレイしていた。戦いは激烈で接戦となっている。

阿恭は心配事がたくさん重なったため、だんだんと怠慢になり始め、それが画面上にも劣勢が現れていた。喬老伯と阿恭のゲームプレイは、いつも失敗で終わりを告げる。今日は、やっと勝てるチャンスが見えたため、喬老伯は心の中ですごく喜び、「お前が病気のうちに、お前の命を弄んでやる。容赦なく、お前をやっつけるからな!」と口にした。

阿恭はこの時、病気を話題にされた事を嫌がった。こんな風に言った父親を見ると、立ち上がって電源を抜いた。テレビの画面は消えた。喬老伯は全神経を集中させて攻めていたが、急に目の前に空白が見えて、しきりに驚いた。阿恭は父親がこんな風に愕然とするのを見て、すごく嬉しくなり、「あんたには勝たせないよ。頭に来るな!」と言った。

喜んでいた喬老伯は勝ちたくて、ひたすら阿恭にせがんで言う。「一回くらい父さんに勝たせるのもダメなのか?」「ダメな物はダメ!」阿恭は融通が利かない。喬老伯はゲームがプレイできず、ウロウロして落ち着きがない阿恭を見た。そして、阿恭に呼びかけた。「阿恭、座りなさい。父さんはお前に真面目な話がある」阿恭は父親が真面目に言うのを見て、話を聞くのを止めた。

喬老伯は厳粛な顔で「この話は私の腹の中に長年あった物だ。今日、私は絶対にはっきりと言って、すっきりするぞ。」と言った。阿恭は父親がこんなに深刻に言うのを見て座った。コーラを飲みながら、夢中になって聞いた。喬老伯がはっきりとした目で「実は三兄弟の中で私は最もお前が好きなんだ。なぜなら、お前は最も私に似ているからな!」と言ったのだけが聞こえた。

阿恭はコーラを飲みながら父親を見た。また、父親が続けて言うのを聞く。「私たちは同じく男前だからな!」阿恭はこの話をやせ細った父親の口から出たのを聞き、心の中で少し楽しくなり、笑ってコーラを噴き出した。喬老伯は阿恭をちらりと見ると「笑うな!私は若い時は、お前と同じく風流洒脱だった。同じく多くの女の子が私を好きだったんだ。意外にもお前は成長すればするほど、私とぶつかりたがる。それは多分、私と似ているからかもしれない。同じように、こんなにもへそ曲がりだ。だが、わざと私と意地になって争っていない事は知っているさ。だろう?」と言った。

ここまで聞いた阿恭は表面上は気にせず、持ったストローでコーラ瓶の中をかき混ぜていたが、
すでに心の中では、さざ波が立ち始め、平静ではなくなって来ていたのだ。喬老伯は続けて言う。

「父さんはお前に顔向けできない。父さんはお前にしっかりと教育して来なかった。今、お前を知能障害にさせるまで傷つけてしまった。もしできる事ならな、知能障害になるのは私で、お前でなかった事を本当に望んでいるんだ!お前のこの状況を見ると、父さんがすごく心が痛いって事がわかるか!?私が将来、あの世でお前の母さんに会ったら、私はどう説明したら良いんだ!?」

彼は言えば言うほど辛くなり、考えれば考えるほど心が傷ついている。気が付くと、はらはらと老いの涙を流していたのだ。阿恭は表面上は動かず何もしないが、心の中は実はすでに大騒ぎしていたのである。父親のこのような悲しみを見て、自分は前から非常に後ろめたさを感じていた。

平穏無事の家族に自分が災いを招き、バカなふりをしただけで、一家を不安にさせたのだ。父さんが自分に顔向けができないのではなく、自分の行為がデタラメなのだ。父さんに顔向けができない。家族に顔向けができない!阿恭は結局は若い。こんな風な父親を見て、心の中はとっくの昔に、どのようにしたら良いのかわからなくなっていた。さらに父親をなだめる方法がない。自分が醸造した苦い酒は飲み込んで自分の腹の中に入れるのだ!

喬老伯は、ひとしきり話をした。阿恭の顔が無表情で動かず何もしないのを見て、心の中では彼の無知でバカな様子を哀れに思っていたのだ。すでに遅い時間になっているのを見ると立ち上がり、「恭仔、おとなしく眠りなさい!父さんはお前に顔向けができないよ!」と言った。長いため息をつくと、音を立てないようにドアを閉めて行った。

ちょうど父親がドアを閉めると、阿恭は長い事、抑制していた気持ちが湧き出て来た。悲しみ、憤った。苦しみ、胸を叩いた。号泣のあまり、喉が詰まって声が出なかった。自分の色々な不忠不孝な行為を思い起こした。阿恭は自分を殴る事ができず、もどかしかった。最も嫌な事を悔やんだ。彼はやはり自分の顔を左右に引っ張った。

左を引っ張る。これは六合彩に当たり、独り占めしようと考えた事だ。
右を引っ張る。これは賭けに行って、100万香港ドルを騙された事だ。
左を引っ張る。これは災難を起こしたが、認めなかった事だ。
右を引っ張る。これはバカなふりをして一家に損害を与えた事だ。

引っ張りながら泣いた。泣けば泣くほど悲しくなった。「ううう…」阿恭は本当に深く悲しんでいた。泣いて大声で叫んだ。家の中の者は阿恭の大泣きを聞いて、何事が起きたのか、わからなくなった。喬老伯は慌てて部屋のドアを押して開き、彼を見た。阿良と阿非も続けて入って来た。阿恭は父親が入って来るのを見て、この機会に徹底的に父親に真相を公開する事を決めた。自分が家族に説明する事もだ。彼は大声で叫んだ。「父さん、僕は顔向けできないよ!」

喬老伯は状況を見て慌てて言った。「違う。父さんがお前に顔向けできないんだ!」阿恭は突然、立ち上がり、父と兄に重々しく告げた。「僕は知能障害じゃない!僕は、皆が僕のために作ってくれた基金はいらないよ!僕は自力で更生する!」

そして、「すぐに車で医者に診せに行こう!」と心配した老良がキーを準備している時に賢淑の手紙を発見します。老良が老恭の部屋に戻る前には以下のような弟たちの声が聞こえて来ました。

小説
阿恭:信じてよ。僕は本当にバカじゃないんだ!僕は六合彩くじに当たって嬉しくなり、
    Gi Giとバーに行って遊んだんだ。瀟灑に賭けで騙され、100万香港ドル、負けた。
    瀟灑が強引に兄さんから100万香港ドルを騙し取ろうとするのを見た。
    僕は説明のしようがなかったので、ただ、知能障害のふりをしたんだ。

阿非:阿恭、本当にバカなふりをしていたのか?本当に知能障害だったんじゃないのか?

阿恭:僕は本当にふりをしていたんだ。家族は見抜けなかったけど、
    他人の小倩は一目で見抜いたよ。二哥、あんたは本当に幸せだ。
    あんたは自分が恵まれている事に気付いていない。小倩はすごくあんたが好きなんだよ!

阿非:本当か?どうして、お前が知っているんだ?

阿恭:僕は二哥に代わって一役買って出たんだよ!僕は自分の口で彼女に聞いたんだ。
    彼女は二哥が「自分を好きかどうかにかかっている」と言っていた。
    彼女があんなに美しく着飾っていたのは、二哥に見せるためだったに違いないよ。

阿非:じゃあ、彼女はどうして、ぷんぷんと怒り、荷物を持って出て行ったんだ?

阿恭:それはあんたと金毛玲の腐れ縁が続いていたからだと思う。
    金毛玲とは電話でもつれていた。

(阿恭はまた阿非を笑った。阿非はやっと悟った。)

阿非:あれは金毛玲が絡んで来たんだ。僕の心の中では、とっくに彼女とは切れていた。
    じゃあ、今、僕はどうしたら良いんだ?

阿恭:どうしたら良いって?早く長洲に行って小倩を追うんだ。
    あんな良い女の子を追わないなんて。僕が長州に行って追っちゃうよ。

(阿恭は発破をかける方法で阿非をたきつけた。阿非はしきりに頷いて言った。)

阿非:長洲に行こう!長洲に行こう!

(喬老伯は阿恭の話を聞いて、心の中にも喜びの花が咲いた。)

父親:これは本当に彼が知能障害ではない事の証明だ!

老良が部屋に戻ると父親は「何が何でも賢淑を探して連れ戻さないと家に入れん!」と言います。

小説
阿良:彼女(賢淑)に出て行けなんて言ってないぞ!

阿恭:僕が彼女に出て行けと言ったんだ!

阿良:おい、お前が彼女に出て行けと言ったのか?

阿恭:大嫂は全世界で元も賢慧淑嫻(優しく善良で、しとやかな)な女性だ。彼女に過ちはない。
    あんたは意外にも彼女が男を誘惑していると疑った。彼女を泣かせるまで怒ったんだ!

阿良:それは俺が間違っていた。俺が良くない。じゃあ、お前は彼女にどこに行かせたんだ?

阿恭:僕はそれをあんたには言えない。あんたが過ちをわかっているかどうかにかかっている。
    今後、大嫂に対して良くするか?

(阿恭はもったいぶり始めた。阿良は頭をかくだけだ。へりくだって言った。)

阿良:阿恭、兄さんに教えてくれ。兄さんが間違っていた。今後、絶対に大嫂に良くする。
    むやみに疑わない。彼女を思いやる。面倒をみる。良いだろう?

(やっと阿恭はプッと笑い、言った。)

阿恭:兄さん、少しロマンチックになるんだ。明日、長洲に日の出を見に行くのさ。
    そうすれば、大嫂に会えるよ!

父親:そうとなれば、何を待つというのだ。家族全員で長洲に行くぞ!

兄弟たちは準備を始めますが、老非は小倩に会った時にかける言葉に悩む描写があります。

小説
阿非も部屋で着飾り、髪をとかしながら、心の中で小倩に会ったら「最初に何を言うべきかな?」と考えていた。こう言うべきだ。「小倩、僕は本当に君が良いと思っている。君は金毛玲より善良だ。君は金毛玲より立ち振る舞いがきちんとしていて威厳がある。君は金毛玲より大らかだ」いかん。いかん。金毛玲の事を出す必要はない!こう言うんだ。「小倩、君に会ってから、心で本当に好きを感じた。それは一種のムラムラとさせる、ぬくもりを沸き起こさせる物だ。僕は本当に君を愛している!愛している!」ダメ。ダメ。演技じゃないし、こんなに気持ち悪くする必要はない。

老恭も連絡先を知った小萱に電話をします。そして、息子たちが着飾っているのを見た父親も式典に出る服を着た後、「多くのスターと知り合いになれるかもしれない」と思う描写がありました。

小説
阿恭もすごく忙しかった。電話を一つ一つかけ、ついに相手の爽やかで甘い声が聞こえて来た。「どなた?誰を呼んで欲しいの?」

「僕は恭仔哥だよ。君は小萱だよね!僕は長洲に行くんだ!うん。うん。家族全員で行くんだよ。長洲はどんな所なのかな。おおっ。君に教えるよ。燒鷄店に行くんだ。『山東燒鷄店』だよ。そう。そう!向かいに外国人が開いたフライドチキンの店がある。…うん。行った事があるんだ。…そうか、そうか。…知らなくはないんだ。…そうか。…じゃあね。…来るまで待っているよ」

阿恭は部屋を出る時、巻かれた紙幣をポケットに詰め込んだ。わくわくして階下へ降りた。

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