ハッピー・ブラザー 韓国版 ~第一章~
個性的な兄弟たちの恋愛模様を描いた「家有囍事」。この韓国版には楽しいホームコメディの中に存在するとは思えない激しい銃撃戦のシーンがあるのです。実は本作の撮影時、韓国では盛んに吳宇森の「英雄本色」のような映画が流行しており、「張國榮の銃撃戦の演技が必要」と言う韓国の配給会社の要求に監督の高志森が応じたため、韓国向けのシーンも撮影されていたのでした。ここでは香港版にも台湾版にもない、差し替えシーンのある韓国版を見ていきたいと思います。

パッケージの紹介文

本編の紹介前に韓国版ビデオのパッケージにあるハングルを確認してみたいと思います。

背表紙


背表紙にある銃を持った張國榮の画像の下には「最新劇場公開作」と書かれてあります。漢字題の下は「家有囍事」の韓国語読みです。意味は同じく、これは「ga yu hui sa」と発音するようです。その下のロゴに「B.M」と書かれていますが、これはビデオの販売元「B.M KOREA」の略称です。

表にも漢字題の上に「家有囍事」の韓国語読みがあり、張曼玉の下には「最新劇場公開作」と書かれています。周星馳と張國榮の間にあるハングルは「戦いはこれからだ!! 今、最高のスターたちが暗黒街に宣戦布告をした!」と言うキャッチコピーで、銃を持つ画像に加えて、韓国版には黒社会の人間と対決するような事が、こちらから想像できます。「ALL'S WELL END'S WELL」の上には主演の「張國榮、周星馳、張曼玉」の名前があり、その右下には「年少者観覧不可」とあります。

裏には「“君が愛を選ぶのなら、私は死を選ぶだろう!!”」とあり、その下の長文は映画のあらすじが書かれています。周星馳が演じる常歡が次男で張國榮が演じる常騷が三男と間違って書かれているのは地元・香港でも誤って書いてあった情報を翻訳してしまったからのようです。また、兄弟たちの親を物語のメインに持って来ている書き方に儒教に基づく敬老の考えがあるような気がしないでもありません。他にも突っ込み所はありますが、次にあらすじを紹介したいと思います。

あらすじ
“常滿(黃百鳴)”・“常歡(周星馳)”・“常騷(張國榮)”の3兄弟を抱えた老父母は、今は引退し、ゆっくりと休んでいるが、3人の息子の将来がいつも心配であった。

長男‘だけ’は7年前に結婚させたが、2番目は浮気者で数十人の女たちと手当たり次第に会いながらも、その中の誰かと結婚するつもりがない。3番目は体だけは男だが性格は女のようで、家事やフラワーアレンジメントなどに興味はあるが、女性にはまったく関心がないのである。しかも、結婚7年目の倦怠期に入った長男が愛人を作って浮気をしたせいで、2人の老人は軽々しく、目を閉じて息を引き取る事ができない状況だ。

ところが、2人の老人が心配していた事が一度に解き放たれる。愛人との問題で家出した長男の嫁が、長男と和解して帰って来たかと思えば、女性問題で一時的に記憶喪失症になっていた次男が献身的に看病して来た“何里玉(張曼玉)”の努力で記憶を取り戻し、末っ子もついに、いつも家に出入りしていた彼女に関心を持つようになったが…。

…続けて裏の説明ですが、2つの画像の下には「●88年に引退した張國榮の初カムバック作品」とあり、その下には次のように他の出演者や製作スタッフたちの名前が列挙されています。

出演者 毛舜筠/陳淑蘭/黃百鳴/吳君如/李麗珍/黃光亮/李香琴/關海山
製作者 ■監督/高志森 ■出品人/羅傑承・黃百鳴 ■製作/黃百鳴
■音楽/林敏怡 ■撮影/李健強 ■美術/陳錦河 ■脚本/谷德昭・蔡婷婷

また、メインの3人が揃った画像の上にある吹き出しには、それぞれが言う台詞が入っています。ここでも周星馳の台詞にある「戦い」は韓国版だけにあるシーンの事を言っているようですね。

人物 台詞
周星馳 “愛とユーモアと戦いを知らないなら、君は男とは言えないだろう!”
張曼玉 “女性への初恋は消す事のできない痕跡よ!”
張國榮 “僕のウィンクに女性たちは天国の階段を踏む!”

そして、周星馳の左下には「映像文化の旗手 B.M KOREA」と書かれており、3人の画像の下にあるのは次の情報でした。…韓国での本作の公開は1992年3月25日からなので、その7日前に輸入複製許可が下り、公開から3ヶ月もしないうちにビデオが発売されたようです。

●メーカー:(株)ソウルメディア
●メーカー登録番号:文化部登録第133号_
●製作年月日:1992.6.15
●共同倫理審議に要する審議番号:(L)9204-V532
●輸入複製許可番号:92-440(92.3.16)
●上映時間:90分

ちなみにパッケージに使われている画像は宣伝のために撮られた物なため、この格好をした周星馳たちは本編に登場しません。しかし、これらの画像は「Premier Entertainment」が発売した韓国版DVDのメニュー画面や韓国で発売された「家有囍事」の写真集でも使われています。(※韓国版DVDは香港版と同じ映像が使われているため、本編に銃撃戦のシーンはありません。)

タイトルの登場

香港版 韓国版

韓国版のタイトルは香港版の物に、漢字題に合わせた緑色のハングルが重ねられています。タイトルについて言えば、他に本作には赤い背景に白文字で「家有囍事 HAPPY HAPPY」と書かれた再販版も存在し、こちらは同じマスターが使われている日本版でも確認できます。差し替えされた理由は不明ですが、明るい背景の方が物語と農曆新年に相応しいと判断されたからでしょう。

しかし、これでは再販版でタイトルの前に出る「高志森影業有限公司 攝製」の表示が黒い背景のまま残っている事が不自然ですね。ちなみに韓国版では「高志森影業有限公司 攝製」の代わりに黒い背景に白文字で「INDEPENDENT T.V. PROGRAMMING LTD」と表示されます。ついでですが、ベトナム版では「東方電影出品有限公司 出品」の表示が差し替えられていたりもするのです。

再販版
表示文字
1
2
3
ベトナム版
表示文字
1
2
3

収録時間

名称 時間 備考
香港版A 100分 映画フィルムから作成されたオリジナル版。
香港版B 96分 PAL方式に変換したマスターから作成。
日本版 96分 香港版Bをベースに作成されたバージョン
韓国版 90分 香港版A-(約15分+一部の早回し)+約6分。

香港版には収録時間が「100分」のバージョンと「96分」のバージョンの2つがあるのですが、見比べても物語の内容に変わりはなく、「96分」の方は、どこかのシーンが大きく削除されている訳でもないのです。実は「96分」のバージョンは映画フィルムをPAL方式に変換したマスターを使用して作られた物で、オリジナル版と比較すると約4%ほど映像全体の再生速度が速くなっているのでした。そのため、同じ物をマスターとした日本版もオリジナル版に比べて早回しになっているのです。

なお、上の収録時間は便宜上、ソフトのパッケージにある物を書きましたが、実際の収録時間とは違っています。例えば「100分」のバージョンは秒単位で切り上げされており、実際は「99分43秒」ですし、韓国版は切り捨てされているため、実際は「90分38秒」なのです。

さて、実際の収録時間を踏まえた上での韓国版の収録時間についてですが、韓国版は「100分」のバージョンがベースとなっており、さらに以下のシーン(合計:15分4秒)が削除されているのです。

削除されたシーン 時間
1 帰宅した常滿が程大嫂(吳君如)にツボを押されるまでのシーン 2分20秒
2 常歡が何里玉と一緒に夜の小西灣で月を見るまでのシーン 3分34秒
3 辞職願いについて話す校長と梁無雙(毛舜筠)の会話シーン 44秒
4 程大嫂を先に帰した常滿がSheila(陳淑蘭)と会うまでのシーン 2分10秒
5 出所祝いをしている客の前で程大嫂が「鐵窗紅淚」を歌うシーン 18秒
6 緑色のネクタイの場所を聞かれた程大嫂が早口で答えるシーン 6秒
7 台湾式麻雀の最中に梁無雙が常騷のイカサマを疑うシーンなど 1分32秒
8 常歡が程大嫂のために閩南語で「相逢何必曾相識」を歌うシーン 4分20秒

そして、常歡が閩南語で歌うシーンの代わりに「6分16秒」の銃撃戦のシーンが入っています。ここまでを計算すると「99分43秒-15分4秒+6分16秒=合計:90分55秒」となり、本当の収録時間である「90分38秒」より時間が多いのですが、この17秒については同時再生をして確認した際、香港版の映像が遅れた事から韓国版は一部のシーンの再生速度が速くなっているのだと考えられます。

戻る