ゴッド・ギャンブラー 賭聖外伝 台湾版 ~第二章~
編集が違うと印象も変わるラスト

本作のラストである「左頌星と綺夢の会話」はバージョンによって、編集が異なっています。まずは全長版である香港の初版を確認した後、他のバージョンの違いについて紹介したいと思います。

★香港の初版



左頌星:この前は僕に付き合う機会をくれて、ありがとう。
     でも、僕はわかっていたんだ。君は仕事でしていたって事を。
     ずっと、僕と君は住む世界が違うって事、わかっていたんだ。



左頌星:んっ…。

(左頌星は右手を差し出し、綺夢に握手を求める。)



綺  夢:ええ。私たちの住む世界は違うわ。



綺  夢:あなたは、もはや世界の賭博王よ。
     そして、私は陳松の手下である一人の普通の女の子に過ぎない…。
     …できるのなら、あなたが私に機会をくれる事を願っているわ。
     あなたと一緒に食事がしたいの。



(綺夢が左頌星の手を握る。)


(しかし、左頌星は視線を落とし、彼女の手を放す。)



(寂しさだけが残る綺夢の右手。)



左頌星:ふっ…。

(首を横に振る左頌星。誰もが「希望なし」と思った瞬間、左頌星は顔を上げ、まくし立てる。)(



左頌星:時間は?場所は?何を着て行く?中華料理?それとも洋食?



(変わっていない性格の左頌星を見て笑う綺夢。)



(モニターに「THE END」と表示されて、エンドロールが流れる。)

この周星馳らしい意表を突いた演技が楽しいラストは、同じ流れになっている日本版でも見る事ができます。台湾版は視線を落とすなどのシーンが削除されていますが、綺夢が話す前に左頌星の手を握る流れになっており、左頌星に対する綺夢の感情が先に出たと言う印象を受けました。また「住む世界」の部分が「僕たちの間の距離」と言う表現に変えられているのも台湾版の特徴です。

香港の初版・日本版 台湾版
1 左頌星が話した後、綺夢に握手を求める。 1 左頌星が話した後、綺夢に握手を求める。
2 綺夢は「一緒に食事がしたい。」と願う。 2 綺夢が左頌星の手を握る。
3 綺夢が左頌星の手を握る。 3 綺夢は「一緒に食事がしたい。」と願う。
4 左頌星は視線を落とし、綺夢の手を放す。 4 左頌星は首を横に振る。
5 左頌星は首を横に振る。 5 左頌星が「時間は?場所は?」と聞く。
6 左頌星が「時間は?場所は?」と聞く。 6 綺夢が笑う。
7 綺夢が笑う。 7 モニターに「THE END」と表示される。
8 モニターに「THE END」と表示される。 - -

そして、香港版DVD(2004年1月発売の美亞製DTS版)は驚く事に綺夢が言う台詞の音声を編集する事で、ばっさりと食事に関する部分をなかった事にしているのでした。…あまりにも非情です。

香港版DVD
1 左頌星が話した後、綺夢に握手を求める。
2 綺夢が左頌星の手を握る。
3 上記の画に綺夢の「ええ。」が重なる。
4 綺夢が笑う。
5 モニターに「THE END」と表示される。

ちなみに、ここで綺夢が言う「ええ。」は左頌星が握手を求める「んっ…。」に対する返事ですので、「住む世界」に関する事は左頌星の発言で完結したと捉えていると言う印象を受けます。意表を突いた演技と早口でまくし立てる所がないのは悲しいのですが、このギャグを入れないバージョンは物語の一件で左頌星の考え方が、より大きく成長したと言う事を表現しているのかもしれません。

台湾版エンディングにPheoniaは出ず

香港版のエンディングはNG集とPheoniaを口説いている黑仔達が、左頌星に「三叔」と呼ばれて「先天性失控症」を発症するシーンで構成されていました。台湾版のエンディングには残念ながらPheoniaの映像は収録されていないのですが、代わりに別のシーンで構成されているのです。

本編の流れに沿って見ると著しくシーンが前後していますが、区分を「メイキング」「NG」「未使用」「ダイジェスト」に分け、それらのシーンをエンドロールの順に合わせて、見ていきたいと思います。

★メイキング映像

クランクアップ後は乾杯。 花束を受け取る周星馳。

左は紙コップを持った周星馳が笑顔でカメラに向かって手を振っています。スタッフが乾杯のためのシャンパンを注いでいる事からクランクアップ直後なのでしょう。劉鎮偉の姿も見えます。同じく右は白いバラの花束を届けに来た、羅慧娟と思われる女性が周星馳にキスで祝福をしています。



こちらは予選を勝ち進む左頌星が綺夢にキスを迫るも拒まれるシーンの後に撮られた映像です。演技を終えた周星馳と張敏が右にいる元奎に称賛を送られたのか、楽しそうに笑っています。

★未使用シーン



こちらは香港版や日本版にも収録されている、知人女性の前で舌を出す左頌星を黑仔達が注意するシーンです。本編とは周星馳と吳孟達の演技が微妙に違うため、当初は前章で紹介した香港版にあるシーンに加え、さらに繰り返しのギャグとして登場させるつもりだったのでしょうか?

ちなみに「賭聖」には香港で劇場公開された初期のバージョンもあるのですが、そのエンディングは台湾版のエンディングと同じだそうです。そのため、台湾版の上のシーンで表示される「本作に関する賭博テクニックは映画のエフェクトや編集を利用しているため、完全なるフィクションです。」(本片有關賭技利用電影效果剪接,純屬虛構)の断りには、その名残として広東語の文字が入っています。また、初期版のラストのモニターに表示されるのはスポンサーのロゴだったそうです。


こちらはモーターボートでデートするシーンです。本編ではボートがにカーブしたため、左頌星も綺夢のいるに倒れ、その後、ぶつかる直前で彼女に押さえられていましたが、未使用シーンではにカーブしたのに、タイミングを計った左頌星が自らに倒れ、綺夢の胸に顔を埋めているのでした。…タイミングを計るように見えるシーンは捨てカットの可能性もありますが、これがNGでなければ、元々は状況にかこつけて、左頌星が得をするシーンを入れようとしていたようですね。



こちらは洪光が綺夢に追加の50万ドルを持って行くように指示を出した後に入る予定だったと思われるシーンで、左頌星が笑顔で外国人女性たちに話しかけています。多分、デタラメな内容でしょう。本編で彼女たちが無言でいるシーンは、それにあきれたからかもしれません。この後に左頌星が言う「ふふっ…。んっ?あれ?やはり食事の時間じゃないか?ああっ!じゃあ、僕が2人に洋食をおごりましょうか?」に繋がる面白い物だと思うので、音声が残っていれば、ぜひ聞きたいです。



こちらは黑仔達からサングラスを渡された後に入る予定だったと思われるシーンで、左頌星が両手にたくさんのカードを持っています。本編には左頌星が洪光の前でカードの「スプリング」を見せるシーンがあるため、これは黑仔達からテクニックを習うシーンの一部なのかもしれません。なお、このシーンは香港の予告編にも収録されており、現在は高画質なDVDで見る事ができます。



こちらは「國際賭王大賽」に現れた左頌星がマスコミの写真攻めに遭った後に入る予定だったと思われるシーンです。周囲の拍手を受けながら、相変わらず「賭神」のようなスローで歩いています。

★NGシーン


こちらは早朝、左頌星がマンションの前で黑仔達を呼ぶも住民にゴミなどを投げつけられるシーンです。落ちた物の種類が違う事から、左頌星の微妙な体の反り具合や立ち位置の違いに気付けました。ここは周星馳の演技ではなく、散らかりの度合いが低かった事がNGの理由なのでしょう。

周星馳の演技に笑う吳君如。 黑仔達の頭を締め、叩く左頌星。

左はレストランで阿萍(吳君如)が注文をするシーンです。脇の下のホクロを真剣に見続ける周星馳の演技に吳君如も笑ってしまい、NGとなりました。香港版にも同じようなレストランでのNGがありましたが、そちらは吳君如が周星馳の頭を小突くなど2人の仲の良さが垣間見える物でした。

右は肩車された左頌星が陳松に質問をした後、「成功だ!」と言って走り去るシーンのNGです。本編で左頌星は両手を自分の頭に持って行きましたが、NGでは左頌星が右手で黑仔達の顎を、左手で頭を持って締めるような仕草をした後、黑仔達の頭を叩いていました。NGの方を本編で使っても良さそうですが、肩車中と言う事で事故に繋がる行動と見なされた可能性がありそうです…。


こちらは洪光との対決で左頌星が「A」のカードを出したつもりが「3」だったため、驚いて勢い良くズッコケてしまうシーンです。賭博台の下にある布が捲れ上がってしまったため撮り直しています。


左は綺夢がBillyに連行された後、左頌星が洪光の手下と戦うシーンで、右は大小ゲーム後に襲撃された左頌星が飛び蹴りを放つシーンです。どちらも本編とは別テイクが使われているのでした。飛び蹴りの方は速度調整前の映像に加え、着地後の左頌星のポーズを楽しむ事もできます。


左は洪光に呼ばれた左頌星が「賭神」のビデオを真似て、スローで登場するシーンで、右はデート中に綺夢にプレゼントを渡した後、左頌星がタバコを吸うシーンです。これらも本編とは別テイクが使われています。スローの方はコートを預かる手下が動き出すタイミングが少し遅く見えますね。



こちらは左頌星が女装した黑仔達に「隔山打牛」(隔たりや距離があっても攻撃できる技)を放つ事で洪光の手下を倒すシーンです。タイミングが違う事から、本編とは別テイクが使われています。

この他、香港版・日本版と台湾版に共通してあるNGシーンは以下にまとめました。

香港版・日本版と台湾版の共通のNG
1 洪光に呼ばれた左頌星が、彼の前でカードの「スプリング」の技を見せるシーン
2 「隔山打牛」を放った左頌星が口から泡を出している黑仔達を心配するシーン
3 左頌星から超能力に関する話を聞きながら、黑仔達がドリンクを飲むシーン

★ダイジェスト

さらに台湾版ではクレジットが重なった本編のダイジェストも流れます。

台湾版にある本編のダイジェスト
1 左頌星が襲撃者に「精武門」の陳真(李小龍)のようなパンチを放つシーン
2 「賭神」を真似して登場した左頌星が着席するのを洪光が見届けるシーン
3 外国人女性に「3・5・6の大」で勝利した後、喜んだ左頌星が体を動かすシーン
4 「國際賭王大賽」で洪光が優勝に決まりかけた時、左頌星が現れるシーン
5 「國際賭王大賽」に現れた左頌星を見た観客たちが総立ちするシーン
6 「國際賭王大賽」に現れた左頌星が取り囲まれ、マスコミの写真攻めに遭うシーン

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