ゴッド・ギャンブラー 賭聖外伝 台湾版 ~第一章~
本家を超えて大ヒットしたパロディ映画「賭聖」。今回は台湾版にある超能力に関する解説や日本版から削除された香港の初版にのみ存在するシーン、さらにバージョンによって編集が異なるラストなどについて見ていきたいと思います。なお、後半は周星馳がゲスト出演している本作の正式な続編「ゴッド・ギャンブラー リターンズ」(原題:賭聖廷續篇 賭霸)についても少し触れています。

「賭神」の有名ポスターのパロディ

香港版VCD 台湾版VCD

中華圏でソフト化された「賭聖」のパッケージの多くは前年に香港で大ヒットした映画「ゴッド・ギャンブラー」(原題:賭神)の有名なポスターのパロディとなっている事は有名です。

カードを広げる高進(周潤發)の後ろに赤いジャケットに身を包んだ刀仔(劉德華)が立っていると言う図を周星馳と吳君如、張敏が真似しているのですが、右のように張敏を外して撮ったスチールも存在し、こちらは吳君如のジャケットの襟を立てれば、より本家に近い感じとなっています。

なお、台湾版VCDのパッケージで目を引く、立体的な「賭聖」の赤いロゴは本編に登場しません。輝きを表現した正式なロゴを台湾版のパッケージでも使ってもらいたい所です。

ちなみに台湾版VCDのパッケージには「賭聖」とは別の映画のあらすじが書かれてあったり、台湾版DVDには「周星」と表記されるなどのミスが見られます。しかし、皮肉にも現在、それらは初版を探す際の目印となっているようです…。

「ウォール街」が撮影・製作?

香港版・日本版

台湾版には、香港版でタイトルよりも先に登場する「華爾街 攝製」のクレジット(約4秒)がありません。吳思遠による「思遠影業公司」の陰に隠れてしまいがちですが、この「華爾街」は本作の撮影と製作を行った「華爾街製作有限公司」と言うプロダクションの事です。しかし、省略されていると、見るたびにニューヨークの「ウォール街」(中文名:華爾街)を想像してしまいます。なお、このプロダクションは本作と張敏が出演している「難得有情郎」(1991年)以外、その名前を見かけません…。

英語題のサイズの違い

香港版・台湾版 香港の予告編

「第3回 香港電影博」(1991年5月開催)での邦題「オール・フォー・ザ・ウィナー」の元となった英語題に注目すると、本編と香港の予告編に登場する物とではフォントやサイズに違いが見られます。元々は予告編のサイズだったのだと思いますが、小さいと言う事で差し替えられたのでしょうか?

「特異功能」とは何か?

香港版では劉鎮偉のクレジットが登場した後に本編が始まりますが、台湾版では國語のナレーションと共に超能力に関する解説が約37秒あるのです。以下に起こした文字と翻訳を紹介します。

台湾版 文字起こし
 近年來,在中國大陸和世界各地發現了不少兒童
具有某種超能力。他們可以憑耳朵聽字,辨顏色。
更可以將人體透視,甚至可以用意志將物件扭曲
或者移動。我們這種超能力。叫做特異功能。

 特異功能已經在社會上引起了廣泛注意。
至於如何利用特異功能來發揮人類的潛能。
科學家們正在積極研究中。

解説の翻訳
 ここ数年、中国大陸と世界各地で多くの児童がある種の超能力を持っている事が発見された。彼らは耳で字を読み、色を識別する事ができる。さらに人体を透視する事ができ、ひいては意志で物をねじ曲げたり、移動させたりする事ができるのだ。私たちはこの種の超能力を特異功能と呼んでいる。
 特異功能は、すでに社会上で広範な注目を引き起こしている。どのように特異功能を利用し、人類の潜在エネルギーを発揮できるかについて、現在、科学者たちは積極的に研究中である。

…ふと、1986年の「サイキックSFX 魔界戦士」(原題:奇緣)を思い出させるような感じの演出に見えなくもありませんが、台湾としては独自に「賭神」を演じた周潤發に絡めたつもりなのでしょうか?

なお、大陸では唐雨と言う当時(1979年)、小学5年生の男の子が目を使わず、文字や絵を書いた紙を丸めて耳に当てるだけで中の内容を当てる事ができる子供だと紹介した「四川日報」の記事を皮切りに、各地域で超能力を持つ子供たち(8歳~15歳)が次々と紹介されて話題となりました。

黑仔達の知人女性との会話

ここからは日本版や台湾版、さらに香港版DVD(2004年1月発売の美亞製DTS版)にはない、香港の初版にのみ存在するシーンを紹介します。最初は左頌星(周星馳)と黑仔達(吳孟達)の前に、黑仔達の知人女性が婚約者と共に挨拶に来るシーンからです。日本版などでは「やる」と言う誤解を招く言葉を放つ左頌星が黑仔達に頭を叩かれた後、マンションで賭博の種類を聞くシーンとなるのですが、香港の初版では左頌星が、さらに「やる」を続けるシーンが15秒ほど存在するのです。

(黑仔達に頭を叩かれた左頌星。)



左頌星:どうしてさ?叔父さんが教えてくれた事じゃないか?

(「やる」と知人女性たちに言って怒られた事に疑問を持つ左頌星。なお、この台詞の音声は、
(日本版ではフェードアウトされ、台湾版では次の賭博の種類を聞くシーンに重なって聞こえる。)

黑仔達:むやみに言うんじゃない!謝るんだよ。

(笑顔を保ったままの黑仔達は先に知人女性たちに謝る。)

黑仔達:すまなかったね。



左頌星:ごめんなさい、お二人さん。

女  性:いいえ、気にしないで。

左頌星:僕は「やらない」よ。

黑仔達:こいつってば、「やらない」ってさ。

左頌星:僕の叔父さんが「やる」んだ。

黑仔達:わしが、…んっ?


左頌星:…彼を「やる」ってさ!

(知人女性の婚約者を指差し、その場から去る左頌星。真顔になる黑仔達。しかし…。)


黑仔達:んっふふふふっ!…皆で「やろう」よ!

(…笑ってごまかし、黑仔達はその場を離れて左頌星を追いかける。
(婚約者は怪訝そうに女性の方を見ると彼女は視線を落としていた。)

「やる」(香港版では「來」、台湾版では「搞」。)は性的な行為を暗示しているのでしょう。ここは男性の方に話題が向き、同性愛や乱交にまで進め過ぎたギャグが問題視された可能性が高そうです。

銃撃戦に巻き込まれ大混乱

台湾の賭王・陳松(劉鎮偉)の屋敷を襲撃する香港の賭王・洪光(秦沛)の手下たち。日本版ではBilly(尹揚明)が隠れたソファーの下から出て、外にいる陳松の手下2人を撃った後、洪光の手下の一人が銃を撃って、すぐに壁に隠れるシーンとなるのですが、香港の初版では左頌星たちが階下へ行ってから戻って陳松に話しかけたり、Billyが反撃するシーンなどが23秒ほど存在するのです。



(陳松たちに向かい、銃弾を放つ洪光の手下たち。)



(応戦する手下の後ろで陳松が指示を出す。)

陳  松:ううっ!急いで下りろ!下りるんだ!

手下們:はいっ!

(陳松たちは先ほどまでいた階下へ向かう。)



(しかし、手下たちが階段で撃たれ、階下も危険と判断した陳松。)

陳  松:まずい!戻れ!戻るんだ!

(撃たれた手下たちの声が聞こえる。)



左頌星:ボス!一人が死んで、また一人が死んでいます。
     もうすぐ全員、死んじゃいますよ!

陳  松:何を恐れる?俺の手下たちは最高に強い奴らだぞ!

(ここだけ國語で答える陳松。しかし、撃たれた手下が陳松の隣に倒れ込む。)



陳  松:ああっ!?



(緊張感が漂う中、洪光の手下たちを撃つ、陳松の手下2人の姿も見える。)


(陳松の別の手下を撃ったばかりのBilly。そんな彼を狙う陳松の手下2人。)



(気付いて走り出すBilly。陳松の手下2人が撃った銃弾は後ろの棚の壺などを壊す。)


(隠れるBilly。追いかける陳松の手下2人。)


(隙を見て出て来たBillyが銃を撃つ。銃弾を受けた2人は衝撃で吹っ飛び、ガラスを割る。)

階段を登ったり、下りたりを繰り返すのは冗長だと判断されたため削除されたのでしょうか?緊張感ある中での左頌星の台詞やBillyと陳松の手下2人の攻防シーンがないのは少し残念です…。

「九龍站」で警員と再会

「國際賭王大賽」が迫る中、マンションを出て行った左頌星。日本版などでは街中で賣魚盛(元奎)たちが聞き込みをした後、正装した黑仔達が扉を開けるシーンとなるのですが、香港の初版では左頌星が香港に来た日に出会った警員(梁家樹)と再会するシーンが19秒ほど存在するのです。



(画面に「九龍站」の時刻表が映し出される。)



警  員:さあ!早く進んでくださいね!さあ!

(乗客に声をかけて送り出す警員。)



(廣州へ帰ろうとする左頌星の姿を発見した警員。)



警  員:おおっ!同志!また、あんたじゃないか?



警  員:香港7日間の旅行、こんなに早く終わったのかい?

(左頌星は小銭を取り出し、静かに話し始める。)



左頌星:もし、また大陸仔があんたに「お金を貸して」と聞いて来たら…、

(ここで左頌星は小銭を警員に渡す。なお、「大陸仔」は「田舎者くん」の意味。)

左頌星:…そいつに炭酸ジュースを買ってあげてください。



(左頌星は静かに立ち去る。)

精神的に成長した左頌星が見れる非常に良いシーンですが、スピーディー化を目的としたのか削除されました。この他、タイトルの登場からラストの直前まで、台湾版で削除されたシーンを以下にまとめます。…2秒の削除に意味はあるのでしょうか?なお、これらは日本版には残っています。

台湾版から削除されたシーン 時間
1 バイクで綺夢(張敏)を助けに来たBillyの攻撃で襲撃者の一人が血を吐いた後、
綺夢が向かって左の男を倒し、すぐに右の男の首を掴むまでのシーン
2秒
2 黑仔達が陳松と交わした契約書を確認した後、
ピアノを弾きながら左頌星の契約の話を聞く洪光が怒って鍵盤を叩くまでのシーン
32秒
3 左頌星が綺夢とのデート中も付いて来るボディーガードを殴った後、
黑仔達が陳松に報告し、陳松が「時には、あの女を軽く見るな。」と言うまでのシーン
21秒

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