チャイニーズ・オデッセイ 台湾版+大陸版 ~第二章~

後編タイトルの登場

香港版 台湾版

タイトルの意味は香港版が「西遊記 最終回 仙女が実現した奇縁」で、台湾版が「齊天大聖の西遊記」です。香港版のサブタイトルはラストの紫霞の生まれ変わりの女性(朱茵)が夕陽武士(周星馳)との恋愛に成就した事を言っているのでしょう。台湾版に関しては特に説明する事はありません。

紫青寶劍を抜ける運命の男



青霞に殴られた至尊寶。香港版では翌日、紫霞から紫青寶劍を預かるシーンになるのですが、大陸版では2人の会話が香港版よりも24秒ほど長いのです。以下にシーンを比較してみました。

★香港版

(今が夜ではない事を表すため、昇った太陽が映し出される。)



至尊寶:くだらない事は言わないよ。とにかく、君の姉さんは君を非常に憎んでいる。
     俺は今夜、彼女に「君(紫霞)を殺した」とウソをつくから、今後、君は安心さ。



至尊寶:だから、俺は君の身の回りにある重要な印となる物を持って行って彼女に見せるんだ。
     何か持っていないかな、首飾りとか腕輪とか金銀財宝とか月光寶盒とか…。



紫  霞:わかった!でも、それらは役に立たないわ。ほら!
     今夜は私の紫青寶劍を持って行って、彼女に見せて。絶対、完全に信じるわ。



至尊寶:それも良いね。

(紫霞の傍を離れた至尊寶が紫青寶劍を鞘から抜く。)



(振り返り、それを見た紫霞は心の中で「意外な事に彼だったのね。」とつぶやく。)

★大陸版

(今が夜ではない事を表すため、昇った太陽が映し出される。)



紫  霞:どうして毎回、あなたは姉さんを見かけても、私は見かけないのかしら?



至尊寶:この件が時々あるのは縁による物だと言えるよ。でも、もう彼女は、
     以前のように残忍ではない。今回は俺の左目を殴って、黒くしただけだ。



(至尊寶は昨夜、青霞に殴られてアザになった左目を紫霞に見せるが、紫霞は黙って、
(至尊寶を見つめている。少しの間があった後、至尊寶は紫霞に近寄って話を続ける。)

至尊寶:それから、俺は彼女に約束して言ったんだ。「君(紫霞)を殺す」とね。

紫  霞:ええっ?

(紫霞は笑顔のまま、驚きの声を上げる。)

至尊寶:だからさ、今後、2人の君が出現する事はないよ。

紫  霞:姉さんほど頭が良ければ、彼女が信じる事なんてする訳ないわ。



至尊寶:う~ん…。

(至尊寶は左手で鼻をすする。)



至尊寶:思いついたぞ。でも、もし、君のすごく重要な印となる物を持てるのならだけどね。
     彼女が信じるのも良いし、信じなくても良い。俺は必ず彼女を騙して、月光寶盒を、
     持って来させる事ができると信じている。機会があれば、すぐに俺は…。

紫  霞:じゃあ、私は?



至尊寶:当然、機会があれば、すぐに君を連れて行くよ。



紫  霞:わかった!私たちは一度、約束をした以上、それを必ず守るのよ!
     ほら!これは私の紫青寶劍よ。今までに肌身から離した事がないの。持って行って。



至尊寶:わかった!

(紫霞の傍を離れた至尊寶が紫青寶劍を鞘から抜く。)



(振り返り、それを見た紫霞は心の中で「意外な事に彼だったのね。」とつぶやく。)

このように大陸版はスピーディーな香港版よりも余裕のある構成であった事がわかりますが、これらは焼き付けられた中文字幕が繁体字な事からも元々は台湾版に存在するシーンだったのです。

そして、國語の音声からも、その名残を感じる事ができます。大陸版は全編に渡って至尊寶の吹き替えを石班瑜が行っていますが、台湾版(香港版DVDの國語音声も同じ)では、このシーンと先に紹介した「夜に至尊寶が青霞と話すシーン」の一部を石班瑜とは違う声優が行っているのです。

タイトル 地域 上映期間 興行収入 備考
西遊記第壹佰零壹回之月光寶盒 香港 1995年1月21日~2月15日 25,093,380HKドル 上集
西遊記大結局之仙履奇緣 香港 1995年2月04日~3月01日 20,872,117HKドル 上集
齊天大聖東遊記 台湾 1995年1月27日~2月16日 14,744,360TWドル 下集
齊天大聖西遊記 台湾 1995年3月25日~4月14日 07,624,880TWドル 下集

多分、香港では上集の観客動員を見た後、興行収入の面からスピーディーさを求めて下集の一部を削除する事にし、台湾でも同じバージョンを公開するように製作側が判断を下したのでしょう。

また、香港では上集の封切日の2週間後に下集が封切られていますが、この短い期間に多忙な周星馳が変更した台詞のアフレコに参加できた事に対し、下集の公開までに長い期間がある台湾で石班瑜がアフレコに参加できない理由は契約や費用の問題が絡んでいるのかもしれません…。

キスを求める紫霞と拒む至尊寶

街で意中の人が至尊寶だと伝え、キスを求めようとする紫霞。香港版では紫霞が顔を近づけると至尊寶が彼女を強く押して拒否し、紫霞の悲しそうな表情に度を越えた事をしたと申し訳なさそうな表情をするのですが、大陸版では至尊寶が紫霞を押す前に言葉で遮り、会話を続けるのです。

(目を閉じた紫霞は、ゆっくりと至尊寶に顔を近づける。)



至尊寶:待った!結局、君は紫霞なのか?それとも青霞なのか?

紫  霞:私は当然、紫霞よ!

至尊寶:う~ん…。じゃあ、月光寶盒を出して、先に俺に証明してくれ。
     俺は口づけをし間違える事を恐れているんだ。



紫  霞:私を信じて。私は紫霞よ。口づけをしてからにしましょう!

至尊寶:じゃあ、君が先に出してくれ!

紫  霞:その必要はないわ。あなたが口づけをしてから出せば良いじゃないの!

至尊寶:君が出したら、すぐに俺は君に口づけをするよ。

紫  霞:時間がないわ。口づけをしてからにしましょう!

至尊寶:俺も時間がないんだ。君が出してからにしよう!

紫  霞:「愛している」って言って。



至尊寶:俺は君に「愛している」とは言えない。君が月光寶盒を出さないならね。



紫  霞:じゃあ、口づけを…。

(この後、紫霞が強引に近寄ったため、至尊寶が彼女を強く押す。)

これらから至尊寶の強い拒否の原因、月光寶盒を欲しがる彼の焦りがわかるのでした。

出家人も心を奪われる微笑み

牛魔王(陸樹銘)の妹・香香(吳玨瑾)と婚礼を挙げる事となった至尊寶。香港版では泣いていると勘違いされた香香が口元を拭った後、牛魔王が大勢の前に向かうシーンになるのですが、大陸版では美女の妖怪を見て興奮した沙悟淨が豬八戒に怒られ、叩かれるシーンが17秒ほどあります。



(賓客の中にいる色白な女性が振り向き、豬八戒たちの方を見て微笑む。)


(微笑んだ女性を見て満面の笑みを浮かべる沙悟淨。豬八戒は沙悟淨の頬を張る。)



豬八戒:おい!今は師父の生死も予測できない状況だが、
     あろう事にも、お前は女の色香に心を奪われているのか?

沙悟淨:何が「女の色香に心を奪われている」だ?
     彼女が俺に微笑んだから、俺も彼女に微笑んだんだろう?

豬八戒:微笑んだ?微笑みに、そんな大きな反応があるのか?

沙悟淨:「大きな反応」って何だ?


豬八戒:見てみろ!

沙悟淨:ああっ!

(自分の股間が屹立している事に気付いた沙悟淨。豬八戒は沙悟淨の股間を叩く。)

沙悟淨:うぐっ!痛い!

(豬八戒は、うずくまる彼を置いて先に行く。)

単なる下品なギャグのシーンに見えますが、沙悟淨が後の生まれ変わりである盲炳(江約誠)のような同性愛者ではないと言う事を観客が明確に知るシーンであり、今後、どのように彼の心が女性的に変わるのかと言う事に興味を引くと言う点で重要だと感じます。また、唐三藏の安否を気遣う豬八戒の気持ちも知る事ができますが、原作で性欲旺盛な彼の方が反応しない事に驚きました。

戻る