タイトル
作品データ
|
- |
|
本作は「430穿梭機」のメンバーが出演した、TVBの長寿バラエティ番組内のミニドラマです。内容は部屋の契約を結んだ基仔が粵語を話す事に慣れていない事からトラブルを起こしてしまうと言う物で、周星馳は彼と同居する友人・星仔を演じています。発音による聞き間違いや言い回しが面白く、TVB經典台では「周星星事件簿」の題でも放送されています。以下に内容を翻訳しました。
旁白:大家の瑪琪、星仔、基仔は親友同士!集まった3人は続けざまに面白い話をしてくれるぞ! (部屋で「入居者募集」の紙を書きながら、独り言を言う瑪琪。) 瑪琪:あーあ!毎日、こんなに書いて何になるって言うのよ。見に来る人はね、 「ここにはエレベーターがないじゃないか!」って言うのよね。それに10階だし。 自分が4階に住まず、10階みたいな高い所に引っ越す理由なんて、ある訳ないでしょ? そうよね?だから、毎日、この紙が一山にも、二山にもなるほど書いてしまうのよ。 奇跡が起きる事を願ってるわ。 (玄関のベルが鳴り、誰かが来る。) 瑪琪:うわぁ!奇跡よ! (扉を開けると白いレインコートを着た基仔が入って来る。 (以下、粵語と國語が混在して話が進むため、色を分ける。) 瑪琪:うわぁ!お化けだわ! 基仔:違う!違う!…外は雨が降っているんだ。 瑪琪:あなたは部屋を借りに来たのよね?じゃあ、入って…。 基仔:君は本当に住民? 瑪琪:当然よ!一日に数十万人が、この階の部屋を借りに来ても、私は貸さないんだから。 基仔:その人たちが堅気の人じゃない事を心配しているの? 瑪琪:そうよ。入って、座ったらどう?んっ? 基仔:ダメだよ。モップとタオルを貸してくれない? 瑪琪:あなたは何をしに来たのよ? 基仔:君の部屋を汚してしまう事を心配しているんだ。 瑪琪:そうなのね。待っていて。 (瑪琪は奥へと行く。) 瑪琪:入って来ないでね。 基仔:うん、うん…、わかった。 瑪琪:はい。 (瑪琪は奥から持って来たタオルを基仔に渡す。) 基仔:うん、うん…、ありがとう。 瑪琪:ねえ、汚さないでね。 基仔:あっ!ありがとう。…ああっ! 瑪琪:どうして、広東語を話せないの? 基仔:うん…。僕は話せないんだ。僕は少し…だけ話せる。 瑪琪:ええ。 基仔:なぜなら、僕の父さんと母さんはね、國語を話す人だから。 誰も僕に広東語を教えてくれなかったんだ。だけど、今はね、自分で勉強しているんだ。 瑪琪:へえ! 基仔:広東語を学んでいるんだよ。お元…お元…気です…か? 瑪琪:おおっ! 基仔:こんにちは! 瑪琪:広東語を話せるのね!大丈夫よ!私も2週間、國語を学んだの。 大丈夫よ!ははっ!…ねっ? 基仔:大丈夫。 瑪琪:大丈夫! 基仔:この部屋は悪くないね。 瑪琪:当然よ。あなたには10階を貸してあげるわ。 基仔:10階か。わかったよ。 瑪琪:10階よ。 基仔:構わないよ。 瑪琪:エレベーターがないんだけどね。 基仔:構わないよ。だって、運動する事ができるからね。 瑪琪:ああ!最高だわ!ねえ!座って!座って! …そうだ。結構、色々と聞いたけど、あなたの名前が何て言うのか知らないわ。 基仔:ああ、僕か。僕の名前はね。基仔(ji1 zai3)って言うんだ。 瑪琪:雞仔(ji1 zai3)?…雞仔? (國語の「基仔」と同じ発音の「雞仔」は粵語で「ひよこ」の事を指す。) 基仔:違うよ。基礎の方の…! (基仔は両手を広げ、建築の基礎の上に固定される角材を体で表現する。) 瑪琪:ああっ!…基仔ね! 基仔:うん!そうだ! 瑪琪:ああ、そうだわ。私は瑪琪って言うの。ここの大家よ。 そうだわ。ええと、あなたたちは何人で住むの? 基仔:2人。 瑪琪:2人ね。 基仔:もう一人は僕の親友で、上司で…、 瑪琪:ええ。 基仔:…生徒で、彼…彼は…、 瑪琪:そんなに、たくさんなのね。 基仔:…彼の名前は星仔(xing1 zai3)って言うんだ。 (基仔は指で空中に☆マークを描くと、瑪琪も真似して☆マークを描くのだが…。) 瑪琪:猩仔(xing1 zai3)? (國語の「星仔」と同じ発音の「猩仔」は粵語で「オランウータンの子供」の事を指す。) 基仔:星…星…! (基仔は天井を指差す。) 瑪琪:ああっ!お空の星! 基仔:そう! 瑪琪:星仔ね! 基仔:…それでね、彼は僕の友人なんだ。僕たちは調査員をやっているんだよ。 瑪琪:調査員? 基仔:そう。調査員。スポーツの会社のね。 瑪琪:良いわね。真面目なのね。 基仔:うん。うん。…僕が教える國語の勉強会に彼は参加したんだ。 瑪琪:うわぁ!良いわね! 基仔:星仔は僕の生徒なんだよ。 瑪琪:うわぁ!本当に、すごいわ。私…、もう、あなたに貸す事を決めたわ。 (基仔が不思議そうな顔をする。その顔を見た瑪琪は少し笑いながら言う。) 瑪琪:決めたのよ。あなたに貸すわ。 基仔:貸して…くれるって…僕に? 瑪琪:そうよ!あなたに貸すわ。 基仔:ああっ!ありがとう!君は本当に良い人だ!本当に良い人だ! 瑪琪:ふう!運良く私が國語を聞き取れるから良かったけど、そうでなければ、 あなたが私の事を「おせっかい焼きな女」だと言うんじゃないかと思ったわ。 基仔:それなら良かった。今後はさ、僕たちは…仲間だよね? 瑪琪:そうね。 基仔:じゃあさ、君は…、「小烏龜」(xiao3 wu1 gui1)だったんだ。 (「小烏龜」は「取るに足らない亀」で人を「間抜け」だと侮辱する意味になる。 (それを聞いた瑪琪は馬鹿にされたと思って不機嫌になり、基仔に言い返す。) 瑪琪:あなたこそ「小烏龜」よ!私を「小烏龜」だなんて罵るなんて! 基仔:「小烏龜」…?ああっ!違うよ!それは「小烏龜」…じゃなくて、小…、小…誤…。 (基仔の言葉を最後まで聞く前に意味がわかった瑪琪は声を出す。) 瑪琪:…小…誤…會! 基仔:…會! 瑪琪:ああっ!「小誤會」(小さな誤解)って事なのよね? 基仔:…誤…會だよ! 瑪琪:誤解って事ね。 (基仔は「おせっかい焼きな女と言うような人だと思われていた」と言う話に対し、 (「小誤會 xiao3 wu4 hui4」と言う所を似た発音の「小烏龜」と間違って言ってしまった。 (あえて、ここを日本語で表現するのなら多毛類にかけて「小さなゴカイ」だろうか。) 瑪琪:そうだわ。あなたたちは、いつ頃、引っ越して来るの? 基仔:う~ん…。明日だよ。 (場面が変わり、翌日、部屋の前に荷物を持った星仔と基仔が来る。) 星仔:…ふう! 基仔:ねえ!ここだ!ここだよ! 星仔:阿基! 基仔:うん? 星仔:次に引っ越す時は頼むからエレベーターのある部屋を探そうよ。良いだろう? ここは4階だよ。君が新聞を買いに街へ出ても戻りは階段を登らなきゃいけない。 基仔:もう言うなよ!君じゃないだろう?この汚い場所を手に入れたのは? 大家は僕たちが来る事を拒んでいないんだよ。 (「この汚い場所を手に入れたのは?」は原語では「搞骯髒個地方啊」。次の星仔の言葉から、 (「汚い」の意味の「骯髒 ang1 zang1」は「手配する」の意味の「安排 an1 pai2」の言い間違いで、 (実は基仔は「この場所を手配したのは?」と言いたかったのではないかと推測できる。) 星仔:君の言う事を聞いていると、耳で何を聞いているのかと思う時さえあるよ。 …入るぞ!運を開くのが何だってんだ! (星仔が部屋のベルを鳴らす。) 瑪琪:はーい!どなたですか? 基仔:やあ!こんばんは!基仔だよ! 瑪琪:ああっ! 基仔:彼が星仔だよ。あっ!瑪琪! 瑪琪:ねえ! (瑪琪が基仔と握手をする。) 基仔:ありがとう。 星仔:ええと、大家さんかい? 基仔:瑪琪だよ。 瑪琪:ははっ。…そうだわ。私が管理する賃貸契約の領収書と鍵よ。先に渡しておくわね。 基仔:あっ!うん!うん!ありがとう。 (星仔が部屋を見渡す。) 星仔:うん…。うわ~あ! 瑪琪:がらんとしていないでしょう?見て、わかるように。 星仔:たった、200~300フィート(約60~90メートル)しかないじゃないか。僕が以前、 住んでいた所は2000数フィート(約600メートル)と競うくらい、すごく離れていたよ。 基仔:おい!君は…以前、どこに住んでいたんだ? 星仔:公園さ。 瑪琪:ふふっ! 星仔:まったく!君は僕の秘密を暴露させちゃって! 僕に威厳をくれよ?良いだろう?…はははっ! 瑪琪:はははっ!もう! 星仔:…実際、ここは見た所、いくつかの骨組みがあるね。 瑪琪:そうかしら? 星仔:仕方ないよ。自分に辛い思いをさせる事も必要さ。時にはね。 瑪琪:じゃあ、屋上に案内するわ。 基仔:えっ?屋上へだって? 瑪琪:ええ。 基仔:何をしに? 星仔:何が「何をしに?」だ!彼女は、つまりだな。 ここの使用していない共同のアンテナの事を言っているんだよ。 今から、君を連れて、どこに魚の骨が並んでいるのかを見に行くんだ。 (形からアンテナの事を「魚の骨」と言う星仔。その後、星仔は瑪琪に対して聞く。) 星仔:それを見に行くんだよね? 基仔:…じゃあ、行こう!行こう! 瑪琪:魚の骨を見に行くんじゃないわ。あなたの部屋は上じゃないの。 星仔:おい、基仔!君は狂っているのか? (星仔は基仔の肩を叩く。) 基仔:おい!何で僕を叩くんだよ? 星仔:二部屋も借りるなんて、君は間抜けな奴だ!すごく、君は無駄遣いをしているんだぞ! 基仔:そんな事してないよ!僕が借りたのは…ここ…、ここなんだ!4階! 星仔:絶対に狂ってる。 基仔:4階!…君は見て「いるのかい」?見ているのかい?借りたのは、この部屋なんだ。 星仔:つまり、一部屋を借りたって事か。 基仔:ああ。 星仔:…ええと、奥さん。僕は、君が間違ったんじゃないかと思うんだ。 彼は「単に4階を借りたに過ぎない」って言っている。 基仔:うん。4階だよ! 星仔:どうして、二部屋を借りれるかって話だよ。 瑪琪:私は奥さんじゃないわ。まだ、結婚していないのよ。 星仔:あっ、あっ、…ごめん。 瑪琪:ええっと…私も違うわ。私は10階を貸したのよ。でも、ここは4階。 今まで、ずっと、ここに住んでいたの。…私は、彼が間違ったと思うわ。 星仔:じゃあ、君は結局、10階を借りたのか?それとも4階を借りたのか? 基仔:4階だよ! 瑪琪:ほうら!彼も10階だって言ったわ。そうでしょう? 基仔:あっ!…あっ! 瑪琪:10階よ! (國語の発音で「4」は「si4」、「10」は「shi2」だが、訛りが強い基仔は「4」を「shi4」と発音し、 (さらに最初に10階の話が出た時は瑪琪の言う「shi2」を「4」と聞き間違えているのであった。) 基仔:違うったら!4!…10! 瑪琪:10階でしょ? (瑪琪には基仔の言う「10」が「4」に聞こえているようである。) 基仔:10!…4!…10! 瑪琪:10階よ! 基仔:4!…4!…10!…ああっ!これは…本当に冗談みたいだ。 (場面が変わり、星仔たちは4階から10階の部屋まで荷物を運ぶ。) 基仔:はぁ…はぁ…。 瑪琪:ねえ!こらえてよ!…壊れちゃうわ! (瑪琪は荷物の重さによろめく星仔と基仔がぶつかった扉の事を心配する。) 基仔:はぁ…はぁ…。 瑪琪:もう! 星仔:ふう…。 基仔:ふう!アイヤー…! (星仔たちはテーブルに荷物を置く。) 星仔:僕は何度も往復したけど、息切れしてないから、何でもできるって事を君に言っておくよ。 基仔:ふう!ふう!ふう! 星仔:ここの「唐樓」は、どこも大して変わらないのかい? 瑪琪:「唐樓」は、こんな感じよ。各部屋も大して変わらないわ。 (「唐樓」は唐人=中国人が19世紀後期~1960年代に作った香港の旧式住宅の事。) 星仔:そうかい。 基仔:ふう! 星仔:ようし!今後は一日24時間のうち、部屋に行くにも階段を登って12時間かかるな。 楽しいか?ええっ? 瑪琪:でも、そんな環境も良いって言っていたじゃない。体にとって有益だって。 基仔:ふう! 星仔:それこそが悪い点なんだよ!隣近所のマンションを見てみなよ! 階数だって、20~30階の高さだぞ! 基仔:ふう! 星仔:人々の注意を引き付ける、あの排気ガスだって本物だ。 ほうら!見てみなよ!あれも贈り物だぞ!見てみなって! (星仔は部屋を見回し、充満する不要な汚れた空気も入居者へのプレゼントだと嫌味を言う。) 瑪琪:水を差さないでよ! 基仔:ふう!…ふう!…もう…我慢、…我慢できないよ!うわ~!ううっ! 星仔:…そんな事をする訳はないだろう? (荷物運びで息切れをしていた基仔は部屋の汚れた空気に耐えられなくなり、 (自分のトランクからスプレーを取り出し、叫びながら部屋中に噴射し始める。) 瑪琪:ちょっと!ちょっと! 基仔:うわ~!うわ~!いや~!いや~!はぁ…はぁ…はぁ…。 星仔:はい!はい!もっといっぱい噴射しろよ!噴け!噴け!噴け!帰って、やれ! 明日は君も転職だ!車庫に行って、車に噴射した方が、よっぽど良いじゃないか! 基仔:どうしてだよ! 星仔:明日からだよ!僕が君をクビにするんだ! 基仔:何だって?僕がクビ?そりゃあ、良いや!君は明日、勉強会に来なくて良いよ! 瑪琪:勉強会に来ないって…。 基仔:どうしてだよ!…どうしてなんだ?なぜなら…、 なぜなら、さっき君は、すごく嫌な奴だったからな。僕は絶対、やり返してやる! 星仔:やり返すだって?言っておくけどな!僕は君に警告するよ! 君は公事にかこつけて、私腹を肥やしているじゃないか! 君は僕を信用しているのか?ええっ?君は僕を信用しているのかよ? 基仔:君は僕を信用しているのか? 瑪琪:ねえ! 基仔:言っておく事がある。ええっ? 星仔:僕に噛みつくのか? 基仔:僕を馬鹿にしやがって!ええっ?君が僕をクビにしたら、 僕はお金がないから、部屋を借りれない!ようし!君がお金を出しなよ! 星仔:君がやり返しを…、君がやり返して来たら、僕は明日、同じように部屋を借りないさ! (瑪琪が無言で首を横に振り、埒が明かない様子に悩む。) 瑪琪:…う~ん。 (少しの間、無言でいた星仔は冷静になり、基仔に穏やかに話しかける。) 星仔:…実は僕も言っただけなんだ。 基仔:僕は…。 星仔:僕は君に聞かせたに過ぎないんだ。君が広東語の練習をできるようにと思ってね。 僕は歴史のような争いを繰り返したくないよ。 基仔:僕も願っていないよ。歴史の争いを、もう一度、繰り返す事はね。 瑪琪:そうよ!そうよ!歴史の争いは人を悲しくさせる物よ。そうでしょう? 星仔:僕たちは不便な事を悲しんでいるんじゃないんだ。君(瑪琪)の「死人の谷」が、 次の良いカモを探そうとするのは難しいって事を、君に言ってるのさ。へへっ! (星仔は瑪琪が管理する10階の部屋を「死人の谷」、契約者を騙されるカモのようだと、 (悪く言っているように見えるが、決意したのか、ここに住もうとする意思を伺わせる。) 瑪琪:うん…、そう言う事じゃないと思うけど。…ねえ!ええと…、 早く荷物を片付けてしまいましょうよ。今晩は私が食事をおごるわ。 基仔:その必要はないよ! (星仔は瑪琪に向かって、小声で基仔の事を言う。) 星仔:食事の誘いも同じように同意しないんだからな。 基仔:死なないよ! 瑪琪:あなたは死なないわよ! (星仔は瑪琪の肩に手をかけて、彼女に言う。) 星仔:いや、違うんだ。 瑪琪:わあ!だって、死ぬとかって…。 星仔:彼は「死なない」って言っているんじゃない。 彼は「自分を待つ必要はない」「自分は食べない」って言っているだけなんだ。 (基仔は粵語での意思疎通が苦手なため、伝えたい事が飛躍しているようだが、 (星仔の解釈を混ぜると、彼が言う「死なない」は「一食を抜いたくらいでは死なないから、 (2人で勝手に食べに行け。自分は行きたくない。」と言うの意味なのだと推測できる。) 瑪琪:そうなのね。 星仔:ええっと…、基仔!君は本当に食べないんだな?そうだよね? …ようし、じゃあ、君は僕の荷物を片付けるのを手伝ってくれよ。 あっ!そうだ!僕は急に食べたくなって来たよ…。 瑪琪:良いわね。 基仔:おい!君は冗談を言ってんだろう!待ってよ!…あっ!開けるよ! (基仔は玄関の扉を開ける。) |