(夜の森の中で鳴り続ける車のクラクションの音。その音は木にぶつかった車の中で、
(Steveが運転席にもたれていた事で鳴っていた。Steveが目を覚ました事で音は止む。
(Steveは鼻血を出しており、車がぶつかった衝撃で頭痛がするのか頭を押さえた。)
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Steve: |
はぁ…。…阿Mayは?Vickyは?
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(Steveは同乗していた友人がいない事に気付くが、サイドミラーで倒れている女性を発見する。)
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Steve: |
阿May!
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(Steveは体の痛みに耐えながら車を降り、女性の元へ這うようにして進む。)
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Steve: |
阿May!大丈夫かい?
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阿May: |
すごく痛い。すごく痛い。私たち、どこにいるの?Vickyは?
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Steve: |
Vicky?君はここで待っているんだ。落ち着いて、動かないで。
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(SteveはVickyを探しに車の後部座席を確認しに行くと、そこにVickyが倒れていた。)
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Steve: |
Vicky!Vicky!…Vicky!大丈夫か?ええっ?ええっ?
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(SteveがVickyの頬を指で触り、流血していないかを確認するとVickyが気が付く。)
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Vicky: |
あっ!すごく痛い!
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Steve: |
おっ!
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Vicky: |
私の足が!
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Steve: |
どこが(痛い)?
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Vicky: |
あっ!
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Steve: |
き、き、き、君は心配しなくて良い。心配しなくて良いんだ。
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Vicky: |
私の足が!
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Steve: |
今、助け起こして、ここから出すからね。助け起こすから、辛抱するんだよ。
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Vicky: |
ううっ…。
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Steve: |
はああ…!
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(Steveは声を出しながら、Vickyを車の外へと運び出し、阿Mayの隣に寝かせる。)
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Vicky: |
ううっ…。すごく痛い!
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Steve: |
君は心配しなくて良い。大丈夫だよ。
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Vicky: |
すごく痛い!
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Steve: |
大丈夫だよ。
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(Steveは着ていた上着を脱いで、Vickyの頭の下に敷く。)
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Vicky: |
すごく痛い!
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Steve: |
わかっている。わかっている。すぐに誰かが来て僕たちを助けてくれるさ。
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(そうは言った物のVickyの足の血の量を見たSteveは心の中で次のように考える。)
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Steve: |
(まずいな…。ここは、こんなにも辺鄙な所だ。
(誰かが彼女たちを助けに来るのを待っていたら、出血多量で死んでしまう。)
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Vicky: |
うっうっ…。
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Steve: |
ねえ!君たちは心配しなくて良いよ。僕は今から人を探しに行って、
君たちを助けに戻るから。ちょっとの間の辛抱だからね。
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Vicky: |
急いでね。
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阿May: |
ううっ…。痛い。
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(Steveは足を引きずりながら斜面を登る。途中で振り返ると阿Mayの声が聞こえた。)
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阿May: |
急いでね。
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(Steveは草をかき分け、一歩一歩、斜面を登り、ようやく車道がある所まで来た。)
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Steve: |
車だよ。車だ!車だ!何で、こんなに長く待っているのに車が来ないんだよ?車…。
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(苛立つSteveが叫ぶ中、後ろから一台の車がやって来るのが見えた。
(車には2人の男性が乗っており、助手席の男性Aは運転手である男性Bの腕を叩いて言う。)
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男性A: |
おい!急げよ!
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男性B: |
急げ、急げ、急げって言うけど、お前はこれを消防車だと思っているのか?
待ちくたびれたまま、死んじまえよ。
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男性A: |
おい!黙れよ!とにかく、昼間に話してはいけないのは人の事。
夜に話してはいけないのは…そいつらの事。…そいつらだ、とにかくな。
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(死などの不吉な事を言う男性Bに対して、男性Aが言う「そいつら」は幽霊などの類を指している。)
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男性B: |
狂ってるぞ!
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男性A: |
おい!前に人がいるようだぞ。
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(Steveは通りかかった車の前で手を振り、車を止めて運転席の方へと行く。)
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Steve: |
ちょっと、あんた!
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男性B: |
おい!あんた!何事だ?
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Steve: |
ああ…、はぁはぁ…、僕たちは…さっき…。
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男性B: |
落ち着いて話しな。落ち着いて話しな。
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Steve: |
僕たちの車が…、さっき、山の下に落ちたんですけど…、
今まだ、2人の女の子が下にいるんです。ご面倒をかけますが、手を貸してください。
下に行って、彼女たちを助けてください。急いでください。お願いします。
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(男性Bは答えに困り、助手席の男性Aを見る。)
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男性A: |
俺を見て、どうした?車を降りて、人助けだ。
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男性B: |
ああ。
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(車を降りた男性Aは倒れそうになるSteveに駆け寄る。)
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男性A: |
おい!大丈夫か?なあ、あんた。あんたの車はどこに落ちたんだ?
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Steve: |
下の方です。僕が行きます。…あっ!ああっ!
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(Steveは車の落ちた方向を伝えた後、歩き出すと急に体の痛さに苦しみ叫ぶ。)
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男性B: |
大丈夫か?
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男性A: |
どうした?行けないのか?
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Steve: |
歩けない…。悪いんですけど、先に下へ行って、2人の友達を助けてくれませんか?
僕は彼女たちに何かあったらと思うと心配なんです。
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男性B: |
そう言う事か。なら、良いぞ。あんたは、ここに座って俺たちを待っててくれ。
俺が友達を助けて上がって来るから、あんたも含めて一緒に病院へ連れて行くよ。
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(Steveは男性Bの提案に頷く。)
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男性B: |
ここに座って、俺を待ってなよ。な?
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Steve: |
ありがとうございます!
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(男性たちは山の下へと向かい、Steveは運転席の前に座り込む。)
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男性A: |
おい、気を付けろよ。
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(男性たちが向かったのを見届けて安心したSteveは、その場に崩れる。)
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男性A: |
おい!あっちだ。
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男性B: |
ここだな。
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(男性たちは阿MayとVickyを発見し、近づく。)
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男性B: |
おい!お嬢さん!
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男性A: |
お嬢さん!大丈夫か?
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Vicky: |
阿Mayは?阿Mayは?
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男性B: |
阿Mayだって?…君の隣にいる、この人の事か?
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阿May: |
助けて…!助けて…!
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男性A: |
安心しな。すぐに俺たちが病院に連れて行くから。
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阿May: |
あら?Steveは?Steveはどこにいるの?
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Vicky: |
そうだわ!どこにいるの?
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(男性たちが顔を見合わせる。)
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男性B: |
Steve?Steveって誰だい?彼はどこにいるんだ?
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阿May: |
彼は車を運転していた人よ。彼は無事なの?
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男性A: |
車を運転していた人?
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Vicky: |
彼はどこなの?
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(男性Aは男性Bに向かって言う。)
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男性A: |
おい!道路にいた彼の事じゃないか?
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(少し考えた男性Bは「Steveと車を運転していた人は別人」、
(「まずは生存者の確認が先」と言う考えに至ったのか男性Aに言う。)
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男性B: |
余計な事は放っておけ。運転席を見に行こう。
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男性A: |
ああ。…待っていてくれ。君は動くんじゃないぞ。
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男性B: |
俺たちが戻るのを待っていて。
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(女性たちに声をかけた後、男性たちは木にぶつかった車の運転席へと向かう。)
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男性A: |
運転手さん、どうしましたか?
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男性B: |
運転手さん、大丈夫ですか?
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(運転席で倒れている男に返事はない。男性Aと男性Bは顔を見合わせる。
(男性Bが運転席の男の体を倒すと、その男は目を閉じたSteveだった。)
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男性B: |
はっ!何で彼が?
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(顔を見合わせる2人の男性。男性BがSteveの鼻の下に指を当てて息を確認する。)
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男性B: |
ああっ!
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(Steveが死んでいた事を知った男性Bが驚く。男性2人が道路で会ったSteveは実は幽霊で、
(死んでいても2人の友人を助けたいと思う強い念の現れだったのではないかと推測できる。) |