夢追い人に捧げる詩

走ってお兄ちゃん

2000年8月完成

 

mori

 

「走ってお兄ちゃん」は、病弱で自分では走れない妹、恵が、手足となって走ってくれる兄、良介に対して呼びかける言葉である。良介が恵を背負い、二人の気持ちが一つになって風を感じて走るのが、二人の幸福の原点となり、十篇に及ぶ物語の、全編に通じる言葉となっている。

 夫婦や親子、兄弟など、家族同士の思いやりが生きる源であり、仲間や恋人へと連なって、幸福をもたらすとの考えで物語は進んでいく。現代は思いやりが薄れ、経済効果に重きがおかれた、大人たちの価値観で子供の人生が左右されている。子供たちが夢を見られなくなったと既定して、思いやりを守る戦士が時代を揺り動かそうとする物語である。

作品に出てくる自然は、現実の身近な自然から発想したもので、人々の心に思いやりを取り戻し、子供たちが大きな夢を見られ、一人でも多くの人が自然を愛することを願って、書き上げた作品である。

1花の妖精(Web)

 良介は、いつも恵の面倒を見ていて、恵には不思議な力が備わっていると思うようになる。恵は、花や虫、鳥、獣と話ができ、花の妖精として、不思議な現象が次から次へと起こってくる。それが、夢なのか現実なのか分からなくなり、良介もいつしか不思議な世界に仲間入りしていく。

 

2思いやを守る戦士(Web)

 良介は、恵を思う気持ちが特別な力を与えてくれると思うようになる。弟の真二が不良になり、更生させるために不良仲間と立ち向かうと、喧嘩など一度もしたことがなかったが、自分でも信じられない強さを発揮し、真二と共に仲間を更生させる。仲間たちは、良介を「思いやりを守る戦士」と評して、良介の子分になる。

 恵みは、病弱な自分が家族の重荷になっていると考え、死を望むようになる。それは、天使の心を宿す魂を、悪魔が奪い取ろうと画策したものだった。悪魔は様々な攻撃を仕掛けてきて、恵は魂を奪われ、昏睡状態に陥ってしまう。

 

3黒服のランナー(Web)

 良介がトレーニングをしていると、悪魔が攻撃を仕掛けてきた。悪魔に魂を売った、魔界最速のランナー、金剛が競争を挑んでくるが、問答を繰り返しているうちに、良介の思いやりに打たれ、思いやりを守る戦士に生まれ変わっていく。

 

4鳥仙人(Web)

 神々の使者とも思える鳥仙人と出会い、悪魔との戦いに、二羽のオオタカ、風神雷神を授かる。同時に夢会社の設立を託され、弟の真二とともに、子供たちが夢を追う、夢追い塾の建設に向けて動き出す。

 

5星空を走る(Web)

 愛憎を司る悪魔、詩織も、良介の魂を奪いにくるが、良介の思いやりに魔性が失せ、二人は恋するようになって、思いやりを守る女戦士となる。

 

6旅立ち(Web)

良介が心身ともに強い力を養うと、自由に空を飛べるようになり、悪魔との戦いに万全な体制ができ、詩織とオオタカを従え、魔界へ乗り込んでいく。

 

7魔宮の部屋(Web)

恵は生きる意欲を取り戻すと、魔界で天使の輝きを発するようになって、思いやりを失った魂たちに慈愛を降り注いでいた。恵は、魔界で病弱な身体に拘束されずに生き生きと活動し、心身ともに自立して、良介が救出にくるのを楽しみに待っていた。良介は詩織から的確な情報を得て、魔宮の死を望む部屋から、恵と金剛を難なく助け出すことができた。

 

8戦いの火蓋(Web)

 魔宮からの帰路には幾つもの関門が待ち受けていて、四人と二羽の活躍が始まる。樹木の墓場や、幻の館、重油の海、エロスの館など、人間の悪行が作り上げた世界が行く手を阻むが、恵を中心に思いやりを守る戦士たちが、思いやりを持って数々の奇跡を起こし、魔界をことごとく浄化して切り抜けていく。

 

9決戦のとき(Web)

最後に悪魔たちが待ち受けていて、決戦を挑み、思いやりが勝って悪魔たちを打ち破り、恵の魂を救い出すことができる。

 

10夢追い塾(Web)

魔界から戻り、良介が深い眠りから覚めると、今までの出来事が全て夢に思えてくる。恵が本当に目覚めるのか疑問になるが、夢の出来事を一つでも夢に終わらせないようにするのが、自分の仕事だと考え、今まで見てきたものが、夢か現実かを決めるのは、自分の心であり、人々の心だと悟る。