バリウム

〜 人体の不思議と健康診断に潜む危険な落とし穴 〜

先日、会社で健康診断があった。 いろいろな検査項目があったが、そのうちのひとつに胃の検査があった。 いわゆる、バリウムを飲むと言うやつである。

胃の検査については、ご存知の方も多いとは思うし、 私も専門家ではないため、説明は割愛しようと思ったが、 いちおう、わかる範囲(わかっているつもりの範囲)で、 憶測も交えながら簡単に説明しておきたいと思う。

胃の検査というのは、 バリウム入りの液体を飲み、 その液体の形をレントゲン写真に撮ることにより、 胃の形や状態を調べると言うものである。

バリウム入りの液体を飲む直前に、白い顆粒を少量の水で飲むように指示される。 この顆粒は、水と反応して気体を発生する。 たぶん、この白い顆粒の主成分は炭酸水素ナトリウム(重曹)であり、 水と反応して炭酸ガスを発生しているのではないかと憶測する。 が、発生しているガスの正体は、このさいどうでもよい。 胃の中にガスが発生すると言うことがポイントだと思われる。

胃の中にガスを発生させる目的は、 きれいなレントゲン写真を撮るために、 胃の中にガスをためて胃の内壁を伸ばすことが目的と思われる。 気圧さえ上げられれば、おそらくなんでも良いのである。

さて、検査の説明はこのくらいにして、そろそろ検査の様子に話を戻したい。

バリウムを飲むのは、大学4年のとき以来2度目であるが、 基本的な検査の段取りは、以前と変わりなかった。 最初に、指示された通りに、一気に白い顆粒を飲み下した。

この顆粒は、飲んだ瞬間、胃の中でガスを発生し始めた。 胃の中にガスがたまるということは、 月賦、 ちが〜う、こんなときにローン組んでどうするんだ! ゲップをしたくなるということである。 しかし、ゲップをして空気を腹から出してしまうと、 何のために白い顆粒を飲んだのかわからなくなってしまう。 このゲップは、我慢しなければならないのである。

実は私は、大学4年生で最初にバリウム飲む検査を受けたとき、 そんなこととはつゆ知らず、速攻でゲップをしてしまったことがある。 そのときの医者に、 「けっ、これだから素人の相手はしてらんねぇぜ!」 みたいな目で見られながら、2つ目の顆粒をもらったという苦い過去があったのである。

今の私は、大学時代の頃の私とは違う。 自他共に認める、すっかり立派な(?)大人である。 もうあのときと同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。 と決意に燃えていると、健康診断スタッフの冷徹な声が響いた。

「何があっても4〜5分はげっぷをしないように!」

「わあっとるわい、そんなこと! この俺を誰じゃ思っとるん!」 と、どこの方言かわからない言葉で思ったが、つっこんでもしょうがないので、 素直にゲップを我慢しながら、サクサクと指示に従い検査台に向かった。

しかし、このときの「ゲップしたい度」は尋常ではなかった。 秒刻みで、「ゲップしたい度」が赤丸急上昇していった。

ビール中ジョッキ 1杯を一気飲みした直後の「ゲップしたい度」を 仮に 1ゲッパー とすると、このときの「ゲップしたい度」は、 顆粒を飲んだ直後の 0.5ゲッパー くらいから、検査台に乗る頃には急速に 5ゲッパー くらいまで駆け上っていった。

やっとで検査がはじまっても、「ゲップしたい度」の赤丸急上昇は、 とどまるところを知らなかった。4分どころか、あと何秒もつだろうか?という感じである。 そして、その数秒後、 8ゲッパー を超えたくらいの時点が限界であった。 ついに口から空気が出ていってしまったのである。

「全てが終わってしまった....」

私は思った。 自他共に認めるすっかり立派な(?)大人としての尊厳もここまでか。

精神的な動揺とは対照的に、身体は、 たまっていたガスが体外にやっとで放出できたことで、 かなりの快感を感じていた。 まるで、やっとの思いでトイレに到着したときのように。

私の脳裏には、大学時代の屈辱の思い出がよみがえっていた。 今日もまた、 「けっ、これだから素人の相手はしてらんねぇぜ!」 みたいな目で見られながら、2つ目の顆粒をもらうことになるに違いない。

しかし、健康診断のスタッフには、特に変わった動きは見られない。 検査は、淡々と続いていた。そして、それを裏付けるように、 確かに私の胃の中には、たっぷりとガスが残っているような感覚がある。 これは一体どういうことなんだ? さっき確かに口からガスを発してしまったのに....

その瞬間、闇夜に輝く稲妻のように、ある事実が私の頭にひらめいた。

「しまった。俺は、ゲップと間違って、息を我慢していたのか....」

そして、何事もなかったように、無事に胃の検査は終わった。

皆さんも、ご注意!


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