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『musicbox01』
BGM from うっちいの音楽箱!
 
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優々
 
 ふわっと、暖かく優しい風が頬をなでていく。
 太陽もまた、柔らかい光で体を包み込む。
 青年は、春の心地よさにそのまま横になりたいのを抑え、座った姿勢から後ろに手をついて軽く伸びをした。目をつぶって深呼吸をすると、ますます体中が温かくなって気持ちいい。
 今頃みんなは自分のことを探しているのだろうか。
 春風に身を任せながら、ふと思った。何せ、何も言わずにこっそりと出てきたのだから。あの相方にも告げず。ただ一人になりたかったから、軍議の前にふらりと外に出てしまった。悪かったなと思うものの、もう少しここにいたくて、ずるずると長居してしまった。
 さすがにそろそろ戻らないと……でもあともう少し。
 再び春の日射しに身をゆだねながら、相方の顔を思い起こした。もしこの事を告げてきたとしたら、何と言っただろう。きっと……
「あっ、こんな所で何をやってるんです!」
 とろとろとした気持ちに、いきなり大きな声がかぶさる。
 見つかってしまった。
 声の主を確かめようと、目を開け頭を巡らせる。馬に乗って、こちらに近づいてくる人を捉えた。
「子明か」
 目をすがめて、馬からおり走ってくる青年の名を呼ぶ。
 呂蒙は息を切らせながらすぐ側に駆け寄り、言った。
「皆探していますよ! こんな所で何をやってたんですか、公瑾どの!!」
「ああ。すまない。外が暖かかったから、つい誘われてしまって」
 周瑜はのんびりとそう答える。
「誘われた……って」
 周瑜の悪びれもしない返答に、呂蒙は信じられないといった表情をした。
「もう軍議も始まっていますよ。公瑾どのがいなくなるなんて初めてだから、皆びっくりして。殿も、何も知らないってすごく驚いておられました」
「そうか。軍議の前には戻るつもりでいたのだけど、風がとても気持ちよくて、ずるずると居座ってしまった」
「もうすごかったのは公覆どので、『なぜ公瑾どのがおらん!』って怒鳴られてばかりで、おろおろされてましたよ」
 くすくすと笑い声をもらしながら、呂蒙は黄蓋の口をまねて言ってみせる。だが周瑜は対照的に表情を曇らせた。
「公覆どの……それは、非常にまずいな」
 左手を額に当て、しばらく考えこむような仕草をする。
 呂蒙はへえ、という声をあげ、
「なんだ、ちゃんと罪悪感あったんですね」
 驚いたように言った。そして続ける。
「まだありますよ。徳謀どのは『まったく何を考えているんだ』で、子衡どのは『殿じゃあるまいし、信じられない』、子綱どのは『何かの間違いではないのか』。それから殿は」
「子明、子明。もういいから、わかったから」
 周瑜が困ったような笑みを浮かべている。
「伯符さまが何とおっしゃっていたのかは、だいたいわかる。きっと、『どうせなら一緒に行きたかった』とでもおっしゃったのだろう?」
「すごい! その通りですよ」
「それでその伯符さまは、どうしておられるんだ?」
 穏やかな問いに、また呂蒙は笑い出した。
「もちろん『俺が探しに行く』っておっしゃいましたけど、今言った全員に止められて、大人しく陣舎にいるはずです。大変だったんですよ、殿を押さえるの! 子衡どのが、殿が行くとややこしくなるから動くなって説得してました。多分今ごろ、相当腐って待っているんじゃないかなあ」
 立て板に水を流すように、喜々として喋る。呂蒙は周瑜に、いたずらっぽい眼差しを向けた。まるで周瑜がどんな反応をするのか、面白がっているみたいだ。
 周瑜はそっとため息をつく。
「何か言い訳を考えないとな」
 彼はちらりと呂蒙を見た。今度は周瑜の方が面白がっているようである。
「子明、さっきの理由は皆に内緒にしておいてくれないか」
「さっきの?」
 呂蒙は会話を頭の中で繰り返してみた。
 確か、俺が何やってるんですかって聞いたら、暖かさに誘われてっておっしゃって。
 わけを理解して、彼は頭をぶんぶんと縦に振る。
 そんな怖(おそ)ろしいこと、程普たちに言ったら。どんな顔をされどんなことを言われるか。
 想像に難くない。
「ありがとう」
 相変わらず周瑜はにこにこしている。呂蒙は、彼はある意味孫策より手に負えないかもしれない、と思った。 さてと、と、周瑜が立ち上がる。
「そろそろ戻るか。せっかく子明が見つけてくれたのだし。子明もあまり遅くなると怒られるだろう?」
「え? あ、そうだった。公瑾どのを連れ戻しにきたんでしたっけ」
 呂蒙も腰を上げた。陽の高さを確認する。ほぼ真上にあり、もう正午過ぎだと伝えていた。二人がそれぞれ馬に乗ろうとした時。
 馬の蹄の音といななきが聞こえ。
「公瑾!!」
 孫策、だった。彼は周瑜の姿をいちべつすると、馬首を返して一直線に向かってくる。
「伯符さま」
「殿」
 二人の呆然とした声が重なった。
 驚いている周瑜の前に、孫策は馬を引いてずかずかと歩いてきた。
「お前っ、公瑾! 何しに黙って出たんだよ!」
 いきなりわめく彼の顔を、周瑜は不可解そうに眺める。
「まさか伯符さま。子衡どのたちが止めるのも聞かず、飛び出してきたわけじゃないでしょうね」
「なん……っ」
 孫策は思いっ切り顔を引きつらせた。そしてわなわなと声を震わせる。
「今日は、お前にだけは言われたくない」
 睨みつけてくる孫策に、周瑜ははじめきょとんとし、次いで堪えきれず笑い出した。
「公瑾どの? 殿……」
 呂蒙がためらいがちに声をかける。
「そうですね。今日は立場が逆でしたね。すみません」
 周瑜の子供めいた表情に、孫策は少々呆気にとられた。
「どうしたんだよ。何で勝手に出てきたんだ?」
「いつも伯符さまが抜け出すので、私もつい抜け出したくなったんです」
 笑顔のままで、即答する。
 孫策には返す言葉もない。
 原因が自分だと言われれば、そうなんだとしか言いようがない。思い当たる節がありすぎるから。
「もう、お二人ともっ。帰ったらどう言い訳するおつもりなんですか!」
 完全に忘れられていた呂蒙は堪えきれず叫んだ。
 二人の表情が一変したのは、しん、と空気が流れたあとだった。

 咲きはじめの桃の花が、風に揺れている。




   −了−


                                    2003.03.17
 
  ★あとがき★

周瑜と呂蒙のお話です。そしてちょっとだけ孫策(笑)初めて大人書きました。でも戦のことにはかけらも触れてないですね(正直に歴史的背景考えてないと言いましょう;;)
そしてそして、もうひとつ初めてなのは、書いてた時の季節と話の中の季節が一緒!!いつも違う季節を書くか、遅れて季節が変わってしまっていたので…(汗)

この話はふと思いついたもので、たまには周瑜も迷惑かける側になってみようよ、みたいな気持ちで書きました(~~;)ちょっと周瑜命日記念のつもりです。もう3ヶ月過ぎてますがっ;;;でも孫策の命日はやったのに、周瑜はやらないっていうのもやだなーと思い、周瑜メイン小説を書きました。

タイトルは「ゆうゆう」と読みます。
のんびりとしてゆるやかな様子、しとやかでやわらいだ様子、という意味です。今回の周瑜の優々たる態度にぴったり(T▽T)迷惑かけてるのに、何でこんなに余裕なの…
この話は、自分で書いてて楽しかったですv思いつくままに、本当に自然に任せて書いたからでしょうか。
それとも呂蒙がいたから?(@_@)彼非常に書きやすかったですよ。ああいうキャラ好きかも♪
元気が良くて明るくて素直で従順で。
じゃあ孫策と呂蒙だったらもっと書きやすかったり??(爆)
’03.03.18
 
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