10月から11月にかけて他船はそんなに釣れていないにも関わらず爆釣することが時々ありました。皆さんがのんびりされている中で一人だけ竿を曲げており、しかも型が良くてやり取りに時間が掛かるので余計に目だってしまい、他船の船長から「あんただけ地合いだ」と言われたこともありました。単にビニールをカットするだけなので当初は知り合いに押し売りしたこともありましたが、時期が限定されていることと誘いや合わせに慣れが必要なためか自分で作成する方は増えませんでした。そもそも釣れる原理が分かりませんので私も使ったり使わなかったりしながら少しずつ調査、改良を続けて来ました。

　で、何故他船より釣れるのか、それはまさに極意の1番、マッチ・ザ・ベイトです。この海域では魚も小型中心でベイトはもっぱら稚魚ですので市販のサビキでほとんど対応できます。でも時期に拠っては成長したイワシや太刀魚の子がベイトになったりします。この時にビニールが大活躍します。そもそも色んな地方の漁師さんも使っていて、有名なのは友が島の高仕掛けですが、間違いなくこのサイズのベイトが泳いでいて捕食されているのでしょう。でもこの海域ではイワシは8月から10月、太刀魚は10、11月の期間限定です。しかも例年小あじが群れていてそれがベイトになっているときはビニールの効果は出にくく、年によっても差があります。

　次にビニールの素材、色、厚み、形状、大きさについてですが、これは経験的なもので明言はできません。何故ならあたりがあって釣れている時に態々あれこれと試すことは難しいし、地合いが長ければそれも可能ですがグイグイを楽しみたい方が勝ってしまうからです。とはいえコツコツ作り続けて10年、現行タイプが良いのかなと思っています。不思議なことにベイトと同じ色大きさ、形よりも釣れます。おそらく活性の上がった魚はしっかり認識する前に素早くシルエットを捕らえて食べるのでしょうか。余談ですがベイトのイワシや小アジも不思議と釣れてしまいますのでその際はそのまま泳がせ釣りになります。ちなみにワームも色々と試しましたが全く良い思いをしたこともなく、結構すぐに硬くなってしまうのでボツとしています。

　釣り方の基本は底まで落として超スローに巻き上げます。あたりはゴンと強く出る場合と少し重みが増す2パターンがほとんどです。青物は向こう合わせで掛かってしまうことも多いですが、あたりがあればとにかく強く合わせを入れます。特に重みが増す場合は合わせないと鈎掛かりしません。サビキですが居食いの様な感じで合わせた後に反転して締め込み始めます。群れで競って摂餌している場合は口に入れるとすぐに反転するけど、単独なら慌てる必要もないし、大型になればなるほど競争に勝ってきているからだと考えます。これはハネも多いですし鯛はもっと顕著です。他船が釣れてない時に釣れるのはこちらの方が多くて魚も良型になります。ただ少し慣れないと分かりにくいかも知れません。港の名人にも使ってもらい、合わせについて説明するのですが釣果に繋がりません。一方で全くの初心者がそこそこ釣りますので妙な癖や思い込みが無い方が良いようです。

　もし乗らなかった時はすぐに仕掛けを落とし込む、あるいは巻き上げ初めによくあたりが出ます。また棚付近をサミングしながら落とす時に軽くなるあたりもありますのでベイトリールの方が断然有利です。補足として、あたりを感じなくともビニールを見れば普通の魚皮と違って歯形がしっかり残っています。それによって魚の大きさや棚も分かるし、活性も判断できて巻き上げるスピードの調節ができるというメリットもあります。また長竿や胴調子の竿だと合わせが効きにくいため私はもっぱら先調子で大物が掛かった時のみ胴に乗る竿を使っています。一応竿は幻波1号、リールはダイワの早技103Lがお気に入りですが、古い製品なのでヤフオクにも出なくなってしまいました。

　イワシの魚探反応は底から中層に強く出ます。表層のみの反応は大型魚に追われていない可能性が大です。またいい感じの反応があっても捕食魚が付いていないこともよくあります。これは広い範囲にベイトが群れているためだと思われます。一方太刀魚の子は追い詰められて弱い反応が出るだけで、しかもイワシやアジのようにポイントに留まりません。ボイルが見られるときでさえ弱い反応しか写りませんが、その分反応さえ見つければ捕食している魚が確実に居ることになります。このことは逆に反応が出ていなくても釣れる可能性があるということです。

　とは言えいくらなんでも魚が居ない、そしてベイトが居ないことにはどうしようもありません。何といっても疑似餌ですからね。魚探に反応があれば間違いなく釣れますが、他船がポツポツでも竿を曲げていればその付近には活性の上がった魚が居ますので必ず爆釣します。また魚探反応が全く出ていなくても少ないベイトを追いかけている魚はあたってきますので、実績のある場所を流しているとヒットします。ただ地合いは一瞬で終わることがほとんどです。船団が出来ている所は確率が高いのですが釣りにくいので、のんびり釣りたい時は敢てこちらを選ぶことも良くあります。