手塚マンガと狂言回し

手塚作品を語る上で狂言回しは切っても切れないものだなと思う。
狂言回し(「大辞林第二版」より)
 (1)芝居などで、筋の進行に終始かかわっている役柄。
 (2)(比喩的に)表立たずに、物事の進行係の役を務める人物。
手塚の作品で狂言回しが出てくるものはたくさんあります(多分)。

例えば、「火の鳥」の猿田彦。
例えば、「アドルフに告ぐ」の峠草平。

個人的には色々なマンガを読んでるつもりです。偏ってるかもしれませんが、普通の人よりは多くのマンガを読んでるつもりです。その中で手塚以上の狂言回しの使い手はないように思えます。
というか、狂言回しの作品(言い方は変ですが)を思い出せと言われて、手塚の作品以外は思い出せません。これはニーズが有るとか無いとかの前に、狂言回しをうまく使いこなせる作家がいないのではとも思ってしまいます。

手塚は実力の有る新人が出てくると、対抗意識を持って「俺は絶対に負けない」という気持ちでやっていたらしい。当然それは違う土俵での勝負するときもあれば、同じ土俵での勝負するときもある。
劇画が出てきた時は手塚はかなり苦戦をした。
色っぽい女性をかけないと悩んだ時期もあった。
それでも続けることでいい作品をたくさん残してくれた。

最近の作者はどうだろう?
手塚には勝てないと思っているのか?
手塚自体眼中に無いのか?

手塚はマンガの神様と呼ばれている。確かに私も認める。だけど、それは一般人が言うことであって、漫画家にはあまり言って欲しくない(だけど、ただ否定するのも間違っているが……)。
漫画家にとっては手塚は人間であって欲しい。実力の有るいち人間として見て欲しい。そして、つねに手塚に負けるか、実力の有る新人に負けるかという気持ちでいい作品を創って欲しい。

年を取ってくると、だんだんマンガを読んでいることが少しつらくなる。精神的な面でも、心理的な面でも……。
そんな時、”この漫画があるから漫画読みをやめるのはできないな”と思わせる作品があればいつまでも漫画読みでいられます。
そんな作家がいつまでもいつづけてくれれば、それが私の願いだったりします。

あれっ?最初の趣旨と変わってるぞ……。

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