1週間の闘病 Part I
(尿道結石編)


序章 始まりは何でもなかった
(あれっ?赤いしょんべんが出てるわ。疲れてんのかな俺?)
会社のトイレで俺は血尿を出してしまった。だが、その後血尿が出たり出なかったりで、たいした事はないなと思っていた。
しかし、この何でもないと思っていたことが、数週間後の悲劇の予兆だったとはそのときの俺には知り得ないことだった。

第一章 突然の激痛
「痛っ!」
月曜日の朝。その日俺は激痛とともに起きあがった。右の下腹部のあたりが痛い。とにかく信じられない痛みが俺を襲っていた。
今日は出張があるので出社しないわけにはいかないと思い、駅への道を歩いていた。電車に乗り激痛に耐えていると、脂汗が流れているのがわかる。
(なんなんだこの痛みは?昨日まではなんともなかったのに)
そう思いながらも電車に揺られ激痛との戦いが続いた。電車に乗り15分ぐらい過ぎたとき、とうとう我慢ができずに電車を降りその駅のタクシー乗り場に向かった。
乗客を待っているタクシーの列の中俺は先頭に並んでいるタクシーに乗り込んだ。とりあえず、色々聞かれるのはいやなので、我慢をしてなんでもなさそうな顔をし家までの道順を言いそのまま目をつぶって寝てるふりをしてしまった。

第二章 地獄の1時間
家についた時間は7時15分。まだ医者も開いておらず、会社にも出社している人間がいない時間だ。とにかく今日は近所の町医者に行き、様子を見てみようと思った。しかし、医者が開くのは8時。まだ一時間近くある。この激痛と一時間も戦うかと思うと、脂汗といっしょに冷や汗が流れてくるのがわかった。
俺は少し寝ようと思った。しかし、あまりの激痛に寝ることさえできない。
(いったい何が俺の体に起こったんだ?)
冷静に判断すればある程度の推測はついたはずだが、そのときの俺は”冷静”という言葉からかけ離れたところにいた。そして、一時間ほど経ち8時を過ぎたところで、俺は町医者へ向かおうとしたが、時間も時間だし、まずは会社に電話を入れておこうと思った。
「右の下腹部に激痛が走ってまともに動ける状態じゃないので、今日の出張はキャンセルさせてください。」
いくつか今日の出張のことで上司と話した後、「お大事に」の声とともに電話を切り、そのまま町医者へ向かった。

第三章 町医者にて
町医者には10人ぐらいの老若男女が集まっていた。
(しまった、早めに来れば良かった!)
全ては後の祭である。仕方なく俺は激痛に耐えながら待合室で待つことにした。どのぐらい待ったろう、既に時計は9時を回っていた。もうすぐかなと思い診察室のほうをちらちら見ていると、看護婦が名前を呼んでいるのが聞こえた。
呼ばれるままに診察室に入り医者の「どうしました?」という言葉を聞くか聞かないかのうちに俺は言葉を発していた。
「右の下腹部がすごく痛いんです。血尿も数週間前から出るようになってます」
医者は、ふ〜んという様な顔で俺の下腹部を触診し始め、すぐに結論を出した。
「尿道結石だね!」
「尿道結石ですか?」
「そう、結石。薬で散らせると思うから少し様子をみよう。後痛み止めの薬も上げるから、どうしても我慢できなくなったら飲んで。後、食事も…」
食べていいものや、食べていけないもの、当分安静にしていること等、色々言っているのがわかるが、あまりの痛みで早く痛み止めの薬を飲みたいという思いが強く俺にのしかかっていた。
診察も終わり俺はとりあえず三日分ぐらいの薬をもらい帰路へついた。

最終章 一週間の闘病
病院から帰ってすぐ会社に連絡し、まずは一週間ぐらい休むことを告げた。
それから一週間は激痛との闘いだった。医者は痛み止めを3回分ぐらいくれたが飲んでも痛みは治まらず、寝ようと思っても寝れずこんな苦しみは始めてのことだった。
そしてだいぶ痛みも治まった一週間ぐらい経ったある日のこと、トイレで小便をしているといきなり小便が止まりそしてすぐに放尿が再開された。病院に行きそのことを告げると、「きっと石が取れたんだね、痛みはなくなったんじゃない?」と言われ、確かに痛みがないがその代わりなんか違和感というか、常に残尿管があることを医者に告げた。
「それじゃあ、レントゲンで見てみようか?」
そう言いいきなりレントゲンの準備をしだした。人間ドックに入れられるような服に着替えてレントゲン装置の上に寝ていると奥で医者が装置を色々いじっているのが見えた。
10分、20分、いくら待ってもレントゲン撮影を終わろうとしない。(なんか深刻な問題でもあるのかな?)30分ほどして医者がいきなり奥から出てきて、
「どうも調子が悪いみたいだから後日撮影しなおすよ。修理が済んだらまた連絡するから」
そう言いその日の診察は終わり帰路へついた。
とにかく痛みも消えたので俺は会社への出社することにした。
それから、数年。いまだにレントゲンが直ったという連絡が来ていない。あまり遅くなると次の尿道結石ができてしまうような気が…。


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