7.そして過去が終わる


異動寸前。異動先職場での面談有り、送別会有り、引き継ぎ有り、片付け有りこの時期はどうしても色々立てこんでくる。最後の出張も終了し、引継ぎもほとんど終わり、後は時がたつのを待つのみ。やっとそういう状態になる。仕事の内容がまったく変わってしまうため引越しで持っていくものも簡素。基本的には文房具類といくつかの資料のみ。

とりあえずたいして仕事もないので少しづつ片づけをはじめると色々昔のものが出てくる。そしてその中にあった、写真の束。みんなこの職場の仲間ととった写真。この製品をやっていた仲間ととった写真。いわゆる思い出というもの。約100枚ほどの写真。一枚々々によみがえる思い出。
そして過去が終わる。

予想通りの職場へ異動する者、予想外の職場へ異動する者。
現在の知識を生かせる職場へ異動する者、現在の知識をあまり生かせない職場へ異動する者。
しようがないと納得する者、転職しようかと考える者。
もっと物事をポジティブに考えろと言う者、適材適所の必要性を説く者。
色々な者がいる。
そして、過去が終わる。

異動する旨の連絡を関連部署にする時期。基本的には引継ぎが済んでいるので、今までありがとうございましたと言う意味をこめた連絡。
新しい職場でがんばってくださいと言う人。いなくなっちゃうのは寂しいな〜と言う人。最後に飲みに行きたかったねと言う人。あの時は楽しかったねと言う人。きっと次の職場でもかかわりがあるよと言う人。
色々な人の暖かさを知る。
そして過去が終わる。

送別会が開催される。そこには色々な人の顔ぶれが見える。今回異動になる人もいれば前に異動した人もいる。中には今回の件とは別でかなり前に異動した人もいる。製品が終わると言うことのためだけに集まった人達。
飲む、話す、騒ぐ、食す、聞く、叫ぶ、泣く、動く、歩く、走る、飛ぶ、落ちる、こぼす、投げる、逃げる、つぐ、空ける、置く、取る、渡す、叩く……。
色々な動詞が飛び交う。この世の全ての動詞が体験できるのではないかと思うほど。盛り上がる、盛り上がる、盛り上がる……。
そして過去が終わる。

最終日。最後の挨拶の時。あまり言うこともないような気がする。残る人の苦しさ。異動する人の苦しさ。どちらが苦しいかは比べることはできない。1年後どころか1ヵ月後どうなってるかさえ解らない今の自分。
お決まりのセリフ「長い間ありがとうございました。残る人はこれからもがんばってください」ただそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない今の自分。
そして過去が終わる。

全ての過去が終わる。

そして未来が始まる。

新しい明日が始まる。


「独り言」へ戻る