2.お客様の期待


1ヶ月ほどすると製品がなくなることの社内説明が一通り終わりました。
営業さんはどのような気持ちで受け止めたかは今の時点ではわかりません。
当然、案件持っている営業さんと持っていない営業さんでは受け止め方も違うと思います。
案件を持っていなくても、売った直後のお客様や長い時間で少しずつ良くしていこうと約束したお客様もいたと思います。
お客様と直結している営業さんには非常に申し訳ない気持ちが一杯です。
私も営業と一緒にお客様の下へ一緒に行くことがよくあります。
営業にまかされて単独で行くこともよくあります。
お客様に「まかせてください」と何度も言ったことがあります。
悲しいかな、全てが嘘になってしまいます。
お客様から見れば「お前たちは売るために嘘をついたのか?」という話になるかもしれません。
いや、そうなって当然の状態です。
正式発表後は営業から電話がよくかかってきました。
「本当に?」
「どうにかならないの?」
「何故?」
「この製品じゃないとお客様の要求を実現できないのにどうしよう……」
私は「申し訳ありません」しか言えません。
本当に申し訳ありません。

製品がなくなるということはその製品が売れていないからと言うのが最大の要因ではありますが、実際はそれだけではないと言うのが実情です。
”いつかはなくなる”と言うのは製品が売れてないからが原因なのは確実です。
しかし、”今なくなる”と言うのはもう少し政治的な話が出てきます。
事実を聞いたわけではないのでわかりませんが、少なくとも私はそう思っています。
つまり、社内の政治的な理由で営業さんやお客様に迷惑をかけると言うのはやはり非常に辛いものです。
「それならもっとたくさん売ればよかったのに。」
「売れていればやめるにやめれないだろう。」
当然のことです。
だけどそこまで売ることはできませんでした。
売れる製品を作れなかった開発者が悪かったのか、その製品を売れなかった営業が悪いのか、それは今となっては詮索しても意味がないのでよしておきます。
とにかく、次の段階へ進まなければいけないことは確かです。

営業への一通りの説明が終わるとその後待っているのはお客様への説明です。
今動いている案件は当然のこと、既に納入済みのお客様でも、今後引き続き私たちの製品を当てにしてくれているお客様への説明が必要になります。
お客様には今後の製品サポートについて、将来同じようなことを行いたい場合はどのような製品があるかの説明等々、あらかじめ資料を用意します。
さすがにお客様への説明を全て上の人間ができるわけではないので、そのお客様にかかわった人間がやることになります。
お客様によっては営業が単独でやってくれるケースもあれば、こちらから人を出して営業と一緒に謝りに行くケースもあります。
私も当然何箇所か行きました。
怒るお客様。
どうしようか困惑してしまうお客様。
しようがないねと納得してもらえるお客様。
色々いましたが、申し訳ない思いから説明のたびに結構切ない思いになってしまいます。
とにかくお客様に納得してもらうための説明が延々と続きます。

どのぐらいの割合かはわかりませんが、私たちの製品に期待をしてくれていたお客様もいました。
当然お客様だけでなく、期待をしてくれていた営業もいました。
そんなお客様の期待を踏みにじってしまうと言うのは非常に辛さを感じてしまいました。
どうやら製品に対する愛着はなくても、お客様に対する愛着は少しだけあったようです。
この時期、簡単に切っていくことができない自分を少しだけ恨めしく思いました。

続く

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