1.終焉の始まり


2001年某月某日終焉へのカウントダウンが始まりました。

この日私が開発に参加している製品の生産終了が決定しました。
お偉いさんがみんなを集めて生産終了が決まったこと、そして、今後の予定についての説明が始まります。。
私には少し前から話が伝わってきていたのでびっくりすると言うことはなかったのですが、中には初めて聞いた人もいたのでしょう若干のざわめきの中で話は進められます。
人員は4回に分けて他の職場に異動することが決まりました。
第1陣は1ヵ月後。
第2陣は3ヵ月後。
第3陣は9ヵ月後。
第4陣は製品保障期間終了時。
誰がどのタイミングで異動になるかは後日上長から説明があるらしく、なんだかあっけない説明会でした。
元々物事に対する執着心をあまり抱かない性格なので、製品に愛着があったというわけではありません。
それでも、やはり10数年続けてきた製品なので何か寂しさみたいなものを感じたことは確かです。
「あ〜終わるんだな」
これがそのときの率直な感想だったと思います。
そして、当然それと同時に不安も感じましたが……。

説明会の日から2〜3日後に上長と面談みたいなものが始まります。
異動先及び、異動時期の発表です。
一人々々順番に会議室に呼ばれて異動時期と異動先を告げられます。
面談が終わり会議室から出てきた同僚は、みんなのいる場所に戻ってきていつどこに異動になるかの話しになります。
「俺は第一陣だって……」
「引継ぎ時間がないよ……」
「あそこは結構大変だよ……」
「あの職場ってなにやってるんだろう……」
色々な言葉が交わされます。
そして私の番。
「第3陣なのでよろしく。」
第3陣の異動先はどうやら異動直前に決めるとのことです。
それ以外にもいくつか聞かれました。
「何か問題があれば教えて」
あっちこっちに出張に行っている私は「今動いている案件を今後どうするか」「元々長いスパンで考えているお客様をどうするか」等気になることをいくつか話しまし会議室を後にします。

具体的な発表や、お客様への説明等は今後どうするかを決めている最中とのことです。
お客様以前に営業等まずは色々説明しなければいけない場所があるそうです。
社内への説明資料は全て上の人間が作り、日程を決めて順次説明していくことになりました。

それまでは月に10日程出張に行っていた私ですが、いきなり出張が減りました。
少なくとも説明があってから1ヶ月間は外にどのように説明するか決まっていないため出張にいけない状態です。
外とのやり取りは全て上の人間がやると決定しているため、わずらわしさはなかったのですが、せっかく売ろうと思って一生懸命お客様にプレゼンをしている最中にこのようなことを聞かされたら営業はどう思うのだろう?そんなことを日々考えていました。

とにかく後9ヶ月。
これが終焉までに残された私の時間です。
しかし、この時点では”待つ”と言うこと意外は一切できない状態です。
このような話は正式に社内発表される前にも噂として広まってしまいます。
当然その噂を聞きつけた営業はこちらに電話をかけてきて事の真相を確かめようとします。
しかし、正式発表されるまでは何もいえません。
つまり、嘘をつかなければいけないのです。
そして、嘘をつかなくていい日がやってきました。

続く

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