マイケル・ムアコック
(Michael Moorcock)


「私はマイケル・ムアコックが好きだ!」と言うよりも、「私はエルリックサーガが好きだ!」と言った方が正しいだろう。
知る人ぞ知る”エルリックサーガ”。私がこの本とであったのは1985年頃で、その頃高校生だった私は、無い金を振り絞って買いあさっていた記憶がある(と、言っても買いあさるほど巻数があるわけではないが)。
”エルリックサーガ”とは、俗に言うHF物(ヒロイックファンタジー物)で、なにが良いかというととにかくこの主人公であるエルリックが<弱い>ことだ。
どのぐらい<弱い>かというと、とにかく薬を飲みながらではないとまともに歩く事さえできないほど<弱い>のである。
私がそれまで知っていたHF物で、こんな<弱い>主人公はいなかった。
例えば、有名なHFといえば、”コナンシリーズ”(当然、コナンといっても、宮崎駿の”未来少年コナン”ではなく、シュワちゃんが映画でやってた、”コナン・ザ・グレート”の方)だが、主人公のコナンはとにかく<強い>自分の肉体を武器として、敵をバッタバッタと切り倒していく。
日本でも有名な”グイン・サーガ”があるが、この主人公のグインもとにかくすごい。頭は良いわ、戦えば強いわ、火の打ち所が無い(だけど、出番は少ない)。
つまり、HFの主人公とはこれが普通なのだろうが、このエルリックはとにかく<弱い>。
じゃあ何故そんなエルリックが主人公なんかを張ってられるかというと、永遠の主人でもあり、永遠の友でもあり、永遠のトラウマでもある<ストームブリンガー>と出会う事により、エルリックが強くなってしまうのである。
この<ストームブインガー>とは、<剣>である。
だけど、ただの剣ではなく、人を斬る事によって、斬られた人間の生気を吸い取り斬った人間へと送り込むのである。
つまり、エルリックは<ストームブリンガー>で人を殺せば殺すほど、元気になっていくのである。
エルリックは人なんか斬りたく無い(まー当然だが)だけど、斬らずにはいられない、というより、<ストームブリンガー>に操られ、人を斬らされてしまう。
終いには、自分の従兄弟や恋人まで斬り殺してしまう。
そして、エルリックは、当ての無い旅へと向かう(当てはなくても、目的はある)。
途中で、いろいろな友と出会い、そして別れ、最後には……。
と、ここから先に興味のある方は読んでください。
で、これで終わってしまえば、この”マイクル・ムアコック”という人は、ただのHF作家(SF作家)で終わってしまうだろう。
そして、「西のエルリック(ちなみにこの作家はイギリスの作家だと思った)東のコナン」などとは言われないだろう。
まーなにがすごいかというと、この”エルリックサーガ”は他の物語と、パラレルワールドとしてつながっているのである。
これが、俗に言う<永遠の戦士>(Eternal Champion)シリーズといわれる、”マイケル・ムアコック ワールド”である。
このエルリックとパラレルワールドで(または、生まれ変わりとして)生きる<永遠の戦士>には、コルムエレコーゼそして、ホークムーンの3人の<永遠の戦士>が存在する。
これらはそれぞれ別個の物語として進行していくのだが、時には共通の敵を倒すべく同じ次元でともに行動する事もある。
そして、これらの物語は<ブラス城年代記>へと向かい完結するのである。
といっても、新作が書かれないわけではなく、いまだに(たぶん)新作は書かれているはずである(エルリックものが1994年に翻訳されているし、その後も新作が出てるらしい)。
ファンタジー好きの人間には一読の価値はあると思います。

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