「 落日 」


沈む夕日を掴まえた
小さなミラーの
その中に

行き過ぎる車
飛び去る風景
僅かな空間の
時の流れの
ほんの一瞬

沈む夕陽を掴まえた
小さな視界の
その隅に

駆け抜ける時間
長い人生の
めぐる想いの
ほんの一片

一日を燃え尽きて
明日へと希望を繋ぐ
ゆらめく想いに別れを告げさせて


2004/11/09 22:03








「 孤独 」

結局はひとりなんだと
あらためて気付かされる夜
忘れられた存在
空白の席がそこにある

虚しく響くこだまのように
淋しいよ
淋しいよ
誰にも届かない声を出す

溜息つけば全て終わると
誰かの台詞
所詮こんなもんさと
笑う
笑う
道化が笑う

今夜は月が見えない
星も見えない
まっくらくらの闇夜だから
昨日見た夢さえ思い出せずに
彷徨うばかりの
こころ

ねむらなくちゃね
なにもかんがえずに
ねむらなくちゃね
あすをむかえるために


2004/11/11 01:07








「 還ろう 」


流れていけ
流れていけ
想い

燃えるような想いも
沈んだ重い想いも

さらさらと
渓流の流れにのせて

無にかえろう
生まれたばかりの
無垢なこころに

そこからまた
始まる

人生は
そんなことの繰り返し

何度でも汚れて
何度でも燃え尽きて

そしてまた
ここへ還る

さらさらと
さらさらと

流れていけ


2004/11/12 13:51








「 冬を迎えるために 」

冷たい風が吹いてくると
肩をすぼめてしまうのは
からだのぬくもりを奪われぬよう
ちからを入れて身を守るため

ひとは
自分で自分を守ろうとする
たとえそれがさらに
自分を傷つけることになろうとも

殻にこもる
こころを別の世界へ飛ばせる
虚偽のこころを作り出す
本当の自分を守るために

そうしなければ
生きていけない生き物だから
こころが壊れたら
もう歩けないね
だから必死で守るんだ
いろんな仮面をつけてね

風が冷たくなったよ
木々が色を変えたよ
冬篭りの準備をしなくっちゃ
春がくるまで
暖かくなるまで

春は遠い


2004/11/13 22:34








「 おやすみ 」


一日は短い
日が昇り
沈むまで
その僅かな時間の中で
どれほどのことを成し遂げられるだろうか
どれほどの人の役にたてるだろうか

自分の想いに振り回されて
過ぎていってしまう
それで精一杯の自分しか知らない
沈み逝く夕日を見つめて
終わってしまった時間を悔やむ

前進するよりも
むしろ後退することのほうが多い現状に
溜息もつけないくらいの疲労感
連れ立って夢の国まで歩こうか

次に朝日が昇るまでには
気分を変える
少しでも前進する力を蓄えて

おやすみ
今日の一日
おやすみ
疲れきった体

眠りの中で
復活の呪文を


2004/11/14 22:59








「 浮かれ始めた街で 」


覚めることのない夢の中
彷徨い続けてる
現実に目を瞑り
見ない
聞かない
知らないふり

華やいだ街は
今年もまたジングルベルの季節
キラキラと輝くイルミネーション
電飾で飾られたショーウィンドー

ほら
まるでピエロじゃないか
笑ってる
大きな口開けて
布団にもぐれば泣いてるくせに

逃げ込んだのはどんな夢?
きっとそこには
知った人などいないんだろう
いいさ
そうやって逃げていれば

綺麗な夢だけ見続けて
現実には目隠し
明日はどんな顔で笑うんだい?
仮面はいくつ持ってるの?

ジングルベルにせかされて
今年も駆け足を始める
本当のこころを
置き去りにして


2004/11/18 18:39








「 わがままな時間 」


立ち止まっている
静かな時間に押し潰されて
ひとりの空間は
快適でもあり
孤独でもあり

音が欲しい
声が欲しい
ぬくもりが欲しい
欲しいものだらけの
ないものねだり

雨が降っているから
何処にも行けない
行きたくない
動けない
動きたくない
空が重いから
何も考えられない
考えたくない

なんてわがままな時間
そうね
気分を変えなくちゃ
キラキラする夢思い出して
やさしい笑顔思い出して
もう一日が終わる


2004/11/19 16:09








「 森を行く 」


まわる回転木馬のこの馬車に乗って
いつまでも回り続ける
思考の迷路の中

昨日の記憶は深い森
迷い込めば抜け出せない
あちらの木も
こちらの木も
今見たばかり
確かに進んだはずなのに

堂々巡りの思考の森
ギリシャ神話のラビリンスのように
糸をたらして進もうか
糸車からからまわして

回転木馬は止まらない
出口がないから止まれない
いつまでも
いつまでも回り続ける
同じところ
同じ夢の中

キラキラ輝くシャンデリアのまわりを
回り続ける
お迎えが来てくれるのを
待ち続けているのか
誰かが止めてくれるのを
待っているのか

まわるまわる回転木馬
思考の渦を撫でるように


2004/11/21 23:44








「 ステージ 」


流れてくるのは軽快なジャズ
演奏者も視聴者も
酔いしれている
リズムに
むせぶような音に

楽器がまるで命を吹き込まれたかのように
切ない音を出す
自然に身体が動き出すくらいリズミカルなのに
なぜか哀しい

音が
唄っているのではなく
泣いてる

みんな自分のこころの哀しみ
音と同調させて
リズムにのる
そこだけは
それぞれの想いを抱いて一つになる

赤いライトが似合うでしょう
静かな風が似合うでしょう
酒と
煙と
音楽と
狭い空間の中でひとつになる

昨日も今日も
明日さえもここには存在しない
深い
深い
想いのリズムだけが・・・・


2004/11/22 21:42








「 願い 」


傾いていく時間
滑り逝く想い
沈黙の空気の中で
呼吸しているのは過去?
それとも遠い未来

現在という空間
前にも後ろにも行けず
もがいているのは
夢なのか
理想なのか

この両の手に
掴みたい
滑り逝く時間を
夢を

現在という空間を
打ち破る拳を
固い意志を
どうぞ
わたしに与えてください

傾いていく時間を
滑り落ちるのではなく
這い上がる力を
どうか
与えて


2004/11/23 23:23






photo by 椎名