「 雨上がりの空 」


窓を開けると澄み切った空気
冬を運んで冷たい風が吹く
もうそこまで来ていると
風の便り

冬を想えば遠い街を想う
遠い街を想えばあなたを想う
おそらく
記憶の底から消し去ることを
強いられているであろうあなた

裏切ったのはわたしだから
覚えておいて欲しいなどとは望めない
望まない
その覚悟でここにいる

あなたとの冬の思い出
思い出せば重くなる
それでも
忘れたことはない
わたしの分身

遠い街まで
この風が吹いているなら
そっと運んでこの想い
あなたのいる北の街は
とても遠い

それでも
この同じ空の下にある
同じ風が吹いている
今頃
同じ空を見上げているかもしれない

そう思うと今日も一日頑張れる
いつかきっと
笑顔で再会できる日を信じて


2004/10/27 19:25








「 寒い夜 」


帰り道
空にまんまるお月様
冷たい風が冬を知らせる
いつまでも
季節が変わらないわけないじゃないと
つんとして月が笑う

でもね
ごらん
冬には冬の良さがある
なにげない灯りが
妙に暖かく感じられたり
暖かい部屋に入って
凍えた体からふうっと力が抜ける開放感
他の季節ではあじわえないよね

だから
ちょっと急ぎ足になるけれど
この
つんとした寒さも大好きなんだ
冷えた空気の中で
輝きを増す月が好きなようにね

ささやかな優しさに
大きなぬくもりを感じるのも
こんな夜かもしれないから


2004/10/29 21:22








「 帰路にて 」


仕事を終えると外は夜
朝から降り出した雨が地面を濡らす
なんだか全てが沈黙しているような
そんな静かな街

濡れたアスファルトは光を反射し
まぶしいくらいの不思議の世界を作り出す
ほら
いつもの交差点が夢の国への曲がり角みたい
もう醜い現実なんて見えない

疲労のけだるさが
まるで夢心地のようで
ふわふわと思考が飛び始める
フロントガラスに雨粒
ワイパーに散らされ踊りだす
さしずめBGMはなんだろう

こんな夜は
こんな静かな夜は
あなたの笑顔に会いたい


2004/10/30 20:56








「 夜勤 」


闇の中に走る光
不気味に響く雷
夜更けから振り出した雨が
ピークを迎えた夜明け前

何も聞こえない
雨が地面に跳ね返る音だけ
静けさの中にこだまする
いつもの時計の音も聞こえない

まるで
夜明けなんか来させないぞ
とでも言うかのように
ザーザー
バシャバシャ

今頃はみんな
毛布にくるまって夢を見てる
ぬくぬくの寝床で
こんな雷雨気付きもせずに

いいんだよ
そうやってぐっすりお眠り
朝にはきっとこんな雨
追い払っておいてあげるから

夜明けまでもう少し
わたしはここで番をしていよう
みんなの眠りが妨げられないように


2004/11/01 17:53








「 センチメンタル 」

燃えるような想いも
燃える季節も
全て
雨と風が押し流していくから
季節は移り
こころ模様も色を変える

変わらないものなど
なにひとつないから
留まるこころが哀しい

ほら
風に乗って流れておいき
留まっていてはいけない
さあ
さあ

冷たい雨が降り注ぐ
街に
山に
こころに

せかされて
知らぬまに
流れていく

歴史も
想いも

振り返れば
昨日の微笑み
過去の涙
燃える秋に
別れを告げて

伸ばした手を
握ってくれるのは

冬の使い


2004/11/01 23:54








「 さみしさ 」


風に乗って
誰かの泣く声がする
かけよって抱きしめてあげたいけど
姿が見えない
どこにいるのかわからない

何が哀しいのか
何が辛いのか
胸が締め付けられるような
そんな感情に流されて
夜の街
探し歩いた
あてもなく

どこかで誰かが
泣いてるような気がしたから
振り向いたけど
そこには誰もいなかった

本当は
自分が泣いていたんだね


2004/11/02 21:40








「 存在 」

風の音に耳を傾けよう
陽射しの語らいにこころを開こう
何も悩むことなどなかったんだと
教えてくれるから

静かに時間が流れていく
この大きな自然の中で
わたしは一粒の粒子になる
かげろうのように
ゆらゆらと

明日のことなど
なにも想わず
昨日のことなど
なかったように

誰も気付いてくれなくても
たしかに
ここに存在している
わたし


2004/11/03 14:14








「 この道の先に 」

疲れた体たたき起こして電車に飛び乗る
行き先はどこ
夢の続きという駅があるなら降りてみたい
この線路の先に
未来があるのか
それとも・・・・

答えはこれから探すんだよね
自分の足で
自分の目で

どんなに疲れていても
負けてなんかいられない
時間は待っちゃくれない
立ち止まったらおしまいさ

立ち止まり
座り込んでしまったら
このけだるさに飲み込まれ
二度と立ち上がれないような
そんな不安にかられ
前に進む

きっと答えは見つかるはず
夢は見続ければ
いつか叶うと信じているから


2004/11/04 22:24








「 イルミネーション 」


赤い光に魅せられて迷い込んだ幻想の森
理性も現実も思考の中から消去しよう
まばゆいばかりの電飾の赤
点滅する光

仕事も
愛も
自分の存在さえも
消去

冷たい空気の中で
華やかに踊る光
夢を見させてくれる?

そうね
今夜だけは
シンデレラ
ガラスの靴も
ドレスもないけど

そうね
今夜だけは
お姫さま
手をとる王子もいないけど

踊る
踊る
赤い光
きらきらと
全てを包み込んで

このまま
夢の世界まで連れて行って


2004/11/05 22:36








「 エスカレーター 」


この階段を登りつめたら
そこに待っていてくれるだろうか
愛ひとつ
夢ひとつ

この階段を登りつめたら
たどりつけるだろうか
夢の続きへ
あなたの胸へ

電気仕掛けの階段が
冷たい光を放つ
見下ろすような瞳で
ほくそえんでいる

おまえはずっとそこにいればいい
この上には行かせない
おまえはそこでずっと
夢を夢見ればいい
愛に焦がれればいい

いつかちゃんと登ってみせる
自分の足で
電気なんかに頼るものか
この両の足で踏みしめながら
登りつめて
そうして
なにもかも掴んでみせるから

今は
こうして見上げているだけでも


2004/11/08 00:15






photo by 椎名