「 ひかり 」


何かに追われているような日々
何かを追いかけているような日々
どちらも
こころが落ち着かない

何を探しているのか
何から逃げようとしているのか
なにも
わかりはしないけど

ふとやすめた瞳にうつる
輝く光
まるで人生の誘導灯のように
ぼんやりと
しかし
はっきりと所在を知らせる
そんなものを
こころの中に持ち続けたい

たとえばそれは夢であり
たとえばそれは愛であり
気づけばぬくもりを感じるような
そんなものを
こころの中に持ち続けたい

この
混沌とした日々の中で


2004/10/16 21:46








「 光と影 」


水の中で泳ぐ魚
光を受けて煌く水面
いきいきと
ゆうゆうと
なんの疑いもなく
生きている

白日の下
照らし出されても
臆することなく
堂々と

純粋なもの
それは自然
美しいもの
それは自然

人もまた
自然の中で生きているはずなのに

なぜ
神は人に心を与えたのだろう
純粋なまま
生きていられたら
どんなにか素晴らしい世界であったろうに

でも
ふと思う
心が創る混沌があってこその
自然の美しさではないかと
迷いがあるから
自然が純粋に見えるのではないか

光と影

影がなければ
光の素晴らしさがわからないように


2004/10/17 21:05








「 あこがれ 」


水に映る光を
この手に入れたくて
焦がれても
焦がれても
風が吹けば消えてしまう

たとえば
空にかかる月に恋するように
不可能なこと
たくさんあるから

手に入れたくて
入れられないもの
欲しくても
遭遇することすら叶わぬもの
たくさんあるから

見つけられただけで
しあわせと
見ることができただけで
しあわせと

この胸に
そっとしまっておこう
めをつむれば
いつでも会えるのだから


2004/10/18 14:31








「 季節とともに 」


季節が変わる
気づかないくらいにひっそりと
空が色を変え
風が匂いを変え
木々が葉を散らし始める

わたしたちは
何を見ているのだろう
雨が降り
雨が止み
日差しが少しずつ弱くなると
やっと
それと気づく

あたりまえの日常に
ふりまわされ
まわりを見る余裕すら
失っているのだろうか

風が吹く
風が吹く
季節を変え
ひとのこころを変え
そうして
時を流れさせていく

新しい季節を越え
次の春がくるころには
また華やいだこころに戻れるといいのに

しのびよる冬に
身構え始める
散り始めた枯れ葉を踏みながら


2004/10/19 23:23








「 素敵の実 」


赤い実食べて小鳥は赤くなった
青い鳥は青い実食べた?
そんな童謡があったよな

素敵な人になりたいから
素敵の実を探してる
だけどどこにも見つからない

早く見つけて食べなくちゃ
大好きな人が行ってしまう
わたしに気付かず行ってしまう

どこにあるの
どこを探せばいいの
素敵の実

どうぞわたしを
世界一素敵な女の子にしてください
たとえどんなに苦くても食べるから

素敵の実
素敵の実
どんな色でどんな味

赤い鳥
青い鳥
木の実はどんな味がした


2004/10/21 21:50








「 内への逃避 」


ぽっかり空いたこころの穴に
いつのまにか小さな庭ができ
そこに小さな花が咲きました

どこからか風に乗って
種が飛んできたのでしょう
知らない間に芽を出して
知らない間に咲きました

虚ろな日々が淋しくて
小さな庭に逃げ込んだとき
ふと目に入った小さな花
いつからそこに咲いてるの

ずっと見ていようか
それともそのまま帰ろうか
にっこり笑ってくれたような
そんな気がしたから
ちょっとだけ佇んでいる

動き出すのはもう少し待とう
もう少しだけ
この小さな花のやさしさに
もう少しだけ
甘えていようと


2004/10/22 22:19








「 探し物 」


夢の中を彷徨っていた
泳げないはずの海の中
魚になって泳ぎ回る
深い深い海の底に
大切なものを落としたから

必ず見つけなければと
こころが焦る
もぐっては上昇し
魚のくせに息をつく
見上げた空に半分の月

満月まではあと何日
それまでこうして探し続ける
半分の月明かりでは探せない
見つからない
海の底は暗すぎる

泣いていたのかな
目覚めたら睫が濡れてた
窓の外は秋
燃えるような紅い葉が枝先で揺れている
持ち続けるには重くなりすぎた心のようで

探していたのは
夏の思い出
終わってしまった季節の忘れ形見
心の底に沈んだ想い
もう二度と微笑んではくれない映像


2004/10/23 22:41








「 決別のとき 」


長雨の後
秋が逝く
冷たい風に背を押され
高くなった青空に見守られ
短過ぎる秋が逝く

別れを惜しむかのように
虫の声
もう少し愛でたいと
せせらぎの音

暑過ぎた夏の思い出が
段々と色褪せていくように
木々の葉が色を変える

深い想いが
胸の中をかけめぐるから
今はここで佇んでいよう
水の音に耳傾けて
虫の声を味わいながら

色づいた葉が全て落ちたなら
そのときが
決別のとき
燃え尽きた想いと
届かなかった想いへの


2004/10/24 23:50








「 沈黙の季節 」


ゆらめいて水面
きらめいて光
やさしくなった季節に
少しだけ張り詰めた風が吹く

季節の狭間を
冬がくるまでゆらゆらと
揺れていよう

別れと出会いのあいだで
少しだけ
期待と哀しみを抱いて

急がなくても
そのときはくるから
いまは
このやさしい陽射しに包まれて
漂っていよう

ゆらゆらと水面
きらめいてひかり
ゆったりと
時が流れていく


2004/10/25 23:53








「 サイレントレイン 」


小雨にけむる街
どこにも行けなくなった想いは
カーテンを開けることも叶わず
諦めて部屋の明かりをつける
ためいきと沈黙と
時を刻む音だけを寄り添わせて

こころにさす傘がない
濡れてしまうのが怖いから
今日はここで死んだふり
時が過ぎるのを待つことにしよう

いつかきっと
まぶしい光が誘いにきてくれるから
それまでは死んだふり
こころの窓にもカーテンをかけて
ここにいること知られないように

音もさせずに雨が降る
サイレントレイン
街も
わたしも


2004/10/26 13:59






photo by 椎名