ゆうきちの事故日記 〔事故に遭ったと気づくまで〕
いつも夕飯時には家に帰ってくるはずが,その日はちっとも帰ってこなかったので呼びにいきました。外にいるときはたいていビニールハウスの中にあるカゴ(高さ1メートルくらいの場所に置いてある)で寝ているので,そこへ行ってみるとちゃんと定位置にいました。いつもならば,ハウスの入り口から「ゆ〜」と呼ぶと,すぐさま「にゃーん」と飛んでくるのですが,その日はなぜか呼び声を無視するのです。仕方なく抱きかかえて連れ戻そうと体に触ったら,恐ろしげな声でギャーと悲鳴をあげて抵抗するではありませんか。大声で吠えながら嫌がるゆうきちを無理矢理家に連れ戻しよく観察してみると,なんと3本足で歩いていました。外傷がほとんどなかったので,一体どうしたのか見当もつきませんでしたが,とにかく本人(猫)の様子が異常だったため,即動物病院へ連れていくことにしました。
〔動物病院探し〕
かかりつけの病院に電話を入れると,その日は運悪く休診日で,しかも獣医さんが研究会でよそに出かけていたため,診てもらえませんでした。そこで,クッキー君やパティちゃんかかりつけの熊井動物病院(東京都日野市)に連絡をとり,時間外診察をしてもらうことにしました。病院へは,クッキー君,パティちゃんの飼い主さん親子が一緒に行ってくれました。
〔病院にて〕
獣医さんはゆうきちの様子を一目見て「交通事故です」とおっしゃいました。注射を2〜3本打ち,大腿部に包帯を八の字に巻いて固定し,そのまま入院することになりました。獣医さんから「レントゲンを撮ってみないとわかりませんが,内臓が破裂していたらかなり危険です」とか「(オリに入れられたゆうきちの)顔を見ていってください。最後になるかもしれませんから。」とか「容態が急変したらご連絡いたします。」などと不安にさせられるようなことばかり言われ,とても悲しくなってしまいました。でも,クッキー君,パティちゃんの飼い主さんが「○○さんちの猫は,交通事故に2度も遭ったけど,2度とも熊井動物病院からちゃんと生きてかえってきたよー」と言ってくれたので,少し励みになりました。
〔事故の翌日〕
レントゲン写真の結果,ゆうきちの左大腿骨の付け根がきれいに折れていることがわかりました。さらに,骨盤の仙腸関が剥離骨折していることもわかりました。膀胱などの内臓は,たぶん大丈夫だろうということでした。大腿骨は,あまりにも付け根に近い部分で折れていたため,ピンを刺して固定し骨をくっつけるとかえって後々びっこを引くことになるかもしれないとのことでした。今後の治療方針は,折れた部分の骨と骨をくっつけないようにして,周囲の筋肉でその部分を補うというものでした。そこで,侵襲的な治療は行わずに,包帯を八の字巻いて骨盤を外側に開かせるという方法をとることになりました。抗生物質の注射は毎日受けていたようです。
〔5日間の入院生活〕
ゆうきちは,交通事故に遭っても食欲だけは衰えず,病院の食事をガツガツ食べ,日に日に元気になっていきました。ただ排尿は問題なかったのですが,痛くて腹部に力が入れられなかったのか,排便が自力でできませんでした。排便が自力でできるようになるまで入院させるということでしたが,あまりにも元気が良いので入院から5日経った日,毎日通院させるという条件付きで退院できることになりました。家では錠剤の薬を飲ませることになりました。抗生物質の他に,筋を衰えさせないためにATPが出されました。
〔退院後〕
家に連れて帰ろうと車に乗せると途端に前のシートから後ろのシートに飛び移ってみたり,2本足(重心はほとんど右足ですが)で立って窓の外をながめてみたりと,大はしゃぎでした。おかげで包帯がすぐにほどけてしまうので巻きなおすと,今度は口で引きほどいてしまうのです。退院後1週間は懲りずに包帯巻きを試みましたが,どうしてもすぐほどいてしまい効果が薄そうだったため,そのうち包帯をするのもやめ,なりゆきにまかせることにしました。
排便については,まだ自力でできないと言われて退院しましたが,退院した翌朝には自力でできるようになりました。
退院後1週間で抗生物質の投与は終わり,ATPだけになりました。でも,左足に重心をほとんどかけずに3本足で難なく生活をこなしているため,左足の筋肉は急激におちてしまいました。いつのまにか背骨は左に曲がり,前足と右足の3本でバランスをとりやすいような体型に変化していました。退院当初は左の耳を掻くのも右足でやっていましたが,最近では左足もかなり使うようになってきています。
退院後2週目以降は,週に1度の通院で良いことになり,4週目以降は通院しなくても良いことになりました。徐々に外も散歩させて,以前の生活に近づけていきました。今ではほとんど事故前と変わらない状態になっています。
(熊井動物病院さん,どうもありがとうございました!!)
〔ゆうきちをひいた車〕
ゆうきちの交通事故現場は誰にも目撃されていなかったようで,一体何にどうひかれたのか全くわからないのですが,事故以来トラックを異常に怖がるようになったので,もしかするとそういうことかもしれません。普通自動車やバイクは平気なのに,トラックの走る音を聞くと一目散に逃げてしまいます。
もしこれが本当だとすると,足1本折っただけで済んだのはとても運が良かったのかもしれません。
どこで事故に遭ったのかはわかりませんが,足をひきずってビニールハウスの定位置(それも1メートルジャンプしないとのぼれないカゴ)に一人戻ってじっと耐えていたというのがなんとも痛々しいです。
〔飼い主への態度〕
事故前と事故後で大きく変化したのは,ゆうきちの態度です。ものすごい甘えん坊になってしまいました。