大人獄寺×中学雲雀 年の差パラレル

 

 物好き

 

 

 さりさりと、小さな音がホテルの部屋に響く。お互い黙っているから余計にその音が耳について、かといって制止するまでもないからと彼の手元を見つめていた。
 前回に会ったときだ。彼の爪の形を見ていたら、逆に手を取られた。無意識に咬んでしまって歪に削れた爪を気にされて、今度は磨かせてくれとねだられた。僕は自分の爪などどうでも良かったけれど、彼があまりに熱心に言うから仕方なく、そう仕方なく好きにさせている。
 一方向に繰り返し滑らせられるやすり。時折、ふっと息を吹きかけられる。自分の爪もこんなに時間を掛けて削るのだろうか。爪切りで切ってしまえば済むことなのに。
「終わったの」
 満足そうな顔を見ればわかる。彼の物好きは今に始まったことではないけれど、僕を好きにすることでそれを解消させているのだろう。でなければ、こんな関係を続ける意味も理由もない。
「ああ」
 なだらかに丸くなった爪の先を確かめるように舌が触れる。本当に、物好きだ。

 

 

 


雲雀を磨くことに満足感を得る大人獄寺。