※微グロカニバ表現注意
獄フェチ雲雀さんシリーズとでも称しましょうかね

　君解剖学002小指

　後頭部に添えられた手の感触にくらり酔う。唇を塞がれていることよりも、味覚を司る機関を絡ませられていることなどよりも、髪を梳くその動作にたまらず目を眇めた。
　特に、うなじに添う第五指が駄目だ。
　短く整えられた爪。不器用に、拙くも襟足を愛撫してくるそれは、口に含むと酷く甘い。もちろん、そう感じるのは正しい神経伝達の結果ではなく、僕の脳を伝わせる物質を乱れさせる電気信号のせいだ。
　触覚に味覚が左右される、ということはままある。舌も感触を味わうし、手で触れた時点でその感覚から味を予想していないわけではないのだと思う。また、視覚もそれを左右する要点のひとつだ。さらに言えば彼の僅かに息を吸う音すら甘美と称せざるを得ない。それに煙草の香りが欠けていたならば、口に含んだものが誰の指かを判断するに重要なものが足りないということになってしまうだろう。
　つまりは僕は、彼のものであるそれに興奮を得るのだ。
　咬み千切って飴のごとく転がしてみたいと思ったけれど、それでは巡らない血は喉を通って胃に納められてしまうし、生暖かさもすぐに消えてしまうだろう。そんなのはつまらない。するならば彼の死体が目の前に転がる日にしよう。新鮮なうちに。
　当分そんな日はこないとして、今はこの執拗な指をなんとかしなければ。同じようにやり返しても、相手は僕より我慢強くはないけれど、感覚が鋭くないのだ。
「──っ」
　耳を掠めた手が、顎を伝う。ソファに座った僕より膝だけついた彼の方が上にいることで、必然的に上向かされた僕の口内で唾液が混ざり合うことになる。口を閉じないまま喉を使って嚥下を試みるが、多少の空気を飲み込んで具合が悪い。大体、彼は下手すぎる。呼吸のタイミングくらい、見極めろと言いたいが今は生憎僕も忙しい。髪を何度も同じ手が撫でる。それすら咎める間がないのだから。
「ぁ…ん、く」
　含まされた舌の感覚に、じわりと唾液が溢れる。何処もかしこも甘いのか、と文句を言いたくもなるが、味わうことを優先したら言葉にはならなかった。
　じっと見つめると、とろけた碧玉が合わせられる。銀の睫毛も濡らして、目の縁を紅くして、欲に溺れそうな表情をしている。だったら、息もできないほど溺れてしまうがいい。
「おいで」
　襟首を引いてソファに倒れ込めば、僕のものになる。
　君を、端から食べさせてよ。

実はうなじやら耳やら弱い雲雀さん。
獄寺は無意識に触っちゃうんだよという。

たべちゃいたいほどあいしてる！