気紛れに
「膝貸せ」
応接室に来るなり、そう一言。二人掛けのソファの右側、右手が肘置きに乗るような位置でたまたま座っていたから、拒む理由も、その間もなかった。
ごろん、と膝の上に転がる銀の髪。僕の左側には、彼の胴体が軽く手足を丸めている。
さん、にい、いち。
心で数える間に寝息が聞こえてきた。手にしていた議事録を頭に振り下ろすことだってできたけれど、そんなことはしてやらない。思う様に惰眠を貪って間抜けな顔で起き出したなら、これの対価を要求してやればいい。
机に書類の束を投げ出して。手が空いたので代わりに銀糸に触れた。
あちこちに好き放題に跳ねているようで、風には意外なほどに流されるそれは、指にふわりと絡み。何度も繰り返せば、まるで猫を撫でているようだと気付いた。
飼った覚えはないけれど。
まあいい。
小休止だと、欠伸をひとつした。
甘えた攻を思い出したように書いてみるテスト。
10代目の側ではきっと熟睡とかしないんだろうなぁと夢見てみるよ。