懐に
ネクタイを掠め、雲雀の手が懐に滑り込む。
「こんなもの、使わないんじゃなかったの」
スーツの下に隠れたホルダーから奪い去られた拳銃は、雲雀の手の中で鈍く光る。まるで、本来の重さを忘れられたかのように気軽に扱われるそれが、気まぐれに胸へと向けられる。
「おめぇこそ、使い方すら知らねぇだろ」
「知ってるよ」
安全装置が外され、撃鉄が引かれる。けれど、雲雀には殺気の欠片もありはしない。こんな人を殺すための道具より、確実に命を奪うもの、それは。
「こんなもんより」
手首ごと引き寄せれば、あつらえたように収まる細身の体。絨毯に、空の拳銃が転がって鈍い音を響かせる。
それよりも、鼓動が耳を塞ぐようにさっきから激しく打ち付けるんだ。
「よっぽど痛いもんを懐に忍ばせてんだよ」
ふぅん、とどうでもいいように応えながら、雲雀の指はネクタイに絡んで離そうとしなかった。
イメージがメタルの黒→拳銃だっただけという…なんという。
あと、甘すぎました。