後頭部の痛みに紛れたそれは
「またサボり」
「うっせぇ」
いつもの小競り合い。ただ、今日はいつもと違って応接室や屋上ではなく、音楽室だった。
「授業出たら?」
「お前に言われたかねぇよ」
ピアノの前に陣取ってはいたけれど、弾く気にはなれず蓋すらもあげていなかった。それを、隣に座った雲雀が手を伸ばし、鍵盤に触れるよう促す。
「授業に戻れ、じゃねぇのかよ」
「弾いてる間だけ見逃してあげる」
「…ちっ」
楽譜はない。空で弾ける曲を思い浮かべて鍵盤を叩いた。
肩に、荷重が掛かる。弾けと言った割に邪魔しないつもりはないのかと苦笑が浮かぶ。まあ、仕方ねぇか。
両手を軽く持ち上げたところで、ドアが僅かに動いた。咄嗟に雲雀を引き、隠れるように床に倒れ込む。
「──ッ!」
下敷きになった勢いで後頭部を床に打ち付けた。
が、痛みに滲む視界には黒が広がっていて。
「なに」
驚いたように見開いた目は、すぐに眇められる。
「わりぃ」
隠れる必要などなかったのに。
誰にも、見つかりたくなかったのだ。
「…切れた」
白い指が唇をなぞる様に目を奪われる。まて、今、なにが起きた?
後頭部の痛みに消し飛ぶ程の、やわらかい衝撃。
なんてこった。
ハプニング大賞。
どっきりな獄ヒバも大好きです。