猫がいる。

　俺の部屋には猫がいる。
　と、いっても拾ったわけでも飼ってるわけでもない。野良猫が気まぐれに乗り込んできて、好きに一角を支配しているだけだ。
　当然、俺になついてもいない。けれど、最初の頃と違って、俺に与えられる餌を平気で口にするようになったし、側に寄ってもあまり引っ掻かなくなった。これは、機嫌次第だが。
　猫がいることで煙草を控えるようになったが、それにも慣れてきた。
　最近の俺のブームは、餌付けだ。
「ヒバリ」
　人のベッドを占拠して優雅に寝息を立てている黒猫、こいつがヒバリ。並盛町で知らぬものなどいないほど有名なこいつだが、あまり他所の家にはあがりこんだりしないそうだ。
　まあ、ここにいるのも気まぐれで、いつふらっと消えるかなんてわかりゃしないわけだが。それでも、今だけでもこうしているのを悪くはないと思っている俺がいる。
「おやつだぞー」
　プリンを掬ったスプーンを口元に寄せれば、すんと匂いを確かめた後、赤い舌がちろりと舐める。その間、目は開いていない。無意識の本能なのか、眠気が勝っているだけなのか。いつだかは綺麗に平らげても起きなかったことがあった。
　今日は、うっすらとだけまぶたを動かし、緩慢に口を開ける。食わせろ、という合図だ。
　口内に半固体のそれをスプーン一杯ずつ流し込むと、ゆるやかな咀嚼と、ゆっくりとした嚥下が繰り返される。もちろん、喉に詰まられたりしないようこちらも細心の注意をもって行っている。
　時折、赤い舌が口の周りを舐める。そしてすぐに、次を要求するようにこちらを見た。どうやら今日は、目が覚めてきたようだ。
「慌てんなよ」
　もしかしたら、腹を空かせているのかもしれない。ならば順番はおかしくなるが食事の準備をしてやろうか。考えているうちに、すっかり小さなカップは空になった。ちなみにカラメルが苦いのを嫌うので、冷蔵庫にはカラメルの入っていないプリンを常備してある。
「おかわり」
　猫が鳴いた。
「飯の支度すっから我慢しろ」
　自分のためにはしたこともなかった料理を少しずつ会得しているのは、こいつのせいなんだろう。
　だが、野良猫の世話を焼くのは嫌いじゃない。

　俺の部屋には、雲雀恭弥という猫がいる。

猫化ではなくいつもの獄ヒバ＾＾
料理うまくなる獄寺を見たい…大人獄寺をキッチンに立たせたい、そんな10年計画。(えっ雲雀さんの？)