普通にデートしてる件

 

 

「お前、掛けんのか?」
 珍しく買い物に付き合うと言われた先は眼鏡屋で、人並み外れた眼力の持ち主である雲雀には全く縁のないところだろうと思っていたが、意外と商品をまじまじと見ているようなので、つい声を掛けてしまった。
「いらないよ」
 そう言いながらも、手にはシルバーフレームの眼鏡。
「?」
 首を傾げたら、手渡された。ああ、自分のものではないということか。そういえば、眼鏡を掛けていた時に悪くないと評された記憶がある。考えてみると、その時のそれ以上の評価を貰ったことがない気がするのだが。
「どうだ」
 掛けて見せると、弦の辺りに下がっている札が邪魔なのか手で退けながらじっと観察される。
「ふぅん」
 あ、これは悪くない反応だ。目を細めて、口の端を上げる。くい、と顎を上向かせて満足そうな猫そのもの。
「……じゃあ、これな」
 自分で選ぶ間もなく決定だが、まぁ手間は省けた。しかし、雲雀はまだ店内を見回している。と、すたすたと一角に向かっていく。
「色付き眼鏡もいいかもね」
「色付き、ってお前な…」
 もう少し洒落た言い方はできないのか、とツッコミまでは入れないが、仕方なく側に寄って手元を覗けば、青とも紫ともつかない色の入った度入りのサングラスを手にしていた。しかし、雲雀はどこか不満そうな表情を浮かべている。
「なんだよ」
「この色、で。この形はないの」
 二つを交互に視線で差し、こちらへと向きかえる。ふと距離が縮まったことに心臓が跳ねたのはまた別の話だ。
「レンズを作る時に色を指定すればいいんだよ」
「じゃあ、それ」
 結局その日は二本の眼鏡を作ることになったんだが。そもそもお前に破壊されなければ作る必要はなかった、というのは言わない方がいいんだろうな。

 

 

 


書きたかっただけの眼鏡ネタ。
眼鏡屋の店内の雰囲気は好きだ。店員がいなければゆっくりしたい。