犬には首輪を。

 

 

「動かないで」

 そう言われながら背後から首にひたりと触れられれば、人生終わったかと思うだろう。首の骨を折られるのと、呼吸を止められるの、どっちが苦しいだろうか。雲雀ならより苦しむ方法を選ぶに決まっている。そこまで考えたら、意外にもそのまま雲雀の手は離れていった。

「……あ?」

 肩透かしのような感覚に振り返れば、雲雀は何事もなかったようにデスクにつき、何やら紙に書き込んでいる。

「なんなんだよ」

 申込書、と書かれているそれを見れば、雲雀の字で何ヵ所か書き込まれている。


色:黒
幅:2.5cm


今書いたのは首回りの寸法、のところらしい。

「一週間で届くから」

「だから、何がだよ?」





 まだ届かないの?配送会社はどこ?とか文句を言い出す雲雀を宥めながら一週間が過ぎた頃にそれは届いた。


「一週間も待たせるなんて」

 そう雲雀は言っているが、そもそも最初から一週間だと言っていただろうに、そんなに待ちきれなかったのか。

「動かないで」

 再び、首に手が触れる。今度は正面からだ。妙に気恥ずかしくて視線をあちらこちらへさまよわせていると、何か首に巻き付けられた。

「似合うよ」

 雲雀が大層満足げに笑う。あぁ、確かめるまでもなくろくなことじゃないな、と諦めの中で察するしかなかった。





「名入れしてくれるっていうからこれにしたんだよ。君の名前だけなら銀がいいかなと思ったけど、こっちの方がいいね」

 珍しく饒舌に語るのはともかく、内容はろくなもんじゃない。

 鏡で見れば、首輪には「隼人」と「並盛中風紀委員会」の金文字。多分、俺の名前より後者を優先でデザインされたことは想像に容易い。

 はぁそりゃ良かったな、とそれなりに相手をしてやっていたんだが。



 鎖をつけようとされたら全力で抵抗するに決まってるだろ?

 

 

 

 

 


 小ネタサルベージ

後日うっかりつけたまま10代目と会っちゃって微妙な顔されちゃうんだ。