火薬味
追い込まれた、そう感じた瞬間。雲雀と自分の僅かな空間へとチビボムをひとつ弾いた。
雲雀に組み敷かれた今の状態で衝撃に備えて出来ることは、辛うじて片腕を翳すことと、目を閉じることだけで。
しかし、ごく短い導火線が燃え尽きるはずのタイミングでも爆破は起こらなかった。
「……?」
唇に触れる乾いた感触に、うっすらと片目を開けてみれば。
「な…ッ!?」
形良い唇に、くわえられているのは放ったはずのチビボムで。そのまま、雲雀は笑みを浮かべた。
ことりと落とされた紙巻きの筒は屋上のコンクリートの上を転がり、そちらに意識を奪われた隙に唇が重なっていた。
舌に乗る苦味は、きっと焦げた導火線のものだ。吐き出そうにも顎を捕まれ、抵抗することすら叶わない。
「……ん」
唾液を送り込まれ、喉奥に流れてきたら嚥下するよりなかった。火薬臭いキスなんてこいつも嫌だろう、と思ったが──案外、興奮するものだ。雲雀も欲情を隠さぬ眼差しで瞳を反らさない。
これも一種の吊り橋効果なのか、なんて下らないことだけが温度が下がらないままの頭をよぎっていった。
小ネタサルベージ
バトル萌えで…!!
屋上で喧嘩してそのまま雪崩れ込むといい。AOKAN!